転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4293話

「さて、ちょっと疲れた事だし……途中で何か食べていかない?」

 

 公安での用事が終わり、リューキュウの車で帰る途中、車を運転するリューキュウがそう言う。

 

「そうですね。私はラーメンを食べたい気分です。リューキュウ先輩、この辺りに美味しいラーメン屋ってありますか?」

「え? うーん……ああ、そう言えばねじれから聞いたんだけど、秋田県の稲庭うどんの技法を使って作ったラーメンを出す店があるらしいわよ。もっとも、その麺は乾麺らしいけど」

「えー……乾麺ですか? ラーメン屋で乾麺を使うってのはどうなんです?」

「マウントレディの言葉も分からないではないけど、実際にねじれがその店で食べたら凄く美味しかったって言ってたわ。アクセルはどう?」

「稲庭うどんの技法を使ったラーメンか。興味はあるけど……その前にちょっといいか?」

「うん? どうしたの? 他に何か食べたい料理でもある?」

「違う。……まぁ、俺の舌は中華料理についてはそれなりに厳しいから、その店のラーメンが本当に美味いかどうかは気になるが」

 

 何しろ、俺にとって中華料理といえば超包子の……四葉の料理だ。

 元々四葉の料理の腕は中学時代から一流だった。

 しかし、高校時代にも決して手を抜かず、様々な店に食べに行き、そして高校を卒業してからはシャドウミラーに入り、交流区画で超包子を開き、多くの者の舌と腹を満足させてきた。

 シャドウミラーという、色々な世界と行き来出来る立地上、ネギま世界では既に希少になった食材だったり、伝承が失われた料理法を知る事が出来たりして、更にその腕は上がっている。

 そんな超包子の料理は、それこそ一流の料理店と言っても過言ではない。

 もっとも、それだけの料理店にも関わらず庶民的な値段で食べられるのは嬉しいところだが。

 ……まぁ、超包子が繁盛している理由は、四葉の作る極上の料理もそうだが、頻繁にウェイトレスをやっている明日菜とステラの人気も関係していたりするのだが。

 

「そんなに舌が肥えてるの? なら、ねじれの舌とどっちが繊細か勝負ね」

「それだ。何でネジレちゃんじゃなくて、ねじれなんだ?」

「……ん? ああ、なるほど。基本的にはヒーローネームで呼ぶのはヒーローとして活動している時なのよ。それに、そういうのが関係なくも、あの子は何だかんだと私のところに来てから長いから、それもあるわね」

「ヒーローネームか。……そう言えば、リューキュウとマウントレディってのもヒーローネームなんだよな? 今更、本当に今更の話だけど」

「……本当に今更ね。でも、言われてみれば自己紹介もきちんとしていなかったかしら。これから一緒にいる時間も長いんだし、その辺りはしっかりとしておいた方がいいわね。私は竜間龍子よ。名前で呼んでくれると分かりやすいから、プライベートの時は龍子を呼んでちょうだい。ヒーローネームは、言うまでもなくリューキュウ。……こっちは別に言う必要はなかったかしらね」

 

 車を運転するリューキュウ……いや、竜間龍子が俺に向かってそう言い、笑みを浮かべる。

 クールビューティ系の龍子が浮かべる笑みというのは破壊力高いな。

 

「じゃあ、私も自己紹介をしておいた方がいいかしら。公安からの依頼で、これからリューキュウ先輩やアクセルと一緒に行動する事になるんだろうし。岳山優よ。先輩のように名前で呼んで欲しいとかそういうのはないけど……まぁ、先輩が名前で呼んで欲しいという事なら、私の事も優でいいわ。マウントレディね」

 

 もう知ってるんだから、ヒーローネームは別に言わなくてもいいんだが。

 

「流れに乗って、俺も改めて自己紹介しておくか。俺はアクセル・アルマーだ。よろしくな、龍子、優」

「……名前で呼んでもいいって言ったけど、呼び捨てにしてもいいとは言ってないんだけど?」

 

 優が不満そうに言ってくる。

 まぁ、優にしてみれば今の俺は10代半ばだ。

 年下からそういう風に名前を呼ばれるのは、慣れないのだろう。

 これがマウントレディといったようにヒーローネームなら、また違うのだろうが。

 

「悪いな、俺の癖のようなものだ。慣れてくれ」

「……リューキュウ先輩、どうします?」

「まぁ、別にいいんじゃない? その辺は人それぞれよ。それより、お店が見えてきたわ。……時間が時間だから、結構混んでるみたいね」

 

 龍子が車を運転しながらそう言うので前方を見ると、なるほど目的の店なのだろうラーメン屋の前には行列が出来ていた。

 既に午後5時くらいだと考えれば、学校帰り……部活帰りの学生とか、ちょっと早めの夕食をと思ってる者とか、小腹が空いたといった者達が並んでいるのだろう。

 ただ、龍子から聞いた話によるとあのラーメン屋で使われている麺はいわゆる生麺ではなく、乾麺だという話だ。

 俺の認識では乾麺というのは生麺の1ランク下という認識があったんだが……ああして行列が出来ているのを考えると、そうでもないのか?

 それとも稲庭うどんの技法で作った乾麺だという事だし、それによって普通の……スーパーやコンビニで売ってるインスタントラーメンやカップ麺の類とは違うのか?

 もしくは、この世界の事を考えると……個性を使って麺の味を上げているとか?

 その辺については実際に食べてみないと分からないか。

 幸い、店の駐車場はまだ少しは余裕があった。

 ……行列が出来ているのに駐車場が空いているって事は、電車やバス、もしくは歩きで来た人が多いのかもしれないな。

 

「さて、じゃあ行くけど……ここからはヒーローネームで呼ぶのは禁止よ」

「先輩は人気がありますから、ヒーローネームで呼ばれたらすぐに人が集まるでしょうしね」

 

 少しだけ……いや、かなり羨ましそうな様子で優が言う。

 ちなみにだが、今の龍子と優の2人はヒーローの服装ではない。

 一応公安に行く時はヒーローの服装だったのだが、建物から出る前に着替えたのだ。

 もしかしたら、最初からどこかに寄り道をするつもりだったのかもしれないな。

 ただ、リューキュウにしろマウントレディにしろ、ヒーローの服装では別に顔を隠している訳ではない。

 いや、マウントレディは眼鏡に近いマスク? そういうのをつけてるが。

 ただ、あれは顔を隠すというよりは、ファッションのような感じだ。

 いやまぁ、もしかしたら何らかの意味があるのかもしれないが。

 ともあれ、リューキュウもマウントレディも……いや、龍子も優も顔立ちは整っており、美人と称しても決して間違いではない。

 そしてヒーローとして活動している時も顔を隠している訳ではないので、私服であってもすぐにリューキュウとマウントレディだと知られてしまうだろう。

 

「一応、変装していくから大丈夫よ」

 

 そう言い、帽子を被り、サングラスを掛ける龍子。

 なるほど。印象は大分違う感じになったな。

 とはいえ夜にサングラスってのはどうかと思うが。……まぁ、似合ってない訳じゃないけど。

 

「私は……じゃあ、こうかしら?」

 

 優はそう言うと、髪型をポニーテールにして、伊達眼鏡を掛ける。

 こちらも簡単な変装ではあったが、髪型を変えたのが影響してるのか、一目で優……マウントレディだとは思えない様子になっていた。

 

「俺は別に変装する必要はないか」

「アクセルの事を知ってる人は誰もいないもの。当然でしょうね」

 

 こうして変装を終えた2人と共に行列に並ぶ。

 予想外の事に、並んでいる者の中には女も多い。

 まぁ、ネジレちゃん……いや、ねじれがこの店が美味いと言っていたのを思えば、そういう層に人気なのだろう。

 ちょっと話しただけでも、ねじれは非常に好奇心旺盛なのは事実だ。

 そんなねじれなら、男向けのラーメン……いわゆる、大盛りとかそういう店であっても普通に来そうだが。

 勿論、女だけではなく男もそれなりにいる。

 店の中から漂ってくる醤油の香りは、なるほど美味いとねじれが認めるだけの事はあるように思えた。

 

「いい匂いね」

 

 龍子が小さく呟く。

 優もまた、そんな龍子の言葉に頷いていた。

 そうしているうちに、やがて行列が進んで店の中に入る。

 店の中は普通のラーメン屋と言えばいいのか、それなりの人数が入る店だ。

 混雑緩和の為だろう、最初に食券を買うシステムだった。

 とはいえ、どうやら基本的にこの店では醤油ラーメンだけで、麺も稲庭うどんの技法を使った乾麺だけ。

 なので、選べるのは麺の量と、トッピングの追加だけ。

 潔いと言うべきか、サイドメニューの類もない……本当にラーメン専門店らしい。

 よくこのメニューで利益を出せるなと思ったが、実際にこうして客が店の外にまで行列を作っているのを考えると、きちんと店として成り立ってはいるのだろう。

 龍子と優はそれぞれ小盛りを、俺は大盛りを選ぶ。

 トッピングはどうせならという事で、チャーシューと煮卵を追加する。

 

「アクセル、一応言っておくけど……事務所に戻って少ししたら夕食はあるのよ?」

 

 龍子が心配そうに言ってくる。

 ああ、なるほど。なんで中盛りですらなく小盛りなのかと思ったが、龍子や優にしてみればこの店のラーメンはあくまでも間食……いわゆる、おやつだったのだろう。

 

「心配しないでくれ。俺にとってはこの程度でもおやつ程度……いや、場合によってはそれにも満たない程度だから」

 

 そう言いつつも、言葉の選び方をミスったか? と思う。

 実際、混沌精霊の俺にとって食事というのは必須のものではない。

 食べた料理は即時に体内で魔力として吸収されるものの、生態的には実は食事はしなくても問題がなかったりする。

 そんな俺にとって食事というのは、あくまでも娯楽だ。

 だからこそ、食べても満腹になるという事はなく、それこそ幾らでも食べ続ける事が出来る。

 大食い競争とかそういうのがあれば……あ、いや。でも俺の場合は幾らでも食べられるのは間違いないが、食べる速度そのものは普通だしな。

 そういう意味では、大食いの大会にでも黙々と食べ続けられるが、食べる速度そのものはそういうのが本職の相手には勝てない。

 ああいう大会に出る人ってのは、基本的にホットドッグでもハンバーガーでも、飲み物のように胃の中に流し込むような者が多いし。

 同じ食べるという行為であっても、俺とああいう連中ではジャンルが違う。

 ともあれ、俺が大食いだと龍子が思えば、これから一緒に生活する――事務所でだが――上で、食費的な問題があると考えてもおかしくはなかった。

 目良を通して公安に宝石を売って貰うので、食費はきちんと払うつもりでいるのだが。

 

「そう。まぁ、アクセルが大丈夫なら、それでいいけど。男の子だし、このくらいは簡単に食べられるのかもしれないわね」

「朝飯前ならぬ、夕飯前って感じか?」

「……自分で言っていて、それはどうかと思わない?」

 

 そんな会話を交わしながら、テーブル席に座る。

 こういう店の場合はカウンターとかの方がいいのかもしれないが、生憎とカウンター席の方は満席だった。

 当然か。元々この店は外にまで行列があったのだ。

 その多くが一人で来ている者達である以上、3人から4人で使うテーブル席よりも1人で使うカウンター席を使うだろう。

 セルフの冷水を用意し、注文したラーメンが出来上がるのを待つ。

 

「それで、明日からアクセルはどうするの?」

 

 優のその問いに、どう答えたものかと悩む。

 何しろ、今のところ俺がやるべきなのは、それこそ情報収集くらいなのだから。

 ゲートの設置については公安が俺に対する警戒を緩めるのを待つ必要があるし、情報収集をしようと思って個性に関する資料とかを入手するにも、それはそれで金が必要になるが、その金も宝石の代金が入るまではない。

 ……ちなみに、このラーメン屋は龍子から奢って貰っている。

 

「どうすると言われてもな。やりたい事はあるけど、それをやるには金がないし。ただ……まぁ、そうだな。これから暫く龍子の事務所で厄介になるんだ。そうなると、龍子の事務所の周辺についてどういう感じなのか見ておきたいとは思う」

 

 具体的には、どういう店があるのかといった感じか。

 出来れば本屋……それも大きめの本屋があってくれればいいんだが。

 もっとも、その辺については龍子に聞けばすぐにでも分かるだろう。

 ……古本屋とかのような店もこの場合は探すべきか?

 寧ろ個性に関する本を大量に買うとなると、普通の本屋よりも古本屋の方が値段的にいいかもしれないな。

 ただ、そういう研究内容は毎日のように……というのは少し大袈裟かもしれないが、それでも比較的頻繁に更新される。

 普通の書店でなら研究結果が新しくなればそれが記載された本が新しく入荷されるだろうが、古本屋でそういうのは期待出来ない。

 それでも安く購入出来るというのはありがたい。

 まぁ、最悪……ヴィラン辺りを襲撃して金を奪い、それで本を買ってもいいかもしれないし。

 

「お待ち」

 

 話していると、店員が注文したラーメンを持ってくる。

 大盛りが1つに小盛りが2つ。

 

「じゃあ、食べましょうか」

 

 龍子のその言葉に、ラーメンを食べるのだが……うん、ねじれが勧めるだけあって、かなり美味かった。

 行列が出来ているのも納得出来るし、また来ようと思うくらいには。

 トッピングとしては珍しいジュンサイも美味かったしな。

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