転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4220話

 コロニー落としの阻止に向かう途中、連邦軍の強硬派――あくまでも状況証拠で、物的証拠は何もないが――に襲撃され、それを撃破したナスカ級とアルビオンは、現在戦場となっている宙域に近付いていた。

 

『では、申し訳ありませんが……』

「気にしないでいいよ。私達はあくまでも援軍だ。それにあんた達も軍人である以上、上の命令は絶対だろう?」

 

 映像モニタに表示された、申し訳なさそうな様子のシナプスに、シーマがそう言う。

 1年戦争の時に上からの命令によって散々な目に遭ってきたシーマにしてみれば、シナプスの気持ちも分かるのだろう。

 とはいえ、アルビオンとその協力者である俺達に下された命令が軽視していいものではないのは間違いない。

 何しろ、俺達に命じられたのは2基のコロニーと行動を共にしている、ラビアンローズの奪取……もしくは、それが無理な場合は破壊なのだから。

 そしてラビアンローズには、デラーズ・フリートが……いや、恐らくはキシリア派がどこからか入手したレーザー発振ステーションがある。

 それを使えば、コロニーを自由自在とまではいかないが、それでもある程度コントロール出来るのだから。

 つまり、連邦軍がコロニー落としを阻止しようとしている中で突然ラビアンローズからレーザーが放たれ、それによって連邦軍が予想していた場所からコロニーが移動する可能性すらあるのだ。

 勿論、本当にそこまで上手く出来るのかは別の話だ。

 だが、そう出来るかもしれないという事を考えれば、そうならないようにしておくというのはそうおかしな話ではない。

 ……寧ろ今回の一件の裏にいる強硬派にしてみれば、ラビアンローズの占拠をコーウェン派のアルビオンとルナ・ジオンの俺達だけに任せるというのが疑問だ。

 普通に考えれば、レーザー発振ステーションからレーザーが放たれると、それはコロニー落としを阻止する立場である強硬派にとって致命的だろう。

 だというのに、強硬派が決して信じていない俺達にそんな重要な作戦を任せるのは……つまりシーマやニナと話していた時に話に出た、コロニーをどうにかする手段を強硬派が持っているという事なのか?

 それも、レーザー発振ステーションを設置されたラビアンローズがいても問題ない、何らかの強力な手段が。

 具体的にそれが何かは思いつかない。

 まさか、特殊部隊をコロニーの中に侵入させて、そこで内部からコロニーの進行方向を変えるとか?

 それが出来たら最善の選択なのは間違いないだろうが、それは当然ながらデラーズ・フリートも警戒しているだろう。

 だとすれば、護衛の兵士を置いておくくらいはする筈だ。

 デラーズ・フリートはMSの数よりも兵士の方が数は多いだろうし、デラーズに心酔している者も多いという事は地球に落ちるコロニーの中でも信念に殉じるという事で、逃げ出そうとは思わないだろう。

 ……こう考えると、本当に厄介だな。

 連邦軍の強硬派もその辺りについては考えている……よな?

 それでも問題ないと思っているのは、デラーズ・フリートを過小評価しているとか、そういう事だったりしないといいんだが。

 何よりも厄介なのは、もし本当にコロニーにデラーズ・フリートから派遣された防衛隊がいる場合、空間倉庫のルールに引っ掛かって収納出来ないという事だろう。

 そうなると、やっぱり無理をしてでもシステムXNを使ってジェネシスなりなんなりを転移して持ってくるか……いや、けど、出来ればコロニーは確保したいという思いがあるのも事実。

 このコロニーは1年戦争終了後のコロニー再建計画によってコロニー公社が運んでいたコロニーだ。

 つまり、もうコロニーとして完成しているという事になる。

 普通に使えるコロニーが2基。

 これはシャドウミラーとしても是非とも欲しいところだ。

 例えば、現在シャドウミラーの本拠地となっているホワイトスター。

 これもまた一種のコロニーと呼ぶべき存在だ。……正確には色々と違うが。

 ともあれ、ホワイトスターがあったからこそ、俺は……そしてシャドウミラーという国は現在もこうして活動出来ている。

 もしホワイトスターがなければ、それで死ぬ事はなかっただろうが、それでも今と同じような状況にはなっていなかっただろう。

 であれば、また同じような事が……あるいはシャドウミラーではなく、何か他の場所で同じような事になった場合、コロニーがあれば非常に便利なのは間違いない。

 そういう意味で、出来ればそのコロニー落としに使われているコロニーが、出来れば両方、あるいは片方だけであっても確保したい。

 

「ともあれ、強硬派が何を考えていようとも、ラビアンローズを押さえておく事はこちらにとっても決して悪くはない筈だ」

 

 俺が考えていた間も話は進んでおり、シーマとシナプスの間で取りあえずラビアンローズの奪取についての話は決まったらしい。

 

『では、アクセルはそれでいいかね?』

「え?」

 

 まさか、ここで急に俺に話が回ってくるとは思わなかっただけに、そんな声を上げてしまう。

 

「アクセル?」

 

 ニナがジト目で見てくる。

 シーマもまた、呆れの視線を俺に向けていた。

 

「あー、悪い。強硬派が一体どうやってコロニー落としを止めるのか、全く思いつかなくてな。それに言い訳になるかもしれないけど、ラビアンローズでの戦いはこっちの戦力を考えれば、そこまで苦戦しないだろうと思っていたし」

『アクセル中尉の言葉は間違っていない。そういう意味では私達の話を聞き流していても仕方がないのかもしれないが、だからこそアクセル中尉には私達の話をしっかりと聞いておいて欲しかったな』

 

 シナプスもまた、そう注意をしてくる。

 これ、多分俺がルナ・ジオン軍の所属ということになっているから、この程度なんだろうな。

 もし俺が連邦軍の軍人だった場合、大目玉であってもおかしくはない。

 

「悪い。次からは注意するよ。それで、俺に聞いておいて欲しかったというのは?」

「アクセルが言う通り、ラビアンローズの戦力はそこまで多くはない……というよりも戦力の大半はコロニーの防衛に回す必要がある以上、ラビアンローズの防衛に回せる戦力はそう多くはないというのが私達の予想だ。そして……ラビアンローズで接収されたデンドロビウムも、コロニーの防衛に回されているのは確実だろうね」

 

 シーマの言葉に、何を言いたいのかを理解する。

 

「つまり、ノイエ・ジールに乗った俺はラビアンローズじゃなくて、コロニーの防衛をしているデンドロビウムの相手を?」

「そうなるね。……これを見ておくれ」

 

 シーマが俺の言葉に返事をすると同時に、ブリッジにある映像モニタの1つに何らかの映像を映し出す。

 何らか……というか、地球を中心にした周辺の宙域図と、2基のコロニー、そしてラビアンローズも描かれてる。

 そして地球から一定の距離が離れた場所に点線が描かれていた。

 

「これは、阻止限界点……このラインを越えたらコロニーが地球に落下するのは止められないと思った方がいい」

 

 そう言いながらも、意味ありげにシーマが俺を見てきたのは、空間倉庫やシステムXNによる転移を使えば、あるいはジェネシスのような戦略兵器を使えばどうにかなると理解しているからだろう。

 ……こうして考えると、阻止限界点と称してはいるものの、それを越えても阻止する手段が結構あるな。

 シーマが……それにブリッジにいる面々もニナ以外はどこか気楽なのは、その辺について理解しているからだろう。

 そんなシーマ達と比べて、映像モニタに映っているシナプスは後がないといった切羽詰まった状態を見せている。

 これを解消してやりたいとは思うが、今の状況でその辺について話すのはちょっと難しいな。

 そんな訳で、シナプスには悪いがもう少し今の状況で我慢して貰うとしよう。

 

「阻止限界点か。……分かった。ここを通る前に何とかしよう。もっとも、強硬派も何らかの対処を考えているのは間違いないだろうけど。……そう言えば、コーウェンからは何か言ってきていないのか?」

 

 ナスカ級とアルビオンにラビアンローズの奪還を命じたのは、強硬派だ。

 だがナスカ級はともかく、アルビオンはガンダム開発計画の運用艦であり、上司はコーウェンになる筈だ。

 であれば、コーウェンから何らかの特別な指示があってもおかしくないと思うんだが。

 

『いや……今のところない。というか、現在コーウェン准将とは連絡が取れなくなっている』

「……コーウェンと連絡が取れない?」

 

 コーウェンはガンダム開発計画の責任者として、今回のデラーズ・フリートとの一件でも直接指揮を執っていた筈だ。

 アフリカ大陸の探索や、アルビオンが宇宙に上がってから用意した戦力も、コーウェンの力によるものだった筈。

 となると……

 

「強硬派か?」

 

 何かあれば全て強硬派のせいにしているような気がするが、実際に現在強硬派がかなり積極的に動いているのは事実。

 であれば、強硬派がコーウェンに何かをした可能性は十分にあった。

 ……もっとも、コーウェンに強硬派にちょっかいを出される隙があったのも事実だが。

 それも、サイサリスを奪われるという、これ以上ない程の隙が。

 その辺を突かれて、強硬派に抑えられたのかもしれないな。

 

『……分からん。何とも言えん』

 

 シナプスも恐らく俺と同じ事は考えているのだろうが、立場としてそれを口に出すことが出来ないのだろう。

 

「コーウェンのバックアップがないのは残念だが、それはそれで仕方がないか。……そうなると、強硬派の件を抜きにして俺達だけで対処する必要がある訳だ」

 

 強硬派が何らかの方法でコロニー落としを防ごうと考えていても、それが何なのか分からない以上、こちらとしてもそれに期待する訳にはいかない。

 もし期待した結果、効果がなかったりしたら洒落にならないし。

 そうならないようにするには、やはり自分達でこの状況をどうにかする必要があった。

 まぁ、そうして自分達で行動するとなると、やっぱりコロニーを守っているだろうデンドロビウムを俺がどうにかする必要があるんだが。

 

「コロニーを守ってる戦力を倒してラビアンローズの奪取に成功したら、レーザー発振ステーションから発射したレーザーをコロニーに当てて、それによってコロニーを地球から逸らす……といったことは出来ると思うか?」

「出来るかどうかと言われたら、出来る可能性はあるわね。そもそもラビアンローズを占拠してレーザー発振ステーションを取り付けて連邦軍の大多数を推進剤不足にしたのだから、普通に考えればもうラビアンローズの役目は終わってるわ。それこそ、後々面倒がないよう、爆破してもおかしくはないと思うくらいに」

 

 そう口にしたニナだったが、表情には不安の色がある。

 恐らくは、ラビアンローズに残っていたのだろう友人のルセットと、上司のクレハを心配してるのだろう。

 ラビアンローズの占拠でどうなったのかも、今のところは不明だし。

 普通に考えれば、ラビアンローズにいた者達の安全は決して保証されないだろう。

 それでも希望としては、デラーズはギレン教の信者であるが、同時に軍人としても有能な人物であるという事だろう。

 つまりラビアンローズを占拠しても、無意味に逆らうような事をしなければ、危害を加えられない。

 これがデラーズ・フリートではなくその辺のチンピラがラビアンローズを占拠したら、クレハはともかく、若くて美人のルセットがどんな目に遭っていたのか、想像するのは難しくない。

 後は……警備隊の中でもトップの人物が強硬派で、ルナ・ジオン軍の俺と会いたくない、会う必要もないとか、そんな風に言っていたけど、そいつがどうなったのかは……まぁ、ルセットやクレハよりは大分心配の度合いは下となる。

 見るからに――実際に会ってないので、聞くからにという表現の方が正しいのかもしれないが――こっちを見下しているような奴だし、そんな奴が死んでも俺としては『ふーん』としか言いようがない。

 もっとも、強硬派である以上はデラーズ・フリートを相手に降伏はしないだろうし……そうなると、多分死んでるだろうな。

 それはそれで構わない。

 俺にしてみれば、結局その程度の相手でしかないのだから。

 

「そうなると、ラビアンローズの確保は非常に重要か。……シーマに対しては言うまでもない事だろうが、気を付けろよ」

「誰に言ってるんだい? 私達は海兵隊だよ? ラビアンローズを占拠したのが誰であったとしても、私達が負ける訳はないだろう?」

 

 自信満々に言うシーマ。

 そんなシーマの様子に、俺もそうだなと納得する。

 実際、海兵隊はルナ・ジオン軍においても象徴の1人でもあるシーマが率いるという意味では、間違いなく高い実力を持っている。

 であれば、そこまで心配する必要はない。

 ……まぁ、それでも恋人を心配するのは、当然かもしれなかったが。

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