転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4302話

「いや、凄かったですね。アクセル君が強いというのは知ってましたが、まさかプロヒーローを相手にしても余裕で倒せるとは思いませんでした。……それも3人同時に相手にしても」

 

 驚いたように言いつつも、表情はそこまで驚いた様子はない……それどころか、目の下の隈が眠そうな印象を強烈に与える目良の言葉。

 龍子との模擬戦が終わった後、折角だからという事で龍子、優、ねじれの3人を同時に相手にしての模擬戦も行ったのだが、そちらでも結局俺が勝利した。

 その件について言ってるのだろうが……

 

「龍子と優……リューキュウとマウントレディはともかく、ねじれはまだ学生だからプロヒーローじゃないだろ?」

「それでも雄英の2年ではトップクラスの実力を持っていて、3年になったらビッグ3と呼ばれるのは間違いない技量の持ち主なのは間違いないですし、既にその辺のプロヒーローよりも腕は上ですよ」

 

 何で目良はねじれの……というか、雄英についてそこまで知ってるんだ?

 そう思ったが、考えてみれば目良は公安の所属で、雄英は日本でも広く知られているエリート校だ。

 ましてや、今の俺……異世界から来た存在は、龍子の事務所にいる。

 なら、龍子の事務所にインターンとして来ているねじれについて調べるのは、そうおかしな事じゃないか。

 

「そうだけど、プライバシーくらいは守ってるのよね?」

 

 俺と目良の会話に、龍子がそう割り込んで来る。

 先程までは模擬戦の疲れで動けなくなっていたのだが、もう取りあえず歩ける程度には回復したらしい。

 

「勿論です。ヒーロー公安委員会は、ヒーローの為の組織ですから」

 

 胡散臭い。

 そう思ってしまうのは俺だけではないだろう。

 いやまぁ、本人は恐らく真面目に言ってるんだろうなとは思う。

 だが、それでも何となくこう……いかにもって言葉なのもあるし、目良が目の下に隈があり、何となく安心して見ることが出来ないからというのも、多少なりとも関係してるんだろうとは思う。

 まぁ、龍子や優がそれでも問題ないと判断してるのなら、俺が何かを言うような必要はないのだろうが。

 

「そのヒーロー公安委員会だが、戦闘の映像とかを撮っていた者達は問題なかったのか? 周囲にそこまで大きな被害を与えたりはしていないから、多分大丈夫だとは思うが」

 

 目良……というか、公安にしてみれば今回の一件は俺の戦闘データを取るという意味で、これ以上ない程の機会だった。

 異世界から来たという、俺の戦闘能力。

 その片鱗は目良と初めて会った時にも見せているものの、今回のようにしっかりと戦闘力を見せたのは今日が初めてだ。

 いやまぁ、この世界に来てからまだ殆ど時間が経っていないのを見れば、ある意味でそれは当然と言えるのかもしれないが。

 ともあれ、今回の模擬戦が目良や公安にとって良い機会なのは間違いない。

 なら、俺の言葉をどこまで信じていたのか分からないものの、しっかりと戦闘に関する各種データを撮っていたりしてもおかしくはなかった。

 

「ええ、勿論問題ありませんよ。それにしても、アクセル君の身体能力は凄いですね。まさか巨大化したマウントレディやドラゴンとなったリューキュウを、ああも簡単に振り回すとは思ってもみませんでした」

 

 そう言う目良の言葉は、俺を褒めているように思えるが……何となく、完全には納得していない様子もあるのか?

 

「ただ、残念な事は、アクセル君の持つ超パワーとでも呼ぶべき能力しか見ることが出来なかった事でしょうね。出来ればもっと他の能力も見たかったというのが正直なところなのですが」

 

 なるほど、それが理由か。

 とはいえ、目良のその気持ちが分からない訳でもない。

 ちょっとネットでこの世界について調べてみた限りだと、目良が言うような超パワー的な……つまり、身体能力が強化される個性というのは、そこまで珍しいものではないのだから。

 いや、それどころか一般的な能力ですらある。

 とはいえ、一般的であっても、その能力を発揮させる為には何らかの条件が必要だったりもする。

 俺が見た感じでは、塩分を摂取することによって超パワーを発揮するとか、そんなのをネットで見たな。

 他にも幾つかあったが……ともあれ、ネットで少し調べれば分かるくらいには一般的な能力なのは間違いない。

 目良にしてみれば、異世界ならではの能力を見たかったのだろう。

 具体的には、炎獣とか魔法とか。

 とはいえ、そんな目良の気持ちも分からないではなかったが……

 

「これが一番やりやすかったしな」

 

 この一言に尽きる。

 いやまぁ、実際に混沌精霊としての力を使ってもよかったのだが、わざわざ何かをするよりも、近付いて殴る……もしくは捕らえてしまった方が手っ取り早かったのも事実。

 あるいは龍子の変身したドラゴンがブレスの類を使えるのなら、もう少し話は別だっただろうが……生憎と、龍子はブレスの類を使えなかったらしいし。

 なら、炎獣とか魔法とか、そういうのを使う必要はなかったというのが正直なところだ。

 ……まぁ、3人一緒に相手にした時は、身体能力以外を使おうかと思ったのも事実だったが、それでも何とかなったのは間違いないし。

 

「そうですか。ですが、戸籍を作る際の個性届けにはアクセル君が希望する混沌精霊という名称で出したので、もしそれを知ってる人が今のアクセル君の戦いを見たら、一体どういう事だ? と疑問に思いますよ?」

「あー……戸籍の方はもう出来たのか?」

 

 目良の言葉は俺にとってもちょっと意外だった。

 いや、そちらについては考えが及んでいなかったといった表現の方が正しいだろう。

 だが、考えてみれば宝石の件でもすぐに動いてくれたんだし、戸籍の件で同じように動いてくれるというのは、そうおかしなことではなかったな。

 

「いえ、まだ完全にではありませんが。政府の方と色々と調整する必要がありますので」

 

 政府の方と?

 あれ? これ……もしかして、俺が異世界から来たって話は公安で止まっていて、政府に知らせてないんじゃないか?

 いやまぁ、それがこっちにとって助かるのは間違いないし、そういう意味では俺にとって利益になるのは事実だが。

 ただ、それでも仮にも政府の直轄組織である公安が、その政府に俺の件を知らせなくてもいいのか?

 ……もっとも、もし政府に俺の件を知らせたとしても、それを素直に信じるかと言われれば、微妙なところだろう。

 目良達公安も、俺が色々な能力を見せて、それでようやく納得したのだから。

 ……それでも半信半疑、いや6信4疑くらいといった感じっぽいが。

 これでも信じて貰えてる方だとは思う。

 普通なら、いきなり異世界から来ましたといったような事を言っても、良くて精神病院送り、悪ければ何かを企んでいると怪しまれてもおかしくはないのだから。

 一応実力を見せた事もあるからこそなのだろうが。

 

「そうか、分かった」

 

 なので、公安が俺の情報を政府に報告していない事については特に突っ込まないでおく。

 

「とはいえ、混沌精霊といった個性を言われてもどういう事なのかというのは、普通なら分からないだろう?」

「まぁ……それはそうですね」

 

 目良が俺の言葉に素直に頷く。

 ネットで色々と調べてみたが、混沌精霊なんて個性は存在しなかった。

 ただ、個性名に精霊の~というのは幾つかあったが。

 というか、今更……本当に今更だが、個性の名称って誰がつけてるんだろうな。

 自分? いや、個性が発現するのは基本的に4歳くらいまでらしいので、そうなると子供が自分で個性名を考えるのは難しい。

 となると、考えられる可能性としては……両親か、もしくは個性が発現した時に届けを出すらしいので、その時に担当した人物か。もしくは何らかのシステムで自動的に個性名がつくようになってるのか。

 まぁ、その辺はともあれ、俺の混沌精霊とかちょっと珍しいのは間違いないだろう。

 個性名を見て、どういう個性なのかを知るのも難しいだろうし。

 

「なら、混沌精霊という個性の1つに超パワーがあると説明すればいい」

「……混沌はともかく、精霊という個性名と超パワーは同じ個性とは思えないんですが」

「けど、1つの個性で複数の能力を持ってる奴はいるだろう? 龍子……リューキュウなんかはまさにそれだ」

 

 ドラゴンに変身するといった個性を持つ龍子は、ドラゴンに変身する以外に空も飛べる。

 ……これでブレスも放てれば言う事なしだったんだが、生憎とブレスは使えないので、それは仕方がないとは思う。

 

「いや、それは……空を飛べるのは、ドラゴンの能力の1つですので」

「俺の混沌精霊にもそれを当て嵌めればいい。そもそも混沌精霊なんて個性の詳細は誰も分からないんだから、混沌精霊には超パワーがあるという風に」

「……そもそも、今更の話なんですが……何故混沌精霊という名称なのでしょう?」

 

 目良のその言葉に、何と言うべきか迷う。

 まさか、俺の種族が人間ではなく混沌精霊だとは言えない。

 ……いやまぁ、既に異世界から来た存在という風に言ってるんだし、それを思えば混沌精霊だと言ってもいいような気がしないでもないが……うん、目良をこれ以上忙しくするのは止めておいた方がいいか。

 

「何となくだな。まぁ、より正確には俺達と交流していた世界で、俺が魔法を習得した世界には精霊とかそういうのがいて、そんな中で俺が苦戦したのが混沌精霊という精霊だったからだな」

 

 これには若干の嘘が混ざっている。

 具体的には、ネギま世界には実際に色々な属性の精霊がいて、特に上位精霊ともなるとその辺の魔族とかよりも余程強い。

 しかし、混沌精霊という精霊はいない。

 ……いや、あるいは俺が知らないだけでいる可能性もあるが。

 ともあれそんな感じだ。

 また、俺が混沌精霊になった時は俺と契約をしていた、あやか、千鶴、円、美砂の4人がいなければ、恐らく俺は自我をなくし、モンスターのような存在になっていただろう。

 エヴァに聞いた話によると、闇の魔法の暴走でモンスター的な存在になっても、相応の時間が経てば自我が戻るらしいが……うん。その相応の時間というのが具体的にいつなのかは分からないので、それこそ場合によっては10年、20年、30年……100年、200年といったような事になっていた可能性もあった訳だが。

 つまり、俺がアクセル・アルマーとして生きてきた上で死ぬ可能性は十分にあった訳だ。

 そういう意味では、俺の言葉に嘘はない。

 

「なるほど、精霊ですか。……アクセル君が魔法を使う事を考えると、そういう存在がいてもおかしくはないですしね」

 

 納得したのかどうか、とにかく目良はそんな風に言ってくる。

 もし疑っていたとしても、俺の言葉のどこまでが真実なのか、確認のしようがないしな。

 そういう意味では、俺の言葉は全面的に信じる……もしくは心の中ではどう思っているのかは分からないが、表向きは信じているように見せ掛ける必要がある訳だ。

 

「そんな感じだな。とにかくそんな訳で、俺の個性の混沌精霊については今の説明で納得してくれ」

 

 正確には納得してくれではなく、納得させてくれという方が正しいのだが。

 ただ、個性というのは遺伝するが、その遺伝にも色々とある。

 父親か母親のどちらかの個性が遺伝する。

 父親と母親双方の個性が2つとも遺伝する。

 父親と母親の個性が混ざり合って別の個性として遺伝する。

 もしくは、祖父や祖母といった存在からの個性が遺伝する。

 ……といった具合に。

 ここまでなると、それこそ両親とそれぞれの祖母の4人、もしくはもっと先祖の個性も関係してくるので、具体的にどんな個性が遺伝するか分からない。

 中にはサラブレットの如く、優秀な個性を子供に遺伝させる個性婚といったようなものまであるらしい。

 もっとも、個性婚については世間的に非難されることも多いし、そうでなくても冷たい視線を向けられる事が多いらしいが。

 個人的には……うん。まぁ、人それぞれだとは思う。

 例えば政略結婚だって、お互いに好きな訳ではないのに結婚をするが、その結婚生活が冷めたものになるか、それとも温かいものになるのかは、それぞれだろう。

 個性婚についても、同じようなものだろうとは思う。

 ……そもそも結婚というか、男女関係で言えば、俺は20人以上の恋人がいて、その多くと同棲している訳で。

 個性婚についてどうこう言えるような問題ではない。

 

「そうですか。まぁ、1人で2つの個性を持っていたり、あるいは個性を成長させる事によって派生型の個性を使えるようになったりする人とかもいますしね。そういう意味では、アクセル君の言葉は納得しておきます」

 

 納得するのではなく、納得しておく。

 それはつまり、そういう事にしておくと暗に言ってきたのだろう。

 ちょっとした借りを作ってしまったかもしれないな。

 とはいえ、借りだなんだというのは今更の話だが。

 その借りについても、ゲートを設置してホワイトスターと行き来出来るようになれば、すぐに返せるだろう。

 そう思いながら、俺は目良との会話を続けるのだった。

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