転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4272話

 モニクの挨拶が終わる。

 これによって俺達の紹介……というか、顔見せか?

 正確には式典に参加していた者達は既に俺達の事を知っているが、式典に参加していなかった者達に対する俺達の顔見せは終わる。

 後はゆっくりパーティを楽しむだけとなったのだが……

 

「アクセル中尉、こちらに。ミネバ様が興味を示しておられる」

 

 壇上から降りようとした俺に対し、ハマーンがそう言ってくる。

 本気か?

 実際に口に出しはしなかったものの、ハマーンにそう言いたくなった俺は悪くない。

 何しろ、俺はミネバの父親であるドズルを殺したのだ。

 それについては戦争の中での出来事だった以上、後悔はしていない。

 だが同時に、そのドズルの娘であるミネバと接触するのはどうかと思わないでもなかった。

 ミネバにとって、俺は父親の仇なのだから。

 今はまだミネバも子供……赤ん坊? いや、3歳くらいの子供は赤ん坊という表現でいいのかどうか微妙なところだが、とにかく物心はついていないので、俺を相手にしても恨みとかそういうのはないだろう。

 だが、大きくなって事情を全て理解した時、俺を慕っていた場合どうするのか。

 ……いや、でも考えすぎか?

 これからも俺がアクシズに頻繁に来て、その度にミネバと会うような事でもあったら、話は分からない。

 だが、今のところその予定はない。

 あくまでも今はの話であって、将来的にどうなるのかは分からないが。

 今こうして少しミネバと接するくらいなら、特に何の問題もないだろう……と思っておく。

 

「分かった」

 

 自分の中の葛藤を何とか解決すると、俺はミネバに近付く。

 これで赤ん坊なら乳母車……いや、車はちょっと違うか? その辺については詳しくないので何とも言えないが……ゆりかごとか? とにかくそういうのを使えばいいが、3歳くらいの年齢となると普通に動き回ったりするしな。

 物心はついていないだけに、自由に動き回るというのは世話をする者達にしてみれば大変だろう。

 とはいえ、元々の性格なのか、それとも言い含められてそれを聞けるといった事は出来るのか。

 その辺は俺にも分からないが、とにかく俺が近付くまでミネバが騒いだり……ましてや、泣いたりといった事はなかった。

 ミネバの護衛なのだろう女が、俺が近付くのを見ると邪魔にならないように離れる。

 ただし、その目の中には完全に俺を信じたといった様子はない。

 もし俺がミネバに何か危害を加えようとした場合、即座に……それこそ自分の身がどうなっても、それを防ごうという覚悟があった。

 実際には俺にはミネバに危害を加えるつもりはないし、あるいはもし俺がミネバに危害を加えようとしていても、相応に訓練をされているとはいえ、この訓練基準がUC世界でのものとなると、対処するのは不可能だ。

 俺どころか、モニクがどうにかしようとしても、この女に防ぐ事は不可能だろう。

 ……ドズルの一件で思うところがない訳でもないし、量産型W……は怖がられそうだから、技術班にカスタマイズさせて、護衛用のコバッタをプレゼントするというのはありかもしれないな。

 今回の一件が終わったら、ちょっと考えてみよう。

 そう思いながら、俺は椅子……というよりは、椅子の上に用意されたクッションに座っているミネバの近くまで移動する。

 

「あー……くせる?」

「……」

 

 俺の名前を口にするミネバ。

 いや、だが……どうやって?

 ミネバは以前に俺と会ったことがあったりする訳ではない。

 だとすると、これは今このパーティで、より正確には壇上に上がった諸々でのやり取りからの言葉だったりするのか?

 少し離れた場所にいるハマーンに視線を向けるが、ハマーンも表情には出さないようにしているものの、その表情には間違いなく驚きの色があった。

 一瞬だけ、もしかしてこれはハマーンの仕込みではないかと思ったのだが、どうやらそれは違ったらしい。

 まぁ、このくらいの年齢の子供なら喋ったりは普通に出来るので、俺の名前を呼んでいるのを聞いて、偶然それを口にした……そんな可能性もない訳ではないが、幾ら何でもそれはちょっと出来すぎじゃないか?

 

「ミネバ」

「アクセル」

「ミネバ」

「アクセール?」

 

 いや、何で最初は普通に話していたのに、今は微妙に間違う?

 そう疑問に思わないでもなかったが、子供のやる事だと言えばそのように認識してもおかしくはない……のかもしれないな。

 実際にどうなのかは、俺にも分からない。無理矢理そういう風に理屈をつけているだけだし。

 その後も、ミネバ、アクセルと何度か言葉を交わし……

 

「きゃっきゃ」

 

 俺を見て、嬉しそうに笑うミネバ。

 

「驚いたな」

 

 ハマーンが言葉通り驚いた様子でそう言ってくる。

 どうやらハマーンにとっても、このような状況は予想外だったらしい。

 

「そうだな。俺も驚いた。別に子供に好かれるって訳じゃ……いや、うーん……どうだろうな」

 

 1年戦争の時にホワイトベースに乗っていた子供達、カツ、レツ、キッカにはそれなりに好かれていたような気がする。

 特筆して懐かれているといった訳ではなかったが、それでも間違いなく嫌われてはいなかった。

 ナデシコ世界でも、ルリやラピスには……取りあえず嫌われてはいなかったと思う。

 もし嫌われていた場合、俺の養子になるといった事はしなかっただろうし。

 後は……オルフェンズ世界は、子供達にかなり好かれていたが、それはヒューマンデブリから解放したからというのが大きいし、あまり判断材料にはならないか。

 ともあれ、こうして改めて考えてみると俺はそれなりに子供には好かれるという事なのだろう。

 

「アークセラ?」

「アクセルだ、ミネバ」

「アクレル?」

 

 ……何で最初はアクセルと素直に話せたのに、話しているとアクセルと喋れなくなっていくんだ?

 ともあれ、そのまま10分程ミネバの相手をしていると、やがてハマーンが口を開く。

 

「アクセル、そろそろいいか。ミネバ様も眠くなってきたようだし」

「ん? ……眠くなっている、のか? いや、言われてみればそういう風に見えない事もないような」

 

 ハマーンの言葉にミネバを見ると、眠いように見えなくもない。

 

「分かった。じゃあ、ミネバの相手はこの辺にしておくか」

 

 どうしてもミネバと一緒に遊びたいといった訳でもないので、ハマーンの言葉に素直に従う。

 

「すまないな。……それと、パーティが終わってから会談の場を設けたい。構わないか?」

「ああ、こっちは問題ない。ただ、俺だけだと色々と疑われかねないから、モニクも呼んでくれ」

「構わん。こちらも私以外にナタリーが会談に参加させて貰うのでな」

「え? ちょっ、ハマーン? 私、何も聞いてないんだけど?」

 

 俺とハマーンの会話を聞いていたナタリーが、慌てたように言う。

 どうやらこの件については何も聞かされていなかったらしい。

 ……一度会った時から何となくそう思っていたが、このナタリーという女はハマーンに振り回される運命にあるかのように思える。

 まぁ、ナタリーの様子を見る限りでは、口では困ったようにしつつも、本心では嫌がっていないのは間違いない。

 であれば、それはもう2人の関係なんだから、俺がここでどうこう言うような事ではないだろう。

 そんな2人をその場に置き、俺がミネバと遊んでいる間にいつの間にか壇上を降りて他のパーティ参加者と話をしていたモニクを見る。

 するとモニクはそんな俺の視線を感じたのだろう。

 パーティの参加者の相手をしながら、こちらに視線を向けてくる。

 どこか面白いものでも見ているかのような、笑みを含んだ視線。

 モニクにとって、俺がミネバと遊んでいる光景はそれだけ面白かったらしい。

 そんなモニクのところに行こうかと思ったのだが……

 

「失礼、アクセル中尉。少しお話よろしいですかな?」

「少し待って欲しい。アクセル中尉と話をするのは私が先だろう」

「まずは私に最初に話しをさせてくれ」

 

 何故か壇上から下りると、俺に向かって人が集まってくる。

 えっと……あれ? 何でだ?

 さっきまではモニクにはかなり、艦長にはそれなりに人が集まってきてはいたが、俺には数人が声を掛けてきただけだった。

 なのに、今はこうして多くの者が集まってきている訳で……

 その事に最初は戸惑ったものの、俺に話しかけようとした者達同士の話を聞いて、理解する。

 どうやら、ミネバが俺に強い興味を……それも好意的な意味での興味を抱いたので、俺とお近づきになっておきたいといった感じらしい。

 アクシズにとって、ミネバとはある意味で象徴的な存在だ。

 勿論、アクシズはルナ・ジオンの下部組織なのは間違いないが、それとこれとは別といったところだろう。

 あるいは、ドズルの娘だというのも影響してるのかもしれない。

 もしこれでキシリアの子供なら……まぁ、その時はキシリアがまだ生きてるからキシリアが引き取るだろうし、ガルマとイセリナの子供なら、その時はジオン共和国で育てられる。

 となると、デギンの子供かギレンの子供なら……まぁ、デギンの子供ならもしかしたらミネバと同じような扱いになるかもしれないが、ギレンの子供はちょっと。

 子供に罪はないと知っているが、それでもギレンの子供と考えるとミネバのようにアクシズの象徴となるのは無理だろう。

 

「いい加減にしなさい」

 

 そのように声を発したのは、ミネバの護衛の女だった。

 

「イリーナ中佐……だが……」

「アクセル中尉はアクシズを救ってくれた恩人です。そのような方を前に、無様な様子を見せるのはどうかと思うのだが?」

 

 女……イリーナの言葉に、俺に声を掛けようとする者達は完全に納得した様子ではないにしろ、大人しく引き下がるのだった。

 

 

 

 

 

 パーティが無事に終了した日の夜。

 

「これが会談でなければ、アクセルとの一夜のアバンチュールを期待出来たのだけどね」

 

 アクシズ内の通路を歩きつつ、モニクがそう言ってくる。

 モニクにしてみれば冗談――ある意味で本気――のつもりだったのかもしれないが、案内役としてやって来たナタリーは思わずといった様子で足を止め、こちらに視線を向けてくる。

 

「えっと、その……モニクさんとアクセル中尉はそういう関係なのでしょうか?」

 

 恐る恐る……それでいながら目に微かな好奇心を宿し、そう聞いてくる。

 ナタリーの年齢を考えると、こういうのに興味を持ってもおかしくはないしな。

 いや、年齢云々以前にその辺について元々強い興味を持っているだけなのかもしれないが。

 興味津々といった様子のナタリーに対し、俺が何かを言うよりも前にモニクが答える。

 

「ええ、そうよ。私はアクセルの恋人よ。……正確には私にとってアクセルは唯一の恋人だけど、私はアクセルにとって大勢いる中の恋人の1人でしかないけどね」

「え……それって……」

 

 モニクの言葉を聞き、微妙に責める視線をこちらに向けてくるナタリー。

 まぁ、一夫一婦制の中ではこういう態度になってもおかしくはないと思うが。

 

「別にそれを今ここで言う必要はないんじゃないか?」

「そう? でも、アクセルは自分がどれだけ恵まれているのか、十分に理解した方がいいと思うんだけど」

 

 そう言われると、俺としても反論するのは難しい。

 実際、俺がそっち方面ではかなり……いや、これ以上ない程に恵まれているのは、間違いのない事実なのだから。

 ただ、それについては俺にも言いたい事はある。

 異性関係で俺が恵まれているのは間違いないが、その為に俺は色々な意味で幾つもの試練を乗り越えているのも事実なのだ。

 例えば、星の屑においては多くのデラーズ・フリートと戦ったり、エースのエリックと戦ったり、最終的にはソーラ・システムの照射を受けたり。

 そう考えれば、これくらいの役得はあってもいいような気がする。

 

「……姐さん女房って奴ですね」

「え? ……ああ、まぁ、そうね」

 

 ナタリーの言葉にモニクが一瞬戸惑った様子を見せるものの、すぐに納得した様子で頷く。

 ナタリーが姐さん女房といった言葉を出したのは、今の俺がハマーンと同じくらいの10代半ばなのに対し、モニクは20代だからだろう。

 年齢差が5歳……あるいはもっとあるのだから、姐さん女房といった表現もおかしくはない。

 もっとも、俺とモニクは付き合ってはいるが、結婚している訳ではないのだが。

 姐さん女房といった表現は、正しいようで違う。

 それに……今の俺はハマーンと同年代の外見だが、20代の外見にもなれる。

 いや、寧ろ俺の外見年齢的にはそっちの方が正しい……正しい……うーん、どうだろうな。

 ゲートを使って色々な世界に転移し、その世界で結構な時間をすごしている。

 そう考えれば、年齢的にもっと上の方が正確なのだろうとは思う。

 もっとも、今の俺は人間ではなく混沌精霊だ。

 そう考えれば、そもそも年齢について考えるのがそもそも間違っているのかもしれないが。

 

「……アクセル中尉の女癖が悪いのは分かりましたけど、ハマーンにはちょっかいを出さないで下さいね」

 

 ナタリーが言い聞かせるように、俺に向かってそう言うのだった。

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