転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4298話

「……何で私よりも数学とか物理とか英語とか、そういうのに詳しいのよ」

「そう言われてもな」

 

 不満そうな優に、そう返す。

 優は俺の目付役という事で、つまり一緒にいる必要がある。

 なら折角なので、色々とこの世界について教えて貰おうかと思ったのだが……うん。

 優はプロヒーローではあるが、勉強の方はそこまで得意ではなかったらしい。

 まぁ、話を聞いた限りだと優はエリート校である雄英や士傑の出身という訳でもないらしいし。

 ……ただ、それを言うなら龍子も雄英や士傑の出身ではないらしいのだが。

 それでいながら、龍子はドラゴンに変身する個性もあって、かなり人気が高いらしい。

 ヒーロービルボードチャートでも良い順位を狙えるとか。

 優もまた、その美貌だったり巨大化という派手な個性から人気はあるらしいが。

 

「そのくらいの事は常識だろう?」

「ちょっと、喧嘩売ってる? 喧嘩を売ってるのなら、買い叩いてあげるわよ」

「そう言ってもな。俺が優と戦っても……正直なところ、どんなにハンデがあっても負ける気しないしな。……あ、そうだ。俺が1歩でも動いたら負けとか、それなら優が勝てるかも?」

「よし買った。はい買った。間違いなく喧嘩を買ったわよ」

 

 そうして優をからかって――いや、言ってる事は事実なんだが――いると、再び事務所に誰かが入ってくる。

 とはいえ、こちらは予想通りのメンバーだったので、特に驚くような事はない。

 そう、パトロールに行っていた龍子とねじれが戻ってきたのだ。

 

「あら、マウントレディ。来てたの? ……何かあった?」

「ちょっと、先輩! アクセルに何か言ってやって下さいよ!」

 

 そんな優の言葉に、龍子は呆れの視線をこっちに向けてくる。

 

「どうしたの? アクセルがマウントレディを怒らせたの? 何で? 不思議」

 

 龍子の後ろから姿を現したねじれが、好奇心で目を輝かせながら聞いてくる。

 いつものねじれだな。

 

「いや、別に俺は怒らせるような事を言ってる訳じゃないんだけどな。あくまでも事実しか言ってないだけで」

「まだ言うの!?」

 

 ねじれに答えると、それを聞いた優が不満一杯といった様子で叫ぶ。

 

「ほら、マウントレディもその辺にしておきなさい。……けど、そうね。私もアクセルの後見人的な立場である以上、実際アクセルがどのくらい強いのか知っておいた方がいいかもしれないわね」

「俺の強さについては、昨日見せただろう?」

 

 魔法と瞬動。

 これだけでも、かなりの強さなのは分かる筈だ。

 何しろ、俺の瞬動はこの世界では……いや、まだ見たのは龍子と優だけなので何とも言えないが、取りあえずヒーローの中でもそれなりに上澄みとなる龍子や優であっても見る事が出来なかった。

 ……巨大化で巨人となるだけの優はともかく、ドラゴンになる龍子はそのドラゴンの視力で俺の姿を見る事が出来てもおかしくはないのでは? と思わないでもなかったが。

 

「そうね、見たわ。でも、あくまでも見ただけで実際に戦った訳ではないでしょう? なら、やっぱり一度きちんと実力を見ておきたいのよ。何かあった時の為にも」

 

 何か……か。

 龍子の言う何かというのが、一体何を意味しているのか俺には分からない。

 公安から俺の見張りを頼まれている以上、俺が何か妙な行動をした時がその何かなのか。

 それとも、もっと別の……寧ろ俺に力を借りたい時がその何かなのか。

 その辺は俺にも分からなかったが、とにかくこの先の事を思えば龍子の提案に乗るのは無理もない。

 龍子が俺の実力の詳細を知らないように、俺もまた龍子の実力の詳細を知らないのだから。

 一応俺が初めてこの世界に転移してきた時、ドラゴンとなった龍子と巨大化した優の戦いは見ている。

 だが、それはあくまでも模擬戦だ。

 ましてや、先輩の龍子が後輩の優に胸を貸しているといった感じでの。

 だからこそ、俺は本当の意味での龍子の実力を知らないし、同時に優についても巨大化して戦う時の実力を知らない。

 うん、そういう意味では、やっぱり一度模擬戦であろうと戦って見せた方がいいのかもしれないな。

 

「うん、そうだな。俺もこの世……世話。世話になっている事務所に所属している者達の実力を知りたい」

 

 セーフ、ギリギリセーフ。

 危なくこの世界と言うところだった。

 俺が異世界から来たというのを知ってるのは、ここでは今のところ龍子と優だけだ。

 ねじれや他のサイドキック、事務員達はその辺の状況について何も知らないんだったな。

 

「……そうね」

 

 短く俺の言葉に返す龍子だったが、龍子は俺がこの世界と言いそうになったのは気になったらしく、顔の半分を覆っているアクセサリから出ている片方の目で俺に気を付けないとと視線で言ってくる。

 ……ちなみに優は、俺の言い間違いに気が付いた様子はなかった。

 うん、まぁ……優らしいと言えば優らしいよな。

 

「じゃあ、午後からは模擬戦をやろう? 私もアクセルの実力が気になるの」

 

 何故かそこでねじれがそう会話に割り込んで来る。

 

「……龍子?」

「無理よ。こうなったねじれは、もう何を言っても聞かないわ。いえ、何か正当な理由でもあれば別だけど……ないでしょう?」

 

 多少なりともねじれの性格を知っている以上、そう言われると俺も反論出来ない。

 それにねじれには、中学校の時に使っていた教科書を貸して貰う事になっているのだから、ねじれを多少鍛えるといったように考えれば、悪くはない……か?

 

「分かった。じゃあねじれもって事で。……そうなると問題なのはどこで模擬戦をやるかだな」

 

 俺とねじれはともかく、ドラゴンに変身する龍子と巨大化する優。

 この2人については、昨日俺が転移してきたような相応に広い場所でないと、到底実力は発揮出来ないだろう。

 もっとも、生身で戦うような事もある以上、変身や巨大化を使わないで、生身で戦うというのもいいんだが……今回はちょっと違う。

 龍子は俺の実力を見たい。

 そして俺もまた、ヒーローの中でも上澄みである龍子の実力と……まぁ、ついでに強個性なのは間違いない巨大化を使う優の実力を見たい。

 ねじれについては……うん。正直なところ最初はそのつもりはなかったが、エリート校である雄英の生徒の実力を見てみたいとは思う。

 そう考えると、やはりこれはいい機会なのだろう。

 

「そうね。無難なのは昨日私達がアクセルと会った場所じゃない?」

「それは俺としても問題ないが、すぐに使えるのか?」

「……公安に連絡をすれば、今日の午後からでも何とでもなると思うわ。ただ、その場合公安からも模擬戦を見に来ると思うけど」

「だろうな」

 

 公安にしてみれば、俺が異世界から来たという話をどこまで信じているのかどうかも分からない。

 あるいは信じたとしても、実際に俺がどのくらいの実力を持っているのかは確認したいと思っているだろう。

 昨日、一応少し……本当に少しだけ実力というか、俺の能力は見せたが、言ってみればそれだけだ。

 なら、龍子から俺が模擬戦をやると聞けば、ここで手を出してこない筈がないだろう。

 そうなると問題なのは、俺がどうするべきかだな。

 そう考え、すぐに決める。

 

「分かった、それでいい。公安にも俺の実力を見せるくらいはしてもいいだろうし」

 

 魔法と瞬動、後は空間倉庫か。

 その程度なら、特に見られても問題はないだろう。

 こうして、予想外の展開だったとはいえ……午後からは模擬戦をやる事に決まるのだった。

 

 

 

 

 

「すいませんね、わざわざ」

 

 昼食を食べ終え、昨日俺がこの世界に転移した場所までやって来ると、そこには目良の姿があった。

 ……どうやら今日もまた目良が俺達の担当らしい。

 というか、半ば俺達の専属という扱いになってるのかもしれないな。

 

「いや、模擬戦が出来る場所を用意して欲しいと言ったのはこっちなんだし、その辺については気にしなくてもいい。……まぁ、そっちとしても俺がどのくらい戦えるのかは、実際に見てみたいと思ってはいたんだろうけどな」

「そうですね。それは否定しません」

 

 あれ、こうも素直に認めるというのはちょっと意外だったな。

 てっきり誤魔化すかと思ったんだが。

 とはいえ、目良にしてみれば他に何人もいるのだろう監視している者達、あるいは映像で保存すべくビデオカメラとかを持っている者達の存在を隠し通せるとは思っていなかったのか。

 ……まぁ、そういう人物が誰もいないのなら俺が模擬戦をやる場合であっても周囲の様子をそこまで気にしたりせず、普通に攻撃するので巻き込まれる可能性は十分にあったのだが。

 その辺まで考えてこうして口にしたのか、それとも見ている者がいるという事で誠意を伝えたつもりなのか。

 正直なところ、俺としてはどっちでもいい。

 

「ねぇねぇ、あの人誰? 偉い人? 不思議不思議」

 

 案の定、ねじれが目良を見て、好奇心一杯の様子で口にしていた。

 ねじれにしてみれば、目良は初めて見る相手だけに、一体誰なのか、何故この場でこういう風に出てくるのかといった疑問を抱いてもおかしくはなかったが。

 そんなねじれに、優が耳元で何かを言っていた。

 普段ならこの仕事はねじれを雇っている龍子がするべきなのだが、龍子は俺と共に目良の相手をする必要がある。

 その為、ねじれの相手は優が行っていた。

 ……本人は微妙に何で自分がといった様子だったが。

 そんなやり取りをスルーしつつ、目良との会話を続ける。

 

「人を入れてるのはいいが、これからやるのは模擬戦だ。それも俺やねじれだけじゃなくて、ドラゴンになったリューキュウや巨大化したマウントレディとのな。迂闊に近くにいれば、巻き込まれる。それを理解した上で、そっちが十分に安全に配慮し……その上で、もし巻き込まれても不満を言わないのなら、俺は構わない」

 

 目良の前なので、龍子も優もヒーローネームで呼んでおく。

 これ……使い分けを上手い具合に慣れておかないと、場合によっては重要な時に間違えたりしそうなのがとちょっと怖いよな。

 間違えたからといって、何か大きな……致命的なミスがある訳でもないので、構わないと言えば構わなかったもりするのだが。

 

「分かりました。その辺は十分に注意しておきましょう。それと……宝石の件ですが、取り急ぎ用意した方がいいという事なので、取りあえず1割程は換金しました。ただ、急ぎの換金だったので、少し足下を見られましたが」

 

 公安の足下を見る宝石屋か。

 いや、あるいは宝石を換金するというのはあまり公に出来ない事なので、その件については公安の身分を隠して誰かが個人として換金したのか?

 ともあれ多少足下を見られるのはどうかと思わないでもないが、出来るだけ早く必要な分という事で、1割だけならそこまで問題はないだろう。

 残りはきちんと換金してくれるようだし。

 

「いや、そのくらいなら構わない。取りあえずある程度の纏まった金があればいいしな。具体的には、本屋とかで個性についての本とかを購入するのに必要なくらいの金額が」

「それくらいなら問題ないですね。では、どうぞ」

 

 そう言い、封筒を渡してくる目良。

 その封筒を確認すると、数十枚の一万円札が入っていた。

 あれ? 1割って話だったし、渡した宝石はダイヤとかじゃなくて小粒の奴だったから、もう少し安く売れたのかと思ったが。

 そんな俺の疑問の表情を見た目良は、フォローするように口を開く。

 

「その、一応宝石の幾つかはうちの方で買い取らせて貰いましたので、その分の代金も入っています。一応、相場より少し高めで査定させて貰いました」

「そうなのか? いやまぁ、こっちにとっては助かるけど」

 

 そう言いつつも、目良の……公安の考えは何となく理解出来た。

 まずは、その宝石が本当に異世界の物なのかどうか調べようと思ったのだろう。

 買い取ってまでそうしたのは、最悪宝石を砕いたりする必要があるからか。

 どうやってそれを調べるのかは分からないが、公安ともなればお抱えのヒーローもいるだろうから、その辺でどうにか出来るのだろう。

 もしくは何かもっと別の方法を使うのかもしれないが。

 ともあれ、本当に異世界の宝石かどうかを知らべるのだろう。

 それで異世界の宝石だと判明したら……判明したら、どうなるんだ?

 例えば、異世界の宝石だからこそ持っているのかもしれない何らかの力を取り出そうとするとか?

 いや、まさかな。

 ……まぁ、異世界の宝石という事で、多少はそういうのをやってもおかしくはないとは思うけど。

 とはいえ、別に凛が魔法を込めた宝石とか、ネギま世界のダンジョンとかにあるような宝石ではない、本当に普通の宝石だ。

 テロ組織とかそういう連中が持っていた宝石なのだから、そのような宝石に目良や公安が期待するような特殊な効果とかそういうのはまずないだろう。

 もっとも、ここで俺がそういうのがないと言っても、それを信じるかどうかは微妙なところだが。

 あくまでも自分達で調べて、それで納得しなければ駄目だと、そういう風に思ってもおかしくはなかった。

 ともあれ、これで金を入手出来たのが嬉しい事なのは間違いなかった。

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