転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4308話

「はぁ……本当にアクセルってば……」

 

 車の中で龍子が呆れたように言う。

 公安の支部で目良と会い、委員長が姿を現し、そして俺が雄英を受験するという依頼を受けた帰りでの事だった。

 

「呆れられてもな。俺としてはそれなりに上手くやったつもりではあるんだが」

 

 そう言いつつも、本当に上手くやるのなら委員長に対して鵬法璽を使うといった方法もあったのだが……まぁ、その辺は仕方がない。

 ただ、条件としてはそれなりのものを引き出せたとは思う。

 住む場所の家賃であったり、生活費であったり、雄英に通う際に掛かる金は全て公安持ち。

 その上で、月100万の報酬を貰えるし、何かあったら公安に連絡をすれば便宜を図って貰える。

 客観的に見て、そう悪くない……どころか、かなり俺にとって有利な条件だとは思う。

 もっとも、俺もこの条件が交渉によって決められたものではないとは理解しているが。

 委員長にしてみれば、恐らく俺の出した条件は全て予想の範囲内だったのだろう。

 だからこそ、ああしてすぐに俺の出した条件を呑んだのだろうし。

 それでもかなりこっちに配慮してるのは分かるが……それもまた、俺が異世界から来た存在だからだろう。

 異世界から来たというのをどこまで向こうが本気で信じているのかは、生憎と俺にも分からない。

 分からないが、それでもそれがあったからこそ……そして俺が異世界の存在だからこそ、少しでも恩を売っておきたいと思っての行動なのは間違いないと思う。

 

「ねえねえ、アクセルが異世界から来たってどういう事? 不思議」

 

 俺と龍子の会話で、ようやく話してもいいと判断したのだろう。

 ねじれがそう聞いてくる。

 今のねじれは別に口を押さえられていた訳ではない。

 だが、それでも今まで黙っていたのだ。

 この辺は、次期ビッグ3と言われるだけあって、状況を正しく認識していたいったところか。

 ……それでも我慢が出来なくなり、こうして聞いてきたのだろうが。

 

「そのままの意味だ。俺が龍子の事務所で厄介になってるのは、個性事故が原因じゃなくて、異世界からこの世界にやって来たからだ」

「異世界ってどういう場所なの?」

「異世界と一口に言っても、色々とあるな」

 

 そうんな訳で、龍子の事務所に到着するまでずっと俺はねじれの質問に答え続けるのだった。

 時折、龍子や優も興味が出たのか色々と質問してきたが、とにかく俺はずっと話し続けていたので、疲れたことは間違いない。

 

 

 

 

 

「さて……まさか今更受験を受ける事になるとは思わなかったな」

 

 龍子の事務所にある、俺の部屋。

 その部屋でベッドに寝転がりながら、そんな風に呟く。

 実際、本当に受験というのは予想外だった。

 ペルソナ世界で月光館学園に転校した時は、既に高校生という事にしてあったので、特に問題なかった。

 ネギま世界の時は……まぁ、あれは色々と特殊なケースだろう。

 そんな訳で、しっかりとした試験を受けるのは……それこそ、士官学校の時以来か?

 本当に随分と久しぶりだが、こうなるとねじれから中学時代の教科書とかを借りていたのはラッキーだったな。

 もっとも、英語は元々ネイティブなので問題ないし、数学や科学、国語といったのも俺にとっては問題ない。

 そうなると、やっぱり問題なのはこの世界特有の歴史とか、そういうのなんだよな。

 途中までは俺の知ってる歴史とそう違いはない。

 だが、最初に個性を発揮した光る赤子。

 この赤子が出て来てからの歴史は、俺の知っている歴史とは大きく違ってくる。

 ……まぁ、その世界の歴史というのはその世界によって変わるのが当然なので、そういう意味では俺の知っている歴史というのはどの世界でも微妙に違ってくるのだが。

 そんな風に勉強をしていると……知っている気配が近付いてくるのを感じる。

 少しして扉がノックされ、入ってもいいと口にすると姿を現したのは……

 

「お疲れ、アクセル。勉強の方はどう……って、勉強していた訳じゃないのね」

 

 呆れたように言い、龍子は手にしたサンドイッチを放り投げてくる。

 手作りのサンドイッチでこういう事をすれば空中で分解してもおかしくはないが、コンビニで買ってきた包装されたサンドイッチなら、こういう風に放り投げても何の問題もない。

 勿論俺もしっかりと受け取り、落とすような事はしない。

 いやまぁ、俺がいたのはベッドの上なので、もし落としても固い床に落ちてサンドイッチが潰れるといったことはないので、そういう意味ではどのみち問題がなかったりしたのだが。

 

「差し入れか? 悪いな。……へぇ、ハムレタスサンドか。こういうのはちょっと珍しいな」

 

 ハムレタスサンドそのものは、そう珍しいわけでもない。

 寧ろ、サンドイッチの王道に近い。

 だが、このサンドイッチはコンビニで売ってる中でも少し高めのもので、包装の中に入っている3つのサンドイッチに挟まっている具は、どれも違う。

 ハムも3種類別々の奴を使われているし、包装に書いている内容によれば、レタスも3つの産地で栽培された別の種類のレタスを使っているとか。

 ……もっとも、ハムの方はともかくレタスの方は見た感じだとどれも一緒に見える。

 これで赤いレタスとかであれば見た目も違って分かりやすいのだが、このレタスを見た限りだと、俺の目からは違いらしい違いがあるようには思えなかった。

 もっとも、こうして堂々と包装に書かれている以上、まさか実はどれも同じ場所で栽培した同じレタス……何て事はないだろうが。

 

「そう? ねじれから聞いたけど、雄英でもちょっと流行ってるらしいわよ、そのサンドイッチ」

 

 雄英で流行ってるのか。

 あれ、でも以前雄英を調べている時に見たんだが、雄英の学食にはランチラッシュというヒーローがいて、かなり安い値段で極上の料理を食べられるらしい。

 まぁ、学食とコンビニで買う奴は違うんだろうが。

 学食は当然ながらその場で食べるのを前提としてる。

 ……あるいは頼めば弁当のようにして後で食べられるようにも出来るのかもしれないが、基本的にはやはりその場で食べるのが普通だ。

 それに対して、コンビニはこのサンドイッチのように個別に包装されているので、購入して後で食べるといったことも出来る。

 もっとも、そうなるとサンドイッチを買ったのを忘れて、気が付いたら賞味期限が……というのもあるが。

 とはいえ、賞味期限というのはあくまでも目安でしかない。

 勿論部屋の中に出しっぱなしにしておくとかすれば別だったが、買ってきてからすぐに冷蔵庫にいれておけば、1日や2日くらいは賞味期限をオーバーしても普通に食べられる。

 もっとも、賞味期限をオーバーしているので、例えばサンドイッチなら包装されていてもパンは薄らと渇いてしまっていたり、中の具もパサついたりするだろうから。

 何だったか……ああ、そうそう。こういう時はこう言うんだったな。

 特殊な訓練を受けているので平気です。だったか。

 もしくは、後日スタッフが美味しくいただきましただったか?

 うん……まぁ、とにかくそんな感じで言っておけばいいんだろう。

 そんな風に思いつつ、龍子が折角持ってきてくれたのだからという事で、サンドイッチを食べる事にする。

 

「……なるほど、美味いな」

 

 そのサンドイッチはハムの塩気とレタスのシャキシャキ感が相まって、美味い。

 これにチーズも加わればより完成度の高いサンドイッチになったのだろうが……まぁ、この値段のサンドイッチが3つで400円近いと、コンビニで売ってるサンドイッチとして考えれば、間違いなく高級なサンドイッチだ。

 そこにチーズも加えれば、450円くらいにはなってもおかしくはなく……客も手を出しにくくなるだろう。

 自分へのご褒美的な目的でなら買える値段かもしれないが、そういうのって普通はスイーツとかそっち系だしな。

 

「そう? アクセルに喜んで貰えたようでよかったわ。……それでも今日の件だけど。本当に大丈夫なの? 雄英の一般入試となると、かなり厳しいわよ?」

「倍率300倍以上らしいからな」

 

 雄英について改めて調べてみれば、そんな馬鹿げた倍率に驚くことになった。

 いやまぁ、この世界の日本において士傑と並んでトップクラス……実際には体育祭の件もあるので、トップクラスではなくトップのヒーロー科を持つ高校だ。

 受験生の中でもヒーロー科を希望する者は多くの者が雄英に行きたいと思うだろう。

 また、それ以外にも多いのは記念受験の者達だ。

 この記念受験によって、倍率が上がっている。

 とはいえ、それを考えた上でも間違いなく雄英が狭き門であるのは間違いないのだが。

 

「ええ、私が学生の時はもう少し倍率は低かったように思えるけど」

 

 龍子が学生の時っていつくらいだ?

 ふとそう思ったが、それを考えた瞬間龍子の視線が……ドラゴンの如き視線が俺に向けられる。

 年齢の事を言ったらどうなるか分かるな?

 そう視線で言ってきた……寧ろ、視線で殺してきた龍子。

 普段ならそんな視線に負けるような事はないのだが、今は逆らってはいけないような感じだったので口に出さないでおく。

 取りあえず……20代前半の優から先輩と呼ばれている、とだけ。

 

「その倍率も記念受験の奴が多いからこその倍率だろう? あるいは受かればラッキー的な。龍子の時もそんな感じだったのか?」

「ええ、だから本当の倍率はもう少し低かったと思うわ」

 

 もっとも、それでも100倍程度はありそうだけど。

 それはつまり100人に1人しか受からないという事を意味していた。

 実際にちょっと調べてみた限りでは、雄英専門の予備校とかそういうのもあるらしいし。

 

「まぁ、倍率がどのくらいでも心配するな。学科の方は歴史以外は大体問題ないし。4ヶ月もあれば、何とかなる」

 

 雄英の一般入試は来年の2月。

 そして今は10月なので、4ヶ月の時間がある。

 ましてや、元々俺はこの世界の事を知りたくて、書店で本を買ったり、あるいはねじれから借りた中学の教科書を読んだりしていたしな。

 そういう意味では、今回の一件はラッキーなところもある訳だ。

 

「……本当に大丈夫なの?」

 

 俺の言葉に、龍子は訝しげな視線を向けてくる。

 ただ、これは無理もないだろう。

 現在の俺は10代半ばの姿だ。

 そんな俺が、まさか士官学校を首席で卒業した経験があるとは思えないだろう。

 お調子者の優はともかく、龍子には隠している事を全てではないにしろ、ある程度は教えたいと思わないでもない。

 だが、結局のところ龍子もヒーローである以上は公安の指揮下にあるのは事実。

 ましてや、優もそうだが龍子は俺の後見人という名の監視役でもある。

 それを思えば、やはり俺の件については迂闊に話すことが出来ないのは間違いなかった。

 

「ああ、問題ない。けど……そうだな、少し安心させるとすれば……」

 

 そこで一度黙ってから、再び口を開く。

 

『こんな感じで英語もネイティブに話せるから、受験科目の英語については問題ない。もっとも、日本で必要なのは受験の為の英語……受験英語とでも呼ぶべき英語だから、一応ちょっとはそれなりに勉強しないといけないけどな』

 

 この言葉は、日本語ではなく英語で喋った言葉だ。

 それを聞いた龍子は、俺の口から出た英語に少し驚き……

 

『なるほど。英語が自由に使えるというのはアクセルにとって大きなメリットかもしれないわね』

 

 そんな言葉を英語で返してくる。

 

「……龍子、英語出来たのか」

 

 驚きと共に口にした言葉に、龍子は笑みを浮かべて口を開く。

 

「ヒーローとして活動する上で、英語は必須……とまでは言わないけど、覚えておいた方がいいのは間違いないしね」

「だろうな」

 

 龍子の言葉に俺はそう返す。

 この世界において俺の知ってる常識が通用するのかどうかは分からない。

 分からないが、それでも俺の知ってる限りだと英語というのは世界の公用語的な扱いとなっている。

 日本だけでヒーロー活動をするのなら日本語だけで十分だが、海外から日本に来る者もいるし、もしくはヒーローが海外に行く事もある。

 そんな諸々を考えれば、やはり英語というのは出来た方がいいという龍子の言葉には納得出来た。

 こういうのが、次のヒーロービルボードチャートでトップ10に入る可能性が濃厚だと言われている由縁なんだろうな。

 ……それを考えると、多分だが優は英語が出来なさそうな感じがする。

 

「とにかく、今ので分かって貰えたと思うが、受験科目の中で英語については満点を取る自信がある」

「でも、英語だけでは駄目なのよ?」

「分かってる。ただ、英語の勉強をしなくてもいいというだけなら、俺にとっては大きなメリットだろう?」

「……そこまで自信があるのなら、そうね。明日にでも書店にいってちょっと模擬試験用の本を買ってきて、ちょっと試してみる? それで合格点を取れたのなら、私も安心出来るし」

 

 その言葉に面倒だと断ろうかとも思ったが……

 

「雄英受験用の奴ならやってもいいぞ」

 

 実際、どこまで現在の学力で通用するのか試したかったので、引き受けることにしたのだった。

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