転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4245話

 俺がガーベラ・テトラ改を試す為にやって来たのは、既にお馴染みとなった月の裏側……月とサイド3の間にある暗礁宙域だった。

 ただ、この暗礁宙域が以前よりも小さくなってるような……

 それが誰の仕業なのかは、考えるまでもなく明らかだろう。

 月の住人……特にクレイドルに住む者達が、ジャンク屋としてこの暗礁宙域からデブリを持ち帰り、それをシャドウミラーに売り払っているのだから。

 普通のジャンク屋なら、戦闘機、MS、軍艦といった諸々の残骸を見つけ、そこから使える電子部品やら希少金属やらを取り出し、売って金にする。

 もしくは修理可能なら修理して売るだろう。

 だが、シャドウミラーにしてみれば、キブツに入れるのなら何でもいい。

 なので、電子部品とか希少金属といった貴重な物ではなく、デブリ……岩塊の類であっても普通に買い取る。

 もっとも、ルナ・ジオンの……そしてUC世界の経済を考えて、岩塊とかの類は買い取るが、そこまで高値ではないらしいが。

 それでもジャンク屋をしている者達にとっては良い稼ぎになるのは間違いないらしい。

 以前、モニクの弟のエルヴィンも仲間達と小遣い稼ぎの為に休日にジャンク屋をやっているとか聞いた事があったし。

 そういう風に多くの者がジャンク屋をやってるのだから、この暗礁宙域が狭くなるというのは、そうおかしな話ではないのだろう。

 

「まぁ、小さくなったら小さくなったで、それなりにやりようはあるしな」

 

 まずは手始めにと、背中のスラスターだけを使いながら、暗礁宙域に突っ込んでいく。

 速度も最大という訳ではないが、この時点でガーベラ・テトラの最大速度よりも上だ。

 ガーベラ・テトラ改という機体の凄さが、この時点でも分かるな。

 ただ、それと同時にピーキーな機体性能なので、クリスからガーベラ・テトラ改の説明を受けた時にエース級の中でも使いこなすのが難しい者がいるだろうという俺の予想は間違っていないと思う。

 そう考えつつ、暗礁中域の中を進む。

 デブリが近付いてきたところで、ショルダー・バインダーを使って回避する。

 とはいえ、肩全体に……そしてサイサリスのように肩から腕を覆うようにして存在しているバインダーだけに、そちらも最初から全開にするという訳にはいかない。

 5割程の出力で、暗礁宙域の中を進んでいく。

 とはいえ、この5割であってもガーベラ・テトラの全開での行動とそう違いはない。

 前方から近付いてくるデブリを、右側のショルダー・バインダーを使って回転しながら回避する。

 ……実戦においては、わざわざこのような派手な動きはしない。

 いや、意図的に敵の目を眩ますとか、見ている者達の注意を自分に向けたいとか、そういう事でもあれば話は別だが。

 ただ、機体の調子を確認するとか、機体の動きに慣れるとかなら、こういう派手な動きをするのも悪くはない。

 そんな風に思いつつ、俺はショルダー・バインダーを使って次々に暗礁宙域の中を踊るように進んでいく。

 今回の一件が終わったら、ディアナのメカニック達にガーベラ・テトラ改の整備をして貰う事になってるので、多少乱暴な動きをする程度なら問題はないだろうと思っておく。

 

「っと」

 

 偶然なのか、もしくはジャンク屋がここから岩塊を持っていく時にやりやすいように調整したのか、等間隔で岩塊が並んでいるのを見つける。

 勿論、暗礁宙域とはいえ、岩塊はずっと同じ場所に留まっている訳ではない。

 そうなると、もしかしたら今日辺りこの岩塊を回収にくるつもりだったのかもしれないな。

 今は俺が使っているので、立ち入り禁止になっているが。

 取りあえず、その岩塊については触らないように、岩塊と岩塊の間を通り抜ける。

 すると、ぽっかりと何も岩塊のない……空白の暗礁宙域とでも呼ぶべき場所に出る。

 ここに何かいい物でもあって、ジャンク屋がそれを持っていったのか?

 疑問に思いつつも、これはいい機会だと判断してシュツルム・ブースターを使う。

 瞬く間に空白の暗礁宙域を移動し、また幾つもの岩塊が浮いている場所に突っ込んでいく。

 ショルダー・バインダーや機体各所にあるスラスターを使い、それも回避。

 武器の調整については……ここだとちょっと出来ないのが残念だったが、それでもこうして機体制御についてはいい調整になる。

 そんな風に思いながら暗礁宙域を進んでいると……やがてそこを突破して、サイド3側に出る。

 

「っと、ちょっと早かったな。……というか、やっぱり暗礁宙域が小さくなってるのは間違いないか。一応、この辺りは重力的な問題から自然とデブリが集まってくる場所の筈なんだが」

 

 ショルダー・バインダーを使ってガーベラ・テトラ改を反転させ、そう呟く。

 少しだけ不満はあったが、実際にこうして暗礁宙域を抜けてしまった以上は仕方がない。

 そう判断し、俺は月の側で待っているナスカ級と合流すべく、再び暗礁宙域に突入するのだった。

 

 

 

 

 

「悪いね、アクセル」

「気にするな。今回の件については、俺も興味あるしな」

 

 暗礁宙域でガーベラ・テトラ改の運用試験をしてから数日……俺の姿は、旧L5に向かうナスカ級の中にあった。

 それも、ナスカ級は3隻、ザンジバル級が5隻、ムサイ級が7隻、パプア級10隻という……それこそデラーズ・フリート並の艦隊での行動だった。

 デラーズ・フリートが擁した軍艦の数は知らないが、恐らく軍艦の数だけで考えると、デラーズ・フリートを上回ってるんじゃないかと思える程だ。

 もっとも、グワジン級を旗艦としていたデラーズ・フリートと違い、この艦隊は戦艦を持っていない点が劣っているが。

 そして何より、コロニーを運んでいるという点がデラーズ・フリートとは違う。

 ……いやまぁ、デラーズ・フリートもコロニーを運んだりしてはいたが。

 ただ、それは地球に向かってコロニー落としをする為に運んでいたのだが。

 ああ、ちなみに……コロニー落としでソロモン艦隊を推進剤切れにした最大の理由である、ラビアンローズに設置された、レーザー発振機。

 これは結局今もデラーズ・フリート、あるいはキシリア派がどこから入手したのか分かってないんだよな。

 非常に大掛かりな設備である以上、普通ならどこから入手したのかといった事を調べるのは難しくない筈なんだが。

 生憎と、今のところその辺についての情報はないらしい。

 もしかしたら強硬派がその情報を掴んではいるのかもしれないが……いや、ないな。

 強硬派の性格を考えれば、もしレーザー発振機を横流ししたのが誰か分かったら、即座に取り締まりをしているだろうし。

 そういうのがないという時点で、恐らく……いや、確実にまだ強硬派もレーザー発振機の出所は分かっていない筈だ。

 この辺は、キシリア、あるいはデラーズが1枚上をいったのかもしれないな。

 ともあれ、現在俺は旧サイド5にある暗礁宙域……シーマがゲールから聞いた茨の園に向かっている訳だ。

 これだけの艦隊になったのは、茨の園を整備する為の人材やら無人機やらを運ぶ為だ。

 茨の園をルナ・ジオンが手に入れたとしても、そこに駐留する人材や戦力なんかも必要だしな。

 シーマが入手した情報によれば、茨の園は壊れたコロニーの残骸とかを利用して作った拠点なので、かなり使いにくい場所でもあるらしい。

 その為、こうして壊れていないコロニーを持っていき、それを使って茨の園を改修し、より使いやすくしようという訳だ。

 ちなみに、旧サイド5と言ってるのは、1年戦争終了後に連邦がその辺りを変えているからだ。

 別に俺達が連邦軍の決めた名称に従う理由もないのだが、連邦とやりとりする上で同じ呼称じゃないと混乱しやすいからという事で、それに習っている形だ。

 ……それなら連邦軍がコンペイトウと呼んでいるソロモンを、未だにソロモンと呼んでいるのはどうなんだ? と思わないでもなかったが。

 

「それにしても、思ったよりも早く……いや、大分早く話が進んだな」

「そうさね。ただ、上の連中にしても茨の園は出来ればうちで確保したかったんだろうよ」

 

 俺の言葉にシーマがそう返してくる。

 

「それについては異論はない。実際、このまま放っておくと強硬派……もしくは連邦軍、あるいはそれ以外に茨の園が奪われる可能性は十分にあるしな」

 

 折角デラーズが3年の月日を掛けて作り上げてくれた拠点だ。

 聞いた話だと拠点としては色々と難点もあるのは間違いないのだろうが、それでも何もない場所で1から拠点を作るよりは、現在既にある拠点を改修していった方がいい。

 ましてや、ジオン軍残党として必ずしも物資を満足に使えなかったデラーズと違い、俺達の場合は十分に物資を使えるのだから。

 また、連邦軍や強硬派の方でも、デラーズ・フリートの兵士をそれなりに捕虜にしている筈だ。

 そうなると当然ながら尋問しているだろうし、尋問すれば茨の園についての情報も入手出来ていると思って間違いにない。

 デラーズ・フリートの兵士は忠誠心の高い者が多いが……それは多いのであって、全員がそうだという訳でもない。

 中には成り行きでデラーズ・フリートに加わった者とか、忠誠心は強いが意思は弱い奴とかもいるだろうし。

 なので、連邦軍や強硬派が茨の園の情報を知って、接収しようとやって来るまでの間にこっちで確保する必要がある。

 

「上がこうして急いで話を進めたのも、それが理由だろうね」

 

 シーマの言葉に、だろうなと同意する。

 ルナ・ジオンの上層部は、当然ながら連邦軍……その中でも、特に強硬派を警戒している。

 ましてや、今回の星の屑で強硬派はコロニー落としを止めたという事で、影響力がかなり強まっている。

 だからこそ、そんな時に強硬派が何をするのかルナ・ジオンの上層部も心配しているのだろう。

 それこそ、俺達が茨の園を最初に占拠し、改修しているところに強硬派がやってきて、自分達に譲渡するように言ってきてもおかしくはない。

 そうなった場合は、当然ながら拒否をするだろう。

 そして戦いになる可能性が高い訳だ。

 

「茨の園は絶対にこっちで確保しておきたいしな。……少し心配なのは、何らかの罠が仕掛けられていないかどうかだが」

「ああ、デラーズの性格を考えれば、それは普通にありそうだね」

 

 デラーズが星の屑に全戦力を注ぎ込んだのは間違いない。

 そうなると、自分達が茨の園に戻ってくる事を考えていたかどうか怪しいだろう。

 そして、もし茨の園に戻ってくる事を考えていなかった場合……茨の園をどう扱うか。

 これが例えば、他のジオン軍残党が使えるようにする為にそのままにしておくというのなら、俺達にとってはそれが最善だ。

 だが、連邦軍に奪われて再利用されるかもしれないと考えた場合……既に自爆させてしまっていたり、あるいは時限爆弾の類が仕掛けられている可能性も十分にあった。

 その為、茨の園に近付いてもしっかりと調べてからじゃないと中に入るのは難しいだろう。

 

「改めて、厄介な男だね」

 

 そう言うシーマの言葉に、俺は同意するように頷くのだった。

 

 

 

 

 

 茨の園のある、旧サイド5の暗礁宙域に向かって進み、数日。

 ようやく目的地が見えてきた。

 本来ならもうとっくに暗礁宙域に到着していてもおかしくはなかったんだが、ここまで時間が掛かったのは、やはりコロニーを運んでいるというのが大きい。

 それに、コロニー公社ならコロニーを運ぶのに慣れているだろうし、ノウハウもあるのだろうが、ルナ・ジオンにはそんなノウハウはない。

 一応コロニー公社に以前務めていたという者もそれなりにいたが、その中には実際にコロニーを運ぶような仕事をしている者達ではなかった。

 それでもある程度はそういう部署にいる者達から聞いていた話を元に、取りあえずのノウハウを作った。

 ただ、あくまでも取りあえずのノウハウという事もあって、結果としてコロニーの運搬にはそれなりに苦労している訳だ。

 もっとも、コロニーを運ぶ途中で海賊やジオン軍残党に襲われたり、強硬派に絡まれたり、あるいは何らかのトラブルに襲われたりとか、そういうのは特にない、平穏な移動だったので、特に問題はなかったのだが。

 

「ようやく到着だね」

「ああ。とはいえ、全てはここからだけど」

 

 映像モニタに表示された暗礁宙域を見ながらそう言うシーマに、そう返す。

 実際、これから茨の園のある場所まで移動する必要があるのだが、そこは暗礁宙域の中だ。

 そして暗礁宙域というのは多数のデブリ……岩塊やら機械の部品やらが浮かんでいる場所なのだが、コロニーを移動させる為にはそのようなデブリも寄せる必要がある。

 一応、空間倉庫を使わないかとシーマに提案してみたのだが、シーマが言うにはそういう作業にも慣れておいた方がいいし、ノウハウがあればこれから便利だという事で、空間倉庫を使わず、人力――当然ながらMSを使ってだが――で行う事になっている。

 そうなると、いつ茨の園に到着出来るか分からないんだが……特に今は急ぐような事がある訳でもないし、ガーベラ・テトラ改を使ってそういう作業をするのも一興だという事で、俺に不満はなかった。

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