転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4230話

「マジか。さすがエース級といったところだな」

 

 思わずそう呟いたのは、ノイエ・ジールの映像モニタに表示されたデンドロビウムの姿が理由だった。

 デンドロビウムはIフィールド発生器が破壊され、コンテナも幾つか破壊され、なくなっている。

 だが……言ってみれば、大きな損傷はそれだけだ。

 そしてデンドロビウムのその被害は、俺がノイエ・ジールを操縦して戦闘した時のダメージとなる。

 つまり、ソーラ・システムの破壊に来てからデンドロビウムはダメージを受けていない訳だ。

 いや、実際にはデンドロビウムの姿を確認すると、メガ粒子砲やミサイルによって受けたのだろうダメージが幾つもあるのだから、本当の意味で無傷という訳ではない。

 訳ではないのだが、それでもソーラ・システムのコントロール艦を破壊しながらそれを守っている強硬派と戦いつつ、受けたダメージが非常に少ない。

 俺がここに来る途中、何を思ったのか攻撃して来たサラミス級3隻の練度も決して高いとは言えなかった。

 そういう意味では、デンドロビウムに乗っているエリックも小さなダメージは受けるものの、致命的な……あるいはそこまでいかずとも、相応にダメージが大きくなるような事はなかったのだろう。

 エリックの操縦技術と、中破してはいるが、それでもデンドロビウムの性能があってこそだと思うが。

 そして……当然ながらエリックがそこまで無事だというのなら、強硬派側の被害は大きい訳で、周辺にはMSや軍艦の残骸が多数浮いている。

 さて、これらどうするか。

 というか、デンドロビウムがソーラ・システムのミラーの周辺を動いている事もあり、遠くからメガカノン砲を撃つとかした場合、デンドロビウムに命中しても、ミラーに結構な被害を与えそうなんだよな。

 そうならないようにするには、ピンポイントで狙撃するか、あるいは周囲に被害が出ないように近接攻撃を行うか。……後者だな。

 狙撃をした場合、それこそ強硬派の連中に一体何を言われるのか分かったものではないし。

 それを理由にして、俺まで攻撃されるような事になったら洒落にならない。

 いやまぁ、さっきサラミス級3隻に攻撃されたのを考えると、特に理由がなくても俺がルナ・ジオン所属というだけで、あるいはノイエ・ジールという最新鋭のMAを使っているだけで敵として認識してもおかしくはない。

 そうならないようにするには……やっぱり近接攻撃の方がいいだろう。

 それでもデンドロビウムと間違ったという名目で攻撃される可能性は否定出来ないが。

 どこぞの国の新聞社なら、1発だけなら誤射かもしれないと言うかもしれないけど、現場でそんな事をされる方にしてみればたまったものではない。

 ともあれ、通信を送るか。

 向こうが不満であろうとも、通信を送ってこっちが味方だと示しておけば、何かあった時に証拠として使えるだろうし。

 

「こちらはルナ・ジオン軍所属の、アクセル・アルマー中尉だ。デラーズ・フリートに奪われた機体を倒す為にやってきた。攻撃する際はこちらに注意してくれ」

 

 通信を送りつつ、デンドロビウムに向かう。

 デンドロビウムも中破状態ながらもノイエ・ジールの存在には気が付いていたのだろう。

 機体を反転させ、デンドロビウムのコアユニットであるステイメンがまだ無事なコンテナからバズーカを取り出し、ノイエ・ジールに向かって発射してくる。

 ビームライフルを撃たないのは、Iフィールドがあると理解しているからだろう。

 あるいはIフィールド云々を抜きにして、回避されるとでも思ったのか。

 とはいえビームライフルを回避出来るのなら、それよりも遅いバズーカの砲弾を回避するのも難しくはないのだが。

 バズーカの砲弾を回避しつつ、デンドロビウムとの間合いを詰めようしたところで、不意に通信が入ってくる。

 

『宇宙人如きが、何の用だ』

 

 映像モニタに出されたのは、ハゲの男。

 特徴的なのはゴーグルをしていることだろう。

 

「先程の通信は聞こえていなかったのか? デンドロビウムの相手をしに来た」

『ふざけるな! そもそも貴様があの機体の対処をしっかりしていれば、こうなる事はなかったのだ!』

 

 ハゲが苛立たしげに叫ぶ。

 こうして叫んだという事は、恐らく……いや、間違いなくノイエ・ジールでデンドロビウムと戦っていた情報は入手していたのだろう。

 

「それを言うのなら……おっと」

 

 俺が強硬派のハゲと通信をしているのを見て取ったのか、それともいつまでもこの場にいるの不味いので、さっさとコントロール艦を破壊する為に俺に構ってはいられないと判断したのか、デンドロビウムがこの場から移動しようとするのを見ると、偏向メガ粒子砲を撃ちながらデンドロビウムの進行方向に回り込む。

 

「それを言うのなら、そもそもお前達強硬派がルナ・ジオンの戦力をもっと受け入れれば良かっただけだろうに」

 

 ジーン・コリニーとかいう、さっきの攻撃してきた3隻のサラミス級の艦長達が所属している派閥を率いているという人物。

 それは以前セイラから聞いた話によると、星の屑の一件でルナ・ジオンが出してもいい戦力はナスカ級1隻とすると制限してきた相手だ。

 自分達でどうにかするのが難しいと判断していたのなら、最初からルナ・ジオンに素直に協力を求めるべきだろう。

 なのに、プライドか、あるいは単純な嫌がらせか。

 理由はともあれ、ルナ・ジオンからの戦力は殆ど受け入れず、なのに今のようにピンチになったら助けろというのは、虫が良すぎる。

 

『黙れ! 中尉風情が上官に向かって指図するつもりか! 貴様はこちらの命令に従っていればいい!』

 

 とことんこっちのやる気を削いでくれるな。

 エリックの操縦するデンドロビウムの動きを牽制しながら、ハゲに通信を送る。

 

「あのなぁ、言っておくが俺はあくまでもルナ・ジオン軍の中尉であって、連邦軍の中尉じゃないんだ。ましてや、ここに来る途中に何故か……何故か、サラミス級に攻撃されたりもしたくらいだぞ? その状況で、自分達ではデンドロビウムの対処が出来ないので助けて欲しいのなら、頭ごなしに命令するんじゃなくて、どうか助けて下さい。お願いしますと頭を下げるくらいはするべきじゃないか?」

『貴様ぁ……』

 

 うお、ビキビキとハゲの額や頭に血管が浮き上がっていく。

 髪の毛がない分、こういうのは分かりやすいんだろう。

 というか、このいかにも強硬派といった奴が、どうやらこの場の責任者らしい。

 このままだと話が進まないな。

 そうなると、こいつは無視して、こっちでエリックの乗るデンドロビウムの対処をした方がいいのか?

 

『バスク、その辺にしておけ』

『ジャミトフ閣下!?』

 

 と、不意に声が聞こえたかと思うと、ハゲ……バスクの怒りが一瞬にして静まる。

 そして、映像モニタに映る別の男の顔。

 初老……よりはちょっと若いか?

 どうやらバスクと同じ場所にいる訳ではなく、通信を繋げて俺とバスクの通信に割り込んで来たらしい。

 

『現状を考えろ。……さて、アクセル・アルマー中尉だったな。私の部下が失礼をした』

 

 意外な事に……本当に意外な事に、バスクの上司のジャミトフは俺に向かって頭を下げてきた。

 バスクのような典型的な強硬派の上司である以上、このジャミトフも強硬派なのは間違いない筈なんだが。

 そんな人物が、別の国の軍とはいえ、一介の中尉に頭を下げる?

 何か罠があるのではないかと思ってしまうのは、俺の考えすぎではない筈だ。

 

『それで早速だが、アクセル中尉にはソーラ・システムを守って欲しい。試作3号機がこれ以上暴れると、ソーラ・システムを使ってコロニーを破壊するのは不可能となる』

『ジャミトフ閣下!? このような者に頼らずとも……』

『黙れ、バスク。今は下らんプライドなど捨てろ』

 

 不満そうな様子のバスクをジャミトフが一喝する。

 へぇ……いや、考えてみれば当然の話なんだが、強硬派であっても上に立つ人物なら相応の能力を持っているらしい。

 自分が気に食わないから、あるいは自分なら出来るという過信を考えず、こうして素直に俺に頼んでくるのだから。

 まぁ、一方的に突っ掛かってくるような者達だけでは、幾ら数が多くても連邦軍内部で上手くやっていけるとは思えないし、それも当然か。

 

「俺がここに来る途中、お前達の仲間から攻撃を受けたんだが?」

『不幸な事故だった。遺憾に思う』

「……そうか。なら、向こうから攻撃されたから、こっちが反撃してサラミス級3隻が撃沈されたのも、不幸な事故だったという事でいいんだな?」

『貴様ぁっ!』

『バスク』

『ぐ……』

 

 ジャミトフに対する俺の言葉を聞くと、バスクが激昂する。

 無理もないか。ソーラ・システムを守る為に配置されていたという事は、それはつまり強硬派の者……バスクの仲間、あるいは部下といった事なのだから。

 もっとも、そのうちの1隻は俺ではなく仲間の手によって撃破されたのだが。

 激昂したバスクはジャミトフの一言ですぐに大人しくなる。

 ジャミトフはバスクを完全に従えているという事なのだろう。

 

『それで、どうだろう? このままではコロニーは地球に落ちる。それを何とかする為に……』

 

 ジャミトフがそう言っていたところ、不意にデンドロビウムが動き出す。

 ……このままでは、コロニーが地球に落ちるのを止められると思ったのか?

 それでも、ノイエ・ジールとこのまま黙って睨み合っていれば、それは向こうにとっても時間稼ぎに……いや、このままだとソーラ・システムがまだ動くと判断したのかもしれないな。

 その為、そうならないよう一気に動いてまだ残っているコントロール艦を、あるいはミラーを破壊しようと考えてもおかしくはない。

 

「させると思うか!」

 

 エリックも俺と正面から戦うのは自殺行為だと判断してるのか、ノイエ・ジールを迂回するようにして移動しようとする。

 そんなデンドロビウムに対し、偏向メガ粒子砲を放つ。

 これで俺が普通のパイロットなら、エリックの操縦するデンドロビウムに偏向メガ粒子砲を命中させるのはそう簡単な事ではないのだろう。

 だが……ノイエ・ジールを操縦しているのは、俺だ。

 この近距離で、射撃武器の攻撃を外す筈がない。

 実際、放たれた偏向メガ粒子砲は次々にデンドロビウムに着弾し……

 

「ちっ、そう来たか!」

 

 偏向メガ粒子砲がデンドロビウムに……より正確には、デンドロビウムにまだ残っていたコンテナに命中したのは間違いない。

 だがコンテナに命中した瞬間、周囲に眩い光が生み出されたのだ。

 この光には見覚えがあった。

 最初に俺がデンドロビウムと戦った時、戦いの最中でエリックがソーラ・システムの存在に気が付き、俺を撒いてソーラ・システムに向かう時に使ったのと同じ、閃光弾の類だ。

 これの厄介なところは、分かっていても相応の効果があるという事だろう。

 ノイエ・ジールのコックピットが一瞬焼き付く。

 それでもすぐに復活はするのだが……コックピットの状態が復活した時、既にデンドロビウムはノイエ・ジールの前から姿を消していた。

 とはいえ、見失ったのは10秒にも満たない時間だ。

 当然ながらそれだけの時間なら、見失ったとしてもそう遠い場所まで移動してる訳ではなく……

 

「デンドロビウムは俺に任せろ、その代わり、コロニーはしっかりと破壊しろよ!」

 

 ジャミトフにそう言い、通信を切る。

 ……通信を切る前に俺の態度が気に食わなかったバスクが怒鳴っている声が聞こえたものの、それについてはスルーする。

 今のこの状況で、バスクに付き合っているような時間はないのだから。

 そんな訳で、俺はすぐにノイエ・ジールでデンドロビウムを追う。

 追うが……速度という点では、どうやらデンドロビウムの方がノイエ・ジールよりも上らしい。

 距離が縮まるどころか、ジリジリと……本当にジリジリとだが開いていく。

 これが例えばデブリ帯の中を移動するのなら、もしくは決まったコースを飛ぶのなら、操縦技術の差で追い詰めたりも出来るだろう。

 だが、今はデブリも決まったコースもなく、ただ宇宙空間を真っ直ぐ飛んでいるだけでしかない。

 ましてや、地上でもないので空気抵抗とかそういうのも気にしなくもいい。

 つまり、この状況で必要なのは、純粋に機体スペックとなる。

 そして見た感じ、デンドロビウムの機動性はノイエ・ジールよりも若干ではあっても上だ。

 とはいえ、恐らくだがデンドロビウムが万全の状態なら更に機動性の差はあったのだろう。

 だが、今のデンドロビウムは中破に近い状態で、スラスターも完全という訳ではない。

 それでもノイエ・ジールの方が速度で微妙に負けているのだから、Iフィールドの技術についてはともかく、推進機能の技術についてはアクシズよりもルセットの方が上だったらしい。

 とはいえ……ジャミトフに偉そうな口を叩いた以上、こちらとしてもこのままデンドロビウムを好き勝手させる訳にはいかない。

 

「加速」

 

 精神コマンドの加速を使う。

 瞬間、ノイエ・ジールの速度は一気に増し……デンドロビウムに真横に並ぶのだった。

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