転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4268話

 結局式典に参加する事になり……式典用の礼服についても、アクシズ側で用意してくれる事になった。

 いやまぁ、モニクのようにそういう服を持ってくればよかったのだが。

 あ、でももしかしたら空間倉庫に中にはその手の礼服も探せばあるだろうけど。

 ともあれ、式典に参加することになったのはいいし、こうして用意された礼服に着替えたのもいいが……

 

「なぁ、俺は本当に式典に参加してもいいと思うか?」

 

 控え室でモニクに向かってそう言う。

 モニクはそんな俺の言葉に、着ているドレスが皺にならないよう注意しながら振り向き、呆れたように言ってくる。

 

「今更そういう事を言うのはどうかと思うわよ? そもそも、アクセルが式典に参加するのを受け入れたんじゃない」

「いや、けど……まさか、ミネバが出るとは思わなかったし」

 

 ミネバ……正確には、ミネバ・ラオ・ザビ。

 その名前から分かるように、ザビ家の血を引く者だ。

 血縁的にはドズルの娘となる。

 そう、1年戦争の時にソロモンで俺が殺したドズルの娘だ。

 つまり俺はミネバにとって自分の父親を殺した仇で、ミネバは俺にとって自分が殺した相手の娘な訳だ。

 もっとも、ミネバはまだ幼児といった年齢なので、その辺については何も知らないだろうが。

 つまり、俺が一方的に気まずい思いをする訳だ。

 そう考えると、わざわざ俺が式典に参加する必要があるのか? と疑問に思うのは、そうおかしな事ではないだろう。

 

「ああ、その件。……それについては、アクセルが自分でどうにかするしかないでしょうね。今になって式典に参加しないというのは駄目だけど」

「私もそう思います。ただ、アクセル中尉にとってやりにくいのは理解も出来ますが」

 

 モニクに続いて、こちらも式典に参加する艦長がそう言ってくる。

 そう言うのなら俺と代わって欲しいとは思うが……艦長も式典に参加するんだしな。

 

「はぁ。気を取り直すしかないか。……こう考えると、ミネバがまだ子供なのはラッキーだったと思っておくしかないな」

 

 これでミネバがしっかりと事情を理解し……その上で、自分の、アクシズの立場を理解して接してくるようなことがあれば、気まずすぎる。

 そういう意味では、まだミネバに物心ついていない今というのは……うん、まだマシだったのかもしれないな。

 

「そうね。でも、その辺りはミネバがどう育てられるかにもよるんじゃない? こう言うのは悪いけど、ミネバは最初から両親がいない状況で育つ事になるんだから、アクセルが父親を殺したと言われても、それが普通だと思えば……いえ、難しいかしら」

「その辺りは、それこそ教育の成果によるとは思うが、だからといってこっちに都合のいい事だけを教育するというのも、それはそれで問題だしな。……まぁ、アクシズにいるという時点で色々と問題だろうけど」

 

 いっそ、ミネバは月に連れていってそこで生活させるといった手段も、ない事はない。

 だが、ドズルはアクシズに対しても色々と優遇していたという経緯もあってか、ミネバはある意味でアクシズの象徴的な存在という一面もある。

 また、今はアクシズにいるからいいが、ミネバが月に来たとガルマが知れば、自分が預かりたいと言ってくるかもしれないしな。

 ガルマにとってもミネバは自分を可愛がってくれた兄の子供だ。

 また、そもそも現在のジオン共和国にはドズル派も多いのだから、そのドズルの遺児となると、ジオン共和国で育てたいと思う者も多いだろう。

 だからこそ、ミネバを月に連れていくのはな。

 もしくは、いっそルナ・ジオンを経由してシャドウミラーで預かって、他の世界の学校に通わせるといった手段もない訳ではないが……やっぱり、今のアクシズの象徴となっているミネバという存在を思うと、やはりそれはそれで難しいとは思うんだよな。

 

「こうなると、エンツォの反乱が起こって不穏分子の殆どを一掃出来たというのは、アクシズにとって悪くなかったという事なんでしょうね」

「そうだな。もしエンツォが……あるいはエンツォ本人じゃなくても、エンツォの手の者がミネバの教育係とかになっていたら、最悪の未来になっていただろうし」

 

 エンツォの性格を思えば、自分の野望の為にはミネバを洗脳するくらいの事はしかねない。

 ……そう思ったが、エンツォの性格を考えると、そういうまどろっこしい事はしないのか?

 何しろ、今のミネバはまだ小さい。

 もし洗脳してミネバをいいように操り、その結果としてこのアクシズを真ジオン公国軍といったように名乗るようにするにも、10年……とまではいかないが、それでも何年も掛かるのは間違いないのだから。

 少し通信で話した程度しか俺はエンツォについて知らないが、それでもエンツォの性格を考えるとそこまで待つというのは不可能なように思えた。

 念の為、サブプランといった感じでミネバを洗脳するといったような事はあるかもしれないが。

 

「……その、アクセル中尉、モニクさん、分かっているとは思いますけど、式典でそういう発言は……」

 

 俺とモニクの話を聞いていた艦長が、そう忠告してくる。

 その表情を見ると、式典の会場で今のような会話をするのは勘弁して欲しそうだった。

 

「俺も話をするには時と場合を選ぶから、安心しろ」

「……アクセルが時と場合を? ……ふーん」

「何か言いたい事でもあるのか?」

「あら、別にそういうつもりはないわよ? ただ……うん。ちょっと不思議に思っただけだし」

 

 それを、何か言いたい事があるというような状況じゃないのか?

 そう思ったが、ここで下手にその点を突くと、それはそれで面倒な事になりそうなので止めておく。

 そうして話していると、やがて式典の準備が出来たと呼びに来て……そして、俺達は式典に参加するのだった。

 

 

 

 

 

「あー……疲れたな。歓迎してくれるのは嬉しいけど、もう少し気軽な感じでやって欲しかった」

 

 仰々しい式典が終わり、現在は立食パーティの時間だ。

 もっとも、式典そのものは仰々しいのは間違いなかったが、同時にそこまで長い訳でもなかったのだが。

 これについては、エンツォの反乱が起きてそれを鎮圧したばかりだからというのも影響してるのだろう。

 つまり、式典の準備をする時間がそこまでなかったので、長時間の式典は出来なかった訳だ。

 俺にしてみれば、それでも仰々しいように思えたのだが。

 こういう立食パーティのような気軽な感じの方が俺は好みなんだよな。

 まぁ、こういうパーティはパーティで忙しかったりするんだが。

 実際、モニクの周囲にはアクシズの上層部の者達が集まっているのが見える。

 今回アクシズにやってきたルナ・ジオンの艦隊の指揮を執っているのはモニクなので、そこに人が集まるのは当然だろう。

 ……もっとも、モニクの周囲に集まっている者の中には好色な視線を向けている者もいるが。

 モニクが着ているのは、緑色のパーティドレスだ。

 両肩と背中が剥き出しになっており、モニクの美貌によく似合っている。

 生真面目なモニクの性格と、扇情的なパーティドレスの組み合わせは、ミスマッチではあるのだが……だからこそ、強く印象に残る。

 好色な視線を向けられても、それはそれでおかしくないといったところか。

 もっとも、好色な視線を向けている者達も、出来るのはそれだけだ。

 何しろモニクはアクシズの上位組織であるルナ・ジオンから来た人員なのだから。

 そんな相手にセクハラなりなんなりをすれば、それこそどうなるか分かったものではない。

 ……そしてもし万が一にもモニクの色香に迷って力でどうにかしようにも、モニクもまたエヴァとの訓練でそれなりに魔力を使いこなせるようになっている。

 身体強化したモニクを相手に、一般人がどうこう出来る筈もない。

 取りあえずモニクはいいとして……そう考え、次に視線を向けたのは艦長。

 そこには軍人と思しき者達が集まっており、何らかの話で盛り上がっていた。

 微かに聞こえてくる内容からすると、どうやら戦いの時に母艦をどういう風に使うと効果的なのかといったような感じで盛り上がっているらしい。

 健全……いや、これは健全と言ってもいいのか?

 その辺りはどう判断すればいいのか分からないが、取りあえず問題ないと思っておこう。

 そんな中、俺は何人かと話すくらいで、主に食事を楽しんでいた。

 まぁ、艦隊の指揮を執っているモニクや艦長と比べると、俺は一介の中尉でしかないしな。

 ハマーンと一緒に戦ったとか、その辺についてはどうやらそこまで話は広まっていないらしい。

 俺にとってはその方が助かるからありがたいんだが。

 ただ、料理は……式典の後の料理として考えると、いまいちだな。

 いやまぁ、エンツォの反乱を鎮圧してから、急いで料理を作り始めたのだから、手の込んだ料理を作っていられる時間はなかったのだろう。

 それにアクシズは決して食糧事情が豊かな訳ではない。

 そう考えれば、寧ろこれだけの料理を用意したのが褒められるべきだろう。

 

「すまないな、アクセルにしてみれば貧相な料理だろう?」

 

 料理を味わっていると、不意にそんな声が掛けられる。

 もっとも、その人物の気配は独特なので、俺に近付いて来ていたのには気が付いていたのだが。

 なので、俺は口の中の料理を飲み込んでから、その人物……ハマーンに向かって口を開く。

 

「気にするな。元々……ハマーンか?」

「そうだが、あまり大きな声を出さないで欲しい。変装しているのを見つかったら、面倒な事になる。本来なら、私がこのパーティ会場に姿を現すのはもう少し先なのだから。それにしても、よく私だと分かったな」

 

 そう言うハマーンは、緑のパーティドレスを着ていた。

 緑という点ではモニクと同じなのだが、モニクの着ているパーティドレスが森の緑のような色なのに比べると、ハマーンが着ているパーティドレスは薄緑色だ。

 女らしさを現すモニクのドレスと比べると、ハマーンのドレスは大人しい。

 いやまぁ、まだ10代半ばのハマーンと成熟した大人のモニクではどうしても受ける印象が違っても仕方がないだろうが。

 もっとも、千鶴のように今のハマーンと同じか、それどころかもう少し年齢が下でも成熟した身体付きの女もいるので、その辺はやはり大きな個人差があるのだろうが。

 

「……何か不埒な事を考えていないか?」

 

 ハマーンが疑惑の視線を向けてくる。

 千鶴と比べたのに、女の勘か、あるいはニュータイプの勘かで気が付いたのかもしれないな。

 

「いや、そうでもない。ただ、俺が知ってるハマーンはパイロットスーツだけだったかな。ちょっと新鮮だったんだよ」

「……出来れば髪型で判断して欲しかったのだが」

「髪型?」

 

 不満ですといった様子でハマーンが言う。

 今のハマーンの髪型は、特に何か普通と違うようには思えない、普通の髪型だ。

 そうだな、マリューの髪型に近いか?

 

「特に何かおかしいところがあるとは思えないけど。そもそも、俺が知ってるのはパイロットスーツを着て、ヘルメットを被っているハマーンだぞ? その状態の時は髪型とかは分からないんだが?」

「……ああ、そうか。なるほど。……これは私の認識が間違っていたな。アクセルには分からないだろうが、今の私の髪型は普段とは違うのだ。普段は……そう、ボブカットに近い髪型と言えば分かるか?」

「ああ、なるほど」

 

 そう言われると、ハマーンの言いたい事も理解出来た。

 確かにマリューに近い今のハマーンの髪型は、ボブカットとは違う。

 ハマーンにしてみれば、これで十分に変装が出来ているといったところか。

 その程度で誤魔化せるのはどうかと思わないでもないが。

 

「それで、変装してまで一体どうしたんだ?」

「何、少しアクセルと話をしたいと思ってな」

「……ああ、そう言えばエンツォの反乱が終わったら話をするとか言ってたな。それか?」

「それもあるが、その件については話をするには時間が足りないだろう?」

「どのくらい話をするかにもよるけど、それは間違っていないかもしれないな」

 

 ハマーンが具体的にどのくらい詳しく話をしたいのかにもよるが、こうしたちょっとした時間で出来るような話でもない。

 ……いや、どうしてもそうしろと言われれば、かなり短くも出来るが、それだと端折る内容が多すぎてハマーンも完全には理解出来ないだろう。

 それで納得するのならともかく、ハマーンがそれで納得出来るとは思えなかった。

 そうなると、やはり今回の一件についてはしっかりと話をする必要があるだろう。

 

「じゃあ……例えば、どういう事を話したいんだ? 今回助けた件に対する謝礼とかについては、俺じゃなくてモニクと話をするべきだろう?」

「その件については、後で改めて話をするが、今こうしてここに来たのは、もっと違う理由だ。……具体的には、世間話というのをして欲しい」

「は?」

 

 ハマーンの口から出た言葉があまりに予想外だったのでそんな声を出したのだが、それを聞いたハマーンは少し不満そうな様子で口を開く。

 

「……おかしいか?」

 

 その言葉に、俺は慌てて首を横に振るのだった。

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