転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4300話

「……私の負けよ」

 

 再び顎の上に上がられた優がそう言う。

 少し意外だったのは、素直に自分の負けを認めた事だろう。

 これまで優と接してきた経験からすると、ここで素直に負けを認めるというのは少し意外だった。

 いやまぁ、こっちとしてはその方が楽だから助かるという一面もあるのは間違いなかったが。

 

「素直に負けを認めるとは、ちょっと意外だな」

「……あのね、2度も同じ方法で負けてるのよ? それも1度目はともかく、2度目はこっちが油断をしないと宣言した上で。それでこんな状況になってるのに、それでも負けを認められないようなみっともない事はしたくないわよ」

 

 これもまた、ちょっと意外。

 俺の知っている優なら、それでも素直に負けを認められないといったように言ってもおかしくはなかったのだから。

 

「意外だな」

「ちょっと、それは2回目よ。アクセルは私の事を何だと思ってるのかしら?」

「ん? それを言ってもいいのか? 本当に?」

「……やっぱりいいわ。それよりさっさと下りてちょうだい。いつまでも女の身体に乗っているのはどうなのよ?」

 

 そう言ってくる優に、それもそうかと俺は優の顔から地面に下りる。

 今の言葉は普通に考えれば怪しい内容にしか思えない。

 ただ、MSよりも大きい女を相手にどうしろと。

 優が意図的に今のように口にしたのかどうかは、生憎と俺にも分からなかったが。

 

『はい、じゃあアクセルとマウントレディの模擬戦はこれで終了でいいわね? それともまだやる?』

「終わりでいいです。今の様子からして、アクセルの実力を引き出すような事も出来ないで、完全に手加減されて負けたのは間違いないですから」

 

 そう言い、優は巨大化の個性を解除して元の大きさに戻っていく。

 

「ん」

 

 そう言い、寝転がったまま手をこちらに向けてくる優。

 何だ? と不思議そうに見ていると、優の表情が不満そうな色に変わる。

 

「あのね、倒れたレディがこうして手を出してるんだから、起こして欲しいって言いたいのは分かるでしょ?」

「レディ……ね」

「何よ。その言い方は。何か文句ある?」

「いやまぁ、俺のイメージするレディは、人を踏みつけようとしたりはしないと思ってな。ヒーローネームがマウントレディなんだし、レディだと主張してるのは分かるけど」

「……ん!」

 

 俺の言葉に反論するでもなく、手を伸ばす優。

 それが何を意味してるのかは、先程の優の言葉だから明らかだ。

 なので、大人しくその手を引く。

 優の身長は、巨大化をしていないと160cmちょっとといったところだ。

 その体重は……まぁ、具体的にどのくらいなのかといった数値を考えはしないが、それでも一般的な女と変わらない。

 だが、巨大化した時の重量は一体どうなっているんだろうな。

 というか、質量保存の法則はどこにいった?

 ……俺がその辺を気にするのが、そもそも間違っているのかもしれないが。

 何しろ俺だって質量保存の法則を無視してるのは間違いないし。

 10歳、10代半ば、20代。

 それぞれで背の高さが違うという事は、当然ながら体重も違う訳で。

 まぁ、俺の場合は質量云々の前に、そもそも魔力で身体が構成されてるんだが。

 魔力を質量に考えるのが、この場合はそもそも間違っているだろう。

 ただ、俺の場合はそれでいいんだが、個性の場合は……どうなんだろうな。

 今まで色々な世界に行ってきて、その中にはダンバイン世界のオーラ力や、鬼滅世界の呼吸といったように気の派生形を使う世界はそれなりにあったが……この個性もまた、気なのか?

 いや、マジェスティックとかいう、魔法を使うヒーローもいるらしいし、それを思えば気だけではなく魔力を使っていたりしてもおかしくはない……か?

 もしくは、魔力でも気でもない、個性というまた別の力という扱いになるのか。

 その辺についてはこの世界で購入出来る本とか研究資料とか、そういうのを見るだけでは多分分からないだろうな。

 この世界の事しか知らない者にしてみれば、個性は個性。魔力? 気? 何それ? といったところだろうし。

 異世界の存在を知り、そして魔力や気、あるいはオーラ力や呼吸、もしくはペルソナとかそういうのを知ってる俺達だからこそ、個性という特殊能力の本質に迫れる……かもしれない。

 断言出来ないのは、結局のところその辺の研究をするのはあくまでも俺ではなくレモン率いる技術班だからだ。

 レモン率いる技術班なら、その辺をどうにか出来るとは思う。

 思うが、だからといって個性という……今まで技術班が研究してきたものとは全く違う能力だ。

 敢えて似たような能力となると、やっぱりオーラ力や呼吸だと思うんだが、これについても俺が勝手にそういう風に思ってるだけだしな。

 

『さて、じゃあ次だけど……』

 

 俺が優を起こしたのを見た龍子が、そう言う。

 ただ、少し戸惑った様子を見せているのは……うん、龍子の隣にいるねじれの影響だろう。

 

『アクセル、このまま続けて大丈夫?』

「ああ、問題ない。疲れとかはないしな」

「……それ、わざわざ私の前で言う必要があるのかしら?」

 

 不満そうな様子で優が言う。

 無理もないか。

 それはつまり、優との模擬戦で俺は全く疲れていないと言ったようなものだしな。

 なら、いっそもっと疲れた振りをした方が……とも思ったが、それはそれで優が不満に思うだろうしな。

 上手く騙せれば、また話は別かもしれないが。

 

「悪いな。正直者で」

「……覚えてなさい。今度模擬戦をやる時は、もっと強くなってるから」

「そうだな。俺もそれを楽しみにしてるよ」

 

 実際、優はマウントレディとしてヒーロー活動をしてるが、その人気はかなり高い。

 巨大化という派手な個性だったり、その美貌も影響してるのだろうが。

 ……もっとも、巨大化の個性は狭い場所だと使うのが難しく、優が巨大化して行動した際には、周囲に被害が及ぶ事も多く……その辺で結構マイナス評価も受けてそうだが。

 ちなみにこれは、午前中にネットで調べた結果だ。

 なお、巨大化というか大きくなるというのなら龍子もまたドラゴンに変身という意味では大きくなるのだが。

 けど、龍子は優と違って大きくなっても周囲に被害を与えたりはしない。

 ドラゴンだけに、空を飛べるというのも大きいのだろうが。

 

「じゃ、行きましょ」

 

 優が俺を率いるようにして龍子のいる場所に向かう。

 

「残念だったわね」

「リューキュウ先輩、お世辞はいいですよ。自分でもアクセルに全然本気を出させる事がないまま、やられてしまったのは分かってますし」

「じゃあじゃあ、マウントレディの仇は私が取るね。楽しみ楽しみ」

「仇って……別に私は死んだ訳じゃないんだけど」

 

 ねじれの言葉に、優は喜んでいいのか悲しんでいいのか分からない、微妙な表情でそう言う。

 ねじれの性格を考えると、本気で言ってるように思えるけどな。

 

「龍子じゃなくてねじれか。……龍子はそれでいいのか?」

「ええ、私は最後でいいわ。それに、こんなにねじれがやる気を見せてるんだもの。なら、インターン先のヒーローとしてはねじれに先にやらせた方がいいでしょ。マウントレディとの模擬戦を見た限り、アクセルも十分に手加減を出来ると分かったし」

 

 あー……なるほど、最初に優と模擬戦をやったのは、優がやる気満々だったからというのもあるが、それ以上に俺が模擬戦においてきちんと手加減が出来るかどうか見てみたいと思ったのもあったらしい。

 随分と侮られたものだなと思わないでもなかったが、考えてみれば龍子は俺の戦闘……模擬戦も含めて、見た事がなかったしな。

 

「それに……ねじれがここまでやる気になってるんだもの。まさに今がPlus Ultraでしょう?」

「Plus Ultra?」

「ああ、アクセルは知らないのね。Plus Ultraというのは雄英高校の校訓よ。更に向こうへという意味ね。……まぁ、私は雄英の出身じゃないから、TVで見たり、ねじれから聞いたりした程度だけど」

「……なるほど」

 

 更に向こうへか。

 何かの歴史の授業で習った覚えがあるな。

 ローマ皇帝か誰かが言った言葉じゃなかったか。

 ともあれ、更に向こうへというのは、エリート校である雄英らしいと言えばらしいな。

 

「つまり、俺がねじれにとっては更に向こうへ行くのを防いでいる……言わば、壁のようなものか」

「ふふっ、そうかもしれないわね。もっとも、それだと随分と頑丈な壁のように思えるけど」

「早く早く、次は私の番なんだよ? やろう、やろう」

 

 俺が龍子と話していると、我慢しきれなくなったらしく、ねじれがそう言ってくる。

 このまま待たせ続けると、ねじれが何かをやらかしかねない。

 なので、俺はすぐにねじれとの模擬戦の準備を始める。

 俺とねじれの間にある距離は、優の時と同じく200m。

 巨人となった優とは違い、ねじれの大きさは俺と変わらない。

 それだと200mは離れすぎているんじゃないかと思ったんだが……ねじれがどうせなら200mがいいと言ってきたので、俺も特に反対する理由はなく、200m離れた場所からのスタートとなる訳だ。

 

『じゃあ、双方準備はいいわね?』

 

 龍子の言葉に軽く手を振って問題ないと返す。

 ねじれの方は大きくジャンプまでしながら、龍子に手を振っていた。

 ねじれは性格が幼いせいか、落ち着きがないよな。

 それがねじれらしいと言えば、それまでなんだが。

 

『ルールはさっきと同じ。じゃあ……始め!』

 

 龍子の合図がされると同時に、ねじれは空中に浮き上がる。

 そして、俺に向かって手を伸ばすと、その手から……何だ? エネルギーぽい感じの奴が放たれる。

 ただ、螺旋状の軌道を描いている為か、エネルギーの速度は決して速くはない。

 ある程度の実力がある者なら、容易に回避出来るだろう。

 当然のように俺も攻撃を回避し……そんな俺に向かい、次々とエネルギー……いや、エネルギー波を放つねじれ。

 だが、そのエネルギー波は次々と俺に回避される。

 エネルギー波を回避しながら、どうしたものかと考える。

 勿論空を飛ぶくらいは俺にとって難しいことではないし、もしくは空を飛べるのを見せたくなかったら、跳躍をして空中にいるねじれに攻撃してもいい。

 ただ、どちらにせよこのまま一方的にやられるのはどうかと思う。

 そのように思ったのだが、俺が行動に移すよりも前に、ねじれの方が我慢の限界に来たらしく、動き始める。

 子供っぽい性格だけに、待つのとかが苦手なのかもしれないな。

 もっとも、ヒーローとして行動する上でそれはちょっと不味いだろうから、その辺もどうにかする必要がある……まぁ、それをやるのは俺じゃないか。

 普通に考えれば、それをやるのは雄英の教師、あるいはインターン先の龍子だろう。

 そんな訳で、俺はねじれの放つエネルギー波を回避しながら、距離が近付くのを待つ。

 ねじれにしてみれば、間合いを詰めればそれだけ俺との距離が近くなり、エネルギー波を回避しにくくなると思っての行動なだだろう。

 実際、その判断は間違っていない。

 俺まで届くエネルギー波の速度は間違いなく上がっている。

 上がってはいるが……だからといって、それでも俺に命中はしない。

 単純に螺旋を描いて放たれるだけにエネルギー波が俺に到着するまでにどうしても時間が掛かるのだ。

 どうせなら螺旋を描かず、一直線にエネルギー波を放てばいいだろうと思うのだが……まぁ、その件については恐らくねじれも気が付いている筈だ。

 だが、気が付いているのに、それでも俺に向けて放つエネルギー波が螺旋状のものだというのは……それはつまり、ねじれの放つエネルギー波はそういう性質を持つということなのだろう。

 そんな訳で、近付いても俺に回避されるのは違いなく……

 

「よっと」

 

 ある程度近付いたところで、地面を蹴って一気に空中にいるねじれとの距離を詰める。

 

「っ!?」

 

 ねじれもそんな俺の行動に反応しようとしたが、どうやら空中ではそこまで自由に、そして俊敏に動くといったことは出来ないらしい。

 結果として、俺の手はねじれの足首を見事に掴み……そのまま強引に地上に降ろしてくる。

 これで相手が明確な敵なら、こうしてただ地面に降ろすのではなく、叩き付けるといったことをしたのだろうが。

 ただ、ねじれは模擬戦の相手ではあるが、そのようなことをするべき対象ではない。

 その為、地面にまで降ろしてから、顔面に拳を突きつける。

 ……もしかしたら、俺が足を掴んでもそのまま空中に浮かんでいたらどうしようかと思ったが、幸いそういうことはないらしかった。

 空を飛べるという能力はかなり便利なので、それを思えばそっち方面を上げるのもいいと思うが……いや、そもそもの話、個性というのは鍛えて伸びたりするのか?

 そんな疑問を思いつつ、俺は龍子が拡声器でそれまでと、模擬戦を止める声を聞くのだった。

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