転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4284話

 俺が転移をした場所でリューキュウやマウントレディと出会えたのは、それなりに幸運ではあったらしい。

 もしこれがヒーローの2人ではなく、いわゆるヴィランの類だったら……間違いなく面倒な事になっていただろう。

 もっとも、それを言うのならもしヴィランのいる場所に出たのなら、襲ってきたヴィラン達を倒して、尋問によってそいつらからこの世界についての事情を聞いたり……といった事をしていただろうが。

 そうなればそうなったで、面倒は少なかったかもしれないなとも思ったが……まぁ、そうなると、それはそれで面倒な事になっていた可能性もあるだろう。

 もしかしたら、ヴィランを率いて一大組織を作り、ヒーロー達と戦いになっていた可能性も否定は出来ない。

 そもそも、今更……本当に今更の話だが、俺はとてもじゃないがヒーローなんて柄じゃないしな。

 何しろ、俺の撃墜数……つまり殺してきた人数は2000人を超えている。

 しかもこの撃墜数、軍艦とかそういうのは撃破しても上がる撃墜数は1である以上、恐らく3000人……いや、5000人規模で殺していてもおかしくはない。

 どこの世界での話なのかは忘れたが、1人殺せば殺人、100万人殺せば英雄とか、そういう話があった筈だ。

 そういう意味では、俺は英雄には程遠い訳だ。

 もっとも、100万人というのは自分の手で直接殺すといった訳ではなく、自分が指示をしてとかそういう意味なのかもしれないが。

 だとすれば、俺も英雄に入るくらいには殺しているのかもしれないな。

 

「アクセル、どうしたの? 何かあった?」

 

 俺に向かい、リューキュウがそう声を掛けてくる。

 マウントレディも、あまり興味はなさそうにしつつも、どうしたのかといった様子で視線を向けていた。

 

「いや、この世界に転移してきて会ったのがリューキュウやマウントレディで良かったと思ってな。もし俺が転移した先にヴィランがいたら、何だかんだとそのヴィラン達を従えて組織を作るなりなんなりしていたかもしれないし」

 

 俺がヒーロー的な性格であればそういう事はしないのかもしれないが、俺はとてもではないがヒーロー的な性格の持ち主じゃなしいな。

 ……寧ろ、ヒーローとヴィランのどちらかと言われれば、寧ろヴィラン寄りですらあるだろう。

 もっとも、この世界のヒーローというのはあくまでも職業としてのヒーローであって、俺が思っているようなヒーローとは微妙に違うっぽいが。

 

「……そうね。オールマイトが敵に回ったと考えると、しみじみとアクセルがこの世界に来た時に遭遇したのが私やマウントレディで良かったと思うわ」

 

 言葉通り、しみじみと……心の底からといった様子で言うリューキュウ。

 俺の力を片鱗程度とはいえ感じられたリューキュウだけに、もし俺がヴィラン側になっていたら、洒落にならないと判断したのだろう。

 

「うわ……それは考えたくないですね」

 

 こちらは俺の実力を感じられた訳ではないが、それでも多少は実力を見せた事で、そんな感想を口にするマウントレディ。

 

「そうならなかった幸運に感謝だな。俺としても、どうしてもヒーロー達を敵に回したいとは思わないし」

 

 そうして話をしながら移動すると……

 やがて、1人の女が空を飛んでこちらに向かってやって来るのが見えた。

 一瞬敵か? と考えたものの、よく見ればこちらに敵意を抱いているようには見えない。

 寧ろ目を好奇心で輝かせているようにすら見える。

 

「一応聞いておくけど……あの、空を飛んでこっちにやって来てるのは、お前達の仲間か?」

 

 そう尋ねると、俺の視線を追ったリューキュウが口を開く。

 

「ええ、そうよ。あの子はネジレちゃん。私の事務所にインターンに来ている雄英の2年よ」

「……ネジレちゃん?」

 

 リューキュウのその言葉に疑問を抱く。

 いや、別にリューキュウがネジレちゃんといった呼び方をしてもおかしくはないのだが、それでもリューキュウらしくないというか、何というか……

 そんな俺の様子に気が付いたのだろう。

 リューキュウは少し困った様子で口を開く。

 

「ヒーローとして活動している時は、ヒーロー名で呼び合うのよ」

「……ヒーロー名?」

 

 また新たな単語が出たな。

 そう思ったが、ヒーロー名というのが何なのかというのは、少し考えれば理解出来る。

 理解出来たが……

 

「あれ、ちょっと待った。じゃあ、もしかしてリューキュウやマウントレディってのも……」

「ヒーロー名に決まってるでしょ。リューキュウ先輩ならともかく、私のマウントレディというのが本名だとでも思ってたの?」

 

 マウントレディが呆れの表情を浮かべながら、そう言ってくる。

 だが、俺にしてみれば……

 

「この世界ではそういう名前付けが普通だと思っていた。お前達もそういう風に呼び合っていたしな」

「だから、ヒーロー活動の時は……まぁ、でも、アクセルが異世界から来たのなら、そういう風に思っても仕方がないのかしら。リューキュウ先輩はどう思います?」

「マウントレディが言うように、異世界からだとそういう風に認識されてもおかしくはないのかもしれないわね」

「……で、こっちに飛んでくるあの女のヒーロー名がネジレちゃんだと? リューキュウやマウントレディとは随分と違うな」

 

 そう言うと、リューキュウは微妙な表情になる。

 頭が頭痛といった感じで。

 

「仕方がないでしょ。ヒーロー名は自分で決めるんだから。ただ、自分の名前をそのままヒーロー名にするという人も、それなりにいるわ。……自分の名前にちゃんをつけるのは珍しいけど」

「何、何? どうしたの、リューキュウ? ねぇ、何でマウントレディとの模擬戦は途中で終わったの? それでこの子は誰? ねぇ、気になるわ」

 

 ネジレちゃんとやらが空を飛んで俺達の側までやって来ると、いきなりまくし立てる。

 ……うん、どうやらこういうタイプらしい。

 好奇心がかなり強いのだろう。

 もっとも、その好奇心の強さをここまで露骨に現すのはどうかと思うが。

 

「リューキュウ?」

「ネジレちゃん、その辺にしておきなさい。こっちはアクセルよ。ちょっとした理由で今は一緒にいるの」

 

 ちょっとした理由か。

 どうやら、リューキュウは俺が異世界から来たというのをネジレちゃんに知らせるつもりはないらしい。

 いや、無理もないか。

 リューキュウの話を聞く限りだと、ネジレちゃんは雄英の2年……つまり、まだ高校2年だ。

 であれば、俺というこの世界を大きく変えるかもしれない存在について、迂闊に話すのはどうかと思ったのだろう。

 その判断は、決して間違ってはいない。

 ……それ以外にも俺についての話を聞いてしまえば、面倒に巻き込むといった事になる可能性も十分にある。

 何しろ、ヒーロー公安委員会とやらとこれから接触するのだから。

 そうなると、ネジレちゃんにも何かある可能性は十分にあった。

 

「それで、これからどうするんだ? 真っ直ぐ向かうのか?」

 

 一応ネジレちゃんについては俺の件についての詳細は話さないようにしてるようなので、どこに向かうかというのは黙っておく。

 もっとも、これからの事を思えばいつまでも隠し通せるとは思っていないが。

 リューキュウもそれは同じらしく……

 

「そうね。私は事務所の方によって向こうに連絡を入れるわ。マウントレディはどうするの?」

「一応私も行きます。今回の件に関わってしまったのは間違いないですし。それに……一応、下心もありますから」

 

 マウントレディの言う下心というのが何なのかは、生憎と俺には分からない。

 とはいえ、その性格を思えば予想するのはそう難しい事ではなかったが。

 つまり、ヒーローとして活動する上で何らかの利益……例えば俺を保護した事による謝礼金? 協力金? とにかくそういうのが貰えるかもしれないとか、そんな風に思ってもおかしくはなかった。

 普通に考えれば決して褒められた事ではないのかもしれないが、堂々とそれを目当てにしていると言ってる辺り、好感が持てる。

 

「何? 何? リューキュウ、どこに行くの? 私、気になるんだけど」

「ネジレちゃんには悪いけど、連れていけないわよ」

「えー……」

 

 リューキュウにしてみれば、学生のネジレちゃんを今回の一件に巻き込みたくないという思いからの言葉なのだろうが、親の心子知らずって感じか。

 いや、リューキュウは雇い主ではあっても親って訳じゃないと思うが。

 ともあれ、ネジレちゃんの後に他にも何人かのサイドキック……いや、スーツとかを着てるのを思えば、サイドキックじゃなくて事務員か? もしかしたら事務員もまたサイドキックと呼ぶのかもしれないが。

 ともあれ、合流した面々と共にバスで移動を開始する。

 どうやらそれなりに人数がいるので、この場所まではバスで来ていたらしい。

 

「……で、このバスに乗ってるのがリューキュウの事務所の者達だったら、マウントレディの事務所はどうなってるんだ?」

「ぐ……うるさいわね。私はリューキュウ先輩みたいに人を雇っていないのよ」

 

 俺の側に座ったマウントレディは、俺の言葉に不満そうにしながらもそう言葉を返してくる。

 どうやら本人が言うように、サイドキックはいないらしい。

 

「寧ろ、それでよく事務所が回るな」

「あのねぇ、言っておくけど私みたいにサイドキックを雇っていないヒーローってそれなりに多いのよ? 寧ろ私は事務所を構えてるだけ、ミルコ先輩よりマシでしょ」

 

 また分からない名称が出て来た。

 とはいえ、先輩と呼んでいるという事は、リューキュウと同じように女のヒーローなのか?

 にしても、今の言い方からすると、そのミルコというヒーローは事務所を構えていないのか。

 

「それを俺に聞かれても、返答に困るんだが?」

「……ああ、そう言えばそうだったわね。とにかく、ミルコ先輩は事務所を持っていないのよ」

「それでヒーローとしての活動が出来るのか?」

 

 俺が認識してる限りだと、ヒーローというのは警備兵に近い。

 いや、俺が知っている警備兵よりもっと積極的に動いているようだし……警官というのがヒーローには近いのか?

 となると、もしかしたらこの世界には警察ってなかったりするのか?

 いや、でも公安はあるしな。

 もっとも、その公安も俺の知ってる公安とは違って、ヒーロー公安委員会らしいけど。

 

「出来てるから、ヒーロービルボードチャートでも上位にいるんでしょ。もっとも、そういうのが出来るのはミルコ先輩だけだけど」

 

 何だかミルコというのはかなり特殊な人物らしいな。

 

「知ってる、知ってる? ミルコって兎の個性なんだよ? 凄いよね」

 

 俺とマウントレディの会話が聞こえていたのか、少し離れた場所に座っていたネジレちゃんが、そう言ってくる。

 にしても……個性兎?

 てっきり個性というのはリューキュウのようなドラゴンに変身するのとか、マウントレディのように巨大化するような感じだと思っていたんだが……兎?

 

「兎ってあの……ピョンピョン跳ねる兎か?」

 

 一瞬、本当に一瞬だけだが、もしかしたら公安と同じようにこの世界の兎も俺の知っている兎と違うのではないか。

 そう思ったんだが、ネジレちゃんは……そしてマウントレディも俺の言葉に頷く。

 

「そうよ。個性兎。兎っぽい事が出来るらしいわ」

「何だそれ」

 

 マウントレディの言葉に思わずそう突っ込むが、ふと考えるとこれは悪くない情報だ。

 個性兎で兎っぽい事が出来るのなら、俺もまた個性混沌精霊という事にすれば……

 うん、公安との交渉とかそういうのでどうなるのかは分からないが、もし俺がこの世界で行動する事になるのなら、個性は混沌精霊という事にしておいてもいいかもしれないな。

 混沌精霊のような事が出来る的な感じで。

 ……まぁ、そうなればそうなったで、兎とかと違って混沌精霊ってのは何だ? と俺の個性について聞いてきた者達に突っ込まれそうな気がするが。

 ともあれ、この世界は俺が今まで行動してきた世界と比べて色々な……本当に色々な違いがある。

 何しろ、個性という特殊能力を持つ者達が普通に存在している世界なのだから。

 そういう意味では、俺にとってこの世界は非常に興味深い世界であるのは間違いなかった。

 まだこの世界については殆ど何も知らない状況なので、個性について詳しく調べられる機会というのは必要だろうが。

 後は……この世界の技術レベルがどういうものかというのも、ちょっと気になるところではあるな。

 ドラゴンに変身するリューキュウと巨大化するマウントレディ。

 この2人に共通するのは、個性を使うと現状よりも圧倒的に大きくなるという事だが……通常の状態に戻っても、服はそのままだ。

 マウントレディにいたっては、巨大化した時の服も普通に使っている。

 そう考えると、何気にこの世界の技術が高いのは間違いなかった。

 

「ねぇ、ねぇ、どうしたの? 何か気になるの?」

 

 ネジレちゃんにそう聞かれるも、今はまだ適当に話を合わせておいた方がいいだろうとと、相手に気が付かれない程度に疑問を口にしながら、ネジレちゃんの相手をするのだった。

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