転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4210話

 コックピットを貫かれたサイサリスは、そのままの状況で宇宙空間を漂い……やがて爆散する。

 これでニムバスを倒したのか?

 これで本当に倒したのかどうか疑問に思い……

 ステータスを確認すると、撃墜数が1上がっていた。

 これはつまり、間違いなく俺がニムバスを倒した……殺したという事を意味している。

 なんというか……激戦だったのは間違いないものの、本当にこれで終わったのか? といった疑問が俺の中にある。

 いやまぁ、サイサリスの核弾頭を使ってソロモンの観艦式に参加した連邦軍に大きなダメージを与えたのは間違いない。間違いないが……うーん。

 そもそもニムバスを倒したのはいいものの、サイサリスを使った核攻撃は防げなかった訳だし。

 そう考えれば、今回の戦いはこっちの負けだと思っても間違いないではない筈だ。

 そんな疑問を抱いていると、ジム・キャノンⅡが1機こちらにやってくる。

 識別から見て、キースの乗っているジム・キャノンⅡか。

 

『アクセル中尉? さっきの爆発は……』

「サイサリスを撃破した時の爆発だよ」

『え? じゃあ、コウが……アクセル中尉、コウはどこです!?』

 

 キースのその言葉で、俺はそう言えば……とウラキについて思い出す。

 ウラキについては、ニムバスの攻撃によって大きなダメージを受けている。

 ……とはいえ、そこまで心配する気にならないのは、本来ならウラキが俺と協力して戦っていれば、もっと簡単にニムバスに勝つ事が出来たからだろう。

 だが、ウラキはニムバスを前に感情が爆発していたのか、俺と協力して戦うという言葉を怒鳴りつけて拒否してきた。

 それでウラキが勝っていればまだ格好もついたのだろうが、実際にはウラキは左腕が動かないサイサリスを操縦するニムバスにいいようにやられてしまう。

 ウラキが一方的にやられた訳ではないのは間違いないが。

 実際に俺がここに到着するまでの間は、ニムバスの操縦するサイサリスとそれなりにやり合えていたのだから。

 あるいは、俺が来たことでニムバスとの勝負に割って入られると勘違いし、それを嫌がって俺に手を出すなと叫んだのかもしれないな。

 

「あそこだ。……取りあえず今は無事だから、早いところアルビオンに連れていくといい」

『コウぅ……分かりました。じゃあ、これで失礼します。すぐコウをアルビオンに連れていきたいので。……それで、アクセル中尉はどうするんですか?』

 

 俺がどうするか、か。

 もう少しここで色々と考えたいところではあるのだが……そうすると、シーマ達を心配させてしまいそうだな。

 アルビオンから連絡を入れて貰えば問題はないんだろうが、出来れば自分の口で報告をしたい。

 そう判断すると、キースの通信に答える。

 

「俺はナスカ級に戻る。観艦式を攻撃されたのは間違いないが、同時にサイサリスを撃破してニムバスを殺したのも事実だ。つまり、一連の事件はこれで終わったという事になる」

 

 そう言うものの、俺の中には本当にこれで終わったのか? といった疑問があるのも事実だった。

 表面的なところだけを見れば、今回の一件で終わったのは間違いないだろう。

 それは俺にも理解出来る。

 理解出来るのだが、やはり俺の中に本当にこれで終わったのか? という疑問があるのも事実。

 普通に考えれば、ニムバスが死んでサイサリスも撃破されたのだから素直にこの戦いは終わったと、そう思ってもおかしくはないのだが、何故か俺の中ではそう思えない。

 ……この辺については、ここで俺が考えても意味はないか。

 ナスカ級に戻って、シーマと話をすればその辺も分かるかもしれない。

 あるいは、もしデラーズ・フリートの行動が本当にこれで終わらない場合、何らかの情報が入ってくる可能性もあるし。

 

『分かりました。じゃあ、コウは連れて行きますね!』

 

 慌てた様子で、キースのジム・キャノンⅡは中破……大破? とにかくもう動く様子がないフルバーニアンを掴み、この場を飛び去る。

 キースにしてみれば、少しでも早くウラキの怪我を見たいのだろう。

 ……にしても、ウラキか。

 今は気絶してるようだからいいけど、目が覚めたらどうなるんだろうな。

 ウラキにとっては宿敵と呼んでもいいニムバスを、結局は自分で倒せなかった。

 その上で俺に助けられ、何とか生き延びたのだ。

 目が覚めた時、その事を思い出したウラキがどう反応するのか。

 俺に突っ掛かってくるような事はないと思いたいが。

 ニムバスとの戦闘中の態度は、戦闘の興奮の中で俺が出て来たからああいう事を言ったんだろうし。

 そうなると、ウラキの性格を考えると……落ち込むとか?

 ラルの訓練を受けたのを思えば、そこまで心配しなくてもいいとは思うけど。

 そんな風に思いつつ、俺もナスカ級に戻るのだった。

 ……ちなみに、シュツルム・ブースター・ユニットとガルバルディβのビームライフルは一応回収しておいた。

 

 

 

 

 

「じゃあ、整備と補給は頼んだ」

「はい、分かりました」

 

 メカニックにそう言うと、俺はナスカ級のブリッジに向かう。

 シュツルム・ブースター・ユニットは損傷したりした場所はなかったので、特に問題はないらしい。

 もっとも、シュツルム・ブースター・ユニットを新たに使うような事になるかどうかは……正直、微妙なところではあるが。

 俺の中にある、嫌な予感。

 これが偶然そんな風に思っているだけか、あるいは本当に何か……念動力によってそのように感じているのか。

 それは俺にも分からなかったが、だからこそまずはその辺りをはっきりさせる必要があるのも事実だった。

 まぁ、具体的にどうすればいいのかというのが分からないのはどうかと思うが。

 

「アクセル、どうやら戻ってきたようだね。ニムバスのサイサリスを撃破したって聞いたけど、本当かい?」

 

 ブリッジに向かう途中、何かの飲み物を飲んでいたシーマと遭遇する。

 戦いというのは、集中力が必要になり、激しく汗も掻く。

 その為、ナスカ級の中では自販機が無料で使えるようになっていた。

 勿論、無重力状態であっても問題なく飲めるようになっている飲み物だが。

 スポーツドリンクや各種お茶、後は紅茶も用意されている。

 ……もっとも、飲みすぎて戦闘中にトイレに行きたくなったりした場合はトイレパックを使う必要があるので、戦闘後はともかく戦闘前にそこまで大量に飲む者はいなかったが。

 

「出来れば、観艦式で核兵器を使う前にどうにかしたかったんだけどな」

「アクセルならそう言うかもしれないけど、せめてもの救いは観艦式は連邦軍の行事だった事だろうね。これで、ルナ・ジオンに核兵器を使われるなんて事になったら、洒落にならないだろうし」

「その場合は、それこそ無人機が大量に使われるだろうから、対処は出来るだろうけどな」

 

 連邦軍も観艦式においては、防衛戦力を十分に用意していた。

 だが、それでも足りなかったのは間違いない。

 サイサリスの姿を捉えた無人砲台の類も相応に配備していたのだろうが、それでも足りなかった。

 あるいはここは、そんな中でも観艦式の襲撃を成功させたニムバスとデラーズ・フリートを褒めるべきか。

 

「そうなったら、寧ろ楽だったかもしれないね」

「シーマの言葉は否定しない。……さて、それで少し話題は変わるんだが、デラーズ・フリートの一件、これで終わったと思うか?」

 

 俺の問いに、シーマは微かにその美貌を歪ませる。

 

「アクセルがそう聞いてくるということは、アクセルにしてみれば一連の事件はまだ終わってないと思えるのかい?」

「そうだな。デラーズも結局まだ見つかってないし」

「でも、今回の観艦式の一件でデラーズ・フリートが受けた被害は大きい筈だよ? そんな状況で、まだ何か行動に出られると、そうアクセルは言いたいのかい?」

「前に俺達が予想した……キシリアが今回の件に協力してるのは、デラーズ・フリートの戦力を吸収する為というのがあっただろう?」

 

 そう言うと、シーマは頷く。

 まだはっきりと証拠がある訳ではないが、恐らくそれがキシリアの目的だろうと思っていた。

 そういう意味では、今回の一件でデラーズ・フリートの戦力を相応に消耗させ、残っている戦力を引き入れると考えればおかしくないのだろうが……

 

「デラーズがまだ生きているというのが、納得出来ない」

「言われてみればそうかもしれないね」

 

 改めて言うまでもなく、デラーズとキシリアは天敵と呼ぶに相応しい関係だ。

 それこそ、キシリアとデラーズにそれぞれの考えがあるとはいえ、一時的に手を組んでいるのが理解出来ないといった程に。

 お互いがお互いの狙いをどこまで知った上で手を組んでいるのかは、俺も分からない。

 分からないが、それでもデラーズが生きている状態でデラーズ・フリートの戦力をキシリアに渡すか?

 デラーズの性格を少しでも知っていれば、それに対して否と答えるだろう。

 それだけに、今回の観艦式の一件で全てが終わったとは思えないのだ。

 

「じゃあ、まだデラーズ・フリートの行動は続いているってのかい? けど、戦力は……」

「俺もそれについては気になっている」

 

 デラーズ・フリートにおいて、恐らくは最強だったニムバスと、最新鋭MSのサイサリスは双方共なくなった。

 そうなると、デラーズ・フリートにまだ他に何らかの行動を起こせる戦力があるのか。

 ……それとも、俺が勘違いしていただけで、デラーズ・フリートの戦力は思ったより多いのか。

 

「もしアクセルの杞憂が正しければ、一体何が起きているのかだね」

「そうなるな。ただ、これから何をするにしても、まずは一度月に戻って整備と補給をする必要があるが」

 

 ガーベラ・テトラはダメージらしいダメージは受けていないものの、ニムバスとの戦いで結構強引な操縦をした。

 そうなると、機体そのものにダメージはなくても、関節部分に疲労が蓄積している可能性がある。

 また、シーマの操縦するギャン・クリーガーも損傷はなかったが、部下の中には何機か小破程度のダメージを受けている者もいた。

 その機体の修理は、勿論ナスカ級でもある程度出来るだろう。

 だが、月に戻ればより充実した設備で修理が出来るので、結果的に修理の速度も精度もナスカ級でやるよりも上となる。

 ……ナスカ級のメカニックがそれを聞けば、面白くないと不満に思う可能性はあったが。

 ともあれ、修理や整備、補給以外にも情報を集めるという意味でも月に戻った方がいいのは間違いない。

 

「そうだね。私もその意見には異論がないよ。上に今回の一件の報告をする必要もあるし」

「あー……まぁ、それは必要だろうな」

 

 ルナ・ジオンも連邦軍に援軍を出した以上、詳細な状況については知りたいだろう。

 ましてや、その援軍にはセイラとはまた違う、ルナ・ジオンの象徴であるシーマがいるのだ。

 少し聞いた話だと、シーマは宇宙の蜉蝣という異名持ちに相応しく、多数のデラーズ・フリートのMSを撃破したらしい。

 シェキナーを最大限活用したらしいな。

 それこそ、普通のパイロットなら体力が限界に来てもおかしくはないような戦いだったらしいし。

 もっとも、シーマもホワイトスターで生身での戦闘訓練を行っており、魔力をそれなりに使いこなせるようになっているので、魔力を使った身体強化をしている。

 そのお陰で、生身よりも対G能力はかなり強くなっているのは事実だ。

 勿論、まだ身体強化については発展途上らしいと、エヴァからは聞いてるが。

 ……そもそも、エヴァが満足するというのは一流とかそれ以上くらいのような気もするが。

 とにかく、今の状況でこの宙域にいても意味はない。

 いやまぁ、観艦式で受けた被害を考えれば、少しでも助けの手は必要かもしれないが……アルビオンはともかく、俺達が救援に向かうのはソロモン側でも断るだろう。

 そんな事を考えながら、俺はシーマと2人でブリッジに向かう。

 ブリッジなら、ここにいる俺やシーマには分からないような何らかの情報を手に入れている可能性もあるし。

 具体的にそれがどんな情報なのかというのは、ちょっと分からないが。

 

「それにしても……こうしてアクセルと2人でいるのを知られると、他の連中に怒られそうだね」

 

 この場合の他の連中というのは、モニク、クスコ、クリスのUC世界の3人の女達だろう。

 

「怒られる時は俺も一緒に怒られるから安心しろ。それに今回の一件はイチャついているだけじゃなくて、デラーズ・フリートの一件を解決する為だろう?」

「女の嫉妬は恐ろしいんだよ」

「それは知ってる。……長ネギは抜きで頼む」

「……長ネギ?」

 

 俺の言葉の意味が分からないといった様子のシーマ。

 そんなシーマと共にブリッジの前に到着し、ブリッジの扉を開けると……

 

「何ぃっ! コロニージャックだと!? しかも2基!? おまけに……ラビアンローズまで占拠されただぁっ!?」

 

 コッセルの怒声が……聞き逃せない内容が、俺の耳に入ってくるのだった。

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