転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4216話

 ソロモンから出撃した連邦軍が推進剤不足で漂流しているという報告が入ってから、すぐにナスカ級とアルビオンは出撃する事になった。

 ただ……アルビオンの戦力は、ソロモンの観艦式の時よりも減っている。

 具体的にはウラキだ。

 宇宙に上がってすぐに地上仕様のゼフィランサスで宇宙に出た結果、シーマの知り合いのゲールとかいう奴にやられた時は、怪我そのものはそこまで深くはなかった。

 最後に気絶したのも、実際には怪我で気絶した訳ではなく、ストレスによって気絶したのだ。

 だが、ニムバスとの戦いではゼフィランサスは半ば大破に近い状態になり、その戦いでウラキも骨折だったり裂傷だったりを負っている。

 せめてもの救いは、命に別状はないし、後遺症とかの心配もいらないという事だろう。

 それでもすぐ戦いに参加出来るような軽傷ではないので、結果としてルナ・ジオンの病院で入院する事になった。

 ……これがルナ・ジオンの上層部の者がこういう目に遭っているのなら、レモンに頼んで治療をして貰うといった方法も使えるんだが、ウラキはルナ・ジオンの所属じゃないしな。

 そんな訳で、原作主人公であるウラキの出番はこれで終わりとなる。

 これは一体どういう事なんだろうな?

 原作だとソロモンの観艦式で戦いが終わっていたのか、それとも原作でもコロニー落としがあったのか。

 その辺は分からないが、デラーズの性格を考えると、原作でもソロモンの観艦式は陽動でしかなかった可能性が高いように思える。

 ともあれ、この歴史においてはウラキは怪我で入院している以上、ウラキにとってのデラーズ・フリートとの戦いはこれで終わりという事だ。

 

「アクセル、どうしたんだい?」

 

 ナスカ級のブリッジで諸々について考えていると、シーマがそう聞いてくる。

 

「いや、デラーズ・フリートの一連の戦いもさすがにこれが最後になると思ってな。そう考えると、感慨深いものがあって。……まぁ、実際にはそんな事を考えるよりも前に、コロニー落としを何とかする必要があるんだが」

「そうだね。とはいえ、今回の一件は地球に住む者達にとって恐怖だと思うよ。今頃、ジャブローから逃げ出している政治家や軍人のお偉いさんは多いんじゃないかい?」

「それは否定しない。コロニーが落ちてくるかもしれないんだから、避難するのはおかしくないだろう」

 

 実際には、現在地球に向かっている2基のコロニーがどこに落ちるのかは、まだ判明していない。

 ただ、普通に考えてデラーズ・フリートが狙うとすれば、それはやはりジャブローだろう。

 連邦軍の本部のある場所。

 戦力もそこに集まっているし、何より連邦軍にとって象徴的な場所でもある。

 何しろ1年戦争の時、ジオン軍がひたすら攻めても撃退され続けた場所なのだから。

 地上からの攻撃では核兵器を使ってもジャブローを破壊出来ないくらいの防御力があるらしいし。

 

「そうだけど、実際に戦ってる方にしてみれば、面白くないと思うのは当然だろう? ……ちなみに、ハワイには避難命令を出したのかい?」

「一応シェルターに避難するようには通達を出してあるけど……ハワイのシェルターはそこまで大きくないんだよな。ハワイにいる者達が全員入れるかどうか微妙なところだ」

 

 ハワイは正確にはハワイ諸島で、小さな島々を纏めてハワイと呼んでいる。

 それだけに、地下シェルターの類を作るにしても場所は限られていた。

 いっそ海底を更に掘って地下シェルターを作るというのも計画されていたらしいが、それはまだ計画中のものであって、実行されていない。

 結局普通に島々の地下に作ったシェルターに避難するしかない訳で……そうなると、どうしても全員が避難するのは無理だ。

 いや、あるいはハワイにいるルナ・ジオンの面々だけなら全員入るかもしれない。

 だが、ハワイは観光名所としても有名で、旅行で来る者も多い。

 特に最近は1年戦争の復興が進んで来た事もあり、金持ちなら普通にハワイに旅行に来たりするんだよな。

 他にも戦後で治安が悪いので、地元にいるのは危険だと判断して治安のいいハワイに来るとか。

 量産型Wやコバッタによってハワイの治安がいいのは、それなりに知られている事実だ。

 中には自分達は金持ちで特権階級だから、他人がやるのは駄目でも自分達なら何をやっても構わないと考えているような者もいたりする。

 当然ながら量産型Wやコバッタはそんな相手であっても騒動を起こしたりした場合、配慮をしたりせずに捕らえるのだが。

 ともあれ、治安がいい事もあってハワイには多くの者達が集まっている。

 それこそルナ・ジオンの人間と観光に来ている者達だと同じくらい……いや、場合によっては観光客の方が多いという可能性も否定は出来ない。

 だからこそ、ハワイにある地下シェルターにそのような全員を避難させるのは不可能なのだ。

 中にはハワイから脱出する者もいるだろうから、そっちの人数が俺が思ったよりも多ければ、地下シェルターに残り全員を収納出来るかもしれないが。

 というか、ハワイに来るような裕福な者だったら、わざわざハワイの地下シェルターを使わなくても自分達用に地下シェルターを用意していてもおかしくないだろうし、そっちに向かう可能性も高いだろう。

 以前……1年戦争が始まる前なら、シェルターを用意する者はそこまでいなかった。

 だが1年戦争が勃発し、宇宙から地球に攻めてくるジオン軍がいて、MSなんて物も実用化されたのだから、裕福な者ならいざという時の為に地下シェルターを用意してもおかしくはない。

 

「ハワイはギニアスに任せてるし、他にも有能な人物が多いんだから、いざとなったら何とかなるだろ。それに最悪……本当に最悪の場合、HLVで宇宙に脱出するといった手段だって使えるんだし。もしそうなったら、ペズンに避難をして貰うことになるかもしれないな」

 

 ペズンの戦力には、いざという時にはコロニー落としを阻止する為の戦力を出して貰おうかとも思っている。

 サイクロプス隊のような精鋭部隊は、こういう時に助かるんだよな。

 とはいえ、基本的に今回の一件で出撃出来るのはこのナスカ級だけという扱いになってるので、もし投入するにしても秘密裏にということになるだろうが。

 

「シーマ様、月からの通信です!」

 

 不意にブリッジクルーの通信担当がそう言う。

 シーマはそんな言葉に、疑問を表情に浮かべながら口を開く。

 

「一体何があったんだい? まさか、デラーズ・フリートからの攻撃が月にあったとか、そういう事かい?」

 

 その場合は、ルナ・ジオン軍としても反撃出来る大義名分を手に入れられる。

 シーマの言葉にそう思い、それだったら悪い事ではないと思ったのだが……

 

「いえ。その……連邦軍の部隊が月の周辺に集まって来ているとの事です」

「……はぁ?」

 

 シーマの口から理解出来ないといった言葉が漏れる。

 いや、それはシーマだけではない。俺もまた同様だった。

 当然だろう。その部隊が一体何を考えているのか、シーマには理解出来なかったのだろうから。

 ……いや、シーマだけではなく、俺もまた連邦軍が一体何を考えてこのような事をしたのか、理解出来ない。

 今の連邦軍に、月に部隊を派遣する余裕などどこにもないだろう。

 そんな戦力があるのなら、それこそコロニー落としを阻止する為の戦力に回した方がいい筈だ。

 

「一体何の為にだい?」

 

 連邦軍の行動に訝しげに尋ねるシーマ。

 俺もそれについては疑問だったので、どういう反応があるのかと返事を待つ。

 すると通信担当の男が何とか動揺を抑えながら口を開く。

 

「それが、今回のコロニー落としを防ぐのは連邦軍がやるから、ルナ・ジオンはアルビオンと行動しているこの船以外の戦力は手出し不要と」

「……馬鹿かい?」

 

 思わずといった様子で口にするシーマだったが、それは俺も同様に感じていた。

 今のこの状況で一体何をどう考えれば、ルナ・ジオンに戦力をこれ以上出すなと、そのように言うのか。

 そう疑問に思い……ふと思いつく。

 

「ちょっと待て。もしかして、月に来た連邦軍ってもしかして強硬派の連中じゃないか?」

「通信にはその辺りについては言及がなかったですが……」

 

 恐らくはそうだと思いますと、そう男は言う。

 

「……強硬派の連中、本気かい?」

 

 呆れというより、理解出来ないといった様子でシーマが言う。

 その言葉には俺も同意する。同意するが……実際、こうして月に戦力を送ってきたのは間違いない。

 

「強硬派にしてみれば、俺達を好きにさせない……押さえつけておく方が重要といったところか」

「それで、地球にコロニーが落ちたらどうするんだい?」

「そう、それは俺も疑問に思う。とはいえ……実際にこういう事をするとなると、それはつまり俺達の戦力がなくてもどうにか出来ると思っているんじゃないか?」

「ちなみに、月に来た連邦軍が強硬派ではない可能性はあると思うかい?」

 

 シーマのその言葉に、どうだろうなと悩む。

 その可能性がないとは言わない。

 ないとは言わないが……それでも、普通ならこの状況でこのような事をするとは思えない。

 

「ないとは思うが……アルビオンに通信を繋いでくれ」

 

 そう言うと、通信担当の男はすぐにナスカ級の隣を進むアルビオンに通信を入れる。

 するとすぐに映像モニタにはシナプスの顔が映し出された。

 

『どうかしましたかな?』

 

 シナプスの言葉に、シーマは少し呆れた様子を見せる。

 どうやら月の一件についてはまだ何も情報を得ていないと判断したのだろう。

 

「実は、月から通信があってね。……連邦軍の部隊が月の周辺に現れて、コロニー落としの阻止行動をしないようにと言ってきたらしいんだけど、知ってるかい?」

『……は?』

 

 シーマの問いに、シナプスの口から出たのは完全に予想外といった様子の声。

 これで実は月の件を知っていて、誤魔化してるのならとんでもない役者だろう。

 ただし、シナプスの性格を考えるとそんな事はないと思えた。

 シナプスは良くも悪くも実直な軍人なのだから。

 

『その……それは何かの間違いとか、そういう事ではなく?』

「ああ、月から連絡が入ったんだから間違いないだろうね」

『……いや、だが……それは……』

 

 この様子を見る限りだと、シナプスも何がどうなってこうなったのか理解出来ないといったところか。

 

「どうやらその様子だと知らなかったみたいだね」

『……恥ずかしながら。それで、その月に向かったという連邦軍は、一体何の為に?』

「さっきも言っただろう? コロニー落としの件については連邦軍で対処する。ルナ・ジオン軍は手を出すなという事らしいよ」

『聞き間違いであって欲しかったのですが……そのような……』

 

 シナプスにとっても、今回の一件は完全に予想外の事だったのだろう。

 嘘だろう? と、そう言いたくなるような様子を見せる。

 無理もないか。普通に考えれば、地球にコロニーを……それも2基落とされようとしている中で、その援軍を止めるといったことは自殺行為でしかないのだから。

 そんなシナプスに、シーマに代わって口を開く。

 

「こういう事をするような奴には、生憎と心当たりがある。……強硬派だ」

 

 シナプスもその辺りについては予想していたのだろう。

 強硬派という言葉を聞いても、そこまで驚いた様子はない。

 

「予想していたか?」

『このような状況でそのような馬鹿な行動をする者達となると、そのくらいしか思いつかなかったのでな』

 

 大艦巨砲主義の者達もいたが……そっちはソロモンで大体死んだしな。

 それに大艦巨砲主義の者達は軍艦については自分のロマンを求めたものの、軍人として無能だった訳ではない。

 ……いや、でもMSという存在があるのに、それでもMSを軽視して戦艦にMSの運用能力を持たせなかったというのは、客観的に見た場合は無能という扱いになるのか?

 

「その辺を理解しているのならいい。……それで、コーウェンがこの件についてどう思っているのか、何らかの対応が出来るのなら、それをして欲しいと思ってるんだがどうだ?」

『すぐに連絡をしてみよう。……ただ、コーウェン准将も今は忙しい。それこそ、睡眠時間を削ってでも行動を続けている程にはな』

「だろうな」

 

 コーウェンにしてみれば、自分が主導して行ったガンダム開発計画の機体によって、ソロモンの観艦式を潰されたのだ。

 そうである以上、色々な相手と折衝をする必要があるだろう。

 コーウェンの政敵……それこそ強硬派にしてみれば、ルナ・ジオンと友好的なコーウェンの派閥はかなり攻撃されているだろうし。

 特にその手の攻撃は裏に表にといった感じのものになる。

 物理的な攻撃ではないのがせめてもの救いだが……だからといって、コーウェンが一方的にその攻撃を受け続けないとならない訳でもない。

 ここでコーウェンが負けると、強硬派の勢力が更に強くなってしまう以上、出来ればコーウェンには頑張って欲しいところだ。

 ……連邦軍とルナ・ジオン軍の戦いが起きない為にも。

 そんな風に思いながら、俺はシナプスとの話を続けるのだった。

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