転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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昨日、予約投稿をミスって午前中に投稿してしまいました。
もし昨日投稿した話を読んでない方がいたら、前話からどうぞ。


4241話

「兄貴……ありがとうございます」

 

 オルガが深々と俺に向かって頭を下げてくる。

 そんなオルガの様子に、他の鉄華団の面々も嬉しそうな様子で視線を向けていた。

 普通、自分達を率いる人物……それも火星連合の武力の象徴とも言うべき人物が頭を下げるというのは、それを見ている者にとって面白くないと思う者もいるだろう。

 ましてや、オルガはこのオルフェンズ世界の火星においては大きな存在なのだから。

 火星連合の武力を一手に引き受ける、鉄華団。

 俺がオルフェンズ世界で作ったシャドウミラーを吸収合併する事によって、その戦力はそれこそギャラルホルンと正面から戦ってもまともにやり合える程になっている。

 もっとも、そのギャラルホルンも現在は内乱によってマクギリス率いる革命派が勝利し、セブンスターズもマクギリスのファリド家、カルタのイシュー家、ガエリオのボードウィン家の3家だけしか残っておらず、今となってはセブンスターズではなくスリースターズという名称になっているのだが。

 そして現在のギャラルホルンを率いるのは実質的にマクギリスであり、マクギリスは火星に友好的なので、余程の事がない限り火星連合とギャラルホルンがぶつかるような事はないだろう。

 他の大きな勢力となるとテイワズがいるが、こちらも鉄華団を同等の組織と認めているし、No.2の名瀬とオルガ……後は俺もだが、兄弟分の杯を交わしている。

 こうして思うと、つくづく以前のテイワズのNo.2だったジャスレイを排除出来てよかったよな。

 もしこの状況でジャスレイがいたら、恐らく……いや、間違いなく面倒な事になっていただろうし。

 

「気にするな。ただ、この連中を始めとして、まだ治療中の者達も含めて無料で……ボランティアで治療を引き受けた訳じゃない。以前にも言ったと思うが、その辺は覚えてるよな?」

 

 その言葉に、ようやくオルガは下げていた頭を上げ、頷く。

 

「はい。この連中は治療の代償として鉄華団で働いて貰う事になっています。それで自分に利益が出たら、晴れて自由の身になるという事で」

「そうだ。……まぁ、待遇的にはそんなに悪くないとは思うけど」

 

 阿頼耶識の手術を受けられるのは子供だけだ。

 そして子供でそういうのを受けようと思えば、当然ながら普通の境遇……普通に暮らしている家庭の子供がそういうのを希望するとは思えない。

 そうなると、オルガ達のようにスラム街の出身であったり、あるいは昌弘や昭弘の兄弟のようにヒューマンデブリだったりする。

 そのような者達は当然ながら他の仕事が出来るような技術とかはない。

 出来るのは、それこそ戦う事くらいだろう。

 だからこそ鉄華団で働いて自分の治療費を稼いで自由になるというのは、温情措置でもあった。

 それに……将来的に別の仕事をしたいのなら、鉄華団で働きながらその勉強をするなり技術を身に付けるなりすればいいだろうし。

 オルガが俺に頭を下げたのは、その辺の理由もあっての事だ。

 

「じゃあ、治療した者達の引き渡しはこれで完了という事でいいか」

「はい。……向こうの方に昼食の用意をさせてますので、どうぞ」

 

 オルガの言葉に頷き、俺はクーデリアやマーベル、シーラといった面々と共に見慣れた建物に入っていく。

 ゲートが設置されている場所にあるこの建物は、俺やマーベル、シーラがPMCとして活動していた時に使っていた建物だ。

 本来ならPMCのシャドウミラーは鉄華団に吸収合併されたのだから、この建物をそのまま残しておく必要はない。

 ないのだが、ここで重要になってくるのはゲートだ。

 このゲートは鉄華団にとって……いや、火星連合にとっても非常に大きな意味を持つ。

 オルフェンズ世界において、植民地としての価値も既にない程に搾り取られていた火星が今のように強い影響力を持っているのは、シャドウミラーという異世界の存在があり、ゲートによってシャドウミラーの本拠地であるホワイトスターに行き来出来て、そこを経由する事によって他の世界との異世界間貿易を行えるから、というのが大きい。

 そんな異世界と行き来出来るゲートは、当然ながら火星連合にとって守るべき存在となる。

 そしてゲートの側に俺達が使っていた建物があるのだから、それを防衛拠点として使うのは当然の流れだろう。

 なので、寧ろこの建物は俺達が使っていた時と比べると増築されており、MSも結構な数が待機している。

 その辺の海賊やテロリストが攻めてきても、ゲートの奪取……あるいは破壊といった事はまず出来ない。

 夜明けの地平線団のような大規模な海賊が襲ってきた場合でも、ここにある戦力だけで撃退するのは難しくても、ゲートを守る事は出来る。

 そしてゲートを守っていれば、鉄華団の悪魔と呼ばれる三日月がバルバトスに乗ってやって来るし、他にも一線級の戦力が次々とやって来るので、その時点で襲ってきた者達は全滅だ。

 そういう意味で、何気にこの施設は今となっては結構重要な物になってる訳だ。

 

「前に比べると、大分綺麗になったな」

 

 建物の中を歩きながら、感想を口にする。

 ちなみに阿頼耶識の治療が終わった者達は、明日からの仕事を教える面々と顔合わせをしながら食事をしている筈だ。

 阿頼耶識の手術に失敗した者達の治療についてはこれが始めてなので、まだ色々と試行錯誤をしている感じらしい。

 鉄華団も鉄華団で、以前と全く同じという訳にはいかないんだろうな。

 どうしても組織が大きくなると、変わらないといけなくなる。

 変わるというのは、決して悪い訳ではない。

 場合によっては、変わる事によって今まで出来なかった事が出来るようになったりするし。

 

「ええ。その……ここはある意味でうちの顔って感じですから。そういう場所は綺麗にしておく必要があるとメリビットに言われて……」

 

 そう言うオルガは困った様子で頭を掻く。

 どうやらあの結婚式からそれなりに時間が経ったが、尻に敷かれているらしい。

 年上の女房は金の草鞋を履いてでも探せとか、そういうのがあったと思うが……オルガの場合は見事なまでにそれが正解だった感じか。

 オルガの様子を見ると、それを嫌っている訳ではない。……寧ろメリビットが妻となっている事に喜びを感じている様子ではあったが。

 

「私もメリビットさんの判断は間違っていないと思いますよ?」

 

 オルガの言葉にクーデリアがそう口を挟む。

 この場にいる中で、オルガを抜かすとメリビットと一番接する機会があるのはクーデリアだ。

 ……いや、クーデリアの秘書をしているフミタンの方が多いか?

 ともあれ、俺はオルフェンズ世界の一件が終わってホワイトスターに戻り、最近はUC世界で星の屑に関わっていた。

 マーベルとシーラは、それぞれシャドウミラーに……具体的にはマーベルは実働班、シーラは政治班での訓練や仕事を覚えるのに必死だったのだ。

 それ以外にも、シャドウミラーの一員である以上、当然ながら魔力や気を身に付ける必要がある、

 実働班の場合は特にそうだが、政治班もいつテロに巻き込まれるか分からない。

 また、シーラの外見から侮ってくるような奴がいる可能性もある。

 そんな訳で、魔力や気の習得はマーベルやシーラにとっても必須だった。

 ちなみにマーベルが実働班に配属された以上、乗機が必要となるのだが……今のマーベルは、ズワァースに乗っている。

 サーバインやヴェルビンといった選択肢もあったのだが、生憎とオーラ力が足りないので、操縦出来なかった。

 これから鍛えてオーラ力……あるいは気、魔力を増やす事によって、サーバインやヴェルビンに乗れるようになるかもしれないが、今はズワァースが精一杯だった。

 いや、寧ろズワァースに乗れるだけ、マーベルが成長している事を喜ぶべきか。

 ちなみにだが、ズワァースも当然のように普通の……以前のままのズワァースではない。

 オーラ力という、科学力とは全く違う方向性の技術に、レモン率いる技術班はかなりの興味を持ち、調べまくった。

 結果として、ズワァースも標準のままではなく十分に改修され、強化されている。

 そしてシーラだが、こちらが何に乗るのかはかなり迷っていた。

 シーラにしてみれば慣れているグラン・ガランというのが希望だったのだろうが、グラン・ガランは一応分類としてはオーラバトルシップではあっても、オーラバトルシップの中では一番性能の低い艦だ。

 勿論、技術班が改修すれば話は別だが……改修するにしろ、どうせなら性能の高いオーラバトルシップを改修したいと考えるのは、技術班の者として当然だろう。

 これでグラン・ガランにオーラバトルシップの中でも何か特徴的な……グラン・ガランだけにしか使われていない技術があれば話は別だったが、形状こそ特徴的ではあっても、技術的には他のオーラバトルシップと違いはない。

 そうなると、残るのはゴラオンとヨルンムンガンド、ウィル・ウィプスとなる。

 純粋な性能として考えればウィル・ウィプスがオーラバトルシップの中でも一番高い性能を持つのだが、シーラにしてみればドレイクが乗っていたウィル・ウィプスは使いたくないだろうから、真っ先に却下。

 残ったのはゴラオンとヨルムンガンドだが……ヨルムンガンドはオーラバトルシップの中でもどちらかというと空母的な性能を重視している。

 機械の館が館内にあるのも、それを示している。

 だが……当然ながら、機械の館というのはオーラバトラーを作ったり修理したりするような施設だし、バイストン・ウェルの人間にとっては最新鋭であっても、シャドウミラーの者達にしてみれば……うん。

 そんな訳で、オーラバトルシップの中でも攻撃力という点ではトップのゴラオンが現在のシーラの艦になっていた。

 

「ここです。その……兄貴達にとっては、食べ慣れてるかもしれませんが……」

 

 部屋に到着するとそうオルガが言う。

 部屋の中にあるテーブルの上には、幕之内弁当……それもかなり高級そうな幕之内弁当が用意されていた。

 他にも驚いた事に、魚貝類の類もある。

 ……最初に地球に行った時、あれだけ魚貝類に拒否反応を起こしていたんだが、今となっては普通に食べられるようになっているらしい。

 勿論、火星で魚とかを食べるには相応の金額が必要になるが……今日の場合、俺達が来ると分かっていたので、オルガが気を利かせて用意してくれたのだろう。

 

「いや、美味そうだよ」

 

 俺の言葉に、クーデリア、フミタン、マーベル、シーラもそれぞれ同意するように頷く。

 それはお世辞とかそういうのではなく、本当に美味そうな料理の数々だったからだ。

 

「そう言って貰えると、アトラの奴も喜びます」

 

 オルガが嬉しそうに笑う。

 その言葉からすると、どうやらこの料理はアトラが作ったらしい。

 以前からアトラは鉄華団の料理長的な立場だったので、この料理をアトラが作ったと言われても不思議はない。

 不思議はないのだが……

 

「アトラ、身体は大丈夫なのか?」

 

 以前、オルガの結婚式の時だったと思うんだが、その時に聞いた話によれば、アトラは現在妊娠していた筈だ。

 時間的に出産までまだそれなりに時間はある筈だったが、それでも妊娠中ともなれば忙しくするのは身体に悪い。

 妊娠したからといって軽い運動をしないのも、それはそれで身体に悪いというのを何かで見た記憶があったが。

 

「メリビットからは大丈夫だって言われてますから。うちでもその……一応、医者はいますし」

 

 オルガの言葉に、だろうなと納得する。

 以前の鉄華団……出来たばかりの鉄華団であれば、医者はいなかった。

 メリビットが合流してからは、かろうじてメリビットが医者の真似事をしていたが、別にメリビットもきちんとした医者って訳じゃない。

 ある程度の知識はあるが、言ってみればそれだけだ。

 ……きちんとした法律とかがあれば、多少の知識はあれども本当の医者ではない以上、治療をするのは法律違反になったりするのかもしれないが、オルフェンズ世界の、それも火星でそんな事を気にするような者がいるとも思えないしな。

 ただ、今の鉄華団は火星における最大の武力組織でもある。

 そこまでの規模になれば、当然ながら本格的に勉強した医者の1人や2人……あるいはもっといてもおかしくはない。

 武力組織だけに、訓練で怪我をするのも珍しい事ではないだろうし。

 

「そうか。それは何よりだ。……それにしても、医者か。以前の鉄華団に比べると、まるで別物だな」

「ええ。でも、そのお陰であいつらが少し怪我をした程度なら問題ないですから」

 

 そう言うオルガは笑みを浮かべ……俺もそれに笑みを浮かべ、アトラが作ったという魚料理や弁当を楽しむのだった。

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