転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4283話

 リューキュウはドラゴンとしての本能からか、それともこれまでの経験からか、俺の発する魔力や闘気を感じたらしく咄嗟の行動といった様子で後ろに跳ぶ。

 マウントレディは、リューキュウが何をしているのか分からなかった様子だったが、それでも急にリューキュウが俺との距離を取ったのを不思議そうにしながら、念の為に自分も……といった様子で離れる。

 

「どうだ? 今ので分かったんじゃないか? 純粋な強さという点では、俺に勝てないと」

 

 そんなリューキュウを見て、俺は放つ魔力や闘気を消す。

 すると、リューキュウは安堵した様子で大きく息を吐きながら口を開く。

 

「……そうね。まるでオールマイトと会った時のような何かを感じたのは間違いないわ」

「オールマイト?」

 

 話の流れからして、恐らくはヒーローの中でも強者なのだろうが、当然ながらこの世界に来たばかりの俺にしてみれば初耳だ。

 そして俺の様子を見て、俺がオールマイトを知らないという事に気が付いたのだろう。

 リューキュウが何かを言うよりも前に、マウントレディが口を開く。

 

「オールマイトを知らないなんて……リューキュウ先輩、やっぱりアクセルってこの世界の人じゃないんじゃ?」

 

 マウントレディの様子からすると、どうやらオールマイトというのはこの世界において知っていて当然といった人物らしい。

 

「さっきから何度もそういう風に言ってるだろう? それで、結局そのオールマイトというのは、誰なんだ?」

「ヒーローよ。それもただのヒーローじゃなくて、ずっとNo.1のヒーロー」

「なるほど」

 

 その言葉で、何となく理解出来た。

 つまり、それだけ圧倒的な実力を持つヒーローなのだろう。

 

「まぁ、この世界にいれば、いずれそのオールマイトとやらとも遭遇する事にはなるかもしれないから、楽しみにしておこう。……ともあれ、その件は置いておくとしてだ。これで俺の実力については理解出来たと思ってもいいのか? そのオールマイトとやらに会った時のようだって事は」

 

 普段なら、こういう風に実力を見せつける時というのは……例えば素手でコンクリートを毟り取ったりとか、そういうのをして俺の実力について示す訳だ。

 だが、生憎とこの世界においては個性などというのは普通に存在している以上、コンクリートを毟り取れるくらいはそこまで珍しくもない……かもしれない。

 なので、一応止めておいたのだ。

 まぁ、魔力や闘気だけでリューキュウは俺の強さを察した……正確な強さを察した訳ではなく、自分の手に負えない強さを持つと理解した感じか。

 ともあれ目的は成功したので、コンクリートを毟り取るとかそういうのをしなくてもいいのは楽だったな。

 

「そうね。……それこそオールマイト級の強さがあるのなら、もしアクセルが何かをしようとしても、私が止められるとは思えないわ」

「……リューキュウ先輩、アクセルってそんなに凄いんですか?」

「マウントレディも経験を積めば分かるようになるわよ。ヒーローとしてやっていく上で、これは重要な事でもあるし」

 

 先輩らしいアドバイスをするリューキュウ。

 マウントレディも、リューキュウのその言葉に納得をしたように頷き、俺を見ている。

 いや、今の俺を見ても魔力や闘気は発していないので、それを見ても意味はないと思うんだが。

 

「で、これからどうする?」

「……何でアクセルがそれを聞いてくるのかしら。普通ならそれを口にするのは私達だと思うんだけど」

「そうかもしれないが、いつまでもこのままって訳にもいかないだろう?」

「……そうね。マウントレディの訓練の時間を取ってるけど、それだっていつまでもって訳じゃないし」

「私としては、折角リューキュウ先輩との訓練がすぐに終わってしまったのはどうかと思うんですけど」

 

 マウントレディが不満そうに言う。

 どうやらマウントレディにとっても、今のこの状況は決して好ましいといった訳でなかったのだろう。

 まぁ、巨大化とドラゴンに変身という2人の個性を考えれば、その気持ちも理解出来ない訳ではなかったが。

 見た感じ、この世界の人の平均的な大きさは俺の知ってる常識と同じだ。

 つまり、巨人とドラゴンが模擬戦をやるような場所……それも模擬戦となると、壊れてもおかしくはない場所を用意するとなると、そう簡単な事ではないのだろう。

 それなりに手間が必要なのに、十分に訓練をするよりも前に俺が転移してきた。

 マウントレディにしてみれば、不満を抱いても仕方がない。

 

「マウントレディの気持ちも分かるけど、アクセルの事をこのままには出来ないでしょ? 考えてもみなさい、もしかしたらオールマイト級の力を持つ子が、何も知らないままにこの辺りを歩き回るのよ? ヴィランに襲われるような事があったら……いえ、それ以前にこの子がヴィランになったら、どうするつもり?」

 

 この子って……いや、今の俺は10代半ばでリューキュウは20代だ。

 正確な年齢は分からないが、20代半ばってところか?

 つまり、俺はリューキュウから見て10歳年下に見える訳だ。

 そんなリューキュウにしてみれば、この子呼ばわりをされても仕方がないのかもしれないな。

 ちなみにマウントレディは……10代後半から20代前半といったところか?

 もっとも、女は外見では年齢が分からなかったりするので、見た目というのは当てにならない。

 化粧とかそういうのでも大きく印象は変わるらしいしな。

 どの世界で見たニュースだったかは忘れたが、小学生が化粧をしてホステスの仕事をしていたとか、見た事があるし。

 勿論、元々その小学生が他の小学生と比べて大人っぽいというのもあったんだろうが、それでも小学生だ。

 それが化粧を上手くする事によって、大人の振りを出来たのだから、外見年齢というのは当てにならない。

 まぁ、それは色々な意味で特殊な例だとしても、とにかく外見年齢というのはそこまで当てにならないのは間違いない。

 

「それは……まぁ、厄介なのは間違いないですね」

「でしょう? だから、まずはアクセルの件を片付ける必要があるわ」

「それが公安とやらなのか? 名前的に、あまり好ましい存在じゃないんだが」

 

 リューキュウとマウントレディの話に割り込む。

 リューキュウ達の言う公安と俺の考えている公安というのが、必ずしも同じ存在とは限らない。

 

「何でそこまでアクセルは公安を嫌がるの? ……あれ、もしかして私達の知ってる公安と、アクセルの知ってる公安は違うのかしら?」

「あ……なるほど。私達の知ってる公安はヒーローについてだから……」

 

 リューキュウの言葉に、マウントレディがそう言う。

 そして俺もまた、その言葉に納得する。

 

「ちょっと詳しく聞かせてくれ。ちなみに俺の知ってる公安というのは、警察の上位組織的な感じで、テロとかそういうのを防ぐ為の組織だな。秘密主義だったり、自分達は選ばれた存在だったりと認識してるような連中だ」

「……うん、私達の知ってるヒーロー公安委員会とは似てるようで微妙に違うわね。ヒーロー公安委員会というのは国の組織で、ヒーローの取り纏めを行っている組織よ。ヒーロービルボードチャート……日本におけるヒーローの順位を決めるのにも、公安が関わってるから、アクセルが言うようなのとはちょっと違うんじゃないかしら。……まぁ、悪い噂がない訳じゃないけど、そういうのはどういう組織でもあるでしょうし」

「……なるほど。リューキュウが言うように随分と俺の知っている公安とは違うな」

 

 まぁ、俺の知っていると一口に言っても実際に俺が公安と関わった事はない……と思う。

 実は知らないところで関わっている可能性は否定出来ないが。

 これもまたイメージ的なものだが、こっちが気が付かないうちに何らかの手を回して、自然とそういう流れに持っていく……そういうのをやりそうな気がするし。

 また優秀な組織であるのは間違いないだろうから、下手に俺と関わるような事があれば、それによって自分達に被害が出ると考え、俺に関わらなかったりしてもおかしくはない。

 この世界の公安がどういう存在なのかは、俺には分からないが。

 

「でしょう? なら、今回の一件は公安に相談してもいいでしょう? というか……その、私はヒーローの中でもそれなりに人気がある方なのは間違いないけど、個性事故となると私がどうこうするのは難しいし、それどころか異世界から来たなんて存在をどうすればいいのかなんてのは、全く分からないわよ」

「ですよね。そしてリューキュウ先輩がそうなら、私は言うまでもないわ」

 

 リューキュウとマウントレディがそれぞれにそう言う。

 

「それでどうする? 私達に提案出来る手段は、公安だけ。それ以外となると……その、アクセルには悪いけど、どうにかして捕らえさせて貰うわ」

「いや、どうにかして捕らえるとか、それを俺に言ってる時点でどうかと思うんだが」

 

 リューキュウが本気で今のような言葉を口にしているとは思えない。

 もっとも、見た感じではいざとなればどんな手段でも取って俺を捉えようとはしそうに思えるが。

 とはいえ、ある程度……本当にある程度だが、この世界の情報を知った今では、リューキュウがそういう事を言うのも分からないではない。

 何しろ俺は、リューキュウが言うには日本のトップヒーローであるオールマイトと同等の力を持っているように感じられるらしいし。

 まぁ、俺自身はそのオールマイトの力が具体的にどのようなものなのかは、分からないのだが。

 

「そうね。だから大人しく私達と来て欲しいわ」

「……そうだな。取りあえずはそうするよ」

 

 リューキュウやマウントレディと話してみた感じだと、別にどうしても一緒に行動するのは不味いという訳ではない。

 リューキュウにしろマウントレディにしろ、こちらに友好的な性格をしているのは間違いないのだから。

 いやまぁ、マウントレディの方はリューキュウと比べると微妙に面倒臭がったりしているようにも思えるけど。

 

「ありがとう。じゃあ、すぐに私は公安に連絡をするわ。マウントレディは……どうする?」

「どうすると言われても、そうですね。こうした事態になってしまった以上、私も放っておくって訳にはいかないでしょうし。それにリューキュウ先輩だけに任せておくのも色々と不味いと思いますから。私も一緒に行きますよ」

「そう? まぁ、マウントレディも当事者だし……公安とかでも色々と聞かされると思うから、その時に一緒にいてくれれば面倒も少なくてすむのは間違いないわね」

「……それ、結局のところ私も最初からいかないと駄目な奴なのでは?」

「ふふっ、そうかもしれないわね」

 

 リューキュウが笑ってそう言うと、マウントレディは不満そうな表情を浮かべる。

 うーん……俺の事でこうして迷惑を掛けていると思うと、ちょっと悪いとは思えてしまうな。

 とはいえ、この世界において俺の一件がどういう風に広がるのかは分からない。

 もしかしたら大々的に広がるような事があった場合、リューキュウとマウントレディは初めて俺と遭遇した人物という事で、広く名前が知られるようになる可能性も否定は出来なかった。

 そうなったら、それはそれで知名度が高くなるのだろうが。

 ……ヒーロー公安委員会とやらの判断によっては、俺が異世界から来たという件は極秘裏に扱われる可能性もだろう。

 とはいえ、恐らくそっちの方が可能性は高いだろう。

 

「じゃあ、いつまでもここにいる訳にはいかないでしょうし、外に出ましょうか。サイドキック達も心配してるかもしれないし」

「そうですね。ここで模擬戦をやる筈が、途中から物音が聞こえなくなったりしたので、そういう意味でも一体何があったのかと心配してもおかしくはないと思いますし」

 

 2人の会話を聞く限り、サイドキックというのは……助手とか、そういう感じか?

 まだこの世界に来たばかりという事もあってか、その辺についてはあまり知識がないんだよな。

 リューキュウやマウントレディとの会話でそれなりにこの世界の情報については知る事が出来たものの、それでもまだこの世界の常識については知らない事が多い。

 この世界はヒーローという存在がいる。

 その為、俺が今まで色々な世界で培ってきた常識の類は通じない事も多いんだよな。

 その辺りは、それこそ世界によって大きく変わってきたりするので、別にこの世界が特別という訳でもないのだが。

 ただ、常識については明らかに他の世界よりも違うところが多そうなのは間違いなかったけど。

 

「ヒーロー公安委員会……か。一応言っておくけど俺に危害を加えられた場合は、こっちも相応の対応を取らせて貰うぞ? オールマイトとかいう人物が本気で暴れた場合、どうなるか……俺には分からないが、お前達なら分かるんだろう?」

 

 そう聞くと、リューキュウとマウントレディは真剣な表情でそういう風にならないようにすると言ってくる。

 ……この様子を見ると、オールマイトというのは、俺が予想していた以上に強い力を持っているらしいな。

 俺にとっては、素直に事態が進むのならそれに越した事はなかったが。

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