転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4215話

「は? マジか?」

「うむ。……してやられたよ」

 

 アルビオンの艦長室において、シナプスが苦い表情でそう言う。

 ノイエ・ジールのテスト運用が終わり、月に戻ってその調整も完了し、いざコロニーを奪取しに……と考えていたところで、シナプスからアルビオンに来て欲しいという連絡があった。

 その為、俺とシーマはこうしてアルビオンの艦長室に来たのだが……そこで話を聞いたのが、ソロモンの連邦軍が見事に嵌められたという話だった。

 シナプスのその話を聞いていたのは、俺とシーマ以外には、MS隊を率いるバニングと、アナハイムからという事でニナ。

 正確にはニナはアナハイム云々というより、技術的なアドバイスを欲しいというものだったのだが。

 ともあれ、そんな俺達に対してシナプスが言ったのは、その言葉通り連邦軍がしてやられたという事だった。

 デラーズ・フリートが行ったコロニージャック。

 それが何を意味しているのか……最悪の場合はコロニー落としなのは間違いなく、それを止める為にソロモンからは連邦軍が出撃していた。

 ソロモンで行われた観艦式はニムバスの奪取したサイサリスによって大きなダメージを受けたのは間違いない。

 だが同時に、それでダメージを受けたのはあくまでも観艦式に参加していた連邦軍だけで、ソロモン内部に残されていた戦力は無事だった。

 それも当然か。

 1年戦争の時に行われたソロモン攻略作戦……チェンバロ作戦においてソーラ・システムが使われ、今回のようにソロモンの外に展開していたジオン軍の戦力は大きなダメージを受けたし、ソロモンも焼かれた。

 だが、ソロモンで焼かれたのはあくまでも表面だけだ。

 ……まあ、表面近くにあった格納庫とかは大きなダメージを受けたらしいが。

 それと同じ……同じ? 核兵器とソーラ・システムを一緒にするのはどうかと思うが、とにかくソロモン内部にある戦力はその多くが無事だったらしい。

 で、コロニージャックの話を聞いたソロモンの司令部はすぐにソロモンの戦力をジャックされたコロニーの奪還に向けた。

 敵に奪われたという事ならコロニー以外にラビアンローズもそうなんだが、連邦軍にしてみればコロニー落としの可能性がある以上、コロニーを優先するのは当然だった。

 そこには、ソロモンで観艦式を襲撃したサイサリスを開発したアナハイムが所有するドック艦であるというのも影響していたのかもしれないが。

 汚名返上という意味でも、自分達でジャックされたコロニーを取り返しに行ったのだが……そんな中で、コロニーはラビアンローズから放たれたレーザー推進装置によって急激に進路を変更。現在は地球に向かっているらしい。

 でもって、ジャックされたコロニーの奪還の為に向かったソロモンの連邦軍艦隊はその大半が推進剤切れで漂流中、と。

 汚名返上じゃなくて、汚名挽回だなこれは。

 

「ちょっと待って下さい! レーザー推進システムに使うレーザー発振ステーションは、フィフス・ルナやルナツーにはありますが、ラビアンローズにはありません!」

 

 シナプスの説明を聞いていたところで、不意にニナがそう叫ぶ。

 

「パープルトンさんの気持ちは分かる。実際に私が知り得る情報であっても、ラビアンローズにレーザー発振ステーションがあるとは聞いていない。聞いていないが……実際にラビアンローズからレーザーが放たれ、それによって2基のコロニーが双方共に進路を変えたのは間違いのない事実」

「そんな……一体何で……」

 

 ショックを受けた様子のニナに、シーマが声を掛ける。

 

「ニナがラビアンローズにレーザー発振ステーションがあると知らなかったという事は、考えられる可能性はざっと2つだね。1つは単純にラビアンローズに元々レーザー発振ステーションがあったけど、機密としてニナには知らされる事はなかった」

「それは……」

 

 シーマの言葉に、ニナは何も言えなくなる。

 実際、ドック艦のラビアンローズはアナハイムにとって大きな意味を持つ存在だ。

 ガンダム開発計画の機体である、デンドロビウムの開発を行っていた事からもそれは分かるだろう。

 

「そして2つ目は……もっと単純さ。単純に、デラーズ・フリートがラビアンローズを占拠してから、レーザー発振ステーションを設置した」

「……レーザー発振ステーションはそう簡単に入手出来る物ではないんだけど」

「だろうね。私もそう思うよ。けど、考えてみな。1年戦争が終わってから、3年。……いや、もう10月だし、大体4年か。デラーズ・フリートはそれだけの時間を潜伏していたんだよ? しかも、どういう訳かキシリアが協力している。であれば、レーザー発振ステーションを用意する事も不可能じゃないんじゃないかい?」

「……なるほど」

 

 シーマの言葉に納得したような声を出したのは、バニング。

 シナプスもまた、バニングの言葉に同意するように頷いていた。

 俺は、レーザー発振ステーションというのが具体的にどのくらい希少なのか、入手が難しいのかは分からないので、それに対しては何も言えなかったが。

 もし俺がデラーズ・フリートに所属していたら、影のゲートと空間倉庫を持つ俺にしてみれば、レーザー発振ステーションを入手するのはそう難しくはないように思えるが。

 もっとも、俺がデラーズ・フリートに所属するというのが、そもそも有り得ないだろうけど。

 

「理由はどうあれ、ラビアンローズにレーザー発振ステーションがあって、それによってコロニーが向かっているのは……」

「地球だ」

 

 視線を向けると、シナプスがそう言ってくる。

 やっぱり地球か。

 その件については、特に思うところはない。

 いやまぁ、月に来てくれればジェネシスやリーブラ、バルジ、コロニーレーザーでコロニーを破壊する事が出来るのだが。

 X世界で入手したコロニーレーザーも今はもう修復が完了して使えるようになっているのは、この場合心強いな。

 それらの威力は非常に高い。

 となると、月からでも地球に向かうコロニーを破壊出来ないか?

 そう思ったが、シナプスが映像モニタにコロニーの予想進路を表示すると、それは月から見た場合、地球を通して反対側だった。

 つまり、ジェネシスとかを使おうにも、地球が邪魔で撃てないという事を意味している。

 

「デラーズ・フリートもその辺は考えていた訳だ」

「そうだろうな。1年戦争の時も、ジオン軍は連邦軍とルナ・ジオン軍によって負けたんだ。ましてや、地球にはハワイのようにルナ・ジオンの領土もある。デラーズ・フリートにしてみれば、ルナ・ジオンを警戒するのは当然の事だ」

 

 バニングの言う通り、デラーズ・フリートは……あるいはキシリアかもしれないが、とにかくルナ・ジオンについて調べたのは間違いない。

 そうなれば当然ながらジェネシスとかについての情報を入手しているだろう。

 ジェネシスとかは、抑止力的な意味もあって、その情報を隠してはいない。

 ……もっとも、だからこそ強硬派にしてみれば月から一方的に地球を攻撃出来る戦略兵器を複数持っているルナ・ジオンを危険視しているのかもしれないが。

 ともあれ、デラーズ・フリートとしてはキシリアという不倶戴天の敵と手を組み、更には戦力を限界まで使ったコロニー落としだ。

 それもただのコロニー落としではなく、2基のコロニーを使ったコロニー落とし。

 X世界では以前の戦争で複数のコロニーが落とされたから、それよりはマシなのかもしれないが、このUC世界においては初めての事になる。

 だからこそ、月の周辺にある戦略兵器を使わせないように、地球の裏側にコロニーを落とそうとしてるのは納得出来る。

 納得出来るんだが……デラーズ・フリートの致命的なミスは、俺の、アクセルの存在を知らなかった事だろう。

 いやまぁ、ニーズヘッグを使ったシステムXNの転移能力については、UC世界において今まで隠し続けてきたのだから、そういう意味では向こうが知らないのは当然かもしれないが。

 ある意味、この時の為にシステムXNについて隠し通してきたのかもしれないな。

 俺には全くそんな自覚はないが。

 ともあれ、システムXNがあれば戦略兵器の全てとはいかないが、一つくらいなら一緒に転移出来る。

 ……あるいは、中に誰もいないのなら、空間倉庫に収納して運ぶといった事も出来るだろう。

 もっとも、そうなると今後の事が色々と問題になったりするが……それでも、取りあえず2基ものコロニー落としをされるよりはいい。

 とはいえ、問題なのは連邦軍が俺の話を信じるかどうかだが……これは本当に最後の手段として考えておいた方がよさそうだな。

 これらを使わずにコロニー落としを止める事が出来れば、問題はないのだから。

 それに……ジェネシスとかを空間倉庫に収納して運ぶよりも、地球に向かっている2基のコロニーを俺が収納してしまえば、それで問題はないし。

 

「それで、これからの予定はどうなっている? ここからコロニーを止めに行くとなると、急ぐ必要もある筈だ」

「……懸念点が幾つかあるのだが、その中でも特に大きいのは、やはりラビアンローズにあったという試作3号機だろう」

 

 シナプスの言葉に、その場にいた者達は揃って頷く。

 それは、ニナまでもが同様だった。

 デンドロビウムの開発については、ニナは殆ど関わってはいないらしい。

 だが、それでも同じガンダム開発計画の機体という事で、相応の情報は入手出来ていたのだろう。

 また、単純にニナとルセットがそれなりに仲が良かったというのも、この場合は影響してるのかもしれないが。

 そんな訳で、ニナもデンドロビウムについては相応に詳しい。

 だからこそシナプスが口にした厄介だという言葉には全面的に同意したのだろう。

 俺はシナプスの意見に同意しながらも口を開く。

 

「安心しろ。シーマは知ってるかもしれないが、俺に最新鋭機が来た」

「ノイエ・ジールかい。……運用テストをやってみたって話だったけど、その様子を見る限りでは悪くなかったのかい?」

「ああ。以前使っていたゼロ・ジ・アールの正統後継機といったところだ。……そう考えると、微妙に皮肉だな」

 

 俺の言葉を聞いて他の面々は理解出来ないといった様子を見せていたが、シーマはその言葉の意味を理解しているのだろう。呆れたような、同意するような、そんな笑みを浮かべていた。

 俺がゼロ・ジ・アールを使ったのは、水天の涙の時だ。

 あの時、フィフス・ルナにあったマスドライバー施設が占拠され、その奪取の為に出撃した。

 それが今度はゼロ・ジ・アールの後継機であるノイエ・ジールを使って、フィフス・ルナとは違うラビアンローズで行われていたガンダム開発計画の機体であるデンドロビウムの対処をする。

 これを皮肉と言わないで何と言うのか。……運命?

 

「ちょっと待って。もっと詳しい話を聞かせてちょうだい。アクセルが乗っていたガーベラ・テトラじゃなくて、もっと別の機体があるの? あのデンドロビウムと戦えるような?」

 

 ニナが信じられないといった様子で俺に言ってくる。

 ニナにしてみれば、デンドロビウムの性能を知っているだけに、俺の言葉を素直に信じる事が出来ないのだろう。

 俺もその気持ちは分からないではなかったが、そんなニナに対して頷く。

 

「そうだ。ニナにとっては納得出来ないかもしれないが、ルナ・ジオン……うん。まぁ、ルナ・ジオンがデンドロビウムにも対処出来るだろうMAを開発した」

 

 正確にはノイエ・ジールを開発したのはアクシズなのだが、そのアクシズはルナ・ジオンの下部組織だ。

 そうである以上、ルナ・ジオンが開発したというのはそこまで大きな間違いではない。

 これがニナだけならその辺について話してもよかったのだが、ここにはシナプスとバニングがいる。

 2人共、信頼出来る優秀な軍人であるのは間違いない。間違いないが、それと同時に連邦軍の軍人でもある。

 もしアクシズというルナ・ジオンの下部組織が存在すると知れば、上に報告する必要があるだろう。

 連邦軍上訴部では、その辺りの情報を持っていてもおかしくはないが……だが、それでもやはり余計な情報を与えるのはどうかと思う。

 

「そんなに凄いMAを? ……アクセルもデンドロビウムについては知ってるのよね?」

「ああ、知ってる。けど、実際に新型MA……ノイエ・ジールに乗ってみた感じだと、デンドロビウムを相手にしても戦えるのは間違いないと思えた」

 

 そんな俺の言葉に、ニナは大きく口を開ける。

 ……ぶっちゃけ、ガーベラ・テトラであってもデンドロビウムと戦うという選択肢もあったんだが。

 ただ、ノイエ・ジールが……ガーベラ・テトラよりも高性能なMAが来たのなら、データ収集も兼ねてそれを使わないという選択肢は俺にはなかった。

 

「とはいえ、ノイエ・ジールはかなり大きいMAだ。ナスカ級やアルビオンの格納庫に収納するというのは不可能だから、牽引して行く必要があるけど」

 

 そう言う俺の言葉に、話を聞いていた面々はだろうなと頷くのだった。

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