転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4200話

 バーミンガムについて疑問を抱くも、まずは気にしない事にする。

 ブリッジクルーの技量が未熟なのか、あるいは単純にバーミンガムの性能に何らかの問題があるのか。

 その辺は俺にも分からないが、とにかくそれでもバーミンガムからそう離れていない場所にデラーズ・フリートがいるのは間違いない。

 そうである以上、俺に出来るのは可能な限り早くバーミンガムの近くにいるデラーズ・フリートを撃破するだけだった。

 元々デラーズ・フリートはジオン軍残党の中でも大きな戦力であるのは間違いないものの、それでもジオン軍残党云々を抜きにして純粋な戦力として考えた場合、決してそこまで突出した戦力という訳ではない筈だった。

 だからといって甘く見るような事は出来ないのだが。

 だが……だからこそ、デラーズ・フリートの戦力を今ここで減らすというのは大きな意味を持つ。

 もっとも以前デラーズが行った演説によって、デラーズ・フリートではなかったジオン軍残党がデラーズ・フリートに合流する事によって戦力が増しているのは間違いない。

 また、こちらも未だに何がどうなってそうなったのか分からないが、ニムバスを見れば分かるようにキシリア派がデラーズ・フリートに協力をしているのも大きい。

 こうして考えてみると、デラーズ・フリートの戦力が具体的にどれだけあるのか分からないというのが痛いな。

 もっとも、連邦軍も何も1年戦争が終わってから3年、今まで何もしていなかった訳ではない。

 ジオン軍残党を摘発はそれなりに行っていた。

 水天の涙によってジオン軍残党が活発化した際にも、かなりのジオン軍残党は潰した筈だ。

 しかし、それでもこうしてジオン軍残党が次から次に出てくる……それこそ、どこかでジオン軍残党が生み出されているのではないかと思えてしまうのは、きっと俺の気のせいではないだろう。

 実際には量産型Wでもあるまいし、そんな事はないだろうが。

 あるとすれば、それこそ犯罪者とかテロ組織とか、そういうのがジオン軍残党に合流しているといったところだろう。

 

『アクセル、どうした?』

 

 接触回線で通信を送ってきたバニングが不思議そうに言ってくる。

 バニングにしてみれば、いきなり黙り込んだ俺の様子を疑問に思ったのだろう。

 

「いや、何でもない。ただ、バーミンガムは最新鋭の……それもMSの運用能力を削ってまで性能を上げた戦艦だろう? なのにそんなバーミンガムが、離れた場所にいるアルビオンですら察知出来たジオン軍残党を見つけられなかったのには違和感がないか?」

『それは……』

 

 バニングも俺が言うような事については既に分かっていたのだろう。

 だが、今の状況では何を言ったりも出来ないらしい。

 

「俺はそこに違和感がある。……勿論、バーミンガムに乗っているクルーがまだ慣れていなかったり、単純に技量に劣るから見つけられなかったという可能性も否定は出来ないが」

 

 バーミンガムを使っているのは、当然ながら大艦巨砲主義を求めて実際にその開発を進めた者達だろう。

 そこまでして作った自分達のロマンだ。その乗組員も相応の技量を持つ者達を揃えるくらいはする筈。

 であれば、バーミンガムの性能でデラーズ・フリートを把握出来ないという事はないと思うんだが。

 そうなると、バーミンガムもまだロールアウトしてからそこまで時間が経っていない事から、不具合という可能性も否定は出来ないな。

 それが実際にどうなのかは、それこそ調べてみないと分からないが。

 

『理由は分からん。分からんが、それでもバーミンガムが危険な状況には間違いない。なら、助けに行く必要があるだろう。向こうが気が付いていないのなら、余計にな』

 

 バニングの立場としては、そう言うしかないよな。

 バニングにとっては、今の状況に色々と思うところもあるのかもしれない。

 だが、MS隊の隊長という立場を考えると、ここで余計な事を考えている余裕はないといったところか。

 

「分かった。まずはデラーズ・フリートの戦力を削るところだからだな。……バーミンガムに通信は?」

『アルビオンの方で通信を入れている筈だ』

 

 そう言うと、ちょうどそのタイミングでバーミンガムにアルビオンからの通信が入ったのか、バーミンガムからのメガ粒子砲が発射される。

 ……ただ、そのメガ粒子砲は当たっているようには思えない。

 バーミンガムにとっては突然の事だったし、戦艦の主砲ともなれば1発目からいきなり命中といった事はそう簡単ではないので、おかしくはない……のか?

 色々と思うところがない訳でもないが、今はまず敵を撃破してしまおう。

 

『アクセルは左側から向かってくれ。俺達は右からから挟み込むように動く』

「了解した。じゃあ、そういう事で。……ついてこい」

 

 前者をバニングに、後者を俺と一緒に行動している2機のガルバルディβに向かって言う。

 

『わかりやした』

『うぃっす』

 

 2機のガルバルディβからの通信。

 その返答は、普通の軍隊ならふざけてるのか? と突っ込まれてもおかしくはないが……海兵隊だしな。

 それもルナ・ジオンが建国されてから新しく海兵隊に入った者達ではなく、1年戦争の時からシーマの部下だった連中。

 そういう意味では、この返事はそれらしいものだと、そう思えるのは間違いなかった。

 とはいえ、俺も別にその程度で怒ったりはしない。

 そもそもの話、俺だって能力はともかく、態度としては軍人としてそれはどうなんだ? といった感じなんだし。

 それに下手に丁寧な対応をされるよりも、こうした態度の方が俺にとってもやりやすい。

 こっちを侮っているような様子なら面白くないと思うかもしれないが……ああいう返事をしつつも、俺に対して敬意を持っているのは明らかなのだから。

 

「まずは俺が突っ込む。お前達は俺が突っ込んで敵を混乱させたところに突っ込んでこい」

 

 そう言い、俺はショルダー・スラスター・ポッドとスラスターを全開にしながら前に進む。

 強襲用MSとして開発されたガーベラ・テトラだ。その機動力は非常に高く、ルナ・ジオン軍の量産MSであるガルバルディβでは追いつけない。

 後方の2機は見る間に離れていく。

 すると、見る間に近付いて来るジオン軍残党。

 ザンジバル級にムサイ級が数隻。

 ……結構な数の戦力だな。

 これを全て撃破してしまえば、デラーズ・フリートにも大きなダメージを与えられるのは間違いない。

 そう思っていると……

 

『アクセルさん、あのザンジバル級はクロウド・カーツだ!』

 

 後方からガーベラ・テトラを追ってきていたガルバルディβのうち、片方が慌てた様子で通信を入れてくる。

 クロウド・カーツ……シーマの古馴染みのゲールとかいう、ゼフィランサスをボロボロにした奴の母艦だった筈だ。

 となると、現在バーミンガムと戦っているのは、そのゲールな訳か。

 ちょっと面倒な事になりそうな感じがするな。

 というか、シーマがこれを知ったらどう反応するのやら。

 そう思うと同時に、ゲールをどうするべきかと思わないでもない。

 

「撃破してもいいと思うか?」

『……撃破してもシーマ様は怒らないと思いやすが、生け捕りにすれば喜ぶかと』

 

 その言葉に、だろうなと納得する。

 シーマにとって、ゲールというのは古馴染みだ。

 以前はシーマにも他に幾つか古馴染みはいたのだろうが、1年戦争によってシーマの下についた以外の者の多くは既に死んでいる。

 あるいは、ゲールのようにジオン軍残党となって活動しているのか。

 その辺りは俺にも全てが分かっている訳ではなかったが……とにかく、シーマに対しての土産として考えれば、そのゲールという人物の身柄は悪くないだろう。

 それに……何よりゲールから情報を聞き出す事が出来れば、デラーズとキシリアという不倶戴天の敵が協力しているという不自然な状況の説明が出来るかもしれない。

 下手に敵を倒すよりも、捕虜にして情報を入手する方がいいのは明らかだ。

 普通ならそう簡単に情報を漏らさないかもしれないが、ゲールの場合はシーマの古馴染みというのもあって、情報を漏らしてくれる可能性も高かったし。

 撃破してデラーズ・フリートの戦力を減らすか、それとも捕虜にして情報収集をするか。

 そうしてどうするべきか迷い……次の瞬間、宇宙空間に信号弾が放たれる。

 同時にこちらに向かい、多数の閃光弾が放たれた。

 まだゲール達の部隊とは距離があるにも関わらず、映像モニタが眩い光で覆われ……その光が消えた時、既にゲールの艦隊は撤退行動を行っている。

 それもこっちに攻撃をしながら撤退するといった行動ではなく、こちらには全く目もくれず、全速力で撤退。

 

「以前もそうだったけど、随分と判断が早いな。……シーマの古馴染みだけあって、厄介な敵だ」

 

 恐らく……本当に恐らくだが、ガルバルディβの姿を確認した瞬間に撤退を選択したのだろう。

 ガルバルディβはルナ・ジオン軍で運用されるMSだ。

 それだけに、ガルバルディβが現れたという事はこの戦いにルナ・ジオン軍が参戦したという事であり、ゲールは恐らくそれを嫌ったのだろう。

 これが普通の……もっと状況判断能力の低い敵であれば、即座に撤退という選択肢を選ぶことはなく、戦闘で被害を受けてから撤退しようとしただろう。

 だが、当然ながらそうなればそうなったで、こっちもそう簡単に逃がすようなことはしないので、最終的に向こうが全滅していた可能性が高い。

 そういう意味では、ゲールはこの時点で最適の選択をしたということになる訳だ。

 ……自分で言うのも何だが、俺の操縦技術は高い。

 ましてや、現在俺が乗っているのがガーベラ・テトラという、0083年におけるUC世界のMSの中では最高峰の性能を持つ機体となる。

 つまり、俺と戦えばゲールの部隊にも被害が出るのは確実だ。

 なら、被害が出ないようにするのはどうすればいいのか。

 それは単純に俺と戦わなければいい。

 あるいはこれが逃げる事が出来ないような状況での戦いであるのなら、また話は別だっただろう。

 だが、向こうにとってこの戦いはバーミンガムとの遭遇戦でしかない。

 であれば、ゲールにとっては退いても何の問題もない戦いとなるのだ。

 だからこそ、ここは素直に退くのが最善の選択肢となる。

 これが普通のジオン軍残党であれば、逃げるのを恥と考えたりしてもおかしくはないのだが。

 ゲールにしてみれば、プライドがどうこうよりも生き残るのが最優先といったところなのだろう。

 

『逃げやした……ね』

 

 俺の通信をしていた男が、呆然とした様子で呟く。

 どうやらこいつにとっても、ゲールが即座に逃走するというのは予想外だったらしい。

 とはいえ、呆然としながらもどこか安堵した様子なのは、シーマの古馴染みである……つまり、シーマの古参の部下であるこいつにとっても知っている相手だろうゲールと戦わなくてすんだというのもあるのだろうが。

 

「そうだな。……出来れば捕虜にして、色々と情報を聞き出したかったところなんだが」

 

 撃破するよりも、そっちの方が俺の精神的にも、利益的にも大きかった。

 捕虜にすれば、古馴染みを殺したということでシーマに恨まれたりもしないだろうし。

 いや、シーマは戦闘の非情さをこれ以上ない程に理解している。

 そういう意味では、もし俺がゲールを殺しても恨みはしないだろう。

 内心でどう思うのかどうかは別として。

 ともあれ、ゲールは下っ端という訳ではない以上、キシリアとデラーズの間に一体何があったのかを知っている可能性が高かった。

 出来れば捕虜にして情報を聞き出したかったのだが……こうして逃げられてしまっては、それも無理か。

 そんな風に思っていると、バニング率いるアルビオンのMS隊がこちらにやってくる。

 本来なら左右から挟撃する予定だったのが、実際には戦闘をする前に向こうが逃げ出してしまった形となる。

 

『アクセル……』

 

 近付いてきたバニングからの通信。

 映像モニタに表示されたバニングの表情には戸惑いの色がある。

 バニングにとっても、この展開は予想外だったのだろう。

 

「何を言いたいのかは分かる。向こうにしてみれば、バーミンガムとの遭遇戦で無理をする必要はないと考えたんだろうな。あるいは、俺達がいなければこの機会を逃すようなことはなくバーミンガムを潰していたかもしれないが」

『そうなると、俺達が来たお陰で向こうは退いたと?』

「ガンダム開発計画の機体であるフルバーニアンを見つけたから、自分達では危険だと思ったのかもしれないな」

『……そうか? ガンダムがボロボロにされた件については、デラーズ・フリートの中で情報共有がされていてもおかしくはないと思うんだが』

 

 この言葉が出るという事は、以前戦ったゲールの部隊と同じだとは思っていないようだな。

 それが知られるとそれはそれで面倒な事になるので、ラッキーではあったが。

 そう思い……けど、バーミンガムとゲールか。敵の存在に気が付かなかったバーミンガム。

 その事に疑問を抱きつつ、取りあえず戦闘らしい戦闘はないまま、終わるのだった。

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