転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4286話

 リューキュウの運転する車は、20分程で停まる。

 

「ここよ」

「……えっと、ここなのか? 本当に?」

 

 駐車場に車を停め、そこから出ると、リューキュウが近くにあるビルを示してそう言う。

 そんなリューキュウの言葉に、俺は思わずそう突っ込む。

 何故なら、リューキュウの視線の先にあったのは、古ぼけたビルだったのだから。

 それこそリューキュウの事務所が入っているビルと比べても、明らかに古い。

 ……ボロいと表現しないのは、俺のせめてもの心遣いだ。

 

「ええ、ここよ。……ああ、なるほど」

 

 俺の言葉に頷いたリューキュウが、俺の様子を見て不思議そうしていたものの、すぐに納得したように頷く。

 

「ここは公安の拠点の1つだけど、本拠地という訳じゃないわ。この街にある公安の支部の1つよ」

「そうか。……だろうな。実はこれが公安の本拠地だったら驚く」

 

 ヒーローを纏めている公安の本拠地が、こういう古いビル……それも見た感じ、ビル丸々1つではなく、特定の階層を借りているといった感じのようだが、それであれば明らかに不思議だ。

 勿論、それが不思議というのはあくまでも俺の認識なので、もしかしたらこの世界においては普通の認識なのかもしれないが。

 

「ほら、行きましょう。相手を待たせる訳にもいかないし」

 

 リューキュウに促され、俺とマウントレディはビルに向かう。

 途中で何人かとすれ違うが……なるほど、その中の1人の気配は俺が知っている……予想している公安のそれに近い。

 話を聞いた限りだと、この世界の公安は俺の知っている公安とは大分違うらしかったが、それはそれとしてやっぱりそういうタイプの人材もいるらしい。

 いやまぁ、このビルは公安以外にも入っているらしいから、そう考えるともしかしたら公安以外の別の場所の人材という可能性もあるが。

 そんな風に考えながらビルに入り、エレベータに乗る。

 当然の話だが、このエレベータは……いや、他の技術もそうだが、科学技術によるもので、電気で動いてる。

 個性という名の特殊能力を持つ世界だけに、もしかしたらエレベータも個性とかで動かしているのかもしれないと思ったんだが、その辺はどうやら違ったらしい。

 まぁ、リューキュウの事務所とか、ここに来るまでの街中を見れば、その辺は明らかだったが。

 そもそもの話、もし個性でそういうのを動かせるとしても、個人で動かすよりも普通に発電所で作った電気で動かした方が相応しいだろうし。

 勿論個性の中には、例えば電気とかを操る奴もいるんだろうから、そういう意味では個性でエレベータを動かしたりも出来るんだろうが。

 

「どうしたの、アクセル? 何か気になる事でもあった?」

 

 エレベータに乗ってから俺が黙り込んでいた為か、あるいはこれから公安に会うので緊張していると思ったのか、リューキュウがそう聞いてくる。

 見た目は仕事の出来る女、クールビューティといった感じのリューキュウだが、何気に面倒見がいいよな。

 もっとも、そういう性格でもないとヒーローはやらないのかもしれないが。

 

「いや、もしかしたらエレベータを動かす、あるいは街中で使っている電気も個性で生みだしているのかと思ってな」

「……そんな事を思っていたの? さすがにそれはないわよ。いえ、世の中にはそういう事が出来る強個性の持ち主もいるかもしれないけど」

「強個性? それは呼んで字の如く、強力な個性という認識であってるか?」

「ええ、マウントレディの巨大化とかも強個性と呼ばれているわね」

 

 突然話を向けられたマウントレディは、呆れたように言い返す。

 

「それを言うなら、リューキュウ先輩のドラゴンだって強個性でしょう? それも人気という点では、私の巨大化よりも凄い上ですし」

 

 なるほど、ドラゴンというのはファンタジー世界の中でも人気だ。

 そのドラゴンに変身するリューキュウもまた、人気が高いのは当然だろう。

 

「ヒーロービルボードチャートは、活動の内容とかもそうだけど、人気投票も強い影響力を持ってるのよ。そうなると……分かるでしょう?」

 

 マウントレディの言葉に、俺は頷く。

 リューキュウは恐らくヒーロービルボードチャートの中でもかなり上位に位置するのだろう。

 その理由こそが、ドラゴンという個性の人気。

 もっとも、人気だけで実力がないとかなら、上位にいる事は出来ないが。

 マウントレディの口ぶりや、リューキュウと接した時間を考えれば、リューキュウが決して人気だけの人物ではないのは明らかだった。

 ……まぁ、ドラゴンという人気要素以外にも、単純にその美貌から男からは勿論、女からもお姉様と慕われていてもおかしくはないタイプだろうが。

 

「何?」

 

 リューキュウを見ながらそんな風に考えていると、俺の視線に気が付いたらしく、そう聞いてくる。

 

「いや、何でもない」

 

 そう俺が言うのと同時に、チンとエレベータが目的の階層に到着した事を知らせる。

 扉が開き、俺とリューキュウ、マウントレディが下りる。

 そんな俺達を待っていたのだろう。

 1人の男の姿がそこにはあった。

 

「えー……リューキュウとマウントレディ、それとアクセル・アルマーさんですね?」

 

 どことなく力が抜けたというか、気力がない感じで聞いてくる男。

 というか、目の下に見て分かる程の隈があるんだが……この男、本当に大丈夫なのか?

 そう思ったのは俺だけではなかったらしく、リューキュウが心配そうに声を掛ける。

 

「ねぇ、何だか具合がよくないようだけど……大丈夫なの?」

「はい。ここのところちょっと忙しくて寝不足なだけなので。……ヒーロー公安委員会の、目良善見といいます」

 

 目良と名乗った男は、そう言い、頭を下げてくる。

 いや、本当に……大丈夫なのか、これ?

 目の下の隈が結構凄い事になっていたりするんだが。

 そう思うが、本人が大丈夫だと言っている以上は問題ない……かどうかはともかく、そういう事にしておこう。

 一応ヒーロー公安委員会で働いている人物なのだから、自分の体調くらいは理解出来ている筈だ。

 

「では、こちらへどうぞ。詳しい話を聞かせて貰いたいので」

 

 そう言い、目良は俺に視線を……鋭い視線を向けてくる。

 なるほど、眠そうではあるがこちらに向けてくる視線には鋭いものがあり、この目良という人物が外見通りの男ではないのは明らかだった。

 そんな目良に案内され、俺とリューキュウ、マウントレディの3人はヒーロー公安委員会が借りているこの階層の中でも奥の方にある部屋……個室に向かう。

 この個室……実は、もしかして本来なら取調室とかそういうのに使う場所だったりしないか?

 それに、リューキュウやマウントレディは気が付いていない様子だったが、壁の向こう側に数人の気配がある。

 これは……もしかして、あれか? 刑事ドラマとかでよくあるような、マジックミラーによる部屋で、向こう側からはこっちが見えるが、こっちからは向こうは見えないようになっているといったような。

 まぁ、気配を察知する能力があれば、姿が見えなくてもそこにいると分かるのだが。

 この世界は、MSとかが存在する世界ではなく、生身の世界……それも個性という特殊能力を持つ者達が多数存在する世界だ。

 そうなると、気配とかそういうのを察知出来るような技術とかそういうのがあってもおかしくはないと思うんだが……見た感じ、リューキュウやマウントレディも壁の向こうの気配には気が付いていないように思える。

 気配を察知する能力そのものが存在しないのか、単純にリューキュウやマウントレディが使えないだけなのか。

 後者の場合、オールマイトとかなら使えるのかもしれないな。

 

「そちらに座って下さい」

 

 目良がそう言う。

 取調室っぽい感じだが、椅子はきちんと4人分ある。

 この辺りはしっかりとこっちの事情について理解してるのだろう。

 というか、リューキュウが電話で連絡をした時、何人で行くかといったことを話してあったのかもしれないな。

 ともあれ、こうして椅子が用意されている以上、座らない訳にはいかない。

 壁の向こう側にいる者達も、俺達が……いや、俺がどのように行動するのか、しっかりと確認はしてるんだろうし。

 そんな訳で、俺は素直に椅子に座る。

 俺が真ん中の椅子に座ると、両隣にリューキュウとマウントレディが。そして向かいに目良が座る。

 

「ごほん。えっと……まずは確認させて下さい」

 

 相変わらず眠そうな様子で、目良がリューキュウとマウントレディに話を聞く。

 その内容は名前だったり出身地だったり、今までどのような活動をしてきたりといったような内容だ。

 リューキュウとマウントレディは、最初は素直に答えていたものの、何故そのようなことを聞いてくるのかと、やがて疑問を抱く。

 これ、多分俺が2人を洗脳したとか、もしくはもっと言えば俺がこの2人の偽物を作ったとか、そういう風に思われているんだろうな。

 なるほど、目良だけが俺の前にいて、他の面々……恐らくは目良の上司、もしくは鎮圧を担当するヒーローとかが壁の向こう側にいるのはそれが理由か。

 ……そうなると、ある意味で目良は生け贄的な存在として俺の前にいる事になるんだが。

 ただ、嫌々そういう風にしている訳ではなく、本人が納得してここにいるのは明らかだった。

 使命感が強いのか、それとも上に経つ存在に心酔してるのか。……まさか、眠すぎて判断力が落ちているとか、そういう事はないよな?

 普通なら有り得ないと思うのだが、見るからに眠そうな様子の目良を見れば、もしかしたらとい思いを抱いてしまってもおかしくはなかった。

 

「ちょっと、いつまでこんな質問を続ける気?」

 

 目良からされる、途切れる事のない質問。

 最初にそれに不満を爆発させたのは、リューキュウだった。

 てっきりマウントレディの方が最初にブチ切れるのかと思っていたので、これはちょっと予想外だったな。

 目良も驚きの表情を浮かべているのは、リューキュウが最初に怒るとは思っていなかったからだろう。

 だが、驚いたのは少しだけだ。

 すぐに我に返ると、申し訳なさそうな様子で口を開く。

 

「すいませんね。何しろ、今回の一件はただの個性事故ではないもので。……いえ、個性事故ですらないのは、連絡をしてきたリューキュウの方がよく分かっているでしょう?」

「そうね。でも、それと今のような……それこそ尋問に近い質問にどんな関係があるのかしら?」

「リューキュウとマウントレディが、本物かどうかの確認だろうな。俺の能力……この世界風に言えば個性によって生み出された偽物じゃないかと思われているんだろう?」

 

 そう言うと、目良の目が一瞬だけ鋭くなる。

 なるほど、こっちが本性か。

 ……いやまぁ、単純に眠くなっているのを隠せていないだけという可能性も十分にあるが。

 

「そうですね。否定はしません。……とはいえ、今の質問でリューキュウもマウントレディも本物であり、洗脳の類がされている訳ではないのは分かりました」

「……分かったのか?」

 

 本人しか知らないような質問をしていたのは分かったが、だからといってそれに答えられたから本物とは限らないだろう。

 俺にはそういう能力はないが、もし俺に相手の記憶を引き継いだ偽物を作る能力とか、そういうのがあったら、リューキュウやマウントレディしか知らないような質問に答える事も可能だろうし。

 

「ええ」

 

 だが、目良は俺の言葉にあっさりとそう頷いてくる。

 可能性としては、この部屋に何らかの仕掛けがあるとか、あるいは目良の個性、もしくは壁の向こう側にいる何者かの個性といったところか。

 リューキュウやマウントレディは、個性を使えばドラゴンになったり巨大化したりするのですぐに分かる。

 だが、ネジレちゃんの個性は……それがどういう個性なのかは俺にはちょっと分からないが、とにかく空を飛ぶ事が出来るのは間違いない。

 そうして空を飛ぶのに、何かを発している様子はなかった。

 つまり、ネジレちゃんが個性を使ってもそうとは分からない訳で……そういう意味では、もしかしたら個性を使ったら一目で分かるリューキュウやマウントレディの方が特殊なのかもしれないな。

 

「そうか。理由は分からないが、とにかくこの2人が本物と理解して貰ったようで何よりだ。それで、次は俺の話になるわけだな?」

「そうなりますね。……さて、ではアクセル君、お話を聞かせて貰いましょう」

 

 さっきはさん付けだったんだが……ああ、今の俺の外見は10代半ばだし。

 それこそ、ネジレちゃんと同年代、あるいは年下に見えてもおかしくはないか。

 

「話か。それは別に構わないけど、リューキュウから連絡がいっている以上、俺についての情報はある程度聞いているんだろう? なら、何か話す必要があるのか?」

「そうですね。ですが、私が聞いた情報とアクセル君が話す情報……それなら、直接アクセル君に聞いた方がいいとは思いませんか?」

 

 そう言う目良に、取りあえずはなるほどと納得するのだった。

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