転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4266話

 エンツォの起こした反乱は、無事に鎮圧された。

 既にエンツォ派の兵士達も降伏しており、現在は謹慎処分中となっている。

 ……ハマーンを含めてアクシズの上層部としては、エンツォ派の戦力を全員厳しく罰する事は出来ない。

 ただでさえアクシズは戦力がそこまで多い訳ではないのに、その戦力の半分以上がエンツォ派として反乱に参加したのだから。

 これはマハラジャの後を継いで摂政となり、実質的にアクシズを率いる事になるハマーンがまだ16歳と若いというのもあるし、そのハマーンの後ろ盾となる者達が決して多くはないという事も意味してるだろう。

 例えばこれで、異名持ちのパイロットとかがアクシズにいて、ハマーンの味方をしていたのなら、エンツォ派に味方する戦力も今回のように多くはならなかっただろう。

 もっとも、ハマーンの後ろ盾がいなかった以外に、エンツォの扇動の仕方が上手かったというのも、この場合はあるんだろうが。

 アクシズはルナ・ジオン建国当時から、マハラジャがダイクン派という事もあってセイラが……アルテイシア・ソム・ダイクンが建国した国という事で、ルナ・ジオンに従っていた。

 マハラジャとしてはダイクン派だった事もあって、そのような行動に出るのは当然だったのだろう。

 だが、アクシズにはダイクン派だけではなく多くの派閥が存在していた。

 この辺、マハラジャの優しさからくるものなのだろうが、それが結果的に今回の一件を引き起こす一因にもなってしまった。

 ダイクン派に協力するのは嫌だという者。

 あるいはアクシズがルナ・ジオンにつくのは避けたいので、それを妨害しようという者。

 他にも色々とあるのだろうが。そのような者達をエンツォが取り込み、日和見をしていた者達もエンツォ派の方が戦力が多いという事で流されたりして、その結果最終的にはエンツォ派はアクシズの戦力の半分以上を従えた訳だ。

 色々な意味で、アクシズにとって今回の反乱は厄介だった訳だが……ともあれ、そんな訳でアクシズも反乱を起こしたエンツォやその側近といった者達はともかく、末端の兵士はそこまで厳しい処罰は受けないだろう。

 せいぜいが厳重注意だったり、給料を減らされたり、場合によっては降格とかか。

 ……もっとも、それはあくまでも表向きの処分だ。

 反乱を起こしたというレッテルはずっとついて回るだろうし、危険な場所には反乱を起こした者達が優先的に派遣され、当然ながら出世についても大きなマイナスとなる。

 まぁ、その辺は反乱に加担した自己責任なので、仕方がないとは思うが。

 

「それで、トゥッシェ・シュヴァルツの方はどうなっている?」

 

 ナスカ級のブリッジで、俺は艦長にそう尋ねる。

 本来ならモニクに尋ねたいところなのだが、そのモニクは現在ユーリー艦隊だったり、アクシズだったり、後は補給艦隊だったりと通信を行って様々な打ち合わせの真っ最中だ。

 だからこそ、今この場でそういうのを尋ねられるのはナスカ級の艦長しかいなかった。

 

「メカニック達がデータ取りをしていますが、それでも正確なデータとはいきません。どうしても研究所にあるような本格的な機器と比べると……」

「まぁ、それは仕方がない。取りあえずまずは大雑把でもいいから、必要なデータは取っておけ」

「はい、その予定です。けど……わざわざ、そのような事をする必要があるのですか? トゥッシェ・シュヴァルツでしたか。それを月に持ち帰ってから、ディアナなり、アルテミスなりで調べればいいのでは?」

「俺もそう思わないではない。けど、何が起きるのか分からないしな。何かあった時、後でデータを取っておけばよかったと後悔するよりは、今のうちに少しでもデータを取っておいた方がいいだろうし」

 

 何しろ、反乱があったばかりだ。

 トラブル誘引体質を自覚してる以上、それこそいつ何があってもおかしくないのは事実。

 ……いや、寧ろこの反乱も俺がアクシズに来たタイミングで行ったとなると……

 うん、この辺については、これ以上考えるのは止めておこう。

 

「分かりました。ただ、パイロットの方は……どうしますか? 今は落ち着いてますが、いっそアクシズに返した方がいいかもしれません」

「あー……まぁ、そうだろうな」

 

 これが普通のニュータイプなら、出来れば月のアルテミスに連れていきたかった。

 だが、サイコミュを通して俺と接触した結果、トラウマを抱えたと思って間違いないだろう。

 アムロの例を考えると、そのトラウマはそう簡単に払拭出来るようなものではない。

 であれば、俺が顔を出す機会の多い月に連れていくのは止めた方がいいかもしれない。

 ましてや、アルテミスには俺の恋人のクスコもいるので、アルテミスにいると俺についての話が耳に入る事も多く、それによってストレスを溜める可能性は十分にあった。

 であれば、折角の貴重なニュータイプにはきちんと戦力として、あるいはニュータイプ研究の対象として活動して欲しいので、そういう意味では月に連れていくより、アクシズに置いておいた方がいいだろう。

 それに……アクシズも別に敵がいないという訳ではない。

 アクシズの近く――あくまでも地球や月と比べてだが――にある火星には、キシリアがいる。

 今のところはキシリアもアクシズにちょっかいは出していないし、寧ろ友好的な関係を築こうとしてはいるらしいが、それがいつまで続くのかは分からない。

 エンツォの反乱の裏にキシリアがいると言われても、俺は驚かないが。

 エンツォは特にキシリア派といった訳ではないが、それでもキシリアが裏から手を回したといった事をしてもおかしくはない。

 実際、デラーズ・フリートなんかはその典型だったし。

 デラーズ・フリートの時はキシリアにとって目障りなデラーズを潰し、残存戦力の中でそこまでデラーズに心酔していない者達を吸収し、強硬派との繋がりを作り、火星に攻め込まないよう連邦軍の戦力を削減し……後はガンダム開発計画のデータを入手というのは、出来たかどうか分からないが、とにかく一石二鳥どころではなく、三鳥、四鳥、五鳥を狙った策略だった。

 こういうのを見ると、やっぱりキシリアは有能だとしみじみ感じる。

 ……もっとも、その有能なキシリアが一体何を思って1年戦争の最後の最後でギレンを暗殺するなどといった事をしたのか、俺には分からなかったが。

 

「モニクの交渉の結果にもよるが、基本的にはアクシズに返す方向で話を進めてくれ」

 

 モニクの交渉能力を考えると、この件についても有効なカードとして使うだろう。

 アクシズはルナ・ジオンの下部組織であるが、だからといってルナ・ジオンも相手の要望を全て受け入れる訳ではない。

 ……まぁ、マハラジャが死んでハマーンが後を継いだという事を考えれば、多少の手加減はするかもしれないが。

 その辺はモニクの考え次第だろう。

 

「分かりました。では、そのように」

「それで、アクシズの入港はいつくらいになりそうだ?」

「もう暫く時間が欲しいと連絡が来ています」

「まぁ……だろうな」

 

 艦長の言葉にそう納得する。

 今はまだ、エンツォの反乱が収まってから数時間といったところだ。

 俺がモニクと共にナスカ級に帰還してからも、まだそんなに時間は経っていない。

 そんな中でもしナスカ級や補給艦隊がアクシズの宇宙港に入った場合、戦後のゴタゴタで何らかの問題が起きる可能性は否定出来ない。

 また、それ以外にも反乱軍の残党がナスカ級や補給艦隊に攻撃をしてくる可能性も否定出来なかった。

 だからこそ、アクシズ側としてはそういう万が一の事態を避ける為に、俺達には今はまだ宇宙港に入って来られると困る訳だ。

 これについては、俺も不満はない。

 ナスカ級はそれなりに居住性も悪くない――アルビオンと比べると結構劣るが――し、もし多少居住性が悪くても、アクシズ内の混乱が治まるまで待つくらいはどうという事もないし。

 寧ろこの状況で無理にアクシズの宇宙港に入って、その結果として何らかの騒動が起きたりしたら、その方が明らかに迷惑だろうし、こちらも面倒な事になってしまう。

 その辺の諸々を考えれば、やはり今は大人しくここで待っていた方がいいのは間違いなかった。

 

「とはいえ、万が一アクシズからの応援要請があった場合、すぐ対処出来るように準備は整えておいてくれ。俺のガーベラ・テトラ改の整備と補給もな」

 

 アクシズ内部に突入するのなら、MSを使うのかどうかは分からない。

 だが、それでもMSを使っての戦闘となる場合の事を考えると、準備しておいて悪いことはなかった。

 

「はい。そちらの方はもう大体終わっています。……トゥッシェ・シュヴァルツもそうですが、ガーベラ・テトラ改のデータ取りも頑張っていますよ」

「俺の機体のデータ……? まぁ、ガーベラ・テトラ改は現在ルナ・ジオンの中では最高峰の性能なんだし、それは当然か」

 

 現在のエースや指揮官が使っているギャン・クリーガーは高性能なMSなのは間違いないし、1年戦争終了後もマイナーアップデートが何度かあった。

 だが、それでもギャン・クリーガーは1年戦争時代のギャンをベースにした機体なのだ。

 ガルバルディβのベースとなったガルバルディαがギャンの格闘能力にゲルググの射撃能力を、あるいはゲルググの射撃能力にギャンの格闘能力をプラスしたと考えれば、ギャン・クリーガーはガルバルディβよりもベースの設計は古いという事になる。

 そういう風に考えれば、エースや指揮官用のギャン・クリーガーも、そろそろ新しい機種に更新すべきなのだろう。

 そして、その最有力候補が、ガーベラ・テトラとガーベラ・テトラ改になる。

 個人的にはフルバーニアンとかも結構気になっているのだが、フルバーニアンはガンダム開発計画の機体として有名になりすぎている。

 だが、フルバーニアンと比べてガーベラ・テトラやガーベラ・テトラ改はガンダム開発計画の機体ではあるが、その痕跡はない。

 外見に関しては、とでもではないがガーベラ・テトラやガーベラ・テトラ改を見てガンダム開発計画の機体だとは思わないだろう。

 試作4号機をベースにガーベラ・テトラを開発したクレナも、その辺についてはしっかりと考え、ジオン系の曲線を多用した外見の装甲にしたりしたし。

 もっとも、それはあくまでも外部での話で、内部構造とかをしっかりと調べれば他のガンダム開発計画の機体との共通点が見つかったりするので、リスクがあるのは間違いないが。

 とにかくそんな訳で、ガーベラ・テトラやガーベラ・テトラ改はギャン・クリーガーに代わるエースや指揮官用の機体の候補の1つとして上がっている訳だ。

 ただ、操縦している身として言わせて貰えば、ガーベラ・テトラの時点で操縦するのに結構な技量を必要とする。

 ましてや、そのガーベラ・テトラを更に改修したガーベラ・テトラ改ともなれば、本当に使いこなすにはトップエース級……異名持ちかそれに準じる操縦技術は必要だろう。

 ちょっとしたエースや指揮官が乗る機体としてはちょっと無理がある。

 そういう意味では、ガーベラ・テトラやガーベラ・テトラ改は少し不向きではあるんだよな。

 

「とにかく、今は特にやるべきこともないので、トゥッシェ・シュヴァルツやガーベラ・テトラ改の調査に時間を使っても問題はないかと」

「それは俺も否定しないけどな」

 

 そうして話しているうちに、やがてブリッジクルーが俺と艦長に視線を向け、口を開く。

 

「アクシズからの入港許可が出ました」

「ふむ、予想よりも早かったな」

 

 艦長の様子からすると、もっと時間がかかると思っていたらしい。

 俺ももっと時間が掛かると思っていたのだが。

 

「アクシズにしてみれば、反乱の鎮圧に協力してくれたのだから、いつまでも外に置いて置く訳にはいかないと判断したのかもしれないな。……ただでさえ、補給物資を持ってきた、上位組織の者達なんだし」

 

 そう言いながら、もしかしたらハマーンの指示かもしれないなとも思う。

 ハマーンは俺をルナ・ジオンのアクセル・アルマー中尉ではなく、シャドミラーを率いるアクセル・アルマーだと認識していた様子がある。

 ……いや、様子があるというよりも完全に俺をそういう風に認識していた。

 だからこそ、出来るだけ早くナスカ級をアクシズに入港させ、俺と話をしたいと思ってもおかしくはない。

 ハマーンも通信でそんな風に言っていたしな。

 だからこそ、一刻も早くナスカ級が宇宙港に入港出来るよう、頑張ってもおかしくはない。

 それでもエンツォ派の残党が暴走しないように処置した上での話ではあるが。

 

「では、入港しても?」

 

 そう尋ねる艦長に頷く。

 そうしナスカ級が……そして少し遅れて、補給物資を運搬したパプア級等もアクシズの宇宙港に入港するのだった。

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