転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4195話

 俺がシーマ達に連れてこられたのは、ルナ・ジオンにある下着屋の中でもブランド店だった。

 生憎と俺はそのブランド名は知らなかったが。

 ともあれ、ルナ・ジオンにある店の中でも高級店なのは間違いない店だったのだが……その店に入ると、そこにはモーラと一緒に下着を選んでいるニナの姿があったのだ。

 ニナも、まさかこのような場所で俺と会うとは思っていなかったのか、俺の名前を口にして動きが止まっていた。

 というか、俺が聞いた話だとニナはクレイドルにあるアナハイムの支部でゼフィランサスの改修プランを考えていた筈なのだが……一体、何故こんな場所に?

 

「えっと……ニナとモーラ、まさかこんな場所で会うとは思わなかったな」

「……そうね。何でアクセルがこのお店に? このお店がどういうお店が、知らない訳じゃないでしょう?」

 

 ニナがそう聞いてくる。

 その視線は俺に向けられているが、同時に俺の周りにいるシーマ達にも向けられていた。

 男が女の下着を売ってる店に来るというのは……まぁ、ないということはないが、頻繁にあることではない。

 恋人同士の中には下着をプレゼントするという事もあるらしいが、そういうのはあまり多くはないだろう。

 ……そんな中で俺がこうしてここにいるのを見れば、ニナとしてはどう思うかは想像するのは難しくない。

 ましてや、ニナが俺に好意を抱いているのは明らかなのだから。

 そうなると、やはりこの状況は色々と不味いだろう。

 

「ニナ、だったかしら? 私達は今夜のお楽しみの為に来たんだけど、何か不満があるの?」

 

 クスコが前に出て、そんな風に言う。

 するとそんなクスコの言葉に怒りか……あるいはその内容か、とにかくニナの顔が赤く染まる。

 これは一体どうしたらいいんだ?

 

「何だい、あんたは。今はニナがアクセル中尉と話してるんだ。それを邪魔しないで欲しいんだけどね」

 

 そしてニナの方には応援としてモーラが前に出る。

 

「2人共、その辺にしておけ。……ここで騒いだら、人の目を引く」

 

 周囲の客の視線を感じ、そう言う。

 無理もない。モーラは背丈が大きいが、愛嬌がある顔立ちをしている。

 他の皆は、ニナも含めて美人と呼ぶに相応しい姿。

 そんな中に男の俺が1人だけいる状況。

 それを見れば、一体何がどうなっているのかと、興味津々といった視線を向ける者がいるのは当然だろう。

 ニナやモーラもそれに気が付いたのか、取りあえず場所を移動することにするのだった。

 

 

 

 

 

「この喫茶店、雰囲気が良いね」

 

 下着屋での一件があってから少しして、店にいるのは不味いと判断し、近くにあった喫茶店に入った。

 不幸中の幸いと言うべきか、何も考えず近くにある店という事で入ったこの喫茶店は、クリスが言うように悪くない雰囲気だった。

 これを不幸中の幸いと表現してもいいのかどうかは分からないが。

 それでも雰囲気の悪い喫茶店よりは、こういう喫茶店の方がいいのは間違いない。

 

「クリスの言いたい事は分かるけど、この席順には微妙に何らかの意図を感じるんだが」

 

 席順は、俺の隣にシーマが、そして向かいにニナとモーラ。

 そしてすぐ側の別のテーブルには、モニク、クスコ、クリスの3人。

 この喫茶店には4人用のテーブルしかなかったので、こういう組み合わせになった。

 

「あら、この組み合わせになるのは必然でしょう? ……そっちの2人も、今回の話とは無関係という訳じゃないんだし」

「それは……つまり、そういう事なの?」

 

 クリスの言葉に答えたのは、俺ではなくニナ。

 その視線の先には、俺……ではなく、俺の隣のシーマが、そして視線が移り他のテーブルの3人に視線が向けられ、そして最後に俺に視線が戻ってくる。

 つまり、ニナがそうして聞いているのは俺に対してなのだろう。

 そうである以上……ニナが俺に好意を抱いているのを知っている以上、それを誤魔化す事は出来ない。

 

「そうだ。この4人全員と俺は付き合っている」

「……シーマさん以外にも?」

「え?」

 

 ニナの言葉に意表を突かれ、隣を見る。

 名前を呼ばれたシーマは、どうやら自分の正体が知られていないというのを理解したらしく、帽子を取る。

 すると……本当に不思議な事に、それだけでシーマではない人物からシーマに姿を変える。

 

「悪かったね。ニナも知っての通り、私は月では有名人なんで、こうして外に出る時は変装をしたりするんだよ」

「あ」

 

 変装を解除したことと、何よりもその声と口調からニナも目の前にいるのがシーマだと気が付いたらしく、驚きの表情を浮かべている。

 ……なお、モーラはシーマが変装を解いた事で口を大きく開けて動きが止まっていた。

 どうやらアルビオンに行った時、モーラはシーマに会わなかったらしい。

 とはいえ、ニナと違ってモーラは連邦軍の人間だ。

 ルナ・ジオンの象徴の1人でもあるシーマを見ても、そこまで驚くような事はないと思うんだが。

 

「まぁ、そんな訳だ」

「……本当にここにいる全員とアクセルが付き合ってるの? 本当に?」

 

 ニナが確認するように……いや、これはちょっと違うか? とにかく、そう尋ねてくる。

 それに対し、俺が出来る事は決まっていた。

 

「そうだ。俺はこの4人と付き合っている」

 

 この世界では。

 そう言いたくなるのを、我慢しておく。

 俺がアクセル・アルマーだと……シャドウミラーを率いるアクセル・アルマーだというのは、トップシークレットなのだから。

 例え相手がニナであっても、今この場でその辺について話すことは出来なかった。

 

「それはまた……凄いわね」

 

 ショックを受けた様子のニナとは違い、モーラは普通に驚いているだけだ。

 当然か。

 モーラも別に俺を嫌っている訳ではないだろうし、これまでの付き合いから好意的な感情を抱いてはいるだろうが、それはあくまでも同僚に対して、あるいはパイロットに対するメカニックとして、もしくは友人に対しての好意だ。

 ニナのように、男女間の好意という訳ではない。

 だからこそ俺が4人と堂々と付き合っていると言っても、こうして驚くだけなのだろう。

 ……もっとも、ニナの友人という立場から考えれば、もっと俺を責めてもいいとは思わないでもなかったが。

 モーラが特に気にしていないところを見ると……その辺は割り切ってるのか?

 

「ニナ、どうする?」

「え? モーラ?」

「ここから先はあんたが決める事だよ」

「私が決めるって……それは……」

 

 ニナはモーラとそんな会話をしながら、俺に視線を向けてくる。

 さて、ここはいよいよ俺も決める……はっきりとさせる必要があるが。

 俺はテーブルの上にある紅茶を口に運び、心を決める。

 ……適当に入った店なので仕方がないが、紅茶の味はいまいちだな。

 お茶会でセイラが淹れてくれる紅茶はかなり美味いんだが。

 そんな風に思いながら、俺は口を開く。

 

「ニナが俺に好意を……それも友情的な好意じゃなくて、女が男に向ける好意を抱いているのは今となっては俺も知っているし、それを嬉しく思う」

「あ……」

 

 俺の言葉にニナはそんな風に一言だけ漏らす。

 そんな事を言われるとは思っていなかったのだろう。

 あるいは、自分の気持ちが俺に知られているとは思ってもいなかったのか。

 ……こういう事を言っておきながら、実はニナが俺に対して男女間の好意を抱いていなかったりしたら、とんでもない勘違いということになりそうだったが。

 ただ、どうやらニナの様子を見る限りそういう心配はないらしい。

 

「それに、俺もまたニナに対しては十分に好意を抱いているのは間違いない。……初対面の時は色々とあったが、その後で一緒にガンダム開発計画を進めていく中で俺もニナをそういう対象として見るには十分だったしな」

「……」

 

 俺の口からまさかそんな言葉が出るとは思っていなかったのか、ニナの頬が赤くなる。

 ニナの外見を考えると、今まで男に言い寄られた事がないとは思えないのだが……自分で言うのもなんだけど、特に興味がない相手に言い寄られるのと、自分が好きな相手から好意を告げられるのでは、当然ながら違うのだろう。

 とはいえ、今から俺が口にするのはニナにとって決して楽しい事ではない。

 

「だからこそ、もしニナが俺と付き合って欲しい。恋人になって欲しいと言えば、俺は受け入れる」

 

 その言葉に、驚きつつ俺を見るニナ。

 ニナの顔に……目に、嬉しさがあるのは間違いのない。

 だが、俺はそんなニナに対して言葉を続ける。

 

「それでも……俺がニナと付き合った場合でも、この4人と……そして今ここにはいないが、他の場所にいる別の恋人達とも別れるつもりはない」

「……」

 

 沈黙。

 ニナにしてみれば、俺がそういう言葉を口にするのは分かっていた筈だ。

 それでも、そう言われるのだろうと思っているのと、実際に言われるのとでは全く違う。

 

「ちょっと待った」

 

 そんな俺とニナの会話……実際にはニナは沈黙していたので会話と呼ぶのが正しいのかどうかはともかく、会話に割り込んで来たのは今まで黙って話を聞いていたモーラだった。

 

「何だ? 悪いが、モーラはニナの友人かもしれないが、この件については部外者だ。あまり口を挟んで欲しくないんだが」

「分かってるよ。私もそんな野暮な事はしたくない。けどね。私が聞いていた話と少し違うことがあったんで、それをしっかりとしておきたくて。アクセルがそっちの……シーマさんや他の3人と付き合ってる件については、何も言わない。見たところ、誰も不満を持っている様子はないんだから、アクセルが言うように私が口出しをする事じゃないだろうしね」

 

 そう言い、モーラはシーマと、そして隣のテーブルに座って話の行方を見守っているモニク、クスコ、クリスに視線を向ける。

 ちなみにどうでもいい事だが、アクセル中尉じゃなくてアクセル呼びなのは、今は軍人として……モーラ中尉としてここにいる訳じゃなく、ニナの友人のモーラとしてここにいるから、俺をアクセルと呼んでいるのだろう。

 その件についてはニナの友人として考えれば当然の事だった。

 

「なら、何が言いたい?」

「今、アクセルは妙な事を言ったよね? ここにはいない他の恋人って。私が聞いた話によれば、アクセルが付き合ってるのはここにいる4人だけじゃないのかい?」

 

 ああ、その件か。

 口が滑った……という訳ではないが、ニナに俺の事を分かって貰う以上、その件についても話しておく必要がある。

 もっとも、それでも言える事と言えない事はあるのだが。

 あるいはここにいるのがニナだけでモーラがいなければ、俺の正体についても話していたかもしれない。

 そうなれば異世界の国を率いる存在という事で、20人以上の恋人達がいても納得出来たかもしれない。

 ……まぁ、ニナの性格を考えるとそれでも納得出来ないとは思うけど。

 

「そうなるな。ただ、月にいるという意味ではこの4人で全員だというのも違わない」

「……その言い分からすると、他にも一体何人の恋人がいるのか、もの凄く気になるね」

「悪いが、ニナにならともかくモーラにはそれを教える事は出来ないな」

「だろうね」

 

 モーラは恋人について俺が教えないと言っても、特に不満を抱いた様子には見えない。

 モーラにしてみれば、自分はニナの友人としてここにいるが、だからといって全てを完全に知るといったことはしないつもりなのだろう。

 ただし、無理矢理にでも聞こうとはしなかったが、俺に向ける視線にはどこか力が込められるようになってしまったが。

 その辺については、ニナの友人であるというのを考えると仕方がないのかもしれない。

 

「……何で?」

 

 俺とモーラの話を遮るように、ニナがそう言う。

 

「何で、とは?」

「何でアクセルはそんなに女好きなの?」

「……そう言われると、俺としても反論は出来ないけどな」

 

 恋人が20人以上もいて、その多くと同棲しており、夜は毎日のようにその手の行為をしている。

 そんな俺の行状を見て、それで女好きではないと言える者はまずいない。

 それどころか、寧ろ極度の女好きと……それこそ、既に病気ではないかと言われても仕方がないという自覚くらいはある。

 あるのだが、それが俺なのも事実。

 

「ああ、ちなみに。……言っておくけど、1人でアクセルの相手をするような事をしたら、それこそ壊されてもおかしくはないよ」

「相手……壊っ!?」

 

 ふとした様子でシーマがそう口を挟むと、ニナは最初何について言ってるのか分からなかったらしいが、それでもすぐに何の事を言ってるのかを理解したのだろう。

 その顔は真っ赤に染まり……そして俺を見て目が合うと、瞬時に下を向く。

 

「私達の関係が一般的でないのは私も理解はしてるよ。けどね、それでも私にとっては……私達にとっては、アクセルと一緒にいるのは重要な事なんだ。もしあんたが本当にアクセルを好きで……愛していても、アクセルを1人占めするという考えは捨てた方がいい。それでも問題ないのなら、私としては受け入れてもいいと思うよ」

 

 そう、シーマは言うのだった。

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