転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4224話

 エリック・マンスフィールド。

 そうオープンチャンネルで名乗ったデンドロビウムのパイロットの名前に、聞き覚えはない。……いや、微かにどこかで聞いた名前のような気もする。

 これだけの技量の持ち主なら異名持ちであってもおかしくはない。

 だが、俺はエリック・マンスフィールドという名前は知らなかった。

 勿論、異名持ちではなくても強いパイロットとはいる。

 分かりやすい例が、ハワイにいるノリスだろう。

 MSの操縦技術という点では、ソロモンの悪夢と呼ばれるガトーや荒野の迅雷と呼ばれるヴィッシュ・ドナヒューと同等の、場合によってはそれ以上の力を持つ。

 そんなノリスですら、異名を持っていない。

 ノリスの場合は、軍人としてよりもサハリン家に仕える立場の方を重視しているからというのもあるのかもしれないが。

 とにかく、異名持ちではなくてもノリスや……デンドロビウムのパイロットをしているエリックのように、強い者はいる。

 

「エリック・マンスフィールド? 聞いた覚えがない名前だな」

『黙れ! ギレン閣下の……そしてデラーズ閣下の願いを叶える為、私はここで負ける訳にはいかんのだ!』

 

 叫びつつ、デンドロビウムの左手部分の巨大な腕……あれもクローアームか? そのクローアームが巨大なビームサーベルを手に、こちらに振るってくる。

 一瞬、ノイエ・ジールのビームサーベルで受け止めるかと思ったが、見た感じだと出力はデンドロビウムのビームサーベルの方が強そうだ。

 そんな訳で、俺はスラスターを使ってノイエ・ジールを移動させ、デンドロビウムのビームサーベルの一撃を回避すると、そのままミサイルを大量に発射する。

 これでエリックの操縦技術が未熟なら大量のミサイルにどう反応したらいいのか分からず、混乱してもおかしくはない。

 見た感じ、デンドロビウムは右側に装備している巨大なメガ粒子砲とビームサーベルくらいしか、ビーム系の装備は持っていない。

 いや、ステイメンがバズーカを放ってきた事を考えれば、ステイメンの方でビームライフルを使えたりするのか?

 ともあれ、装備の殆どをビーム兵器で固めているノイエ・ジールと比べると、デンドロビウムは実弾兵器もかなりある。

 あるのだが……こういう、大量のミサイルを撃たれた場合の対処は実弾兵器では難しい。

 ビーム兵器ならミサイルとかでも対処は出来るのだが。

 そう思ったところで、デンドロビウムは……何だ? 何かケーブルのような物が発射され……それを自分の前に展開し、次の瞬間にはそのケーブルが燃え、ミサイルを一網打尽にする。

 一体あの武器は何だ?

 そう思いながらも、俺は偏向メガ粒子砲を撃つ。

 エリックの操縦するデンドロビウムは、偏向メガ粒子砲の集中攻撃を受けても特に動く様子はない。

 Iフィールドをそれだけ信頼しているのだろう。

 だが……それは装備に頼りすぎだった。

 

「直撃」

 

 精神コマンドの直撃を使い、他の偏向メガ粒子砲に混ぜるようにして一撃を放つ。

 デンドロビウムは回避する様子を見せない。

 それは正しい。

 実際、Iフィールドはビームに対してなら絶対的な防御力を誇るのだから。

 だが……次の瞬間、殆どの偏向メガ粒子砲はIフィールドに弾かれたものの、その中の1発はIフィールドを無視してデンドロビウムの身体を構成するコンテナの1つに命中し、大きな爆発を生み出す。

 どうやら、あのコンテナの中身は予想通りミサイルとかそういうのだったらしい。

 そして当然ながら、エリックには今一体何が起きたのか分からない。

 分からないが、デンドロビウムのような巨体でバランスを崩したにも関わらず即座に体勢を立て直し、同時に牽制としてこちらに多数のミサイルを撃ってきたのはさすがと言うべきだろう。

 だが……甘い。

 偏向メガ粒子砲を一斉に発射し、同時に有線クローアームを両方とも射出する。

 左右から挟み込むように、そしてミサイルの爆発に紛れて飛んでいった有線クローアームは、ようやく体勢を立て直したデンドロビウムのコンテナ……先程直撃を使った偏向メガ粒子砲で破壊したのとは別のコンテナに、ビームサーベルを展開したまま突き刺さる。

 そこでエリックがその攻撃についてどこまで認識していたのかは、俺には分からない。

 だが2度続けて攻撃を食らい、再度デンドロビウムのバランスが崩れ、そこに偏向メガ粒子砲が連射される。

 こちらは精神コマンドの直撃を使っていない、普通の偏向メガ粒子砲だ。

 だが、エリックにその辺は分からない。

 先程の一撃が一体どういう一撃だったのか理解出来てはいないだろう。

 Iフィールドの故障を疑うか、それともノイエ・ジールにはIフィールドを無効化する何らかの手段があると考えるか。

 デンドロビウムは当然ながらデラーズ・フリートで開発されたMSではなく、ラビアンローズを占領して接収した機体だ。

 ましてや、ラビアンローズの接収から俺達と戦うまでそう時間がなかったことを思うと、完全に乗りこなすといった事は出来ていない可能性が高い。

 また、当然ながら機体の分析も完全には終わっておらず、Iフィールドがあるのは理解しつつも、それがどれくらいの精度かは分からないだろう。

 俺と遭遇するまでの間、連邦軍のMSや軍艦と戦っていたっぽいので、その時にIフィールドの効果は理解していただろうが……そこでいきなりノイエ・ジールの偏向メガ粒子砲が命中したのだから、混乱するなという方が無理だった。

 そして……狙い澄ましたかのように、もう一本の有線クローアームがデンドロビウムのIフィールド発生器に横から突き刺さる。

 Iフィールド発生器にクローアーム突き刺さった瞬間、クローアームを開き、そこからメガ粒子砲を発射する。

 その一撃によってデンドロビウムの右側のコンテナ一個とIフィールド発生器が破壊され……そのまま追撃の一撃を放とうとしたところで、ふと気が付く。

 ノイエ・ジールの映像モニタに、眩い何かが映し出されている事に。

 デンドロビウムとの戦闘を行いながら、宙域を移動していたのが影響しているのは間違いない。

 その眩い光は何だ?

 光は気にせず、このままデンドロビウムを破壊してしまった方がいい。

 そう思うと同時に、あの光を無視するのは危険だ。

 そのような思いも俺の中にはあり……デンドロビウムから一度距離を取る。

 デンドロビウムにとって、防御という意味では要の装備であるIフィールド発生器を破壊出来たから、少し……いや、大分余裕が出来たからというのが大きい。

 少し意外だったのは、距離を取ったノイエ・ジールに対してデンドロビウムが攻撃してこなかった事だ。

 エリックがどのような性格をしているのかは、俺にも分からない。

 分からないが、それでも今まで一方的に攻撃をしていたこちらが攻撃を中止してデンドロビウムと距離を取ったのだ。

 そうであれば、この機会を逃さず追撃してきてもおかしくはなかった。

 ……もっとも、もし向こうがそういう事をして来たのなら、こちらもこちらでその攻撃に対処する準備は十分だったが。

 あるいは、エリックも映像モニタに映し出された光が気になったのかもしれない。

 そう思いつつ、デンドロビウムから距離を取り、映像モニタに映し出された光を拡大していくと……

 

「ソーラ・システム……か」

 

 宇宙空間に数え切れない程に展開されているミラーを見て、そう納得する。

 なるほど。強硬派の強気が気になっていたんだが、これが理由か。

 ソーラ・システム……それは、1年戦争で行われたソロモン攻略のチェンバロ作戦の時に使われた兵器だ。

 虫眼鏡を使って太陽の光を一点に集め、黒い紙なりなんなりを燃やすという理科の実験。それを大規模に……それこそ宇宙規模で行うというものだ。

 もっとも、原理は簡単だがその威力は強力で、チェンバロ作戦においてはソロモンの外に出ていたジオン軍、そしてソロモンの外側にあった軍港の類を纏めて焼き尽くしたが。

 しかし、同時にその威力は強力だが表面的なものでしかないのも間違いない。

 事実、ソロモンは表面は焼かれたが、内部には殆ど影響がなかったのだから。

 にしても……ソーラ・システムを使う為のミラーの設置には、かなり時間が掛かる筈。

 つまり強硬派はこの宙域をコロニーが通ると読んでいたのか?

 だが……それはちょっと。

 いや、強硬派だからといって俺の知っているような無能ばかりとは思わない。

 それでもソーラ・システムという攻撃手段の特性上、どこを通るのか分かっていなければこうまで見事にソーラ・システムを展開するような事は……キシリアか。

 きちんとした証拠がある訳ではないが、キシリアの目的はデラーズ・フリートの戦力の吸収だ。

 そうなると、キシリアとしてはより多くの戦力を吸収する為にこの作戦……デラーズ・フリートが使える戦力のほぼ全てを使ったこの作戦には失敗した方がいい。

 乾坤一擲の作戦が失敗すれば、デラーズ・フリートに所属していた兵士でもデラーズに対する信望が薄れ、あるいはもうデラーズ・フリートの後がないと知り、キシリア派に鞍替えする者も出て来るだろう。

 コロニー落としを失敗させる為、キシリアが強硬派に今回の作戦について流していた可能性は十分にある。

 ……もっとも、そういう事をするにはキシリアがデラーズ・フリートの作戦について全て知っていなければならないのだが、その辺についてはキシリアの得意分野だろう。

 そんな風に考えると、不意に視線の先にいたデンドロビウムがこちらに向かってコンテナを射出してくる。

 何だ? またミサイルか?

 エリックはソーラ・システムよりも俺との戦いを継続する選択をしたのか。

 そう思って偏向メガ粒子砲を使い、コンテナを撃破しようとした瞬間、コンテナが破裂し、周辺に眩い……目を眩ませるには十分な程の光が生み出される。

 いや、光だけではないな。

 いわゆるジャミング機能を持つ何かで、一時的にだろうがノイエ・ジールのレーダーは殺されている。

 映像モニタにも光で満たされ、デンドロビウムの姿を確認出来ない。

 このまま同じ場所に留まっているのは不味い。

 そう判断し、咄嗟にスラスターを使ってその場から移動し……うん? 攻撃がない?

 レーダーを始めとした各種計測機器が先程の目眩ましで死んでいるから、デンドロビウムの姿を確認出来ないのか?

 そうも思ったが、その割には実際に攻撃が来る事はない。

 やがて眩い光が消え、映像モニタが復活し……そして各種レーダーの類も復活するものの、やはり周辺にデンドロビウムの姿はない。

 

「あれ? どこに行った?」

 

 そんな疑問を抱くも、すぐにレーダーがデンドロビウムの姿を見つける。

 どうやら、ソーラ・システムの方に向かっているらしい。

 ソーラ・システムの発射を阻止しようというのだろう。

 それを確認し……さて、どうするかと思う。

 このままデンドロビウムを追って、ソーラ・システムを守るというのも、1つの手だろう。

 いや、寧ろこれは普通に考えて最善の選択なのかもしれない。

 だが……デンドロビウムがソーラ・システムの発射を阻止しに向かったというのは、それはつまりコロニーを守る戦力が減ったという事を意味している。

 そしてデラーズ・フリートにおいて、デンドロビウムは最強の駒となる。

 阻止限界点……いわゆる、コロニーを止める最終ラインはまだ突破していないものの、そこまで大きな余裕がある訳ではない。

 なら、いっそコロニーをどうにかしてしまう方がよくないか?

 俺になら、コロニーをどうにかする手段が幾つかある。

 であれば阻止限界点を突破するまでにコロニーをどうにかしてしまった方がいい。

 それにソーラ・システムによってコロニーを破壊するにしても、コロニーが1基か2基であるのかによって、その辺は大きく変わってくる。

 なら、最低でも1基は俺がどうにかしておいた方がいいのは間違いない。

 ……最善なのは俺が2基ともどうにかしてしまう事だろうが、そうなればそうなったで、強硬派の矛先がルナ・ジオンに向けられそうな気がするんだよな。

 その為、エリックの操縦するデンドロビウムによって大きな被害は受けるかもしれないが、ソーラ・システムの方は連邦軍で守って欲しい。

 そんな風に思いつつ、俺はコロニーに……先行してる方のコロニーに向かってノイエ・ジールを進める。

 途中で連邦軍とデラーズ・フリートが戦っている光景も目にしたが、それらの戦闘に介入するような事はせずに近くを通りすぎる。

 そしてコロニーの姿が次第に映像モニタで近くなっていき……

 

「ちぃっ!」

 

 不意に飛んできたメガ粒子砲を、咄嗟に回避する。

 何だ、今の強力なメガ粒子砲は。

 もしかしたら、まだデラーズ・フリートには奥の手があったのか。

 そう思ったが……映像モニタに表示されたのは、グワジン級の姿だった。

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