転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4273話

 ナタリーにハマーンに手を出すなといったように言われると、何故か隣で話を聞いていたモニクが面白そうな表情を浮かべ、噴き出すのを我慢しているように見えた。

 一体何がそんなに面白いのやら。

 そんな風に思いながらも俺達は通路を進み……

 

「こちらです」

 

 とある部屋の前でナタリーが足を止め、そう言う。

 幸い……と言ってもいいのかどうか分からないが、先程笑いを堪えていたモニクは既に普段通りの表情に戻っている。

 あるいはまだ笑いたいと思っているのだが、それを表情に出さないように我慢しているのかもしれないな。

 ともあれ、モニクはこの手の行動は得意だ。

 こうして笑いを堪えている状態であっても、既にそれを完全に覆い隠しているのを見れば、不意に噴き出すといった心配はしなくてもいい筈だった。

 俺とモニクの準備が整っているのを確認し、ナタリーが扉をノックすると、中から入れといった言葉が聞こえてくる。

 扉の外にいるのが俺達だと、ニュータイプ能力で理解出来ているのだろう。

 ただでさえハマーンのニュータイプ能力は高かったものの、エンツォの率いる反乱軍との戦いで覚悟を決めた結果、そのニュータイプ能力は更に高くなった。

 あるいは単純にニュータイプ能力が高くなったのではなく、元々あったが発揮されていなかったニュータイプ能力が発揮され、それによってハマーンのニュータイプ能力が強化されたように見えたのかもしれない。

 ともあれ、反乱軍との戦いでハマーンのニュータイプ能力が強化されたのは、間違いのない事実ではあったのだ。

 もっとも、扉の外に誰かいるのかを察知する程度なら、別にそこまで高いニュータイプ能力を必要としたりはしないだろうが。

 

「では、どうぞ」

 

 ナタリーに促され、部屋の中に入る。

 するとそこは執務室だったらしいく、ハマーンが執務机の上にある書類を処理していた。

 執務机の上にある書類の量は、そこまで多くはない。

 もっとも、16歳のハマーンが処理をするには少し多いと言い換えてもいいのかもしれないが。

 

「すまないな、このような時間に呼び出して」

 

 書類の処理をしていたハマーンが、そう俺とモニクに向かって言ってくる。

 

「パーティの時に約束をしていたし、それは別に構わないけどな。それに……実際、色々と話しておくべき事があるのは間違いなかったし」

 

 そう言うと、ハマーンが笑みを浮かべる。

 その意味は一体どういう笑みだ?

 そうも思ったが、ハマーンの様子を見る限りでは別に悪意を持っているようには思えない。

 なら、別にその辺については気にしなくてもいいか。

 

「さて、では……そちらに座ってくれ。立ち話というのも何なのでな」

 

 部屋の中にあるソファに座るように言ってくるハマーン。

 アクシズは決して裕福ではない。

 だが、アクシズを実質的に率いる摂政であるハマーンの執務室なので、そこに用意されている家具はソファも含めてどれもが見るからに高級品だった。

 ……こういう高級品って、一体どうやって入手したんだろうな?

 そう思ったが、いわゆるジオニズムにおいてはこういう……中世風とでも言うべきか?

 ともあれ、アンティークっぽいのを好んで使っている印象がある。

 そういう意味では、こうしたソファがアクシズ内にあってもおかしくはないのだろう。

 ソファに座ると、さすがに高級品。身体が沈むようにソファが俺の体重を受け止めてくれる。

 こっそりとモニクに視線を向けるが、モニクは特に驚いた様子はない。

 こういうソファを使い慣れているといった様子でソファに座っていた。

 ハマーンとナタリーも向かいのソファに座る。

 ナタリーが少し居心地悪そうにしているのは、本来ならこういう……言わばトップ会談に自分が参加してもいいのかどうかと悩んでいるからだろう。

 まぁ、実質的にナタリーはハマーンの秘書的な立場らしいから、そう考えればここにいてもおかしくはないと思うんだが。

 そんな風に考えていると、俺の視線に気が付いたのだろう。

 ナタリーが困った様子で口を開く。

 

「その、アクセル中尉。私に何か?」

「いや、何でもない。……それで、ハマーン。話をしたいといった事だったが、一体何の話からする?」

「そうだな。ではまずこの件から話をしておこう。アクセル……お前の正体は、アクセル・アルマー中尉ではないな?」

「え? ハマーン?」

 

 ハマーンの言葉に、隣で話を聞いていたナタリーが戸惑った様子でハマーンの名前を呼ぶ。

 ここに来る途中での話……俺に恋人が複数いるといった話をした時から予想はしていたが、どうやらナタリーはハマーンに俺の正体について聞かされてはいなかったらしい。

 いやまぁ、シャドウミラーを率いるアクセルが女好きだって噂は……どうなんだろうな?

 俺に近い連中ならその辺についても知ってるだろうけど、そうではない者達の場合、その辺の話を知ってるのかどうかちょっと気になる。

 

「戦いの時にも思っていたが、よく分かったな」

「……幸か不幸か、これも私の力だという事なのだろう。とはいえ、力という意味では私よりもお前の方がもっているのではないか? シャドウミラーを率いる、アクセル・アルマーよ」

「……え? ひぇっ!?」

 

 ハマーンの言葉に、ナタリーが最初何を言ってるのか理解出来ないといった様子ではあったが、やがてハマーンの言葉の意味を理解すると口からそんな声が漏れる。

 どうやらここにいたってようやく俺を俺だと……ルナ・ジオン軍の中尉ではなく、シャドウミラーを率いる人物だと把握したらしい。

 

「でも、だって外見が……」

 

 ナタリーのこの台詞から、どうやらナタリーもシャドウミラーを率いる俺……20代の俺の姿については知っているらしい。

 考えてみれば当然か。

 UC世界において、異世界の存在というのは非常に興味深いものだ。

 強硬派にしてみれば決して好ましい事ではないが、このUC世界における存在感とでも呼ぶべきものは、連邦よりもシャドウミラーの方が上だろう。

 それはこのアクシズでも違いはなく、だからこそナタリーも20代の俺の姿を知っていたのだろう。

 ……普通は、外見を変えるなんて事はそう簡単に出来ないしな。

 変装とかそういうのを使えば話は別だが、俺の場合は身長まで変わっているし。

 ハマーンもその件については不思議そうな表情を浮かべている。

 ニュータイプ能力によって俺がルナ・ジオン軍の中尉ではなく、シャドウミラーを率いるアクセルだと知ったのはいいが、それでも外見の違いについては説明出来なかったのだろう。

 普通ならそのような決定的な違いがあると知れば、俺の正体を見破ったりは出来ないだろう。

 だが、そこがニュータイプ能力の高さといったところなのか。

 ともあれ、俺についての正体を理解しても、身長の違いについては全く理解していなかったらしい。

 なら、説明するよりも直接見せた方が早いだろう。

 そう判断し、俺はソファから立ち上がる。

 

「アクセル?」

 

 いきなり立ち上がった俺を見て、ハマーンが驚いた様子でそう口を開く。

 

「心配はいらないわよ。百聞は一見にしかずっていう言葉があるけど、それを実行するつもりなんでしょう」

 

 そう言うモニクは、特に驚いたりする様子はない。

 俺が外見を変えられるのを知っているからこそだろう。

 

「モニクの言う通りだ。……ちなみに、一応聞いておくが、この部屋の中はカメラとかで見られてないよな?」

「む? ああ、それについては問題はない」

 

 ここが寝室やプライベートルームであるのならともかく、執務室だ。

 であれば、監視カメラで見張っている者がいるかもしれないと思ったのだが、どうやらその心配はいらないらしい。

 ……それはそれで、不用心だと思わないでもなかったが。

 まぁ、ハマーンのニュータイプ能力があれば、害意のある奴が近付いて来たりしたら分かるか。

 そういう意味では問答無用で害意を持っている相手は分かるんだよな。

 ただ、問題なのは分かりはするが、それが分かったからといって生身でどうこう出来るだけの力を持っていない事か。

 ニュータイプ能力はあくまでも精神的な……いや、精神? とにかく身体能力とかには殆どプラスに働かない。

 精々が、反射神経が素早くなるといった程度だろう。

 ……その反射神経が素早くなったかどうかで、戦場では生きるか死ぬかが決まるんだが。

 

「なら、いい。じゃあ……見逃すなよ?」

 

 そう言い、ハマーンとナタリーが俺をじっと見ているのを確認してから、指をパチンと鳴らす。

 すると次の瞬間俺の身体が白炎に包まれる。

 

「なっ!?」

「きゃあっ!」

 

 ハマーンとナタリーがそれぞれ悲鳴を上げるものの、その悲鳴はすぐに消える。

 何故なら、俺の身体を覆っていた白炎は一瞬にして消えていたからだ。

 また、白炎が消えた時そこにあったのは……

 

「どうだ? これで納得して貰えるんじゃないか?」

 

 アクセル・アルマー中尉……10代半ばのその姿ではなく、シャドウミラーを率いる人物としてUC世界中に知られている20代のアクセル・アルマーとなった俺の姿がそこにはあった。

 

「これは……」

「……」

 

 20代になった俺の姿に、唖然とするハマーンとナタリー。

 モニクの方は話の流れからこうなる事は想像出来ていたのか、特に驚いた様子はない。

 モニクは普通に俺のこの能力を知ってるしな。

 

「驚いて貰ったようで何よりだが、どうせなら改めて自己紹介でもするか。シャドウミラーを率いるアクセル・アルマーというのは、もう今までの話の流れから俺が何かを言わなくても分かってると思うが、訂正を1つ。俺の種族は人間じゃなくて、混沌精霊だ」

「……混沌……」

「……精霊……」

 

 ハマーンとナタリーが順番にそう言う。

 息の合ってる2人だな。

 既に俺の中にはペルソナ世界の一件で原作知識は存在しないが、多分原作知識があればハマーンとナタリーの関係を見て原作通りだと嬉しくなったりしたんだろうな。

 

「ああ、そうだ。混沌精霊。……まぁ、元々は人間だったんだが」

「それは一体?」

 

 ハマーンが興味深そうに聞いてくる。

 ナタリーもまた、言葉には出さないが興味深そうに俺に視線を向けていた。

 

「既に知ってると思うが、シャドウミラーが行き来出来る世界の中には、いわゆるファンタジー……魔法とかが存在する世界もある。その世界で色々とあって、最終的に俺は人間から混沌精霊になった訳だ」

 

 実際にはリョウメンスクナノカミだったり、闇の魔法だったり、多種多量の精霊だったりと、そんな諸々があって、その結果として混沌精霊になった訳だが、この件についての詳細を話すとなると、1時間や2時間程度ではとでもではないが時間が足りない。

 なので今のように大雑把に纏めることしか出来なかった。

 

「そうして適当に纏められると、余計に気になるのだが」

「ハマーンの言いたい事も分かるが、ここでその話をするとなると、とてもじゃないが時間が足りないからな。悪いけど諦めてくれ」

 

 俺の言葉に不満そうな様子を見せるハマーン。

 そんなハマーンを、ナタリーが落ち着かせている。

 仲の良い姉妹のような光景を見ながら、俺はソファに戻る。

 当然ながら先程までの10代の時と比べて体重も増えているので、ソファは先程よりも沈み込む。

 

「さて、まずはこうして俺の正体……正体? とにかく俺の事を話したんだ。他にどういう話をするんだ? なんなら、このままお茶会でも俺としては構わないけど」

 

 俺の正体以上に驚かせるような話題となると、そうそうないだろうと思ってそう言うが、ハマーンは俺の言葉に首を横に振る。

 

「それも楽しそうだが、まだ話しておくべき情報がある。お茶会はそれが終わってから……それでもまだそのつもりだったらで構わん」

 

 真剣な表情でそう言ってくるハマーン。

 俺の件以上に何か話すような内容があったのか? と疑問を抱く。

 するとハマーンはそんな俺の疑問を察したかのように口を開く。

 

「アクセル達と遭遇した……というか、近くをすれ違った艦隊の件だ」

「ああ、あの……」

 

 パーティの時もハマーンが演説で少し触れていた件だな。

 モニクからの情報では、グレミー・トトと……正確にはその側近? 取り巻き? そんな連中が起こした行動って話だったが。

 

「その様子だと、どうやらもう色々と情報を持ってるようだが……まずは私の話を聞いて欲しい」

 

 そう言い、ハマーンは説明をしていく。

 

「トト家が以前は没落寸前だったという話は知ってるか?」

 

 ハマーンのその問いに、俺は一瞬モニクに視線を向けてから頷く。

 

「ああ、知っている。不自然なまでに復興もしたと聞いたが」

「うむ、それを知ってるのなら話は早い。……どこからその情報を聞き出したのか、少し疑問ではあるが」

 

 どうやっても何も、モニクがパーティの中で聞き出した情報なんだが。

 そう思ったが、ハマーンはそんな俺が口を開く前に再び口を開く。

 

「トト家が復興した理由……それは、現在トト家の当主でもあるグレミー・トトがギレン・ザビとニュータイプの女との間に人工授精で出来た子供だというのが大きな理由だ」

 

 そう、ハマーンは告げるのだった。

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