転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4263話

 こちらの不意を打つようにして行われた、ザンジバル級の攻撃。

 これは俺にとっても完全に予想外だった

 エンツォにしてみれば、俺を倒せると思った攻撃だったのだろうが……自分が生き延びる為なら、仲間を平気で殺せるのか。

 ある意味で、軍人の素質としては決して間違ってはいない。

 だが同時に、そのような上官が部下に慕われるかは……正直、微妙なところだろう。

 もっとも、エンツォの側にいる者達……具体的にはザンジバル級に乗っている者達にすれば、自分達が助かるという意味では頼りになる上官として慕われている可能性もあったが。

 とはいえ、それはあくまでもザンジバル級に乗っている者達だけの話だ。

 ムサイ級に乗っていた者達にしてみれば、ふざけるなといった感じだろう。

 実際、もう1隻のムサイ級からの攻撃は明らかに精細を欠くようになったし。

 もう1隻のムサイ級にしてみれば、自分達の仲間があっさりとエンツォに切り捨てられたのだ。

 やられた方にしてみれば、ふざけるな、納得出来ないといったように思ってもおかしくはない。

 なるほど、これはエンツォのカリスマ性――あればの話だが――を落とすのにちょうどいいな。

 それにここで俺がザンジバル級に向かえば、もう1隻のムサイ級も自分達に攻撃されないと判断して再度俺に攻撃を始めるかもしれないし。

 そんな訳で、俺はもう1隻のムサイ級に向かう。

 その際に背後で行われているMSの戦い……ハマーンのシュネー・ヴァイスとゲルググJ5機の戦いを見てみると、そこはちょうどビットによって3機目のゲルググJが撃破されたところだった。

 ……さすがにこの状況では、不殺は出来ないか。

 ハマーンとしては、出来れば殺したくなかった筈だ。

 別にハマーンが優しいとかそういう理由ではなく、恐らくこれが初陣……あるいは初陣ではなくても、まだ数回の実戦しか経験してないだろうし、それ以外にも生け捕りにすれば、その相手は色々と使い道ものあるのだから。

 だが、それはあくまでも自分が生きていての事であり、自分が死んでも不殺を貫くのは何の意味もない。

 あるいは人によってはそれでも不殺を貫くという者もいるかもしれないが、ハマーンはそういうタイプではなかったという事なのだろう。

 味方として考えるにはそっちの方がいいが。

 あの様子だと、ハマーンは放っておいても大丈夫だろう。

 だとすれば、俺がやるべきなのはやはりムサイ級を……

 

『降伏したい!』

 

 ムサイ級のメガ粒子砲にビームマシンガンで狙いを定め、トリガーを引くというところでムサイ級から通信が入る。

 オープンチャンネルでの通信は、明確なまでの降伏の申し込み。

 するとすぐにザンジバル級からも同様に通信が入る。

 

『貴様ぁっ!』

 

 映像モニタに表示されたのは、30代……40代? まぁ、そのくらいの男。

 恐らくこの男が……

 

『エンツォ大佐、自分の命じた事を理解しておりますか? 味方に撃たれて死ぬなど……』

 

 降伏を申し込んできた男……恐らくムサイ級の艦長だろう男が、エンツォに向かって言う。

 

『勝つ為なのだ! 我が真ジオン公国軍の栄光ある未来の為に、今ここで負ける訳にはいかん!』

 

 エンツォが叫ぶ。

 だが、ムサイ級の艦長の方はそんなエンツォの言葉に対し、全く同意した様子はない。

 それどころか、決して納得出来ないといった様子すら見せていた。

 ……まぁ、幾ら勝利する為とはいえ、自分を犠牲にした勝利なんて、とてもではないが許容出来ないしな。

 これが逆の立場なら……エンツォを犠牲にしないと勝てないというのなら、どうなっていたんだろうな。

 エンツォは素直に自分の死を受け入れるのか、あるいは自分は別といったように主張するのか。

 何となくだが、今まで聞いてきたエンツォの話からすると大人しく自分の死を受け入れるようには思えないな。

 それこそ自分だけは何とか生き延びようとするように思える。

 勿論、これはあくまでも俺がこれまで聞いてきた話によるものであって、もしかしたらそういうのとは違って潔い最期を迎えるかもしれないが。

 ただ、それはあくまでもそういう可能性というだけであって、実際はまず違うだろう。

 

『私はその言葉を信じる事は出来ない! 私はあくまでもこの艦の乗員達の命を預かっているのだ。それをエンツォ大佐の私利私欲の為に死ねと言われても、受け入れる事は出来ません』

『貴様ぁ……』

 

 そんな通信が聞こえてくるが、それはそれでどうなんだ? と思わないでもない。

 エンツォの言動に色々と問題があるのは事実だろう。

 だが、ムサイ級の艦長の言葉も、だからといって素直に受け入れられるかというと……ちょっと微妙だ。

 そもそもこのムサイ級の艦長も自分から望んで今回のエンツォの反乱に協力した訳で。

 それでこうして自分達が追い詰められるようになったら、あっさりと降伏してくるってのは……いやまぁ、面倒がないだけ、楽なのは間違いないんだが。

 ただ、この状況について知ったハマーンがどう思うか。

 戦いが終わった後での話になるが、その時このムサイ級の艦長を含めた乗組員がどのような境遇になるのかは……いや、さすがにこの艦長もその辺りについては分かった上で言ってるんだよな?

 土壇場で……自分達が負けそうになったところでエンツォを切り捨てて寝返ったりしても、それが功績になるとはとてもではないが思っていない筈だ……と思う。

 ここで断言出来ないのは、その辺りの認識は人によって大きく違う為だ。

 自分だけは大丈夫とか、そういう根拠のない考えを抱いていたりした可能性も十分にあった。

 まぁ、だからといって俺がここでどうこう言ったりするつもりはなかったが。

 もしここで俺が介入した影響によって、ムサイ級の艦長がやはりエンツォの味方をするとか、そういう風に言ったりしたら面倒な事になるのは間違いないし。

 でれば、ここは俺が何もしないでこのまま2人の仲を決定的なまでに引き裂き、こちらにとって有利なようにした方がいいだろう。

 ……幸い、シュネー・ヴァイスの方を確認すると、ゲルググJも残り1機にまで減っているし。

 であれば、多少の時間的な余裕が……

 

「あ、駄目だ」

 

 シュネー・ヴァイスの動きを見た俺は、即座に考えを翻す。

 元々、ビットの推進剤が残り少ないというのはハマーンに聞いていた。

 それを示すように、シュネー・ヴァイスの操るビットの幾つかは既に推進剤切れになっており、宇宙を漂っている。

 だとすれば、今動いているビットも……そして本隊であるシュネー・ヴァイスもまた、推進剤切れになるまでそう時間はないだろう。

 そうなると、最初に考えたようにムサイ級の艦長とエンツォを決定的に仲違いさせて殺し合いをさせるといった訳にはいかないだろう。

 ……そもそも、俺が予想したように本当にそういう流れになるのかどうかも分からなかったし。

 そこまで企んだのは、出来ればガーベラ・テトラ改の推進剤や残弾を温存したいからという理由からだ。

 だが、どうしてもそうしたい訳ではない以上、ハマーンの方が危ないのなら、ガーベラ・テトラ改の推進剤や残弾を使ってでも、とっととこの状況を解決した方がいい。

 やっぱりこの宙域に来る前に補給をしておいた方がよかったか。

 そう思うも、そうなっていればこの連中に時間を与えていたのは間違いない。

 であれば、やはり補給をせずにここに来たのは決して間違いではなかったと思う。

 ……とはいえ、それでも今のこの状況を思えば、やはりそれは間違いではなかったと思うが。

 エンツォに時間を与えていれば、それこそ何か妙な事を考えていないとも限らなかったし。

 もしくは、アクシズから逃げ出して火星のキシリア派と合流するとか。

 そうなったらそうなったで、こっちとしても対処はしやすかったりするのだが。

 ただ、アクシズとしては反乱を起こした者達を逃がす事になる以上、それを許容は出来ないだろう。

 

「悪いが、こっちにもそんなに余裕はない。そうである以上、いつまでもお前達のやり取り見ている訳にはいかないんでな。……そろそろどうするのか、決めて貰おう」

『降伏する。それは先程言ったように、変わらない事実だ』

 

 俺の通信にムサイ級の艦長がそう口にする。

 エンツォがどうこうといった事は、もうとてもではないが考えられないのだろう。

 先程この艦長が言っていたように、この艦長は自分の部下を守るのを優先しているのだから。

 そうである以上、このままエンツォに従っていると自分は勿論、部下達も殺されてしまう。

 だからこそ、ここで素直に降伏をしようと考えたのだろう。

 

『貴様ぁっ!』

 

 エンツォが叫ぶも、それは今更の話でしかない。

 俺もエンツォの叫びを無視、ムサイ級の艦長に向かって言う。

 

「なら、降伏するという証拠を見せろ。具体的には、エンツォの乗っているザンジバル級を落とせ」

 

 そう指示を出すと、映像モニタに表示されたムサイ級の艦長は厳しい表情を浮かべ……

 

『やれ』

 

 だが、数秒も経たないうちに口を開き、部下に命じる。

 そんな艦長の言葉に部下も従い、ムサイ級はメガ粒子砲をザンジバル級に向かって撃つ。

 狙いがいい加減だったのか、それとも意図的にそこを狙ったのか、はたまたそれ以外の理由からなのか。

 ともあれ、ムサイ級の撃ったメガ粒子砲はザンジバル級の後方……推進器の近くに命中した。

 この一撃でザンジバル級が撃破される事はなかったが、ザンジバル級がここから逃げ出す事は不可能になった。

 ……いや、全く移動出来ないって訳ではないのだろうが、推進器付近を破壊されたのだ。

 そうなると、とてもではないが全力でこの場から逃げるといった事は不可能になるだろう。

 そうなれば、ここから逃げ出そうとしても間違いなく俺達……いや、それともこの場合はムサイ級か? とにかくこの場から逃げ出す事は不可能となる筈だ。

 ……そうなると、当然ながらキシリア派に合流するといった事も出来なくなる訳だ。

 もっとも、キシリア派に合流するというのはあくまでも俺の予想であって、エンツォが本当にそうするのかどうかまでは俺にも分からないが。

 ムサイ級の艦長にしてみれば、こちらに降伏を申し込みはしたし、エンツォを見限りもした。

 だからといって、ブリッジを砲撃してエンツォを殺すといったつもりもそこにはなかったのだろう。

 だからこそブリッジではあなく、推進部付近を破壊したのだろうが……それが、エンツォの怒りに火を点けた。

 

『貴様ぁっ! よくも! 反撃だ、反撃をしろ! 裏切り者を許すな!』

 

 必死になってそう叫ぶエンツォだったが、それはつまり俺に攻撃するのではなくムサイ級に攻撃をしろと言ってるようにしか思えなかった。

 怒りから俺の存在を完全に忘れている訳だが、真ジオン公国軍とやらを率いる者として、その態度はどうなんだ?

 こっちにとっては、その方が楽なので別にいいのだが。

 とはいえ、ムサイ級に向けてザンジバル級が攻撃をしようとし……

 

「諦めろ」

 

 その言葉と共にビームマシンガンをライフルモードにしてトリガーを引き、メガ粒子砲を破壊する。

 それだけではなくミサイル発射管も同様に破壊し……そこでビームマシンガンのEパックを使い果たす。

 予備のEパックもないので、もうこの戦闘でビームマシンガンは使えない。

 とはいえ、その代わりにという訳ではないのだが、腕部とテール・バインダーの110mm機関砲とビームガン、ビームサーベル、頭部バルカンはまだ使用可能だ。

 そんな訳で、腕部とテール・バインダーの110mm機関砲を使い、ザンジバル級の機銃を次々に破壊していく。

 そうして気が付けば、ザンジバル級の武装はその大半が破壊されていた。

 取りあえず高威力のメガ粒子砲とミサイルは使用不可といった状態になったのは間違いない。

 あるいは、そのような状況であっても対処出来る何らかの手段があったりしたら、また話は別だろうが。

 ……アクシズの技術力を考えると、普通にそういうのがあってもおかしくないんだよな。

 そんな訳で、俺としてはさっさとエンツォを降伏させたい。

 生け捕りにした方がいい以上、素直に相手が降伏するかどうか……いや、もしエンツォが素直に降伏しなくても、ブリッジクルーとか部下がエンツォを捕らえれば……そうだな。

 

「降伏しろ、エンツォ。そうすればお前の命はともかく、部下の命は助けると約束しよう」

 

 その言葉に、映像モニタの向こう側……エンツォの背後にいる数人の顔色が変わったのが分かる。

 無理もないか。今の状況はエンツォ派にとって既に詰みに近い。

 戦力もその殆どが失われ、ハマーンと俺に間近に迫られている。

 もっとも、俺のガーベラ・テトラ改もハマーンのシュネー・ヴァイスも、残弾や推進剤がかなり限界に近い。

 もし向こうが持久戦を仕掛けてくれば、あるいは勝つのは無理でも逃げ延びる事は出来たかもしれない。

 だが、向こうはそんなことについては全く知らず……

 結果として、数分後にはエンツォはザンジバル級のブリッジクルーに取り押さえられるのだった。

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