転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4299話

「では、ここで模擬戦をお願いします。リューキュウやマウントレディは知ってると思いますが、周囲にある建物は近いうちに取り壊されるので、周囲の被害を気にする必要はありません。……いえ、寧ろ壊す手間が省けるので、壊した方が喜んで貰えるかと」

 

 目良の言葉に、そういうものかと納得する。

 まぁ、実際建物を破壊するというのはそれなりに大変だったりするのは事実だ。

 建築用の重機とか、もしくはダイナマイトの類で爆破して壊したりする。

 あるいは、この世界なら個性を使って建物を破壊する方法とかあるかもしれないな。

 ……まぁ、個性で建物を破壊出来るとなると、その個性はかなり強力な個性だ。

 それだけに、昨日行ったちょっと高級なファミレスで話を聞いた、個性を使って石窯を作るといったような者とは違い、そう簡単に個性の使用許可とかはでないと思うが。

 あるいは所属している会社が大手とかなら、ある程度はその辺もどうにかなるのかもしれないけど。

 その辺については、俺がどうこう考えるような事ではないので、気にしないようにしておく。

 

「そう。ありがとう。……さて、じゃあそれで模擬戦の順番はどうするの?」

 

 龍子が目良に感謝の言葉を口にし、そう聞いてくる。

 とはいえ……そうだな。

 

「俺は別に3人を同時に相手にしても構わないんだけどな」

 

 そう言うと、真っ先に不満そうな表情を浮かべたのは優。

 まぁ、優の性格を思えば、俺の言葉を面白くないと感じてもおかしくはないだろう。

 龍子は特に表情を変えず、ねじれは俺の言葉に興味深そうに視線を向けていた。

 龍子はともかく、ねじれは俺の力を知らない。

 いや、一応昨日事務所で見せたから、ある程度は知っているだろう。

 その上で、龍子辺りにも話を聞いている可能性はあった。

 しかし……その上で完全に俺の力を理解したかと言えば、当然ながらそれは否だ。

 そもそもの話、目良は勿論、龍子や優ですら俺の力を本当の意味で理解している訳ではないのだから。

 

「アクセルが自分の力に自信があるのは分かるけど、こっちにも色々と準備があるのよ。だから……まずは1人ずつでお願い出来ない?」

「龍子がそう言うのなら、俺はそれで構わない。実際、優はそのつもりらしいしな」

 

 優に視線を向けると、好戦的な笑みを浮かべて俺を見ている。

 どうやら俺の態度や言葉が気に入らなかったらしい。

 とはいえ、優もそれなりの実力を持つヒーローだ。

 昨日の一件で俺の実力は分かってると思うんだけどな。

 ただ、巨大化する個性というのはそれなりに珍しい……いわゆる強個性らしいし、そんな優との戦いは少し楽しみでもある。

 

「もう、私の力をきちんと見せてあげるんだから、覚えておきなさい!」

「覚えてるも何も、これから戦うんだから、そういうのは実際に見せて貰わないとな」

「はいはい、その辺にしなさい。模擬戦をやるにしても、まずはある程度のルールが必要でしょ。そうね……まず前提としてこれが模擬戦である以上、相手に大きな怪我を負わせない事。一応確認すると、アクセルは模擬戦の意味は知ってるわよね?」

「俺を何だと思ってるんだ? 勿論知ってるよ」

 

 龍子にそう返しつつも、もしかしたら俺が異世界から来たから、異世界には模擬戦という言葉がなかったりするのかもしれないとでも思ったのか?

 いや、けど昨日から俺は結構模擬戦という単語を口にしてる気がするが。

 ……まぁ、その辺については今は考えなくてもいいか。

 

「そう。なら……マウントレディは個性を使った状態で模擬戦を始めた方がいいよね?」

「はい、それでお願いします」

 

 これについては、マウントレディも素直に龍子の言葉を受け入れる。

 当然か。昨日瞬動を見せているしな。

 それこそ優が個性を使う前から模擬戦が始まったら、巨大化する前に一瞬で優の前まで移動して1発で気絶させるだろうし。

 マウントレディもその辺を理解しているからこそ、龍子の言葉を素直に受け入れたのだろう。

 

「そうなると、後はお互いの距離だけど……200mくらい離れればそれでいい?」

「俺は別に構わないぞ」

「私も構いません」

 

 こうして簡単なルールが決まり、模擬戦が始まるのだった。

 

 

 

 

 

『じゃあ、これから模擬戦を始めるわよ。私が終わりと言ったら、そこで終わるように! それ以上の追撃は禁止よ!』

 

 拡声器を手に、龍子が言う。

 ちなみにこの拡声器は目良が用意した物だ。

 何気に準備がいいよな。

 俺達の模擬戦ということで、拡声器が必要になると予想して用意したのだろうが。

 ともあれ、俺は龍子の言葉に手を振るって返事をする。

 巨大化した優もまた、龍子に向かって頷いていた。

 ……こうして改めて見ると、巨大化した優ってでかいよな。

 20mくらいはあるか?

 つまり、一般的なMSよりも若干大きいくらいか。

 いっそ、ニーズヘッグ……いや、サラマンダーやミロンガ改辺りを出してみても面白いかもしれないな。

 もっとも、目良がいる時点でとてもではないがそういう事は出来ないが。

 

『じゃあ……始め!』

「行くわよ!」

 

 龍子の合図と共に、優はこちらに向かって走り出す。

 200mの距離も、20mくらいまで大きくなった優にしてみれば即座に踏破出来る距離だ。

 とはいえ……この場合問題なのは、優がどうやって俺を攻撃するかだよな。

 殴るにしても、MSよりも大きな身体を持つ優が地面にいる俺を殴るのは難しい。

 これがMSなら飛び道具とかそういうのもあるんだろうけど、優にはそういうのはないしな。

 そんな風に思っていると、こっちに近付いて来た優が俺の前に着地した瞬間にしゃがみ、手を下ろしてくる。

 叩き付けるんじゃなくて、掌を曲げて、それで俺を地面との間に閉じ込めようとするような動き。

 なるほど、そう来たか。

 そう思いつつ、俺は地面を蹴ってその一撃を回避する。

 ずん、という音を立てて地面に叩き付けられる優の手。

 どうやらこっちを逃がさないように、ある程度の速度で手を振り下ろしたらしい。

 もし間違って当たったら、どうするつもりだったやら。

 そんな風に思っていると、俺を捕まえられなかったことに気が付いた優は、そのままの状態で地面の上を並行に移動させ、俺を捕らえようとするが……トン、と地面を蹴って後ろに跳んで回避する。

 その後10分程の間、優は何とか俺を捕らえようとするものの、俺はその全ての攻撃を回避していた。

 すると、やがて優も限界に来たのか、苛立たしげに叫ぶ。

 

「逃げてないで、きちんと攻撃してきなさいよ!」

「あれ? もういいのか? 今の動きはハンデのつもりだったんだが」

 

 そう言いつつも、優の動きの素早さにはそれなりに感心していた。

 当然ながら、MSで今の優のような動きをしようとしても、MSが反応する分だけ遅くなる。

 だが、優の場合は動かしているのが自分の身体である以上、MSよりも反応は速い。

 あくまでも反応に関してだけの話だが。

 

「……随分と侮ってくれるわね。少しは本気を出しなさい!」

 

 そう言い、優は俺に向かって掌を振るってくる。

 今までのように、掌の中に空間を作って俺を捕らえようとするのでなく、叩き潰そうとするような一撃。

 今までの行動から、俺ならその一撃を容易に回避出来ると判断しての物だったんだろうが……優も逃げるなと言っていたし、なら……

 

「え? ちょっ!?」

 

 俺が全く逃げず、掌がぶつかる直前にもその場に立ち続けているのを見て、優は動揺した声を上げる、

 だが、既に振るった手は止める事が出来ない。

 精々が、少し速度を緩めるくらいだったが……

 ずん、と。

 そんな音を立てて優の手が地面に……そして俺に叩き付けられる。

 

『ちょっ!? マウントレディ!?』

 

 その光景を見ていた龍子が、慌てたように拡声器で叫ぶが……

 

「え? ……きゃああっ!」

 

 しゃがんでいた優は、不意に倒れる。

 まるで、誰かに押されたかのように。

 そして実際、それは間違っていない。

 俺が受け止めた優の手を、吹き飛ばさないように力加減をしながら押し返したのだから。

 優にしてみれば、まさかこのような事が起きるとは完全に予想外だったのだろう。

 瞬動や魔法を見て俺の実力を多少は知った気になっていたのかもしれないが、俺の力については理解出来なかったらしい。……いやまぁ、俺の力については話していなかったし、それを考えればこういう風になるのは当然だろう。

 予想外の力で引っ繰り返ってしまった優。

 跳躍し、そんな優の顎の辺りに降り立つ。

 

「さて、どうする? 本来なら着地する時に蹴りを放ってもよかったんだが」

 

 そうなれば、最悪優の顎の骨は折れていただろう。

 優もそれが分かったのか、大きく息を吐いてから口を開く。

 

「分かったわよ、私の負け」

 

 そうして負けを認める優だったが……うん、俺が顎の上に立っているというのを理解した上で喋って欲しかったな。

 何とか口の上で耐えたけど、ちょっとバランスを崩していたら恐らく優の口の中に突っ込んでいたぞ。

 ……特殊な嗜好を持つのなら、それはそれでご褒美なのかもしれないが、さすがに俺にそんな趣味はない。

 その為、優の口の中に入らないように注意しながら、地面に下りる。

 

『終わったね、じゃあ、次はどうするのかしら? 私がやる? それともねじれ?』

 

 拡声器で龍子がそう言った瞬間、その龍子の隣にいるねじれが何か必死になってアピールしていた。

 

『分かったわよ。じゃあ、アクセルはちょっとこっちに戻ってきてくれる? 次の模擬戦はねじれがやりたいらしいわ。マウントレディもそろそろ小さくなってもいいんじゃない?』

 

 龍子の言葉が聞こえたのだろう。

 優は巨大化の個性を解除し、見る間にその身体が小さくなっていく。

 

「あー、もう。まさか巨大化した私が力で負けるとは思わなかったわ」

「そう思って油断していたってのが大きいんだろうな」

 

 実際には油断していなくても俺が力負けするようなことはなかったと思うが。

 

「分かってるわよ。次は本気でいくからね!」

「そうしてくれ」

 

 実際、先程の優は巨大化した身体能力を殆ど使えていなかった。

 しゃがんで俺を捕らえようとしていたのが、その証拠だろう。

 というか、今更……本当に今更の話ではあるんだが、一般的なMSよりも大きくなった優にとって、人間サイズを相手にするというのがそもそも難しい。

 ましてや、その人間サイズの俺が混沌精霊で、優を相手にも生身でどうにか出来てしまうだけの実力を持っているとなれば、余計に。

 

『えっと、じゃあもう1戦やるの?』

 

 俺と優の会話を聞いていた龍子が、そう聞いてくる。

 次は本気で行く、そうしてくれ。

 今の俺と優の会話を考えれば、そんな風に思うのも無理はないが……

 

「勿論よ!」

 

 優は龍子の言葉にあっさりとそう返す。

どうやら本気でもう1度模擬戦をやるらしい。

 

「ちょっとやりすぎても、アクセルなら問題ないと判断したわ。なら、今度は手加減をするような事はしなくてもいいでしょうし」

 

 いや、それはそれでどうなんだ?

 そう思わないでもなかったが……まぁ、実際優が俺を攻撃してもどうにか出来ない。

 というか、個性を使った攻撃が俺にダメージを与えられるのかどうか、少し試してみたいとは思う。

 なるほど。そういう意味ではこれはちょうどいいかもしれないな。

 

「分かった。なら、もう1度模擬戦をやろう」

 

 俺が受け入れたこともあってか、龍子も駄目とは言わず……再び模擬戦を行う事になる。

 先程同様、俺と優は200m程離れ……

 

『やりすぎないようにね。模擬戦開始!』

 

 拡声器を使って龍子の声が響くと同時に、巨大化した優は地面を蹴る。

 先程のように恐る恐ると言った様子ではなく、本気での行動。

 優も動きそのもものは、突出して速いという訳ではない。

 だが、それはあくまで普通の人間として考えればの話だ。

 現在の優は身長20m程。

 動きそのものは人間離れしていなくても、その巨体が組み合わさる事によって、全体的な動きは人間離れしたものになる。

 結果として、200mの距離は先程よりも短時間で踏破し……

 

「おいおい、マジか」

 

 俺に向かい、踏みつけを行ってくる優。

 いや、これは本当に踏みつけと言ってもいいのか?

 ……まぁ、足を降ろしてきたのだから、踏みつけで間違いないのか。

 一般的なMSよりも大きな身体で行う踏みつけ。

 もし俺がただの人間なら、それが致命傷になるのは間違いなかった。

 とはいえ、だからといって今の状態のままでそれを受け入れるかと言えば……当然ながらそれは否だが。

 優の攻撃で俺がダメージを受けるかどうか確認したかったのだが、さすがにこれを食らうのは俺としても遠慮したい。

 そんな訳で、こちらに向かって落ちてきた優の足を横に跳んで回避する。

 ……特殊な趣味の持ち主なら、優に踏まれるのは嬉しいかもしれないが、生憎と俺にそんな趣味はない。

 その為、俺は優の足を回避し……残っているもう1本の足の足首に蹴りを入れ、次の瞬間優はバランスを崩して倒れ込むのだった。

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