転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4211話

 今回の作戦の母艦であるナスカ級。

 そのブリッジに入った瞬間にコッセルの怒鳴り声が聞こえてくる。

 いや、それはいい。……よくはないが、取りあえず今の状況で気にするべきはそこではない。

 今、コッセルは何と言った?

 コロニージャックがあり、それだけではなくラビアンローズまでもが敵に占拠されたと、そう言ったように思えたのだが。

 

「うるさいよ! 一体何があったんだい、しっかりと説明しな!」

 

 ブリッジの入り口でシーマがそう叫ぶ。

 それを聞いたブリッジクルーの面々は、どうやらそこで初めてシーマがブリッジに戻ってきていたということを知ったらしい。

 

「シーマ様!」

「……何があったのかは、さっきのコッセルの叫びで理解している。けど、コロニージャックとラビアンローズの占拠については本当なのかい?」

 

 シーマの言葉にブリッジは静まる。

 この辺りのカリスマ性はさすがだよな。

 やがてその静寂を破るようにコッセルが口を開く。

 

「はい。アルビオンからの情報なので、向こうが間違っていないのなら正しい情報かと」

「アルビオンから? ……なるほど、律儀だねぇ」

 

 シーマの言葉に、俺も同意するように頷く。

 アルビオンからという事は、これはシナプスからの情報なのは間違いないだろう。

 そして……サイサリスを使った観艦式の襲撃は、盛大な陽動だった訳だ。

 俺の嫌な予感が見事に当たってしまった形だな。

 ……出来れば当たって欲しくなかったんだが。

 

「さて、アクセル。この状況でデラーズ・フリートは何を企んでいると思う?」

「ギレン信者のデラーズがコロニー2基をジャック……つまり確保した。そうなると、考えられる可能性としてはコロニー落としだろうな」

「……だろうね」

 

 苦い……心の底から苦い表情でシーマが俺の言葉に頷く。

 無理もないか。

 シーマにとって、コロニー落としはトラウマだ。

 俺や他の皆と一緒の夜を楽しんだ後はそうでもないが、シーマが1人で眠っている時は悪夢を見て跳び起きる事もあるという。

 だからこそ、コロニー落としという言葉を俺の口から聞いて苦い表情を浮かべたのだろう。

 

「とはいえ、コロニー2基はそれでいいとして、ラビアンローズは何の為に奪ったんだい?」

 

 コロニー落としについてのトラウマを無理矢理抑え、シーマがそう聞いてくる。

 それは俺も疑問に思っていたところだ。

 とはいえ、考えられる理由はある。

 

「ラビアンローズでは、ガンダム開発計画の試作三号機、デンドロビウムの開発が行われていた」

「……つまり、それが目当てだと?」

 

 シーマの言葉に、ブリッジにいる面々が驚く。

 とはいえ、俺にとってはそこまで驚くような事ではない。

 

「忘れてないか? 今回のデラーズ・フリートの一件も、元々はニムバスがサイサリスを……試作2号機を奪った事から始まっている。それに……オービルというスパイがアナハイムにはいたんだ。ラビアンローズで開発しているデンドロビウムの情報をデラーズ・フリートが持っていてもおかしくはない」

 

 1度ガンダム開発計画のMSを奪って自分達の戦力としているデラーズ・フリートだ。

 2度同じ事をしたとしても、俺は驚かない。

 いや、寧ろ納得すらしてしまう。

 

「とはいえ、分からない事があるけどな」

「……具体的には?」

「誰がデンドロビウムを使うか。俺が乗ったのはデンドロビウムでコアユニットとなるステイメン……それもシミュレータだけだから何とも言えないが、デンドロビウムの開発を行っていたルセットから聞いた話によると、デンドロビウムの操縦はかなり複雑らしい。それこそ、生半可なパイロットは操縦出来ないくらいにはな」

 

 ゼロ・ジ・アールのように、オートの操縦を前提とした作りになってる訳でもないらしいしな。

 この辺は技術力不足……もしくはガンダム開発計画を進めてきたコーウェンからの要望か?

 ともあれ、オート操縦が出来ないという事は自分で全てを操縦する必要があるのだ。

 

「そんな扱いが難しいMS……MA? まぁ、ガンダム開発計画の機体だし、一応MSという扱いにしておくが、デラーズ・フリートのパイロットにそんなデンドロビウムを操縦出来る奴がいるのか?」

「それは……まぁ、そうだね」

 

 シーマも俺の言いたい事を理解したのか、納得した様子を見せる。

 デラーズ・フリートには、俺が知ってる限り……というか、表に出ている者達の中で異名持ちは勿論、エース級もいない。

 せいぜいがベテラン……もしくは準エースといったところだろう。

 そんな者達では、とてもではないがデンドロビウムを操縦が出来るとは思えなかった。

 

「つまり、俺達が知らない腕利きのエースがいる……のかもしれないな」

「ラビアンローズを襲撃したと考えれば、その可能性が高いだろうね。……とはいえ、それなら何故トリントンでサイサリスを奪ったのがそのエースじゃなかったのかは疑問だけど」

 

 シーマの言葉は俺にも納得出来るものだった。

 デラーズ・フリートにエースがいるのなら、わざわざニムバスにサイサリスを奪わせなくても、そのエースに動いて貰えばいいと思うんだが。

 ……もっとも、もしそのエースが本当にいたとして、そのエースがサイサリスを奪っていたら、先程の戦いで死んでいたのはニムバスではなくそのエースだった。

 もしくは、そのエースの行動こそがデラーズ・フリートの本命。

 そう思ってもいいのかもしれないな。

 

「とにかく、まずは月に戻って補給と整備は必要だろうな。……とはいえ、アルビオンはどうするんだ?」

 

 アルビオンは言うまでもなく連邦軍の所属だ。

 補給なりなんなりをするのに、ルナツーやフィフス・ルナ辺りに、あるいはどこかのコロニーに寄って補給をする必要があるだろう。

 月に来れば補給についても万端なのだが、曲がりなりにも連邦とルナ・ジオンは別の国だしな。

 フルバーニアンの一件の時は月に寄ったので、今更の話かもしれないが。

 ……にしても、フルバーニアンか。

 サイサリスとの戦いによって、フルバーニアンが受けたダメージは大きい。

 それこそ修理してすぐに出撃といった事はまず無理だろうと思えるくらいには。

 そう考えると、ウラキが次の戦いに参加するのはまず無理だろうな。

 そもそも、MSもないし。

 いや、MSについては最悪ガルバルディβやギャン・クリーガーを貸すといった事も出来るから、それはそれで構わなかったりするんだが。

 とにかく、どうするのかはアルビオンの艦長であるシナプスに聞いてみた方がいいのは間違いなかった。

 

「そうさね。取りあえず一緒に来て貰うのが色々と楽なのは間違いないね。それに……デラーズ・フリートの一件を考えると、私達が行動するにもアルビオンは必要だろうし」

 

 シーマの言葉は、ある意味でアルビオンを通行許可証代わりに使おうとしているというものだった。

 とはいえ、実際俺達がこうして行動しているのはアルビオンの援軍という立場があってこそのものだ。

 そうである以上、どのように行動するにしろ、アルビオンがいた方がいいのは間違いのない事実でもあった。

 もっとも、デラーズ・フリートはラビアンローズに手を出した。

 そしてラビアンローズは連邦軍に一時的に使わせてはいるものの、アナハイムの所有なのは間違いなく、アナハイムはルナ・ジオンの企業だ。

 そう考えれば、デラーズ・フリートはルナ・ジオンにちょっかいを出してきた事を意味しており、その奪還にルナ・ジオン軍が動いても特に問題はなかったりするんだが。

 それに……ラビアンローズの件はともかく、2基のコロニージャックをしたとなると、その2基のコロニーを落とす場所として地球が一番可能性が高いだろうが、月もまた十分にその可能性はある。

 何しろデラーズ・フリートにしてみれば……いや、ジオン軍残党にしてみれば、1年戦争中にルナ・ジオンなどという国をつくり、ジオン公国から多くの者達を引き抜いたのだから。

 1年戦争でジオン軍が負けた理由はそこにあると思ってもおかしくはない。

 それに1年戦争後半にルナ・ジオン軍は連邦軍と手を組み、ジオン軍と戦った。

 そういう意味では、ジオン軍残党にしてみればルナ・ジオンというのは、場合によっては連邦軍よりも憎むべき相手として認識されてもおかしくはないのだ。

 そこまで憎まれている以上、デラーズ・フリートがコロニー落としの標的として月を選ぶというのは、そこまでおかしな話ではない。

 ……だからといって、成功するかどうかはまた別の話だが。

 コロニーレーザーやジェネシス、リーブラ、バルジといった戦略兵器と呼ぶに相応しい兵器が月の周辺には設置されている。

 それこそコロニーを攻撃すれば撃破出来るだろうと容易に予想出来るだけの戦略兵器の数々が。

 それらがあれば、もしデラーズ・フリートが月にコロニー落としをしようとしても、そのコロニーが月に落ちる前に破壊する事が出来る。

 不幸中の幸いと言うべきか、デラーズ・フリートにジャックされた2基のコロニーは移送中のコロニーだ。

 ……それも1年戦争によって再編されたサイドに運ぶコロニーで、まだ中に住人がいないのは不幸中の幸いだろう。

 あるいはコロニー公社の人間がコロニーの調整とかそういうのでコロニーの中にいる可能性は否定出来ないが、そのくらいの人数なら脱出するのも不可能ではないだろうし。

 ともあれ、コロニー落としにトラウマを抱えているシーマがこの作戦に参加する上で、コロニーの中に人がいないのはこちらにとっても随分と助かる事なのは間違いない。

 

「シーマ様、タイミングが良いというか何というか……アルビオンからの通信です」

 

 コッセルが俺と話しているシーマにそう声を掛けてくる。

 俺じゃなくてシーマに声を掛ける辺り、古参のシーマの部下らしいよな。

 人によってはコッセルの態度は不愉快に思うかもしれないが、俺にしてみればそう不愉快な事ではない。

 

「こっちでもある程度情報を纏めたと思って連絡をしてきたのかね。……出しな」

 

 その言葉と共に、ナスカ級のブリッジにあるメインモニターにシナプスの顔が映し出される。

 シナプスは前置きもなく、口を開く。

 

『時間もない事だし、単刀直入に聞かせて貰おう。ルナ・ジオンとしては現在の状況をどう思っているのかね?』

「コロニー落としだろうね」

『……やはりか』

 

 シナプスはシーマの言葉に短くそう答える。

 その辺はシナプスにも理解出来ていたのだろう。

 まぁ、ジオン軍残党が移送中のコロニーをジャックしたのだ。

 他にどんな使い方があるのかと言われると……まさか、自分達の拠点にする為にコロニーを奪ったなんて事はないだろうしな。

 

「それ以外にはちょっと考えられないだろう?」

『うむ。……では、ラビアンローズは?』

「普通に考えれば、ガンダム開発計画の機体……デンドロビウムだったかい? それが目当てだろうね。元々がサイサリスを奪ったデラーズ・フリートだ。それを思えば、1度目が上手くいったんだから、2度目も……そんな風に思ってもおかしくはないと思うよ?」

『なるほど、私も同意見だ』

 

 シナプスもどうやらシーマと同じ結論にいたったらしい。

 当然ではあるが。

 何しろシナプスはガンダム開発計画に関係している軍人の中でも相応の地位にあるのだから。

 つまり、以前ルセットから軽く説明を受けた程度の俺と比べても、より詳細にデンドロビウムについての情報を持っていてもおかしくはない。

 そうなると、デンドロビウムが拠点防衛や拠点攻略向きの機体であるというのも知ってる。

 つまり、コロニー落としで使うコロニーの防衛を目的としていると言われても、それに素直に納得出来てしまう。

 

「私達はラビアンローズに手を出された以上、その奪還に動く可能性もある。アルビオンはどうするんだい?」

『……同行させて欲しい』

「おや、独断でそれを決めてしまってもいいのかい?」

『ガンダム開発計画に携わる者としては、当然だろう』

 

 そう言うシナプスの表情には、強い決意が込められていた。

 これがもっと自分の利益だけを考えるような人物なら、コーウェンに連絡をするなりして、自分が美味しい思いが出来るように行動するだろう。

 だが、幸か不幸かシナプスは自分で判断をしたらしい。

 それが悪いとは言わないが。

 もっとも、俺の目から見てもそれが自殺行為……とまではいかないが、それでもシナプスの軍歴に決して小さくない傷を付けるのは予想出来る。

 とはいえ、独断専行によってコロニー落としを防げたりすれば、傷どころか勲章ものではあるだろう。

 

「分かったよ。じゃあ、補給と整備はこっちで手を打つ。……ちなみに、フルバーニアンに乗っていたパイロットの調子はどうだい?」

『……恐らく次の戦いに出るのは難しいだろう』

 

 シナプスの言葉に、どうやらウラキの怪我は俺が思ったよりも重傷だったのかもしれないと、そう思う。

 単純にニムバスを自分で倒せずに落ち込んでいるだけという可能性も否定は出来ないが。

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