転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4265話

 ハマーンの演説……演説? いや、あれは演説と呼べるようなものだったのかどうかは正直微妙なところだが、それでもとにかく強い説得力が発揮され、アクシズで起きた反乱は急速に収まっていった。

 ハマーンの持つカリスマ性も影響したのだろうが、それ以外にもやはりエンツォの旗艦であるザンジバル級からの通信だった事で、ハマーンが演説の中で言ったエンツォを捕らえたというのが本当だと思われたのだろう。

 

『アクセル、私達も一度アクシズに戻ろう』

 

 戦闘の光が完全に消えたところで、ハマーンが俺にそう言ってくる。

 あくまでも戦闘の光が消えたのはここから見える範囲内での事だ。

 それ以外の場所……ここから見えない場所では、まだ戦闘が行われている可能性も否定は出来なかった。

 だからこそ、ハマーンはアクシズに戻ってその辺がどうなっているのかを確認しようと思ったのだろうが……

 

「アクシズに戻るのはハマーンだけでいいだろう。俺は取りあえずナスカ級に戻って、無事を知らせる必要がある」

『む……』

 

 何故か俺の言葉に不満そうな様子でそう口にするハマーン。

 今のどこにそうした行動を取る理由があった?

 そう思ったが、俺には分からなくてもハマーンにはそのように思うところがあったりするのだろうと思っておく。

 こういう時に余計な事を言うと面倒なのは、これまでの経験からしっかりと理解している。

 俗に言う『俺はこういうのに詳しいんだ』って奴だな。……そういうのに限ってポカをやらかしたりするんだが、それについては気にしない方向で。

 

「そもそも俺はナスカ級で来たんだ。エンツォの反乱があったから成り行きでこうして戦いに参加したけど、形式的にもしっかりとナスカ級でアクシズに入った方がいいだろう?」

『……仕方がない。では、そのように。ただし、後でしっかりと話をさせて貰うので、そのつもりで』

「分かった」

 

 そう返すが、この場合の話って恐らくは俺が実はルナ・ジオン軍のアクセル・アルマー中尉ではなく、シャドウミラーを率いるアクセル・アルマーだという件なんだろうな。

 一緒に行動している時の通信から考えて、ハマーンがその辺について感づいているのは間違いないと思う。

 まぁ、ルナ・ジオンの下部組織である事を考えれば、その辺について知られても特に問題はないと思うが。

 これで実はハマーンがアクシズを率いるようになってルナ・ジオンから離れるとか言いだしたら、問題ではあるが。

 というか、さっきの通信で初めて知ったけど、ハマーンの役職って摂政だったんだな。

 摂政というのは、確か仕える主が小さい時、その代役として国を治めるとかそんな感じだったと思うんだが……そうなると、ハマーンが仕えるのはミネバという事になるのか?

 ただ、ミネバは一応アクシズにはいるが、別に国を率いる身という訳ではない。

 ……この辺は色々とあって摂政とかそういう感じになったと考えるべきか。

 まぁ、その辺については俺が考えるべき事じゃなくて、それこそルナ・ジオンに所属する者達が考えるべき事だろうから、俺は気にしないでおくが。

 そんな訳で、俺はその場から離れる……といったことは、すぐには出来なかった。

 さすがにこの場でハマーンだけを残していくのは、色々と不味いしな。

 今エンツォ派の面々……特にその旗艦であるザンジバル級が大人しくこちらに従っているのは、あくまでもこちらの戦力が圧倒的だからだ。

 それはハマーンの操縦するシュネー・ヴァイスがいるからというのも間違いないが、同時に俺が……ガーベラ・テトラ改を操縦する俺がいるからというのも大きな理由だった。

 そうである以上、もしここで俺がいなくなったりしたら……その時は絶対にとは言い切れないものの、ハマーンを倒して一発逆転を狙うといった可能性は決して否定出来るものではなかった。

 勿論、この状況でそのような事をして再びエンツォの側についても、それでエンツォが納得するとは思えない。

 一度自分を裏切った部下なのだから。

 だが、実際にそういう行動をする奴は、その辺については気にしない……というよりも、自分ならそういうのは問題ないだろうと思う者が多いのも事実。

 だからこそ、その場の感情で特に深い考えもなく動く可能性は充分にあったのだ。

 それは俺にとっても決して好ましいことではない。

 なので、取りあえず戦力が……ハマーン派の戦力がここに到着するまでは、俺もハマーンの側で待機する事にした。

 そして、先程のハマーンの演説は当然のようにエンツォ派だけではなくハマーン派にも届いており……

 

「来たな」

 

 やがて待っていると、リック・ドムとゲルググの混成MS部隊が姿を現す。

 ゲルググ……デラーズ・フリートではあまり使われていなかったんだが、アクシズだと何気に多いよな。

 これはつまり、1年戦争が終わってアクシズに逃げ込んできた者達がゲルググを大量に持ち込んだという事なのだろう。

 もしくは、アクシズにゲルググの設計データが渡っていてるとか……うん?

 ゲルググの中に1機、妙なゲルググを発見する。

 それは普通のゲルググと違って両肩がかなり大きくなっており……どうやらその両肩にスラスターが内蔵されているらしい。

 微妙にガーベラ・テトラ改のショルダー・バインダーに……より正確には、サイサリスのフレキシブル・スラスター・バインダーに似ているな。

 

「ハマーン、あのゲルググは何だ?」

『うん? あれというのは……ああ、リゲルグか』

「リゲルグ?」

『そうだ。ゲルググも高性能なMSなのは間違いないが、かといっていつまでもそのまま使い続ける訳にもいかない。その為、アクシズで改修したのが、あのリゲルグだ』

「……なるほど」

 

 ゼロ・ジ・アールやノイエ・ジールを見れば分かるように、アクシズの技術力は決して低くはない。

 いや、それどころかディアナよりも勝っているところもそれなりに多い。

 であれば、1年戦争の時のMSを改修して性能を上げる事くらいはそう難しくはないだろう。

 

『ショルダー・アーマーが特徴で、あのお陰でかなりの高性能化を果たしている』

「だろうな」

 

 サイサリスのフレキシブル・スラスター・バインダーを、そしてガーベラ・テトラ改のショルダー・バインダーを知ってるだけに、ゲルググ……いや、リゲルグか。そのリゲルグの機動性と運動性が高いのは理解出来た。

 

『技術試験機的な存在だと思って貰えればいい』

「今回の報酬はそのリゲルグの実機……あるいは実機は無理でも設計データが欲しいな」

『どちらも用意しよう』

 

 俺の言葉にハマーンはあっさりとそう言ってくる。

 自分で言っておいてなんだが、まさかこうもあっさりとこっちの要望を受け入れるとは思えなかった。

 ただ、考えてみれば当然の話か。

 俺達が今日偶然来なければ、恐らくエンツォの反乱は成功していたのだろうから。

 であれば、その決定的な……致命的な状況を覆した俺達に報酬を支払うのは当然の事だろう。

 特にアクシズはルナ・ジオンの下部組織だ。

 上位組織に……また、ハマーンは気が付いているようだが、その上位組織の更に上位組織のシャドウミラーを率いる俺にも手間を掛けさせたのだから。

 他にも色々と交渉をする必要はあるだろうが、リゲルグについては是非とも欲しい。

 他にも何かアクシズ独自の機体があれば、それについても欲しいところだが……無理は言えないか。

 アクシズは今回の反乱によって、間違いなく大きなダメージを受けた。

 そうである以上、ここで無理をさせるような事にでもなってしまえば、アクシズの力……戦力だったり、生産力だったりといった総合的な力の回復が遅れてしまう。

 それは俺にとっても決して好ましい事ではないので、その件については程々にするようモニクに言っておいた方がいいだろう。

 いや、モニクは役人としてこのような件について俺よりも詳しい。

 であれば、わざわざ俺がここで何かを言わなくてもその辺については十分に分かっているだろう。

 

「なら……ん? ああ、こっちも応援が来たな」

 

 噂をすればなんとやら。

 ハマーンの仲間から少し遅れて、モニクのギャン・クリーガーも姿を現す。

 トゥッシェ・シュヴァルツの姿がないという事はナスカ級にでも預けてきたのだろう。

 ……そうか。トゥッシェ・シュヴァルツの扱いについても話をする必要があるんだよな。

 こっちで確保した以上、トゥッシェ・シュヴァルツも出来れば調べたいし。

 アクシズは単純な技術力でもディアナに並ぶだけのものを持っているが、ニュータイプ研究という意味ではルナ・ジオンのニュータイプ研究所であるアルテミスを上回っているように思える。

 もっとも、これについては方向性の違いもあるのだろうが。

 具体的には、アクシズではビットの研究を主としているのに対し、アルテミスでは有線ビーム砲の研究を主としてる。

 ニュータイプ用の兵器として、どちらが優れているのかと考えれば、それは間違いなくビットだ。

 何しろ有線ビーム砲の類は、有線という名称からも分かるように、ビーム砲とMSやMAがケーブルで繋がれているので、どうしても自由度という点ではビットに劣る。

 だが……同時に、ビットを使えるのはニュータイプ能力がかなり強い必要があり、ニュータイプと呼ばれる者の中でも一部でしかない。

 それに対して、有線ビーム砲はそこまでニュータイプ能力が強くなくても使える……どころか、ブラウ・ブロの例を見れば分かるようにニュータイプではないオールドタイプであっても使えるのだ。

 1年戦争で有線ビーム砲を使えた機体としては他にジオングもあったが、このジオングも実は複座式で、乗り込むパイロットが増えればブラウ・ブロと同じようにオールドタイプでも有線ビーム砲を操縦出来たらしいし。

 ……もっとも、その有線ビーム砲についてもノイエ・ジールの有線クローアームを見れば分かるように、アクシズが一足先にいたりするんだが。

 とにかくそんな訳でニュータイプ研究という点では間違いなくアクシズはアルテミスの先にいる訳で、そのアクシズの最新鋭ニュータイプ用MSのトゥッシェ・シュヴァルツは、是非とも確保しておきたかった。

 実際にそれを解析する事でどこまでアルテミスのニュータイプ研究が進むのかは分からないが、それでも今までよりマシな状況になるのは間違いないだろうし。

 

『アクセル、待たせたかしら?』

 

 トゥッシェ・シュヴァルツについて考えていると、モニクからの通信が入る。

 

「いや、俺も今来たところだ」

『あのね……一体何を言ってるのよ、何を』

 

 俺の返しに呆れた様子でモニクが言う。

 どうやら俺の返しがお気に召さなかったらしい。

 今までそれなりに喜ばれた返し方だったんだが……残念だったな。

 

「こういう場合の定番だろう?」

『あのね……これがデートならいいけど、今はそういう時じゃないでしょ? もっとこう……時と場合を考えなさい』

 

 モニクの小言が始まりそうだったので、話題を変える。

 

「トゥッシェ・シュヴァルツの方はどうなった?」

 

 あまりにも露骨な話題変換だった為、モニクも俺が話題を変えようとしている事には気が付いたらしいが、それでもトゥッシェ・シュヴァルツの件について話しておいた方がいいと判断したのだろう。

 俺を一瞬ジト目で見たものの、素直に話題を変える。

 

『ナスカ級の方に収容したわ』

「あのパイロットは完全に錯乱していたみたいだけど、その辺はどうなった?」

 

 サイコミュを通して俺と接触した為に、俺に敵意を持っていたのが影響してか、完全に錯乱していた。

 まるで駄々をこねる子供のように……といった表現が相応しい程に。

 もっと具体的に言えば、玩具屋の前で玩具を買って欲しいと床に寝転がって手足をバタつかせる……といったような感じか。

 本人がそれを聞いて納得するかどうかは、また別の話だったが。

 ともあれ、そんな状況だったトゥッシェ・シュヴァルツのパイロットだ。

 そのままナスカ級の格納庫に収納しても、それこそナスカ級に被害が出てしまうのは間違いないだろう。

 だが、モニクの様子を見る限りでは、とてもそのような状態になっているとは思えない。

 だとすれば、何とかして錯乱状態を落ち着かせたのか。

 ……とはいえ、落ち着かせたら落ち着かせたで、それはつまりパイロットが冷静になったという事を意味しており、エンツォ派の戦力として働いてもおかしくはない。

 だが、幸いなことにそういうのがなかったのは、これもまたモニクを見れば明らかだろう。

 

『ああ、その辺については心配しなくてもいいわ。……アクセルとの接触が余程怖かったんでしょうね。錯乱状態から暫くすると、落ち着いた……いえ、茫然自失状態になったわ。そうなってからナスカ級に運び込んで、既にコックピットからパイロットを運び出して、隔離中よ』

 

 そういうモニクだったが、どことなく視線に俺を責めるような色があったのは……俺の気のせいだという事にしておこう。

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