転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4270話

 俺がハマーンと話をしていると、不意にハマーンは何かに気が付き、残念そうに口を開く。

 

「すまない、アクセル。私はそろそろ戻らなければならない時間だ」

 

 その言葉にハマーンの視線を追うと、視線の先には20代の女の姿があった。

 その女は普段は優しそうなのだろうが、今は目を吊り上げてこちらに……より正確にはハマーンのいる方に向かってきていた。

 

「知り合いか?」

「うむ。私の……そう、信頼出来る相手だ」

「……その割には、ハマーンを見る目はかなり厳しいように思えるが?」

「控え室を抜け出して、変装までしてパーティ会場に来たのだから仕方がないだろう」

 

 そうして話している間に、その女は俺とハマーンの前に立つ。

 

「あのね、自分の立場が分かってるの?」

「いや、だがナタリー……」

「……やっぱり、私がエンツォ大佐に恩があるから、ハマーンも言う事を聞いてくれないのかしら?」

「そんな事はない!」

「ハマーン……?」

 

 冗談っぽく告げた女……ナタリーだったが、ハマーンはそんなナタリーの言葉に少し驚いた様子を見せた。

 というか、話の流れからするとナタリーは以前はエンツォの派閥にいたか何かしたのが、ハマーンと親しくなってエンツォではなくハマーンを選んだという感じか。

 そしてナタリーの方はその辺には既に割り切っているのに、ハマーンはまだ割り切っていないといったところなのだろう。

 普通こういう時ってハマーンが気にしないで、ナタリーが気にする……そんな感じだと思うんだが、どうやらこの2人の場合は違うらしい。

 

「あ……すまない。その、アクセル。では私は失礼する。またすぐに戻ってくるが、それまで待っていて欲しい。ミネバ様にもその時に会って貰うのでな」

 

 そう言い、ハマーンは去ってしく。

 

「あ、ちょ……もう。では、失礼します」

 

 そんなハマーンの背中に向かい、何かを言おうとしたナタリー。

 だが、結局何も言わず、俺に向かって頭を下げると無言でハマーンを追った。

 なるほど。多分だが、ハマーンにとってナタリーは頼りになる存在……それこそ、姉か何かのような存在なんだろうな。

 ただ、上手くいっていない……訳ではないが、ハマーンが妙にナタリーについて気にしすぎているといったところか。

 うーん、このままだと面倒な事になりそうだな。

 とはいえ、だからといって俺がそれに口を出すのは、それはそれで面倒な事になりそうだし。

 

「アクセル」

 

 ハマーンとナタリーの立ち去った方を見ていると、不意にそんな風に声を掛けられる。

 声のした方に視線を向けると、そこにいたのはモニク。

 先程までは何人もの政治家と話をしていたと思うのだが、気が付けば俺の近くにいつの間にか姿を現していた。

 

「政治家の相手はもういいのか?」

「ええ。元々今日のパーティは顔合わせに近いものだし。……それに、前もって入手していた情報では厄介な政治家も今回の一件で失脚したようだしね」

「エンツォの反乱か? となると、政治家も反乱に加わっていた訳か。それはちょっと予想外だったな」

 

 とはいえ、軍人だけでは反乱を起こすのが難しいのも事実。

 不可能ではないが、そこに政治家が協力していれば、よりやりやすくなる。

 そういう意味では、政治家がエンツォに協力をしていても不思議ではない。

 もっとも、政治家がエンツォを利用していたのか、エンツォが政治家を利用していたのか。

 その辺は俺にも分からないが。

 どちらが主導権を握っていたのかは、俺にも分からない。

 ただ、こうしてエンツォの反乱が失敗した以上、その政治家達も失脚するのは当然だろう。

 ……失脚程度ならいいんだけどな。

 場合によっては、それこそエンツォと同じように処刑されるといったことになってもおかしくはない。

 ともあれ、モニクにとって……そしてより大きい目で見れば、アクシズにとっても悪くない結果なのは間違いないだろう。

 

「獅子身中の虫がいなくなっただけでも、アクシズにとっては悪くないでしょ。……それより、私がここに来たのはアクセルにちょっと話があったからなんだけど」

「俺に? ……俺がハマーンと話をしていて嫉妬してこうしてやって来たのかと思ったんだけどな」

「……あのね」

 

 俺の言葉にモニクはジト目で返してくる。

 どうやらモニクにとって、俺のその言葉はかなり的外れなものだったらしい。

 

「アクセルの恋人をやっていて、アクセルが他の女とちょっと話をしている程度で嫉妬すると思う?」

「それはそれでちょっと残念に思わないでもないが」

「真面目な話をしたんだけど?」

 

 再度のジト目に、俺もこれ以上この件で話をするのは難しいだろうと判断する。

 

「分かったよ。それで、俺に話って? わざわざこうして来るんだから、余程の何かがあったんだろう?」

「ええ、まさにその余程の何かがあったのよ」

 

 モニクは真剣な表情で視線を向けてくる。

 どうやら冗談でも何でもなく、その上でちょっと真面目な話といった訳でもなく、本当に真面目な話があるようだな。

 

「何があった?」

「1年戦争時代に、ジオン公国には名家が幾つもあったのは知ってるわよね?」

「そうだな」

 

 分かりやすいところで、マツナガ家とかだろう。

 後は没落したがサハリン家であったり、ラル家であったり。

 

「そうした名家の1つに、トト家ってのもあったのよ」

「聞いた事がないな」

「そうでしょうね。あったって言ったように、没落とまではいかないまでも、かなり苦しい状況だったのも間違いないもの」

「サハリン家よりはマシだった訳か」

 

 サハリン家は完全に没落していたしな。

 その為、一か八かといった感じで俺に接触してきて、その結果アプサラス計画を成功させ、今ではルナ・ジオンの中でも屈指の名家となっている。

 地球にあるルナ・ジオンの領土を任されているのを見れば、その重用度は分かりやすいだろう。

 そういう意味では、サハリン家は一発逆転に成功した訳だが、モニクの様子を見る限りだと、トト家はそういう感じではないらしい。

 まぁ、サハリン家のように完全に没落していなかったからこそ、思い切るような事も出来なかったんだろうが。

 

「そうね。それに……サハリン家と違ってザビ家ともそれなりに親しいというか、深い関係にあったのを覚えてるわ」

 

 モニクは1年戦争の時、ギレン直轄の組織に所属していた。

 その為、そのトト家とやらともそれなりに面識があったのかもしれないな。

 

「で、そのトト家がどうしたんだ?」

「このトト家は今も言ったように没落寸前だったんだけど……1年戦争の途中からかなり復興してきたのよ」

「それはまた珍しいな。考えられる可能性としては、トト家から優秀なMSパイロットが出たか、それとも高い技術を持った者が何か大きな計画でも達成したとか?」

 

 前者の例は、シン・マツナガやランバ・ラル。後者はギニアス・サハリンといった者達が有名だろう。

 もっとも、そう簡単にいくような事でもないのはジオン公国を見れば明らかだが。

 具体的には、シン・マツナガは半ばマツナガ家を出奔していたり、ランバ・ラルは家がラル家……ダイクン派だったのでどれだけ活躍してもザビ家から冷遇されていた。

 技術者という意味でのギニアスのアプサラス計画は、優秀な計画であるが故にそのようなことは出来る筈がないと言われて計画がそもそも認可されなかった。

 そんな諸々について考えると、名家だからといって完全に安心する事は出来ないといったところか。

 モニクは俺の問いに対し、首を横に振る。

 

「いえ、トト家が復興した理由については、私も分からないわ。それこそ上の中でも一部……本当に一部だけしかその理由については知らなかったらしいけど……」

「それはまた、随分と意味ありげだな。……まぁ、いい。それで、そのトト家がどうしたんだ?」

「トト家の御曹司、グレミー・トトという人物がアクシズにいたらしいんだけど、どうやら私達がシステムXNで転移した場所で遭遇したアクシズを脱出した艦隊、それを率いていたのがグレミー・トトだったらしいわ」

「それはまた……」

 

 俺はそのグレミー・トトという人物を全く知らないので何とも言えないが、話を聞く限りでは随分と見切りが早い。

 反乱が起きたアクシズはもう駄目だと判断したのか、それともこの反乱の騒動のドサクサ紛れに脱出しようと思ったのか。

 その辺は俺にも少し分からない。

 分からないが、それでも今回の一件において行動を起こしたのは間違いのない事実でもある。

 

「結構な数の軍艦を引き連れて脱出したって事は、それなりの求心力は持っていたのか?」

「どうかしら」

「……モニク?」

 

 この話を持ってきたのがモニクだけに、その辺りの情報はしっかりと入手した上で今のような話を持ってきたのだとばかり思っていたのだが、モニクはグレミーとやらについてどのような存在なのか、しっかりと把握していないらしい。

 

「その辺りについてはまだ完全には分かっていないわ。ただ……問題なのが、どうやら色々とアクシズの機密事項を持って脱出したって事ね」

「機密事項? ……具体的には?」

「アクセルの興味のある範囲で言うと、アクシズが開発中だった新型MSやMAの設計データかしら。もっとも、どれもまだ開発中で、完成したデータはほぼないという事らしいけど」

「それはまた……けどそうなると、グレミーが脱出したのは突発的な事態じゃなくて、計画通りだったって事か?」

 

 俺はてっきりエンツォが反乱を起こした……それもアクシズの戦力の半分以上を味方に引き込んでの反乱だっただけに、エンツォの反乱が成功するのは確実だと判断し、このままアクシズにいるのは危険だと判断した者達……この場合はグレミーの一派と言うべきか。そうしてグレミーの一派が脱出したんだとばかり思っていたんだが。

 MSやMAの設計データとかを奪って逃げ出したとなると、とてもではないが突発的な行動には思えない。

 俺はてっきりグレミーとエンツォに繋がりはないと判断していたんだが、モニクからの情報と実際に起こった出来事を考えれば、グレミーとエンツォは手を組んでいたと認識した方がいいな。

 もっとも、考えてみればそうおかしな話でもないだろう。

 エンツォにしてみれば、反乱が成功して自分がアクシズを率いる立場になった場合、アクシズにグレミーの派閥がいるというのはやりにくいだろう。

 そんな中でグレミーが自分達から出ていってくれるのなら、寧ろ大歓迎だ。

 ……MSやMAの設計データが奪われたというのを知っていたのかどうかまでは微妙なところだが。

 アクシズにとって大きなアドバンテージとなるのが、高い技術力だ。

 その技術力を存分に発揮して開発された……もしくは開発中のMSやMAのデータを奪われるというのは、決して許容出来ないだろう。

 そう考えると、この辺りはエンツォがグレミーにしてやられたといったところか。

 また、グレミーの派閥についてもエンツォの反乱が成功した場合、間違いなくやりにくくなる筈だ。

 聞いた話だとマハラジャは鷹揚な性格……もしくは流される性格をしていたらしい。

 だからこそグレミーの派閥もある程度好き勝手に出来たのだろうが、エンツォの反乱が成功してエンツォがアクシズを率いるようになれば、今までのように好き勝手は出来なくなるので、アクシズからの脱出という道を選んだ。

 ……もっとも、アクシズを脱出してどこに行くのかという問題もあるが。

 今のところ最有力候補として考えられるのは、やはり火星だろう。

 アクシズから一番近い場所にあるし、3年もの間火星に潜んでいたので拠点としての設備的な意味でもそれなりに充実してるだろうし。

 取りあえず、デラーズが拠点として、現在はルナ・ジオンの拠点となっている、茨の園よりは設備的に優れている可能性が高い。

 ただ、そうなると……グレミーは実はキシリア派だったとか、そういう感じなのか?

 

「取りあえずグレミーが危険な奴だというのは理解した。出来ればグレミー・トトを先に処分しておいた方がよかったかもしれないな」

「それは……アクセルの気持ちは分かるけど、ちょっと難しいでしょうね」

 

 言いにくそうな様子のモニクに疑問を感じる。

 一体どうしたんだ?

 

「モニク?」

「……グレミー・トトだけど、まだ子供よ。それもまだ12歳の」

「は?」

 

 モニクのその言葉は、俺にとってかなり予想外だった。

 恐らくはエンツォと手を組み、MSやMAの設計データを奪って脱出した者達。

 それを率いているグレミーが、まだ12歳の子供というのは……

 

「それ、もしかしてグレミーは傀儡になってないか?」

「そうね。その可能性は高い……というか、ほぼ間違いないでしょうね」

 

 モニクのその言葉を聞いて、面倒に思う。

 とはいえ、既にアクシズを出ていった以上、俺にはどうする事も出来ないのだが。

 火星に行って、キシリアの下でどういう扱いを受けるのかは分からないが、取りあえず不運な最期を迎えないように祈るのだった。

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