転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4252話

「アクセルさん、モニクさん、ファブニールから連絡がありました。転移フィールドの生成を開始するという事です」

 

 ナスカ級の艦長の言葉に俺は頷く。

 俺の隣ではモニクもまた頷いていた。

 映像モニタには、ファブニールが映し出され……そのファブニールの周辺には、このナスカ級以外にも補給艦のパプア級もそれなりの数がいる。

 このパプア級はアクシズに渡す各種物資が入っていた。

 アクシズは一応自給自足が出来るようにはなっているものの、それでも決して物資が潤沢にある訳ではない。

 その為、下手に金とかを渡すよりも、生活物資とかの方が喜ばれるらしいんだよな。

 それに酒とかタバコとかの嗜好品の類も。

 それらを積んでいるパプア級は、アクシズにいる者達にとっては喉から手が出る程に歓迎する存在だろう。

 また、ルナ・ジオンの艦隊だけではなく当然ながらアクシズからやってきた艦隊……ノイエ・ジールを運んできた艦隊もいる。

 もっとも、こっちは艦隊と一口に言っても決して数は多くないのだが。

 ともあれ、そんなアクシズの艦隊も現在は大人しく待機している。

 そして……ファブニールから転移フィールドが生成され始め、転移する艦全てを含めて包み込むような繭を作り始める。

 映像モニタからナスカ級のブリッジクルーに視線を向けるが、そこでは混乱している者はいない。

 恐らくだが、この面々は今まで何度も転移を経験してるのだろう。

 木星行きで。

 

「アクセル」

 

 そんな面々と違い、少しだけ心配そうな様子で俺の名前を呼ぶモニク。

 不安からか、そっと手を握ってきたので、その手をしっかりと握り返す。

 モニクは今まで何度も……それこそ、数え切れないくらいにシステムXNを使ってホワイトスターに行ってるんだから、そこまで転移を怖がる必要はないと思うんだが。

 普段から凜々しい態度のモニクだけに、こうした面を見るのは新鮮ではあったが。

 

「心配するな。転移は今まで何度も使ってるだろ? あの時と同じで、すぐに終わるよ」

 

 そう口にした瞬間、ファブニールを含めて周囲の艦を覆っていた転移フィールドが消え……映像モニタに表示されてるのは、先程までとは全く違う光景だった。

 

「現在位置を確認しろ!」

 

 ナスカ級の艦長がブリッジクルーに命じる。

 この行動の素早さも慣れており、やはり木星まで何度も転移しているからなのだろう。

 するとブリッジクルーもすぐに反応し……

 

「当初の予定通りの宙域です! アクシズからそう離れていない場所で間違いありません!」

 

 ちなみにシステムXNを使えば、当然ながらアクシズのすぐ側に出られる。

 ……そもそも、量産型ではなくニーズヘッグに搭載されているオリジナルのアギュイエウスだが、これはペズンの特定の格納庫に一瞬にして転移する事すら可能だ。

 量産型のシステムXNではそこまで精緻な転移は難しいかもしれないが、それでもアクシズの中にではなく、アクシズのすぐ側に転移するといった事はそう難しい話ではない。

 もっとも、もしアクシズ内部に転移可能だとしても、ファブニール以外に結構な艦がいるので、そう考えると無理だろうが。

 

「そうか。……アクセルさん、モニクさん。どうやら予定通りの宙域に転移が完了したようです」

 

 艦長の言葉に頷きを返す。

 ちなみに、艦長は当然のように俺の正体については知っているものの、それでもこうした態度なのは、俺がそういう風にして欲しいと頼んだからだ。

 ……最初、思い切り恭しい態度を取られたしな。

 どうやらシーマのファンの一人だったらしく、そのシーマを救った形になっている俺に強く……心の底から感謝していたらしい。

 とはいえ、公の場ならともかく、普段からそういう態度というのも落ち着かないので、こうして貰っている訳だ。

 

「分かった。じゃあ、アクシズに……」

「艦長! 私達が転移してきたこの宙域から少し外の場所を……ザンジバル級3隻、チベ級2隻、ムサイ級5隻の反応を確認しました!」

 

 艦長の言葉を遮るように、ブリッジクルーの索敵を担当している男が叫ぶ。

 その内容は、一瞬意味が分からなかった。

 いや、それとも……

 

「俺達が今日ここに転移してくるというのを知って、出迎えに来た艦隊か?」

 

 それにしてはグワジン級の類がないのが疑問だが。

 グワジン級は戦艦の中で最上級の代物だ。

 もし俺達を出迎えに来たのなら、それこそグワジン級に乗った者がいてもおかしくはないだろう。

 

「いえ、その……こちらから離れるようなコースで移動しています」

 

 俺の疑問を聞いたブリッジクルーがそう言う。

 ……離れるように?

 

「艦長、一緒に転移してきたアクシズの艦に事情を聞いてみた方がいいんじゃないか?」

 

 これでやって来たのがサラミス級やマゼラン級なら、連邦軍の艦隊だと判断出来る。

 まぁ、連邦軍の艦隊がここで何をやっていたのかと疑問には思うが。

 考えられる可能性としては、キシリア派の拠点となっている火星の偵察だったり、破壊工作だったりとか、そんな感じか。

 ティターンズなら、もしかしたらアクシズに攻撃をする為にという可能性もゼロではないが。

 ともあれ、ザンジバル級、チベ級、ムサイ級となれば、それは当然ながらアクシズの艦隊で間違いはないだろう。

 であれば、俺達と一緒に転移してきたアクシズ艦隊なら何か知ってるかもしれない。

 俺の言葉に、艦長はすぐに頷いて俺達と一緒に転移してきたアクシズ艦隊に連絡を入れるが……

 

「駄目です。アクシズ艦隊の方でも今ここにあのような艦隊がいるなど、全く知らなかったらしいです。そして近付いて来た艦隊に連絡をしても、返答がないと」

「……どうなっている?」

 

 艦長の訝しげな声。

 それは俺も同様だった。

 

「どう思う?」

「私に聞かれても、アクシズには私も今回初めて行くのよ?」

 

 優れた役人としての一面も持ち合わせるモニクに聞いてみるものの、残念ながら返答はそんな感じだった。

 モニクにしてみれば、アクシズについての情報を知ってる訳でもないのだから、今ここでそのような事を聞かされて困るといったところらしい。

 

「けど、アクシズを率いる事になったのは、マハラジャ・カーンの娘のハマーン・カーンなんでしょう? 聞いた話によると年齢は16歳か17歳といったとこ。そしてアクシズには様々な派閥の者達がいる。そう考えれば……ハマーン・カーンがアクシズを率いるのが面白くなかった派閥の人達が脱出したんじゃない?」

 

 分からないとは言いつつ、それらしい話を口にするのはモニクらしい。

 勿論、モニクもアクシズについてはこれが初めて行くので、これはあくまでもモニクが現在持っている情報から考えられる可能性ではあったが。

 

「アクセルさん、どうしますか?」

「アクシズに向かってくれ。いつまでもここでこうしている訳にもいかないだろうし」

 

 今回の元々の目的がアクシズだったのは間違いない以上、この状況で月に戻るという選択肢は俺にはなかった。

 それに……こう言ってはなんだが、もしモニクが予想したように先程の艦隊がアクシズから逃げ出したというのは、アクシズではその件で大きな騒ぎになっているかもしれないが、それでも不穏分子をアクシズから追い出したという事でもある。

 そうなれば、アクシズは寧ろ落ち着いている……そんな可能性もあるのではないか。

 勿論、アクシズを引き継いだばかりのハマーンにしてみれば、今回の一件については間違いなく失態ではあるのだが。

 

「……分かりました。では、このままアクシズに向かいます。もっともこちらにファブニールがいる以上、何があっても大丈夫だとは思えますが」

「それは否定しない」

 

 ファブニールの能力は圧倒的だ。

 それこそ星の屑で猛威を振るったノイエ・ジールやデンドロビウム以上の性能を持っているのだから。

 その上で、それを操縦してるのアムロやシャアのような超一流には届かないまでも、そこに足を踏み入れかけている量産型W。

 ……星の屑に参加したエースパイロットで例えるのなら、ニムバスには勝てるがエリックには負けるといったくらいの操縦技術の持ち主か。

 そんな者がノイエ・ジールやデンドロビウム以上の性能を持つファブニール……正確にはファブニールは外部武装追加ユニットなのだが、とにかくファブニールを操縦するのだから、大抵の相手は撃破出来るだろう。

 だからこそ、もしアクシズで何かがあっても対処出来ると艦長が自信満々に言えるのだ。

 勿論この艦隊の戦力はファブニールだけではなく、ガーベラ・テトラ改とギャン・クリーガー、一般兵の乗るガルバルディβが搭載されている最新鋭巡洋艦のナスカ級があり、パプア級とかにもメギロートやバッタといった無人機が搭載されているので、戦力としては十分だ。

 アクシズから派遣されてきた艦隊も、MSとかはアクシズで使われている1年戦争の改修機だが、1年戦争を経験したベテランが操縦している以上、相応の戦力となる。

 

「アクシズ艦隊にも連絡。このままアクシズに向かう。先程近くを通った艦隊については、アクシズに到着してから知らせて欲しいと伝えろ」

 

 艦長がブリッジクルーに命じる。

 ブリッジクルーは即座にその指示に従い、アクシズ艦隊に連絡をするとファブニールを中心としてアクシズに進路を取る。

 

「さて、こういうのが鬼が出るか蛇が出るかって言うんだったか?」

「……この場合、どっちが出てもアクセルに退治されそうだけどね」

 

 俺の呟きを聞いたモニクが、若干の呆れと共にそう言ってくる。

 何で呆れ? と思わないでもなかったが、実際に敵が出て来た場合はガーベラ・テトラ改で思う存分暴れるのだろうし、そう考えればモニクの言葉も決して嘘という訳ではないんだよな。

 とはいえ、それは俺だけでもない。

 モニクもMSのパイロットとしては十分にエースと呼ばれるに相応しい実力の持ち主である以上、いざ戦いになったらギャン・クリーガーを使って戦闘に介入する事になっておかしくはなかった。

 

「そうならないのが一番だとは思うんだけどな」

「さっきの艦隊の件もあるし、アクシズで何かが起きてるのは間違いないでしょうね。……問題なのは、その何かが一体どういう事なのか分からないところでしょうけど」

 

 モニクが言うように、こうなるとアクシズに行った時に何が起きるのか分からない。

 出来れば面倒な事態は避けたいんだが、今の様子を見る限りそれは難しいだろう。

 

「一応、全員に何があっても対処出来るように通達はしておきます」

 

 俺とモニクの会話を聞いていた艦長が、そう言ってくる。

 艦長にしても、今の状況からすると素直にアクシズまで移動出来るとは思っていないのだろう。

 ……いやまぁ、素直にアクシズまで移動出来れば、それに越した事がないのは間違いなかったが。

 

「そうしてくれ。何かあった時、準備が出来ていなかったから一方的にやられるといった事になったら、洒落にならないし。……勿論、俺としてはそうなるとは思っていないが」

 

 これは半ばお世辞ではあるが、同時に半ば本気の言葉でもある。

 実際、今までこの艦長はファブニールを使って木星に各種物資を輸送するといった作戦を多数こなしてきたのだ。

 そういう意味では、ファブニールと共に危ない場面を今まで何度も潜り抜けてきたというのは決して間違いではない筈だ。

 そしてこういう時に必要となるのが、そういう経験となる。

 

「アクセルさんの期待を裏切らないようにします」

「そうしてくれ。……モニクはパイロットスーツに着替えた方がいいんじゃないか?」

 

 モニクもシーマと同じく魔力や気の訓練をエヴァにされている。

 だが、それでも生身の人間である以上、俺と同じように生身で宇宙空間に出ても問題がないという訳ではないのだ。

 ……あるいは、もっと魔力や気を極めれば、もしかしたら生身で宇宙空間に出ても平気だったりするのかもしれないが。

 ただ、今のモニク……シーマ、クスコ、クリスもそうだが、まだその技術は拙い。

 いやまぁ、これは仕方がない事でもあるんだが。

 何しろ、UC世界にいる恋人達は全員が仕事を持っていたり、相応の地位に就いているのだから。

 魔法球があっても、どうしても魔力や気の訓練をする為の時間が短くなる。

 そういう意味では、実はクーデリアが一番大変だったりするんだが。

 何しろクーデリアは、火星連合のトップなのだから。

 当然のように仕事も大量にあり、それだけにホワイトスターに来る時間というのはどうしても少なくなる。

 もっとも、それでも魔法球を使えば外の1時間で2日の時間を使えるので、仕事終わりには結構な頻度で来ていたりするのだが。

 それでもクーデリアはようやく魔力を感じ始められるといった程度だったりする。

 ……フミタンの方はそれなりに気を使えるようになっているのは、本人の資質の問題といったころか。

 そんな風に考えていると……

 

「アクシズの方で戦闘光と思しきものを複数確認! どうやら、戦闘が行われているようです!」

 

 ブリッジクルーの1人が、そう叫ぶのを聞いたのだった。

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