転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4204話

 ナスカ級に戻ると、ガーベラ・テトラの補給と整備を任せて休憩する。

 実際にはそこまで体力を消耗してる訳ではないのだが、それでも少しゆっくりとしたい。

 今は特に何かやるべき事がある訳でもないし。

 鹵獲したドラッツェについては、俺が倒したコックピットだけ潰した方はナスカ級の外に係留し、メギロートとバッタが倒したコックピットだけになった方は格納庫で開けている。

 シーマと話でもしたいところだが、そのシーマはまだ戻ってきていない。

 そんな訳で、ゆっくりとしていたのだが……

 

「え? マジか?」

「はい。どうやら拳銃で頭部を……」

 

 メカニックが気持ち悪そうな様子でそう言ってくる。

 メギロートやバッタと戦ったドラッツェのパイロットが、自殺したという報告だった。

 

「……一応、本当に一応聞くんだが、お前達が殺したって訳じゃないんだな?」

 

 シーマの部下にも色々といる。

 今となってはシーマはルナ・ジオンの象徴の1人で、その部下達もジオン軍には使い捨てにされたと知られている。

 だが……いや、だからこそか。そんな修羅場を潜り抜けてきた者の中には、普通とは違うような残虐な面を見せる者もいる。

 だからこそ、俺はもしかしたらシーマの部下がデラーズ・フリートのパイロットを……捕虜になった相手を殺したのではないかと、そのように思ったのだが……

 

「はい。そういうことは一切ありません。コックピットを開けた時にはもう死んでいました。手に拳銃を持っていたことから、自殺と判断しました」

「……そうか」

 

 兵士の言葉に、俺が出来るのはそうかと返すだけ。

 自殺をしたというのなら、その理由は何となく理解出来る。

 つまり、その兵士はデラーズに対してそれだけ深い忠誠心を抱いていたのだろう。

 やっぱりギレン信者であるというのはアレだが、能力そのものは間違いなくあるんだよな。

 それもカリスマ性もあるのが、今回の一件ではっきりした。

 ……まぁ、ジオン軍残党が連邦軍に捕まった時のことを思えば、どういう未来が待っているのかを理解し、尋問や拷問をされる前に潔く自決するといった可能性は十分にあったが。

 特に今は、サイサリスに乗ったニムバスがソロモンを狙っているくらいなのだから。

 ソロモンのどこからサイサリスが侵入して来るのか、現在デラーズはどこにいるのか、デラーズ・フリートの本拠地はどこなのか。

 兵士に尋問するような内容は幾らでもある。

 捕虜になった兵士にしてみれば、それらの内容をこちらに少しでも知らせたくはなかったのだろう。

 

「申し訳ありません」

 

 俺の様子を見たメカニックが、そう言い頭を下げてくる。

 俺はそんなメカニックに対し、首を横に振る。

 

「気にするな。別にお前が何かをした訳じゃないだろう? それに……もしかしたら、ここにコックピットを引っ張ってくる最中に自殺した可能性は十分にある」

 

 これは慰めている訳ではない。

 デラーズに強い忠誠心を抱いている者達にしてみれば、自分が捕虜になって情報を引き出されるよりも前に自殺をするというのは、そんなにおかしな事ではないのだから。

 そこまでの忠誠心を抱かれているデラーズ、か。

 本当に厄介な存在なのは間違いないな。

 

「ありがとうございます」

 

 そう言い、敬礼をするメカニックに仕事に戻るように言ってから、俺はどうするべきか考える。

 いや、どうするも何も、やるべき事は決まっているのだが。

 ソロモンに突撃しているデラーズ・フリートを撃退し、ニムバスの操縦するサイサリスを阻止する。

 ……ただ問題なのは、やはりどこにサイサリスがいるのか分からない事だろう。

 これでデラーズ・フリートの拠点について何か情報でもあれば、そっちに向かってデラーズがサイサリスを使ってどうソロモンの観艦式を襲撃しようとしてるのか分かるんだが。

 そもそも、デラーズ・フリート程の大きさの戦力の拠点が未だに不明ってのは……

 勿論、デラーズにしてみれば自分達の拠点について話す訳にはいかないだろうから、可能な限り隠していたのだろうが。

 拠点のある場所として考えられるのは……どこかにある小惑星を拠点としているのか、あるいは暗礁宙域に拠点を作っているか。

 どっちも普通にありそうなんだよな。

 それについてはソロモンの観艦式が終わってからの事か。

 今はまず、そっちを優先する必要があるし。

 とはいえ、俺の準備が万端であっても、ガーベラ・テトラの準備がどうしようもないのなら、意味はないんだが。

 現在、ガーベラ・テトラはメンテと補給、後はついでにデータ取りも行われている。

 このデータに関しては、ガーベラ・テトラ改の製造に活かされるらしい。

 そのガーベラ・テトラ改についても、サイサリスがソロモンの観艦式を狙っている以上、この戦いで使う事は出来ない。

 もっとも、ガーベラ・テトラの性能に不満がある訳じゃないから、構わないが。

 いやまぁ、本当に性能に不満がないかと言われれば、決してそんな事はなかったりする。

 ビームマシンガンの稼働時間とか、ビームガンの威力の低さとか。

 どっちも俺が採用して欲しいと頼んだ内容なのは、どうかと思わないでもない。

 いや、ビームマシンガンの稼働時間については、違うか。

 ただ、普通のビームライフルとしても使えるようにして欲しいと要望したのは事実なので、その辺の理由で稼働時間が当初の予定よりも短くなった可能性は否定出来ないが。

 そんな風に思っていると、ふと思いついてブリッジに通信を入れる。

 

「ブリッジ、アクセルだ。現在アルビオンの方はどうなっているか分かるか?」

『こちらに入ってる情報では、デラーズ・フリートの戦力を各個撃破しているという情報は来てますが、それだけです。サイサリス発見の報告はまだありません』

 

 映像モニタに表示された、通信担当のブリッジクルーがそう言ってくる。

 アルビオンはナスカ級の隣の宙域で活動している。

 本来ならナスカ級とアルビオンは同じ宙域で活動する予定だったのだが、この辺は連邦軍からの要望でそうなっていた。

 戦力が足りないので、仕方がないとは思う。

 とはいえ、観艦式をやれるだけの戦力があるのなら多少はこっちに回してもいいのでは? と思わないでもなかったが。

 いや、無理か。

 ソロモンで行われている観艦式は、当初こそ連邦軍の戦力の回復を色々な勢力……ルナ・ジオン、ジオン共和国、ジオン軍残党に見せつける為に、そして連邦軍の士気高揚の為に計画されていたのだが、サイサリスの奪取計画によって、それもサイサリスが宇宙に上がった事によって、デラーズ・フリートを誘き寄せる為の行事となった。

 連邦軍にしてみれば、誘き寄せる事すら出来れば対処をするのは可能だと、そう思ったのだろう。

 実際、その気持ちは分からないでもない。

 連邦軍にしてみれば、自分達にはそれだけの戦力があると思っているのだろうし。

 また、1年戦争で勝利をしたという自負もあるのだから。

 そんな中で、ジオン軍残党のデラーズ・フリートを相手に腑抜けた対応をするのは許容出来ないのだろう。

 ……ここで腰の抜けた行動をしたら、それはそれで他のジオン軍残党も活発に動き出す可能性は十分にあるし。

 

「そうか。出来れば早いところサイサリスの位置を把握したいところなんだけどな。デラーズ・フリートとの各個撃破は進んでいると思ってもいいのか?」

『アルビオンからの連絡によると、デラーズ・フリート……いえ、そこに合流しようとしているジオン軍残党の数がかなり多いようです』

「大々的に演説をしたしな」

 

 デラーズ・フリートの決起……アルビオンがゲールの部隊に襲撃され、ゼフィランサスが大破となった時に聞こえてきた演説について思い出す。

 ……とはいえ、デラーズ・フリートの決起の映像についてはともかく、一体どうやってソロモンを襲撃するという指示を他のジオン軍残党に伝えたんだ?

 デラーズ・フリートに合流した者達が作戦指示を聞いたのは分かる。

 だが、それを知らない……こうして、今合流しようとしている者達は、どうやってソロモンに集まるという指示を受けているのか、全く分からない。

 恐らくジオン軍残党だけの何らかの暗号とか通信手段とか……もしくは、いっそ伝令とかそういうのがいるのかもしれないな。

 どういう風に連絡を取っているのかはともかく、俺達にしてみれば決して好ましい事でないのは間違いなかった。

 

『そうですね。お陰で、うちやアルビオンだけじゃなくて、連邦軍の他の部隊もてんてこ舞いって感じですよ』

「だろうな」

 

 そう返すが、そこまで忙しいのならルナ・ジオンに正式に援軍を要請するなりなんなり……いや、無理か。

 ブリッジとの通信を切り、考える。

 この観艦式に強硬派はあまり噛んでいないらしいが、それでも幾らかは交ざっている。

 また、別に強硬派ではなくても、観艦式を行うと決めた者達にしてみれば、この観艦式は連邦軍の威勢を示す為の行事だ。

 そんな行事の警備を自分達だけでは出来ず、ルナ・ジオンに援軍を要請するとなると、それはこの観艦式を行った者達……大艦巨砲主義の者達の面目が丸潰れとなる。

 そうならないようにする為には、やはりここでは連邦軍だけで対処をしたいと、するべきだと、そのように思ってもおかしくはないだろう。

 ……それで観艦式をサイサリスのアトミックバズーカで台無しになされたら、意味はないと思うんだが。

 自分達なら、そして自分達が開発したバーミンガムがあれば問題はないと思っているのだろう。

 実際、ゲール達との一件でバーミンガムを間近で見た感想としては、戦艦としてはマゼラン級よりも間違いなく上だというのが理解出来た。

 指揮を執りつつ援護射撃をするという使い方をするのなら、悪くはないかもしれないとは思う。

 思うのだが、それでもやはりこのUC世界においてMSの運用能力がない軍艦というのは、戦力として期待出来ないという思いがある。

 旧式の軍艦であれば……まだMSが使われていなかった頃の軍艦の場合ならMSを使えなくても仕方がないと思うものの、1年戦争後に新しく開発された軍艦がバーミンガムというのは……まぁ、どんな戦力も使い方次第という面があるのも間違いない。

 そういう意味では、バーミンガムも工夫をすれば使い道はあるのだろう。

 それに……ルナ・ジオン軍に所属している――事になっている――俺が言うのもなんだが、ルナ・ジオンの兵器開発メーカーであるディアナは、MSの開発能力は高いものの、軍艦の開発能力は決して高くはない。

 求める水準が高いからというのもあるのだろうが。

 何しろ、ルナ・ジオン軍で使うMSは高性能だし、腕利きも多くいる。

 そう考えれば、そのMSを運用する為の軍艦に求める性能が高くなるのも当然の話だった。

 結果として、SEED世界においてザフトが使っていたナスカ級のデータを使い、それをこのUC世界において使いやすいように改修して開発したのが、このナスカ級だ。

 高速巡洋艦……分類としては巡洋艦と一緒だと思ってもいいこのナスカ級とは違い、戦艦の類となるとまだ開発はされていない。

 グワジン級をベースに新型艦を開発しているとは聞くが……それでも、まだ出来ているとは聞いていない。

 そう考えると、連邦軍の大艦巨砲主義の者達がこのバーミンガムを設計し、製造し、既にこうして運用しているのは素直に凄いと思う。

 大艦巨砲主義の者達の趣味が全開になった結果なのだろうが。

 バーミンガムは、連邦軍で使われている戦艦のマゼラン級とも外見は大きく違う。

 これが、例えばマゼラン級を少し改修した程度なら、俺もそういうものかと納得は出来るのだが……そうではないのだ。

 それは素直に大艦巨砲主義の者達の熱意が凄いものだと、そう思う。

 これで素直にMS運用艦としてバーミンガムを設計していたら、それを参考にディアナでも戦艦を作るなんて事になっていたかもしれないが。

 そんな風に思っていると、不意にメカニックがこっちにやって来るのが見えた。

 

「アクセル中尉、ガーベラ・テトラの整備と補給作業、終わりました!」

 

 メカニックが予想通りの事を口にするのを聞きながら、頷きを返す。

 

「分かった。メギロートとバッタの方も問題はないか?」

「バッタの補給作業は終わっています。メギロートも、特に異常はありません」

「なら、早速出撃するか。……ちなみにだが、ガーベラ・テトラの方も問題はないんだな? 特に関節部分」

 

 一応、念の為にそう聞いておく。

 ガーベラ・テトラの操縦をするときはかなり手加減をして操縦をしているものの、それを込みで考えても機体の……特に関節部分に負荷が掛かる可能性がある。

 これが量産されているMS、各種データが豊富に揃っているのならともかく、ガーベラ・テトラは現在のところ1機だけしか作られていない。

 ただ、性能的には文句ないし、試作4号機の面影もないから……ガーベラ・テトラ、あるいはガーベラ・テトラ改辺りは、もしかしたらギャン・クリーガーに代わるエース用のMSになるかもしれないな。

 

「はい、関節部分も特に問題はありませんでした」

 

 そう言うメカニックの言葉に頷き、俺は再び出撃の準備を整えるのだった。

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