転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4305話

「アクセル、ちょっといい?」

 

 龍子がヘリコプターを助けた日の夕方。

 夕食の時間だと呼びに来たのかとも思ったが、どうやら違ったらしい。

 俺は個性について書かれた本……少し前に書店で購入した本を読むのを止めて、龍子に視線を向ける。

 

「どうした? TV局の連中はもう帰ったのか?」

 

 ヘリコプターにいたTV局の面々は、当然ながら自分達が助けられた光景もネタにしてた。

 何しろ、ドラゴンに変身した龍子がヘリコプターを抱えている時も、中から映像を撮っていたのだから、その根性には恐れ入る。

 多分今日のニュースか何かで流れるのだろう。

 もっとも、ヒーローという存在が当然のこの世界だけに、ニュースでヒーローの活躍を紹介するのはそうおかしな話ではない。

 特にオールマイトの活躍なんかは、毎日のようにニュースでやってるくらいだ。

 ……No.2のエンデヴァーは、やっぱりオールマイトには及ばないが。

 というか、エンデヴァーは炎系の個性なんだな。

 そういう意味では少し親近感がある……かも?

 もっともネットの評判によると能力はともかく、性格的にはいまいちって事らしいが。

 実際、その辺が足を引っ張ってオールマイトには敵わないらしいし。

 

「ええ、もう帰ったわ。何としても今日の夕方のニュースに間に合わせるそうよ」

 

 そう言う龍子だったが、微妙に嬉しそうではない。

 ヒーローとして有名になるのは、悪くない事じゃないのか?

 元々龍子は……何て言えばいいんだが? ハスキーボイス? そんな感じの声なので、少し憂鬱そうな様子のその声が妙にこう……雰囲気がある?

 うん、そんな感じだ。

 元々龍子がヒーローとして人気が高いのは、やっぱりドラゴンというファンタジーでも有名なモンスターに変身出来るというのもあるが、人間状態のクールビューティなのも影響してるのは間違いない。

 もしそんな龍子が今のような雰囲気を出していれば、もしかしたらもっと人気が出るのかもしれないな。

 

「どうした? あまり嬉しそうじゃないけど」

「……アクセルの炎獣がいたから、ああして無事に救助出来たのよ」

 

 ああ、なるほど。

 その辺を気にしていたのか。

 龍子らしいと言えばらしいな。

 

「別にそこまで気にする必要はないだろう? この事務所で寝泊まりしている俺にとっても、この事務所にヘリコプターが落ちてこられると困っただろうし。そういう意味では、龍子の為じゃなくて俺の為にやったようなものだから、あまり気にしなくてもいい」

「……ありがと」

 

 俺の言葉のどこをどう判断したのか、龍子はそう感謝の言葉を口にする。

 

「そこまで気にする必要はないけど、龍子がこうして感謝の言葉を口にするのなら、素直に受け取るよ。ただ、感謝の気持ちという意味では、俺の方が龍子にかなり多くしてるんだけどな」

 

 これはお世辞とかそういうのではなく、俺の素直な気持ちだ。

 何しろ、龍子は俺の後見人をしているのだから。

 龍子にしてみれば、本来なら俺の後見人になる必要はない。

 一応後見人という事で公安から協力金という名目で報酬は貰っているし、以前頼んだ宝石の換金も、全てではないにしろある程度終わっているので、生活費は支払っている。

 だが、ぶっちゃけ龍子はヒーローとしてかなり人気が高い。

 それこそ次のビルボードチャートではトップ10に入るだろうというくらいには人気が高いのだ。

 勿論、その人気はドラゴンというファンタジー的な存在に対してのものだったり、龍子の美貌からくるものも大きいのかもしれないが、当然ながらそこには実力や実績も大きな影響を与えている。

 今日のヘリコプターの救出も、龍子の……リューキュウの実力を示すものだろう。

 そんな龍子だけに、優のように金に困ってる訳でもないのだから、わざわざ俺の後見人になり、事務所に住まわせる必要はない。

 だが、そのクールビューティな見掛けとは裏腹に面倒見が良く、だからこそ俺をこうして事務所に置いているのだろう。

 そういう意味で、俺の方が龍子に感謝をしてるのは間違いない。

 

「じゃあ……そうね。お互い様って事でどう?」

「俺の方が随分と借りが大きいような気がするが……まぁ、龍子がそう言うのならそれで構わない」

 

 とはいえ、借りを作りっぱなしってのはどうかと思うから、何かで借りを返せればいいんだが。

 

「そうしておきなさい。……ああ、そうそう。それで私がここに来た理由だけど、明日公安から支部に来て欲しいそうよ」

「支部に? となると、何かあったのか?」

 

 単純に俺に用事があるのなら、わざわざ支部に呼ばなくても直接来ればいい。

 例えばさっきも思ったが、宝石でまだ代金を貰ってなかった奴の残りの代金を俺に渡すとかなら。

 目良がこの事務所に顔を出すなり、あるいは公安という立場からそれが難しいのなら、喫茶店なりファミレスなりで待ち合わせしてもいいだろうし。

 それをしないとなると……いや、しないじゃなくて出来ない何かがあるのか?

 

「もしかして、俺の戸籍の件か?」

 

 俺が異世界から来たということで色々と揉めていたらしいが、それが終わったのかもしれないな。

 

「うーん、普通ならそう思うけど……ねじれも連れてきて欲しいと言うのよね」

「……ねじれも?」

 

 それは俺にとっても完全に予想外だった。

 

「何でねじれも?」

「さぁ? それは分からないわ。ただ、絶対に連れてきて欲しいと電話で言われていたから、それを思えば何かがあるのは間違いないでしょうけど」

 

 とはいえ……ねじれだぞ?

 これは別にねじれを馬鹿にしてるとかそういう事ではない。

 ねじれは、学生としてそれなりに腕が立つのは間違いないし、次期ビッグ3は確実とか呼ばれているらしいが、それでも結局のところ学生だ。

 そんなねじれが、何故公安に呼ばれる?

 

「それで、ねじれを連れていくのか?」

「連れていくしかないでしょうね。一体何を思って公安がねじれを連れて来て欲しいと言ったのかは分からないけど、私の立場としてはねじれを連れてこいと言われれば、それに従うしかないわ」

「……悪いな」

「別にいいわよ。それに連れてこいと言ったからって、例えば逮捕されるとかそういうのじゃないと思うし。……何より、本人がその気だしね」

「あー……うん。ねじれならそうなりそうだな」

 

 好奇心の強いねじれだ。

 公安に呼ばれて支部に行く必要があると言われれば、その好奇心から絶対に行ってみたいと口にしてもおかしくはなかった。

 

「でしょう?」

 

 龍子も俺の言葉から何を考えたのかを理解したらしく、困ったように……そして呆れたように笑う。

 

「うん、話は分かった。ねじれがやる気満々なのもな。後は……面倒な事になるのは間違いないが、それがどれくらいの面倒か、だけどな。龍子はどう思う?」

「うーん……ねじれを連れてこいと言ってるんだから……考えられる可能性としては、雄英に関する何かかしら?」

「雄英に? ……結局のところ、実際に行ってみないと分からないから、明日まで待つしかないか」

「そうね。出来れば私がどうにか出来る面倒である事を祈ってるわ」

 

 そう言う龍子の言葉に、俺も同意するのだった。

 

 

 

 

 

「ちょっと、リューキュウ先輩? そろそろ本気でもっと大きな……というか、後部座席に余裕がある車を買いませんか?」

 

 翌日、俺は龍子の車で以前も行った公安の支部に向かっていた。

 運転席には龍子、助手席には俺、そして後部座席には……

 

「でも、こういうのも楽しいよ」

 

 不満を口にする優と、持ち前の好奇心から楽しそうなねじれ。

 うーん、これは……ねじれにしてみれば、あれだ。軽トラの後ろに乗ってる感じか?

 あれも一応違法なのだが。

 ただ、田舎とかだと普通にそういうのをやっている奴もいるらしい。

 農家とか。

 

「あのねぇ……何でこんな狭い場所なのにそんなに嬉しそうなのよ」

 

 そんなやり取りをしながら、俺達は支部に向かうのだった。

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ、アクセル君。そして皆さん」

 

 支部の中で俺達を出迎えたのは、やはり目良だった。

 ……多分、最初に俺達の相手をしたのもあって、しかもそれで上手くいったのもあって、自然と俺達の担当という扱いになったんだろうな。

 ちなみに、以前来た時と違うのは、ねじれがいるだけではない。

 通された部屋も、以前は取調室のような場所だったが、今回はきちんとした来客用の応接室だ。

 相変わらず、隣の部屋には数人の気配があるが。

 多分これ、以前ここに来た時は壁の向こうにいた者達と同じ連中なんだろうな。

 

「それで、わざわざここに呼んだのはどういう訳だ?」

 

 本来なら龍子や優が聞くべきなのかもしれないが、この場合は俺が聞いた方が手っ取り早いだろうと判断し、俺が目良に聞く。

 龍子や優の場合だと、公安との関係が不味くなる可能性も十分にあるので。

 これについては、車の中できちんと話し合って決めていた。

 ……事情を完全には知らないねじれは、不思議そうな様子だったし、実際何で何で? と好奇心に突き動かされて聞いてきたが、その辺は龍子が適当に誤魔化しておいた。

 ただ、車の中では誤魔化せたものの、正直なところあまり意味がないだろとは思わないでもない。

 ねじれをこの場に呼んだという事は、俺がどのような存在なのか……表向きは個性事故という事になっているものの、実際には異世界から来た存在だと話すのだろうというのは容易に予想出来たのだから。

 というか、そうでもないとここに呼ぶ事はしないだろう。

 それでも誤魔化したのは、俺が異世界の存在だと知れば、間違いなくねじれの好奇心が暴走するだろうと思った為だ。

 それなら万が一……億が一にも、目良の口から俺が異世界の存在だと言われない方に賭けた訳だ。

 ……もしくは、面倒は先送りにしたといった方が正しい。

 

「そうですね。理由は幾つかありますが……まずはこれをどうぞ。宝石の残りの代金です」

 

 そう言い、封筒を渡す目良。

 その中身は結構な額が入っており、もし俺が龍子の事務所で寝泊まりをするのなら、暫くの間は遊んで暮らせるくらいの金額はある。

 前回の金額と合わせると、場合によっては1年ちょっとは遊んで暮らせるくらいの金額になっている。

 いやまぁ、豪遊したりすれば1ヶ月かそこらでなくなってしまいかねないが。

 

「確かに受け取った。……予想よりも随分と高く売れたな」

「ええ、こちらもアクセル君の心象を良くする為に頑張らせて貰いました」

 

 それが本気で言ってるのかどうかは、相変わらず隈のある顔からは分からない。

 ただまぁ、俺としてはこうして所持する金額が増えたのだから、悪くないが。

 

「続けて、こちらをどうぞ」

 

 そう言い、目良がテーブルの上に置いたのは保険証だった。

 

「アクセル君の年齢だと、免許証という訳にもいきませんので」

「まぁ、そうだな」

 

 この世界でも車の免許は18歳から、そしてバイクの免許は16歳からだ。

 そして俺の外見は10代半ば。

 ……そう考えれば、バイクの免許なら意外といけそうなんじゃ? と思わないでもなかったが。

 ただまぁ、目良がそのようにしたという事は、何かバイクの免許では駄目な理由でもあったのだろう。

 その辺が少し気になるが。

 

「名前は、アクセル・アルマーか」

「ええ、アクセル君もその方がいいでしょう?」

「偽名をわざわざ使う必要はないしな。もし偽名を使うとなると、ムウ・ラ・フラガとか、イザーク・ジュールとかか」

 

 俺が使う事が多い偽名について口にすると、不意に目良が俺に視線を向けてくる。

 隈のある目で向けられる視線は、どこか妙な迫力すらあった。

 

「その、ムウ・ラ・フラガとイザーク・ジュールというのは?」

「ん? ああ、俺が偽名を使う時によく使わせて貰っている仲間の名前だ。公安の目良に言うのもなんだが、偽名を使う場合は自分の名前と完全に違う名前を使うのは不味い。いや、そういうのに慣れてる者なら別だろうが、自分の名前に近い名前か、あるいは聞き覚えのある知り合いの名前を使うのがいいからな」

「……妙に詳しいですね」

「俺も異世界に行くのは、これが初めてという訳じゃないしな。今までにも何度か他の異世界に行っている」

「ほう。それは以前言っていた、魔法のある世界とかですか?」

「そうなるな」

 

 実際にはネギま世界以外にも多くの世界に行っているのだが、その件についてはわざわざここで話さなくてもいいだろう。

 目良はこっちの秘密……というか、情報を少しでも多く欲してはいるようだったが、こっちとしてもそう簡単に全ての情報を大っぴらにしたいとも思わない。

 

「なるほど、話は分かりました。とにかく、アクセル・アルマーという名称でいいのですね?」

「ああ、それで問題ない」

「では、戸籍の件はこれで。……ああ、それとアクセル君の個性については、希望通り混沌精霊という事にしておきましたので」

「助かる」

 

 こちらの希望はどうやら大体叶えて貰ったらしい。

 なので感謝の言葉を口にする。

 それを聞いた目良は小さく頷き、口を開く。

 

「それでは今回ここに呼んだ本題に入らせて貰いますが……来年の雄英高校に入学してみませんか?」

 

 そう、目良は言うのだった。

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