転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4256話

 ビットに触れた瞬間、聞こえてきた声。

 ……いや、それは肉声でもなければ、通信を通した声でもない。

 どこからともなく……いや、心の中に響く? そんな声だ。

 

「えっと……」

 

 正直なところ、ビットに触れただけでここまでの事態になるとは思っていなかった。

 ララァの件もあったが、あの時もここまで相手にショックを与えてはいなかったし。

 そうなると、一体何がどうなってこうなったのか、分からない。

 分からないが……

 

「あ」

 

 少し離れた場所にあったデブリが不意に破壊……破け、1機のリック・ドム……いや、トゥッシェ・シュヴァルツが姿を現す。

 どうやらあの着ぐるみ……じゃないな。バルーン? そう、デブリの形をしたバルーンの中に、トゥッシェ・シュヴァルツは潜んでいたらしい。

 ……まさか、こんな近くにいたとは予想外だったな。

 ハマーンはニュータイプなのにあれに気が付かなかったのは……何でだ?

 というか、アクシズではこういう技術も開発していたのか。

 いや、開発という程に大袈裟なものでもないか。

 バルーンをそういう形にして作ればいいだけなのだから。

 ともあれ、トゥッシェ・シュヴァルツは混乱した状態で激しく動いている。

 その光景を見ると、何となく微妙な表情になってしまうんだが。

 ビットを介してトゥッシェ・シュヴァルツのパイロットに接触しようとは思っていた。

 だが、それでもまさかここまでの事になるとは思っていなかったのだ。

 

「どうすればいいんだ?」

 

 正直なところ、今のトゥッシェ・シュヴァルツを撃破するのは難しい事ではない。

 撃破しようと思えば、それこそ今すぐにでも撃破出来てしまうだろう。

 だが……わざわざ撃破するのか? といった疑問が俺の中にあるのも事実。

 これが例えば、ビットを介して俺と接触してきても、そういうのとは全く関係なく俺と戦ってきたのなら、また話は別だろう。

 だが、今のトゥッシェ・シュヴァルツはこうやって暴れているだけだ。

 とてもではないが俺と戦いをしようとしているようには思えなかった。

 そういう風に思うのは、相手が普通のパイロットではなくニュータイプだからというのもあるのだろう。

 ニュータイプというのは、元々決して数は多くない。

 その1人がこうして目の前にいるのだから、それを確保しようと思うのは自然な事だろう。

 とはいえ、ニュータイプをこうして捕らえて、それでどうするのかという思いもあるが。

 アクシズに置いておくのか、それとも月まで連れ帰るのか。

 月まで連れ帰れば、ニュータイプだけにセイラが何とかしてくれるように思う。

 ……うん、そっちの方がいいか。

 そう決めると、後は捕らえるだけなんだが、トゥッシェ・シュヴァルツが下手に暴れ回っているだけに、迂闊に攻撃するのも問題なのは事実なんだよな。

 そんな風に思っていると、ギャン・クリーガーがこちらに近付いてくるのが見えた。

 誰が乗っているのかなんてのは、考えるまでもないだろう。

 そのギャン・クリーガーはガーベラ・テトラ改の隣までやって来ると、通信を送ってくる。

 

『アクセル……その、あれは何かしら?』

 

 戸惑った様子のモニクの声。

 いや、声だけじゃなくて、映像モニタに表示されているモニクの顔も戸惑いの表情を浮かべていた。

 モニクにとっても、トゥッシェ・シュヴァルツの様子は完全に予想外だったのだろう。

 

「アクシズで反乱を起こしたエンツォとかいう奴の奥の手……敵のニュータイプだよ。最初はハマーンが戦っていたんだが、俺を狙ってきた事もあって俺が相手をしていたんだが、気が付いたらこんな感じだった」

『こんな感じって……どうするのよ、これ?』

「俺に言われてもな」

『この状況を作ったアクセル以外の誰に聞けと?』

 

 呆れた様子で言うモニク。

 実際、トゥッシェ・シュヴァルツの混乱具合を見ればそんな風に言われてもおかしくはない。

 おかしくはないが、だからといってどうすればいいのか迷っているのは事実。

 

「パイロットはニュータイプだし、乗っているMSはニュータイプ用に改修されたリック・ドムだ。出来ればどっちも確保したい」

 

 ニュータイプは元々貴重なのだから、ここで殺すというのは出来れば避けたい。

 トゥッシェ・シュヴァルツも、アルテミス的には大きな意味を持つだろう。

 ……いやまぁ、ニュータイプ本人はともかく、トゥッシェ・シュヴァルツならアクシズに設計データとか残ってる筈だから、それがあれば実機はどうしても必要って訳ではないんだが。

 ただ、それでも実機はあればあった方がいいのは間違いないだろうし。

 

『アクセルなら、何となくそう言うと思ったけどね。それで、確保するにもどうするの? まさか、あんな暴れた状態のままで放っておくような事は出来ないでしょう?』

「出来れば気絶させたいところなんだが」

 

 最善なのは、向こうが大人しく降伏してくれる事だろう。

 だが、あの暴れっぷりを見る限り、それが期待出来るようには思えない。

 だとすれば、やはり気絶させるのが一番手っ取り早いだろう。

 ……とはいえ、気絶させるとなると、それはそれで問題もある。

 具体的には、どうやって相手を気絶させるかと。

 いや、単純に気絶させるだけならそこまで難しくはない。

 ないのだが、そうするとトゥッシェ・シュヴァルツに大きな損傷を与えてしまう事になりかねなかった。

 トゥッシェ・シュヴァルツを出来るだけ無傷で確保したい身として、それは絶対に避けたい。

 

『アクセルなら、どうとでも出来るんじゃないの?』

「……下手に俺が触れると、トラウマを与えそうで嫌なんだよな」

 

 こうしてモニクと話している今も、トゥッシェ・シュヴァルツはずっと暴れまくっている。

 さっきビットに触れた時、ビットを通してトゥッシェ・シュヴァルツのパイロットと思しき者の悲鳴……絶叫? とにかくそういうのが伝わってきた。

 今はビットに触れてないから特にそういうのも聞こえてはこないが、恐らく今もトゥッシェ・シュヴァルツのコックピットの中では絶叫を上げ続けているのだろう。

 ビットにはもう触れていないんだし、出来れば落ち着いて欲しいとは思うが……今も暴れまくっているのを見れば、それは難しい。

 

『その辺はもう多少の被害は仕方がないんじゃない? それにこれが敵にとっての奥の手であっても、アクセルが動けないのはアクシズにとっても痛いでしょうし』

 

 モニクの言葉は否定出来ない事実でもあった。

 元々、エンツォの反乱にはアクシズにあった戦力のうち、半分以上が協力している。

 つまり、アクシズ側の方が不利なのだ。

 ニュータイプのハマーンと、トゥッシェ・シュヴァルツと同じくニュータイプ用に改修し、ビットを使えるシュネー・ヴァイスという戦力がアクシズ側にはあるが、同時にエンツォ側にもトゥッシェ・シュヴァルツがあった。

 現在は俺がトゥッシェ・シュヴァルツを押さえているので、ハマーンの操縦するシュネー・ヴァイスはアクシズ側での大きな戦力となっているのは間違いない。

 しかし、それを込みで考えても、やはり戦力の絶対的な差というのは、そう簡単に覆せるものではなかった。

 これでアクシズ側が少数精鋭なら、もう少し話は別だろうが……練度という点は双方変わらないしな。

 結果として、今の時点ではまだアクシズ側が全体的に不利な状況なのは間違いなかった。

 

「けど、モニクが来たということはナスカ級が……それに続いて、アクシズ艦隊も来るだろう? なら、戦力差はいずれ逆転すると思うんだが」

 

 アクシズの戦力が具体的にどのくらいあるのかは分からない。

 シュネー・ヴァイスやトゥッシェ・シュヴァルツを見る限りだと、独自のMSの開発はせず、1年戦争時代のMSを改修して戦力を揃えているといったところだろうが。

 とはいえゼロ・ジ・アールやノイエ・ジールの件を考えると決してアクシズに技術力がない訳ではない、

 いや、寧ろMAに関係する技術力ではルナ・ジオンのディアナを超えているだろう。

 なのに、何故新型はMAだけで、MSは改修機なのか。

 恐らくだが、MSの開発については慎重になっているのだろう。

 1年戦争のジオン軍を思えば、その判断は決して間違ってはいない。

 次から次に新型MSを投入したのはいいが、それによって補給や整備でかなり苦労する事になったのだ。

 統合整備計画がもっと前に行われていればその辺はどうにかなったかもしれないが、実際に統合整備計画に準じた機体が開発されたのは1年戦争終盤だった。

 その辺の状況を考えれば、多種多様なMSをつくるのではなく、優秀な性能のMSを1種類……あるいは少数開発し、その機体のバリエーションを作って対応するというのが最善だろう。

 連邦軍のMSの運用方法がこれだな。

 ジムを開発し、基本的にそのジムを改修して色々な機種を作ったのだから。

 勿論、ガンダムやガンキャノン、ガンタンクといったMSも幾つか開発されているのだが。

 ともあれ、アクシズは1年戦争におけるジオン軍から学び、MSの開発には技術を蓄積し、十分に検討してからという事なんだと思う。

 個人的には多種多様なMSを作るジオン軍の開発方針は好みなのだが……まさか好みだけでMSの開発も出来ないだろう。

 また、アクシズは火星の近くにいたので連邦軍との戦いもなかったので、そういう方針でも問題はなかった。

 いやまぁ、キシリア派が近くにいたので完全に気を許すといった事は出来なかっただろうし、何より今はエンツォによって反乱を起こされているので、実際に少し見通しが甘かったのかもしれないが。

 ともあれ、俺としてはアクシズのMSの開発方針について不満はない。

 元々アクシズは決して物資に余裕がある訳でもなかったし。

 そして……そのような開発方針で、MSは1年戦争時代の物を使っているからこそ、俺達が援軍として強力な戦力として活躍出来るという事を意味していた。

 

『そうね。でも、援軍が来るまで待っていれば、それだけアクシズ側の戦力が減る事を意味しているわ。アクセルはそれでもいいの?』

「それは……」

 

 モニクの言葉に反論は出来ない。

 実際、ただでさえエンツォ側に味方をしている者が多い以上、この反乱が――当然ながらアクシズの勝利で――終わっても、アクシズが有する戦力は間違いなく減る。

 エンツォを始めとした反乱軍の中心人物達は処刑なり終身刑なりされる事になるのは間違いない。

 だが、幹部であったり末端の兵士の全てをエンツォ達と同様に処理する訳にはいかないだろう。

 だが、それでも裏切った過去がある以上、以前までと同じような戦力として使うのは難しい。

 それに……俺達が転移してきた時、すれ違った艦隊の件もある。

 あの艦隊はザンジバル級3隻、チベ級2隻、ムサイ級5隻で構成されていた。

 現在のアクシズの戦力として考えれば結構な価値がある。

 だというのに、あの艦隊は……アクシズに到着した今だからこそ分かるが、この反乱から逃げ出したのだ。

 エンツォに協力するでもなく、ハマーンに協力するでもなく、第3の道を選択した。

 一体どういう連中が……どんな派閥の者が乗っていたのかは、俺にも分からない。

 だが、それによってアクシズの戦力が余計に減ったのは間違いないだろう。

 考えられる中で一番可能性が高いのは、やっぱりキシリア派だろうが。

 

『だから、アクセルが早いところ敵を倒す……それも出来れば撃破するんじゃなくて、パイロットを殺さないでMSを無効化して欲しいのよ』

「トゥッシェ・シュヴァルツの方はモニクに任せてもいいのか?」

『ええ。あの様子なら問題ないと思うわ。ビットを使われると少し厄介かもしれないけど……広範囲に攻撃すれば対処は出来るでしょう?』

 

 どうやらモニクはあっさりとビットの対抗手段を考えていたらしい。

 実際、ビットはPS装甲やらラミネート装甲といった特殊な装甲はないし、当然のようにIフィールドの類もない。

 もしかしたらビームコーティングくらいはされてるかもしれないが、UC世界のビームコーティングの効果は殆どない。

 お守り程度のものでしかないのだ。

 これがオルフェンズ世界で使われているナノラミネートアーマーとかなら、ビームに対して強力な防御力を発揮するんだが、このUC世界でそれに期待する方が間違っている。

 そんな訳で、攻撃さえ当たればビットはあっさりと破壊出来る。

 大きさもMSの半分程度……いや、改良されてもっと小さくなっているが、それによって攻撃が命中しにくくなったのと同時に、防御力も落ちた。

 結果として、命中すれば撃破出来るのだ。

 これがもっと小さく……それこそニーズヘッグのファントムくらいに小さくなれば、より攻撃が命中しにくくなるんだが。

 また、モニクのギャン・クリーガーは当然のようにシェキナーを装備してるので、ジャイアントガトリングを使えば面射撃が可能だ。

 もしくはミサイルを使ってもいいだろう。

 

「そうだな。なら、トゥッシェ・シュヴァルツの件はモニクに任せる。俺は殺さないように向こうの戦力を減らしてくるよ」

 

 そう、モニクに言うのだった。

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