転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4276話

 目の前に広がるのは、一面の星空。

 星の海と評されることも多い夜空だが、俺の目の前に広がっているのは、その表現に相応しい……そんな夜空だった。

 そして、夜空の向こうに一瞬イリアの姿が見えた。

 そう思った次の瞬間、俺の意識は元に戻っていた。

 

「え? あれ……?」

「イリア? どうした?」

 

 イリアの口から戸惑いの声が漏れる。

 それを聞いたハマーンが、少しだけ心配そうな様子でイリアを見る。

 だが、そのイリアはハマーンと視線を合わせるとすぐに我に返ったらしい。

 

「あ、ハマーン様。私……今、星の海に浮かんで……」

 

 その言葉から、イリアも俺と同じ光景を一瞬にしろ見ていたのは間違いないらしい。

 だが、そんなイリアの言葉を理解出来るのは、あくまでも俺が主観時間にして数秒から十数秒の間、イリアと一緒の空間……それ精神世界なのか、はたまたもっと別の何かなのかは分からないが、とにかくそのような経験を共有した為だ。

 その経験を共有していないハマーンは、当然ながらイリアが一体何を言ってるのか理解出来ず、俺に向かって口を開く。

 

「アクセル?」

 

 その言葉には、不安の色がある。

 だが同時に、俺を責めるような色はない。

 ハマーンも何が起きるのかは何となく予想出来ていたのだろうから、それはおかしくはない。

 それでも自分を慕っているイリアが妙な事を口にしたので、それを心配に思ってしまうのは仕方がないのだろうが。

 

「安心しろ。俺との接触によってニュータイプ特有の精神世界か異世界か、もっと別の何かか……ともあれ、そんな世界に心が、精神が、あるいは魂が少しだけ移動しただけだ。今までの経験からすると、ニュータイプ能力の強化は出来たと思う」

 

 もっとも、感覚……あくまでも俺の感覚からすると、俺の恋人の1人であるクスコには勿論、マリオンの強化にも及んでいないのではないかと思える程度の強化具合ではあったが。

 ただ、それはあくまでも多くのニュータイプと接してきた俺だからこそ分かる事だ。

 イリアやハマーンには、それは分からないだろう。

 

「……イリア、どうだ?」

「その、今はちょっと分かりませんけど……ただ、以前よりも視野が広くなったというか、分からないものが分かるようになったというか、そんな感じです」

「ふむ。それはつまり、アクセルが言うようにニュータイプ能力が強化された。そのような認識でいいのか?」

「はい、それで合っていると思います」

「……なるほど。すまない、アクセル。少し取り乱した」

 

 イリアの様子を見て、心配いらないと判断したのだろう。

 俺に向かってそう謝罪してくる。

 

「いや、気にするな。ニュータイプとの接触によって起きる現象は人によって違うからな。……その中では、悪くない方だったと思う。数秒から十数秒だけだったけど」

「え?」

 

 俺の言葉にそんな言葉を漏らしたのは、イリア。

 一体何故そのような言葉を? と疑問に思って視線を向けると、そこには不思議そうに……俺の言葉が理解出来ないといった様子でこちらを見ているイリアの姿。

 

「イリア?」

「えっと、ハマーン様。その……星の海の中にいたのは間違いないですけど、私の認識だと10分以上はいたと思うんですけど」

「アクセル?」

 

 どういう事だ? とハマーンが俺に視線を向けてくるが、そんなハマーンとイリアに対し、俺が出来るのは首を横に振る事だけ。

 

「その辺は人によって違うしな。俺にしてみれば数秒から十数秒といったところだったが、イリアには10分以上と感じられても不思議はない」

「……そういうものか」

「どうやらそういうものらしいですね」

 

 イリアとハマーンがそれぞれに言葉を交わす。

 それを聞きながら、取りあえず用件も終わったのでそろそろモニク達に合流しようかと考えたところで、不意にハマーンが俺に視線を向けてくる。

 

「ハマーン?」

「アクセル、すまないが私にも触れてもらえないだろうか?」

 

 そう言い、握手を求めるように手を伸ばしてくるハマーン。

 昨日俺と会ってからも、接触しないよう注意していたハマーンだったのだが……手を出してくる今のハマーンを見る限り、一体何故急にその態度を変えたのかが理解出来ない。

 いや、話の流れから全く理解出来ないといった訳ではない。

 イリアとのやり取りで、自分が俺と触れ合っても問題ないと判断したのだろう。

 

「俺との接触によって起きる現象は、必ずしも同一ではない。いや、寧ろ人によって違う。そういう意味では、ここで俺と接触した場合、間違いなくイリアとは違う現象になるし、それがどうなるのかも分からないぞ?」

「だろうな。それは分かっている。だが私はそれを考えた上でもアクセルと接触する事に意味があると理解したのだ。……であれば、それを躊躇する必要もないだろう?」

 

 いや、あるだろ。

 そう突っ込みたかったが、俺を見るハマーンの視線の中にある真剣な色を見ると、それを否定は出来ない。

 ……まぁ、ハマーンの気持ちも理解出来ない訳ではないが。

 ハマーンがアクシズの摂政となってすぐにエンツォが反乱を起こした。

 そうである以上、ハマーンとしては自分の存在が侮られる原因になったのではないかと、そう思ってもおかしくはない。

 だからこそ、ハマーンは自分という存在をより大きく……アクシズにおいて決して侮られないようにしようと考えたのだろう。

 その気持ちは分からないではないし、それによってアクシズにおけるハマーンの影響力が強まるのなら、俺としてもその手助けをするのに否はない。ないのだが……

 

「繰り返すが、俺との接触によって何が起きるのかは人によって違う。ハマーンが望むような結果にならない可能性もある。それを承知の上でも、試すのか?」

 

 そう尋ねるものの、ハマーンが俺に向ける決意の籠もった視線は変わらない。

 これは、退く気はないな。

 ……アムロの例もあるので、ニュータイプが俺に接触するっていうのはお手軽にニュータイプレベルが上げられるって訳じゃないんだけどな。

 今のところ、可能性そのものはそこまで高くないものの、最悪アムロのように……いや、アムロよりもっと酷い状態になってもおかしくはないのだから。

 とはいえ、ハマーンのやる気を削ぐ訳にはいかないのも事実、か。

 実際にハマーンにとって、今回の一件については自分のニュータイプ能力を強化する千載一遇のチャンスなのは間違いないのだから。

 アクシズを率いる者として、このチャンスを逃すという手はないのだろう。

 ……つくづく、本当につくづくエンツォの反乱が厄介だな。

 ハマーンがこのように自分の力不足を嘆いているのは、それが全てではないにしろ、エンツォの反乱によるものが大きいのは間違いない。

 グレミー・トトとその周辺が逃げ出したのも多少は影響を与えているだろうが、こちらは人数そのものはそう多くないしな。

 いやまぁ、それでもかなりの数の軍艦を率いていったのを思えば、それなりの人数にはなるのだろうが。

 ただ、グレミー・トトの一件はMSの設計データとかを奪われたのが影響してるのかもしれないな。

 

「分かった」

 

 結局俺はハマーンの真剣な視線に押されるように、そう頷くのだった。

 

「そうか!」

 

 喜色満面といった様子のハマーン。

 だが、そんなハマーンに対して俺は追加で口を開く。

 

「ただ、この件については最悪ハマーンの精神に影響が出る可能性もある。……ナタリーの前でやるのが条件だ」

「え……」

 

 これについては、ハマーンにとっても予想外だったらしい。

 とはいえ、実際にハマーンと俺が接触する以上、ある意味でハマーンの姉代わりとでも言うべきナタリーがいない場所で行うというのは、避けた方がいいのは間違いなかった。

 単純にこの件を独自の判断で進めた結果として、ナタリーに恨まれたりするのは避けたいしな。

 

「ナタリーはハマーンの事を心配してるだろう? なら、そんなナタリーに内緒でハマーンのニュータイプ能力を上げる……それも本当に上手くいくかどうかは分からないようなことをするのは避けた方がいい。そうは思わないか?」

 

 そんな俺の言葉に、ハマーンは黙り込む。

 どうやらハマーンにとっても、この件は痛いところだったのだろう。

 あるいは、ナタリーに自分のニュータイプ能力を上げる件について話はしたが、反対されたのかもしれないな。

 ん? でもそうなると、イリアを込みであっても俺とハマーンが一緒の部屋で話をするというのは明らかに避けるべきだと思うんだが。

 俺を信じていたのか、それともハマーンを信じていたのか。

 その辺については俺がどうこう考えるようなことではないか。

 

「どうする?」

「……イリア、ナタリーを呼んできてくれ」

「はい、ハマーン様」

 

 俺の言葉にハマーンがイリアにそう指示を出すと、イリアは即座にハマーンの言葉に頷いて、部屋から出ていく。

 それを見送り……

 

「あのイリアって子供、随分とハマーンに懐いているように思えるな」

「ああ、私を慕ってくれる良い子だ。私は自分で言うのも何だが、アクシズではそれなりに人気がある」

 

 突然何を? と思ったが、ハマーンの言ってる内容は間違いなく事実だ。

 実際、アクシズ内……特に民衆の間でのハマーンの人気は高い。

 いや、高いという言葉では言い表すのが難しい程のものがそこにはあった。

 もっとも、その人気はあくまで民衆……一般人の間だけの話で、軍上層部とかになるとエンツォの件もあったように、その人気は限定的なのだが。

 とはいえ、あの反乱でアクシズの戦力の半分以上がエンツォに味方をしたし、グレミー・トトの一派と共に脱出した者達もいたが、それ以外……ハマーンに忠誠を誓って行動した戦力がそれなりにいたのも事実。

 

「そうだな。イリアをみていると、つくづくそう感じるよ」

「イリア以外にも、それなりに慕ってくれる者はいる。実際、その中の何人かは一般人だったのが軍に入隊もしてくれている」

 

 俺が思ったよりも、ハマーンの人気は高いのかもしれないな。

 そう思っていると、こちらに近付いてくる気配を察した。

 急速に近付いてくるその気配は、歩いて移動しているのではなく走って移動しているのだろう。

 それが誰の気配なのかは、考えるまでもなく明らかだった。

 

「来たな」

 

 そう俺が口にし、すると次の瞬間には部屋の扉が開き……

 

「ハマーン!?」

 

 部屋の中に入ってきたのは、ナタリー。

 ハマーンを見てその名前を呼び……まだ俺との接触が起きていないのを知ると、安堵した様子を見せる。

 

「ふぅ……もう、全く……驚かせないでよね」

「何をだ?」

「何をって……それについては言わなくても分かるでしょ。いきなりアクセルさんと接触するとかイリアから聞かされた私の身にもなってよね」

「……すまない。だが、これは決めた事なのだ」

 

 こうしてハマーンとナタリーが話していると、モニクとイリアも少し遅れて部屋に入ってくる。

 こちらもそれなりに急いではいたのだろうが、それでもナタリーよりはどうしても遅くなってしまったのだろう。

 

「アクセル、彼女から聞いたけど……本気なの?」

 

 部屋に入ってきたモニクが、真っ先に俺にそう聞いてくる。

 ナタリーがハマーンと話しているのと、モニクと俺が話しているのは……どこか似ているな。

 そう思ったものの、今はその辺りについては指摘しない方がいいか。

 

「それは俺に言うんじゃなくて、ハマーンに言った方がいいんじゃないか? そして、その上で言うのなら……ハマーンは本気だな」

 

 これがあるいは気軽に……やれるならやるといったような感じで要望してきたのなら、俺も恐らくは断っただろう。

 だが、ハマーンは……そう、いわゆる断固たる決意から俺に頼んできたのだ。

 そうである以上、俺としてもそれを断るといったつもりはない。

 今回の一件については、ハマーンは決して譲れない物があると、そう俺に示してきたのだから。

 

「……そう。アクセルがそう言うのなら、私からは何も言わないわ」

「ん? いいのか? もっと色々と言われるかと思ったんだが」

 

 モニクはUC世界にいる俺の恋人達の中でも、ストッパー役だ。

 他にもストッパー役ということならクリスもいるが、ストッパー役としての能力はどうしてもモニクよりも劣る。

 こう……何て言えばいいのか。そう、クリスの方がモニクよりも流されやすい?

 そんな感じだ。

 いや、これは寧ろクリスの方が流されやすいのではなく、モニクの方が単純にストッパー役として強固な力を持っていると表現した方がいいのか?

 ともあれそんな感じなんだが、そんなモニクが今回こうもあっさりと許可を出したというのは、正直なところちょっと意外だった。

 

「これからアクシズを率いるハマーンの事を思えば、頼りになる男……それも利害関係なく、接してくれるアクセルに惹かれるのは仕方のない事でしょうし」

「……ん? あれ? ちょっと待った。何か勘違いしてないか?」

 

 何か妙な勘違いをしているような?

 モニクの言葉に、思わず俺はそう突っ込むのだった。

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