転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4212話

 アルビオンと合流したナスカ級は、早速月に向かった。

 コロニージャックはともかく、ラビアンローズは出来るだけ早く奪還した方がいいと思うのだが……何をするにしても、補給と整備は必要だ。

 ソロモンの観艦式を狙ったデラーズ・フリートの攻撃によって、こっちも被害はともかく、弾丸の補給とかMSの整備とか必要だし。

 ……いざとなれば、それこそ俺がニーズヘッグでラビアンローズに向かうという方法もあるのだが、ニーズヘッグはこのUC世界においては一種のアンタッチャブルな存在となっている。

 1年戦争の時、月でキシリアの突撃機動軍をたった1機で勝利した……それも辛勝とかそういうのではなく圧勝したのを全世界に見せつけたのだから、もしニーズヘッグが出たとなると、それだけで連邦は大きな騒動になってもおかしくはない。

 ただでさえデラーズ・フリートの一件で混乱している連邦だけに、今のこの状況でそのようなことはさすがに出来る筈もなかった。

 もしコロニーが、それも2基も地球に落ちそうになったら、その時は相応の対処をするつもりではあったが。

 ともあれ、そんな訳で月に到着するや否やナスカ級に搭載されているMS、そしてアルビオンに搭載されているMSはすぐにでも補給と整備が始められた。

 勿論行われるのはそれだけではなく、次にどのように動くのか……具体的には、ジャックされた2基のコロニーとラビアンローズをどのように攻撃するかといった話し合いも行われてる。

 とはいえ、ラビアンローズの方は実際には既に戦力となるデンドロビウムが奪われた以上、もう役目はないだろうし、最悪――こっちにしては最善――の場合、ラビアンローズには既に戦力が残っていない可能性すらある。

 ソロモンの観艦式襲撃を陽動として、コロニージャックやラビアンローズの奪取といった作戦を進める戦力がデラーズ・フリートにあったのは予想外だったものの、それでもこれが限界なのは間違いないだろう。

 であれば、ラビアンローズを占拠しても、占拠し続ける必要があるのかとなる。

 いやまぁ、ラビアンローズはドック艦だ。

 デラーズ・フリートの運用している軍艦の整備や修理といった作業が出来るという意味では、かなり有益な存在であるのは間違いないが。

 ……となると、最悪ラビアンローズは奪われたコロニーを守る為のデラーズ・フリートの軍艦の整備や補給の為に2基のコロニーと一緒に移動していてもおかしくはない……のか?

 そんな風に思いつつ、俺の姿はこれからどうするのかといった相談をする場所ではなく、ディアナにあった。

 

「で? 作戦の立案じゃなくて、俺がここに呼ばれたという事は何か理由があっての事だろう?」

 

 俺の案内を任されているクリスが、その言葉に頷く。

 

「当然でしょう。わざわざこの状況でアクセルを呼んだのだから、相応の理由があるわよ。……でも、そうね。大雑把にだけど話しておいた方がいいかしら。まず、アクセルを呼んだ理由は二つあるわ。もっとも、一つはまだ中途半端な状態だけど」

「……中途半端?」

「見れば分かるわよ。……それに、アクセルの色々な意見も取り入れられているから、少しは嬉しいと思うし」

 

 そんな疑問を感じつつ、クリスに案内されてディアナの中を進み……やがて、とある格納庫に到着する。

 かなり厳重に管理されているらしく、指紋、声、眼球、静脈……他にも幾つかのプロテクトを突破し、ようやく扉が開く。

 

「随分と厳重だな」

「それはそうよ。ここで開発されているのは、ガーベラ・テトラ改なんですもの」

「それは……」

 

 以前から少し話は聞いていたし、メカニックからもそれとなく情報を流されていた。

 そのガーベラ・テトラ改がどうやらこの格納庫で開発中らしい。

 

「どんなMSなんだ?」

「ガーベラ・テトラでのアクセルの操縦データを活かした機体になってるわ」

「操縦データって……俺が月に戻ってきてから、まだそんなに時間は経っていないぞ?」

「それでも、操縦データは着々と集まってたのよ。それに、アクセルが乗ってるのは別にガーベラ・テトラだけじゃないでしょう? 今までアクセルが乗ってきたMSの操縦データもあるから、そっちも使ってるわ。大体、まだ完成はしていないし」

「……分かった。じゃあ、しっかりと見せてくれ」

 

 そう言うと、俺はクリスと共に格納庫の中に入っていく。

 そこにはディアナの技術者と思しき者達がそれなりにいたが、そんな中で真っ先に目に入ってきたのはMS……ガーベラ・テトラ改だった。

 とはいえ、まだ開発中という事で作っている最中のものだったが。

 それでもガーベラ・テトラと違う場所はかなり多い。

 例えば、ガーベラ・テトラ最大の特徴である、ショルダー・スラスター・ポッドだ。

 ガーベラ・テトラの場合は肩の部分に埋め込まれていた感じだったが、ガーベラ・テトラ改においては、肩から……そう、サイサリスのフレキシブル・スラスター・バインダーのように複数のスラスターがついたバインターを肩に装備している。

 また、肩から後ろの部分に掛けて、水平に……流れるようという表現が相応しいような追加のスラスターユニットがあり、腰の部分にはステイメンのテール・バインダーが……いや、ちょっと違うな。

 ステイメンのテール・バインダーはデンドロビウムとのドッキングガイドを兼ねる物だった筈だ。

 だが、実際にはテール・バインダーはAMBAC肢として大きな役割を果たし、それによってステイメンに高い運動性を与えたらしい。

 実際、以前ラビアンローズでルセットから勧められシミュレータでステイメンを使った時、かなりの運動性を持っていた。

 俺がやったのはあくまでもシミュレータであって、実機という訳ではない。

 実機ではもっと違う……場合によってはシミュレータよりも高い性能だったり、低い性能だったりしてもおかしくはない。

 そんなテール・バインダーだが、ガーベラ・テトラ改にある奴は違う。

 AMBAC肢として使えるのは間違いないようだったが、テール・バインダーに小さいながらも幾つかのスラスターがあり、先端は銃口がある。

 明らかに俺が知っているテール・バインダーではなかった。

 いやまぁ、まだガーベラ・テトラ改は完成していないので、そういう意味ではこれからまた何か変わるのかもしれないが。

 ガーベラ・テトラは何というか、無骨……というのとはちょっと違うが、決して派手な機体ではなかった。

 赤く塗られていた事もあり、そういう意味では少し派手だったかもしれないが。

 だが、このガーベラ・テトラ改は、まだ完成していないので断言は出来ないものの、恐らく……いや、間違いなく派手な印象を受ける。

 派手というよりも、華やかといった表現の方がいいか?

 

「アクセル、ガーベラ・テトラ改に目を奪われているのはいいけど、向こうの方も見て」

 

 ガーベラ・テトラ改を見ていた俺に、クリスがそう声を掛けてくる。

 そしてクリスの示す方向に視線を向けると、そこにはビームマシンガンがあった。

 ビームマシンガンそのものは、ガーベラ・テトラで使っているのと似ている。

 ただ……見た感じ、明らかにガーベラ・テトラで使っている物と比べて少しだが小さくなっているような?

 

「あれはビームマシンガンだよな?」

「ええ、ガーベラ・テトラで使っている奴を高性能化したのがあれよ。ガーベラ・テトラのビームマシンガンと同じく、ビームライフルとしても使える優れ物ね」

「それはまた……よくこの短時間で出来たな」

 

 ガーベラ・テトラのビームマシンガンもまた、最新鋭技術の塊だ。

 なのに、ガーベラ・テトラが完成してからそう時間が経っていないのに……いや、それはガーベラ・テトラ改が開発されている時点で今更の話か。

 

「ディアナの技術力を侮っては困るわね。私達もそれなりに頑張ってるんだもの」

「……まぁ、それはそうだろうな」

 

 元々、ディアナの技術力は非常に高い。

 そもそもの話、ルナ・ジオンを建国する時にジオン公国の兵器メーカーであるジオニック社、ツィマット社、MIP社といった3大メーカーから人を多くの者達を引き抜き、そのような者達を1つの会社として纏めたのだがディアナだ。

 当初はジオン公国の時のように複数のメーカーを作るのもありでは? という意見もあった。

 だが、複数のメーカーという扱いにしてしまうと、ジオン公国の時のような弊害が大きい。

 具体的には独自パーツを多用して、他のメーカーのパーツが使えないというのが非常に痛かった。

 前もって問題点が分かっているのだから、それを解決するようにすればいい……という意見があるのも分かってはいる。

 だが、それでも色々と不都合があるだろうと、前もって予想された。

 何しろジオン公国で行われた統合整備計画も、提唱されたのが0079年の2月だったのに、実際に採用……いや、運用されたのは1年戦争終盤、それこそゲルググが完成した頃となるのだから、3大メーカーの間でどれだけ難しいものだったのかは明らかだ。

 そういう事なら、最初から1つのメーカーにしてしまえばいいという事で、生み出されたのはディアナだった。

 もっとも、複数メーカーではなく1つのメーカーにしたという事で新たな問題が生まれる事も懸念されたのだが。

 例えば、兵器メーカーが1つなので、競争がなくなって兵器メーカーとしての質が落ちるとか。

 その辺はディアナの中に複数の部署を作る事で対処したのだが。

 ……その結果、軍艦を作る部署は色々と手こずったりしているようだったが……それはそれで、仕方がないのだろう。

 

「ん? 待てよ、ビームマシンガンの性能が上がったということは、手首のビームガン兼ビームサーベルは……?」

「そっちも強化はされてるわ。もっとも強化されているとはいえ、こっちも新技術でそこまで手が回らなかったから、ビームガンの威力が増したのは間違いないけど飛躍的に……それこそビームマシンガンを撃つような時と同じ距離で撃っても意味がないけど」

「つまり、強化はされたがそこそこってところか?」

「そうなるわね。それでも至近距離……ゼロ距離じゃないと効果が出なかったガーベラ・テトラの物と違って、中距離……というのは少し言いすぎかもしれないけど、近距離の中でもある程度の距離……そうね。ビームサーベルを振るうよりも少し外側と言った方がいいかしら? そのくらいの距離でならビームガンも相応に効果がある筈よ。……あくまでもまだ完成はしてないから、理論上はの話だけど」

「具体的に、いつ完成する?」

「……そうね。頑張れば15日……いえ、10日くらいかしら」

 

 クリスがそのように言うという事は、本来ならまだ20日、あるいは1ヶ月くらいは掛かってもおかしくはないのだろう。

 もっとも、10日から15日掛かるとなると、どのみちデラーズ・フリートとの戦いには間に合わない。

 今日明日はパイロットの休憩とMSの修理、補給、整備といった事をする必要があるものの、それが終わったらすぐに出撃する事になるのだから。

 そうなると、ガーベラ・テトラ改についてはとてもではないが間に合わないだろう。

 また、もしロールアウトが何とかなっても、俺が操縦する用に相応に設定の調整を行ったりする必要があるし。

 だからこそ……

 

「次の戦いには間に合わない、か」

「アクセル? どうしたの?」

「いや、ガーベラ・テトラに不満がある訳じゃないが、どうせなら次の戦いにガーベラ・テトラ改で挑みたかったと思ってな。何しろ、同時に2基のコロニー落としが行われるかどうかの瀬戸際だ。乗っている機体が高性能なら高性能な方がいいだろうし」

「ああ、その件ね。それについてはガーベラ・テトラ改の案内が終わった後で話す予定だったけど……そっちの方も心配しないでちょうだい」

「クリス? 何かあるのか?」

「あるけど、まずはこっちの話の続きよ。テール・バインダーについては、さっきアクセルも見ていたけど」

 

 そっちの話を続けるのか。

 そうも思ったが、ガーベラ・テトラ改に興味があるのは間違いなく、そういう意味ではクリスの説明が楽しみなのは間違いない。

 

「それで?」

「アクセルが以前気に入ったと言っていたテール・バインダーを、複合兵装にしたの。……好きでしょ、こういうの?」

「大好物だ」

 

 クリスの言葉にそう返し、改めてテール・バインダーを見る。

 先程も見て、大体の機能については理解しているが、改めてクリスからの説明を聞く。

 

「テール・バインダーは、AMBAC肢、スラスター、110mm機関砲が一緒になった複合兵装よ」

「……あれ、110mm機関砲なのか?」

「ええ。ガーベラ・テトラ……そしてガーベラ・テトラ改でも使われている110mm機関砲と同じ武装よ」

「それはまた」

 

 110mm機関砲はかなりの威力があり、頭部バルカンとかと違って普通にMSを撃破出来るだけの威力を持つ。

 それが左右の腕とテール・バインダーで合計4門……これだけで凶悪な威力を持つのは間違いない。

 

「ちょっと話は変わるけど、シュツルム・ブースターもガーベラ・テトラで使われていた奴よりも小型化されて、その代わりガーベラ・テトラ改の背中に固定装備されるから」

 

 そう言うクリスの言葉に、俺はマジかと呟くのだった。

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