転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4296話

 歓迎会は終わり、事務所に帰って来る。

 そして、龍子から事務所の部屋の一室に案内され……

 

「ここが今日からアクセルの寝泊まりする場所よ。もっとも、いつまでもここで寝泊まりするのはさすがに厳しいでしょうから、そう長い間じゃないと思うけど」

「シャワーがあるだけでも、それなりに快適だとは思うけどな」

 

 事務所にシャワーがあるのは少し珍しいと思うが、同時に当然だろうなとも思う。

 何しろ龍子はリューキュウとして、ねじれはネジレちゃんとしてヒーロー活動を行っている。

 ヴィランとの戦いになれば、汚れたり汗を掻いたりするだろう。

 そうなった時の為に、シャワーが必要なのは理解出来た。

 そういう意味では、優の事務所や他のヒーローの事務所にもシャワーがあるのが当然なのかもしれないな。

 

「そう? どうせなら私はゆっくりとお風呂に入りたいと思うけど。一応少し離れた場所には銭湯もあるから、湯船に浸かりたいのならそっちに行くという手もあるわね」

 

 意外な事に、龍子はシャワーよりも風呂派だったらしい。

 まぁ、俺もシャワーと風呂なら風呂の方がいいと思うが。

 ただ、手軽なのはやっぱりシャワーなんだよな。

 お湯を湯船に溜めるといった必要がないのは大きい。

 

「銭湯だと、自然と湯船も広くなるだろうしな」

「そうね。しかもその銭湯はいわゆるスーパー銭湯とかそういうのじゃなくて、昔ながらの銭湯なのよ。男湯の方は分からないけど、女湯の方には壁に富士山の絵が描かれているわ」

「それはまた……本当に昔ながらの銭湯だな」

 

 今時、そういう銭湯はかなり珍しい。

 あ、でもそれは俺の認識だ。

 この世界においては、そういう銭湯がそれなりに多いと言われてもそうかと納得するしか出来ない。

 けど、昔ながらの銭湯だったら風呂から上がったらやっぱり牛乳やコーヒー牛乳、イチゴ牛乳なんかを、腰に手を当てて飲んだりするんだろうか。

 それはそれでちょっと興味深い感じがするな。

 そんな訳で、それなりに興味があるので今度行ってみようと思う。

 

「ええ、良い意味でノスタルジックと言うのかしら」

 

 どうやら龍子にしてみれば、その銭湯はそれなりにお気に入りらしい。

 ちょっと意外だったな。

 イメージ的には、龍子はそういう場所を好むとは思っていなかっただけに。

 もっとも、人の好みというのは千差万別だ。

 例えば食べ物だが、普通の人ならエビとカニならカニの方を好むだろう。

 だが、俺はカニよりもエビの方を好む。

 そういう意味では、龍子が庶民的な銭湯を好んだとしても、そうおかしな事ではない。

 

「そうか。今度行ってみるよ」

 

 とはいえ、銭湯に行くには入浴用の各種道具とかを用意する必要があるのか。

 最近だとそういうのは銭湯で貸してくれるらしいのだが、龍子の話を聞く限りだと平成……いや、昭和的な銭湯のようだし。

 入浴する道具は自分で用意するような物のような気がする。

 

「ええ、これから寒くなるし、そうなるともっと温泉とかは気持ちいいと思うわよ。……さて、じゃあアクセルも今日は疲れてるでしょうし、ゆっくりと休みなさい」

 

 そう言い、龍子は部屋を出ていく。

 部屋に残される俺。

 

「さて、と」

 

 用意されていた布団を敷き、服を脱いで身軽になってから早速布団で横になる。

 既に歯磨きとかはしてあるので、その辺については問題ない。

 ……いやまぁ、俺は混沌精霊なので、実際にはそういうのは必要なかったりするんだが。

 ただ、龍子達にはまだ混沌精霊を個性だとしか説明していない。

 混沌精霊が個性なのか、あるいは人間ではない俺の種族なのか。

 その辺は、この世界において大きな違いだろう。

 ともあれそんな訳で、現在俺は人間に擬態している訳だ。

 ……擬態というのはちょっと大袈裟か?

 まぁ、俺の精神が一般人と比べられないのは自分でも理解しているが。

 何しろ一般人は2000人以上を自分の手で殺して平気でいられる訳がないのだから。

 他にも……まぁ、うん。毎晩のように20人近い恋人達との熱い夜を楽しむとか、そういうのは一般人には無理だろうし。

 そんな風に思いつつ、布団で横になりながら、掛け布団の内側で空間倉庫からスライムを出す。

 細い、細い……0.1mmにも満たない、そんな細さのスライム。

 そのスライムを使い、部屋の中を調べていくのだが……

 あれ? てっきりどこかに隠しカメラや盗聴器の類が仕掛けられているんだとばかり思っていたんだが。

 もしその手の物があったとしても、俺は別に龍子を責めるつもりはない。

 そもそもの話、龍子は公安から俺の見張りを頼まれているのだから。

 俺の目の前で行われたやり取りなので、その件については十分に理解している。

 しているのだが……うん、だからこそ監視カメラや盗聴器の類があると思っただけに、その類がないのは驚きだった。

 龍子がそれだけ俺を信じているのか、それとも単純に今日ここに監視カメラや盗聴器を仕掛けられなかったのか。

 個人的には前者であって欲しいとは思うが……その辺の判断については、もう数日様子をみてからだろうな。

 ……あるいは、本当にあるいはの話だが、監視カメラや盗聴器を使わずに何らかの個性を使って部屋の中の様子を探っているという可能性もあるのか?

 これが機械的な監視カメラや盗聴器の類ならスライムを使えば見つけられる。

 だが、個性となると……正直、手も足も出ない。

 それこそ具体的にどんな個性を使っているのかも、今のところ分かっていないしな。

 単純に、盗聴とか透視とか、そういうスキルを使っている可能性もある。

 その辺がはっきりしないうちは、迂闊な行動はしない方がいいか。

 もしそういう行動をしたら、その時龍子に迷惑を掛ける事になりかねないし。

 個人的にはヴィラン狩りとかやりたいところだが、まだゲートを設置していないし。

 出来れば便利な個性を持っているヴィランを捕らえて、技術班に研究して欲しいところだ。

 俺達が個性を使えるようになるのはちょっと無理っぽいが、量産型Wに個性を搭載するというのは十分可能だろうし。

 普通に考えれば無理だろと突っ込みたくなるが、何しろレモン率いる技術班だしな。

 特にレモンは量産型Wの件もあって、その手の解析とかは得意にしているし。

 実際、金ぴか……ギルガメッシュの腕の細胞を培養して魔力を使えるようにしたり、凛の魔術刻印を全てではないにしろ、ガンドの部分だけは量産出来るようにしたりと、実績は十分だ。

 であれば、レモンに任せてしまえばどうとでもなるだろうというのが俺の予想だった。

 ともあれ、何をするにしても……まずはゲートを設置してからだな。

 そんな風に思いつつ、俺は眠りに落ちていくのだった。

 

 

 

 

 

「あら、おはよう、アクセル」

「……龍子? 何でこんな時間に?」

 

 現在の時間は、午前7時前。

 この事務所で寝泊まりしている俺がこの時間に事務所にいるのは当然だったが、この事務所を率いる立場であっても、この事務所に住んでいる訳ではない龍子が、一体何故この時間に事務所にいるのか、不思議に思い、聞く。

 だが、龍子は特に気にした様子もなく、俺に向かって答える。

 

「アクセルがちょっと心配だったから、今日は少し早く来たのよ。それに……朝食も必要でしょう? 一応、簡単にだけど作っておいたから」

 

 そう言われると、漂ってくる食欲を刺激する匂いに気が付く。

 そもそも俺が部屋を出てここに来たのも、何故かこうして匂いが漂ってきたから、不思議に思っての事だ。

 どうやら、この匂いは龍子が作った朝食の匂いだったらしい。

 

「そうか、助かる。ありがとな」

 

 朝食については、最悪空間倉庫に収納してある料理でどうにかするつもりだった。

 コンビニも一応近くにはあるんだが、生憎とこの世界の金は持っていないしな。

 いや、一応金はある。

 ネギま世界やペルソナ世界も日本である以上、そこで入手した金は普通にこの世界でも使えるだろう。

 同じ金……日本銀行券である以上、偽造防止用の奴とかも同じだろうし。

 あ、でもこの世界なら個性を使ってその辺をどうにかしてる可能性もあるのか。

 そう考えると、やっぱり迂闊に他の世界の金は使えないな。

 うーん、こうして考えると何をするにしても個性が邪魔をするんだよな。

 まぁ、だからこそ興味深い世界だと言われればそうのかもしれないが。

 

「いいのよ。アクセルもこの世界に来たばかりで、料理とかは慣れてないでしょう?」

「……まぁ、簡単な料理は出来ると思うが」

 

 それこそ、中華料理の調味料が合わさった奴を買ってきて、具材を炒めるなり煮るなりして、その調味料と合わせるだけのような簡単な料理なら出来る。

 その手の調味料って何気にそれなりに本格的な味だったりするんだよな。

 もっとも、朝からそういう料理をしたいかと言われれば微妙なところだが。

 それこそコンビニで弁当なり、おにぎりや惣菜パン、もしくはカップヌードルでも買ってきて食べた方が手っ取り早いし。

 ただ、龍子が料理を用意してくれた以上、わざわざそんな事をする必要もなくなったのだが。

 

「さぁ、食べましょう」

 

 龍子に促され、ソファに座る。

 ちなみに、当然ながら料理を食べる為のテーブルや椅子といったものはないので、朝食は来客用のソファと机で食べることになる。

 そこに用意されたのは、ベーコンエッグとサラダ、パン、ジュース、梨。

 これぞ洋風といった朝食だ。

 まぁ、朝食として考えれば、こういうのでいいんだよって奴だが。

 10月だけに、季節の果物として梨が用意されているのが嬉しいところだ。

 

「じゃあ、いただきます」

「いただきます」

 

 龍子と同じくいただきますと言い、用意された朝食に手を伸ばす。

 

「ベーコンエッグ、半熟にしたけどよかった?」

「ああ、俺も半熟の方が好きだし」

 

 ベーコンエッグ……というより、目玉焼きか。

 この目玉焼きも、人によって好みが大きく違ってくる。

 龍子が作ったように半熟だったり、完熟、もしくは両面焼きといったように。

 俺はどれなら食べられないってことはないけど、やっぱり半熟が一番好きだ。

 また、ベーコンエッグの場合はベーコンをカリカリに焼くか、柔らかさを求めてそこまで火を通さないかというのもある。

 これについては、俺は柔らかい方が好みなのだが、龍子はどうやらカリカリ派らしい。

 まぁ、柔らかい方が好みだからといって、カリカリに焼いたベーコンが嫌いという訳ではない。

 それはそれでそれなりに美味いと思えるし。

 

「そう。じゃあ、食べましょう。今日も忙しくなるのは間違いないでしょうし」

「忙しくなるのか?」

 

 俺は特に今日やるべき事はない。

 ただ、龍子はヒーロー活動もあるので、忙しくなるのかもしれないが。

 

「そうね。アクセルの一件もあるし。私のヒーロー活動も手を抜けないから」

「公安からの連絡は……今日は無理か?」

 

 戸籍の件、宝石を売った件、ゲートを設置する土地の件。

 公安との間では色々とやり取りをする必要があるが、それでもやっぱり昨日の今日では無理なように思える。

 昨日の今日と一口に言っても、昨日公安の支部で話が終わったのはもう夕方だったしな。

 何をやるにしても、昨日の夕方からとなると既に時間も時間なので無理だろうし、そうなると公安も動くのは今日からとなる。

 もっとも、異世界という一件の重大性を考えると、それこそ政治家……それもその辺の政治家ではなく、きちんと影響力のある政治家辺りに話を持っていく可能性もあるが。

 

「なぁ、龍子。この世界で日本の政治家ってどんな感じなんだ?」

「え? ……何で急にそんな事を聞いてくるの?」

 

 パンを口に運んでいた龍子は、不思議そうな様子で俺に聞いてくる。

 まさか、そんな事を聞かれるとは思っていなかったのだろう。

 

「何でと言われても、俺の件は公安だけで全てを判断出来る訳じゃないだろう? なら、その件については政治家にも話を持っていく可能性が高いと思ってな。なら、どんな政治家なのか気になるのは当然だろう?」

 

 そう言いながらも、少し……かなり心配になる。

 何しろ日本の存在する多くの世界において、日本の政治家というのは無能揃いという事も珍しくないのだから。

 場合によっては自分の利益の為なら国民を使い潰しても構わないといったような者も珍しくはない。

 もしそんな政治家がこの世界にもいたとして、そのような人物が俺の事を知ったらどうするか。

 普通に考えれば、自分の利益の為に俺を使おうとするだろう。

 だからといって俺がそのような相手に素直に従う理由もなく……そうなれば、最悪の場合俺と日本の戦いとなる。

 当然そうなれば俺だけで戦う筈もなく、どこかに勝手にゲートを設置して、ホワイトスターから援軍を呼ぶだろう。

 そうなれば、この世界の日本が滅ぶ。

 そうならない為には、政治家について知っておく必要があった。

 

「うーん、そうね。与党という訳じゃないけど、最近は心求党がかなり人気が出てきているわよ」

「心求党、ね」

 

 心から求める党。

 何だか胡散臭く感じるが……まぁ、政治家の党名なんてのは、そういうものか。

 そんな風に思いつつ、俺はベーコンエッグを味わうのだった。

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