転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4310話

「おや、ねじれちゃん。いらっしゃい」

 

 ラーメン屋の店主は、ねじれを見ると笑みを浮かべてそう言う。

 どうやら、ねじれはこの店の店主に顔を覚えられ、気軽に言葉を交わすくらいには頻繁にこの店に来ているらしい。

 龍子にこの店の事を教えたのはねじれだったんだから、そこまで不思議でもないのか。

 ねじれの出身が秋田県らしいので、稲庭うどんが……より正確には稲庭うどんの技法を使って作った中華麺が懐かしくて頻繁に店に来ていたのかもしれないな。

 

「……ん? ねじれちゃん、一緒にいるのは?」

 

 ジロリ、という表現が相応しい視線で俺を睨み付ける店長。

 あー……なるほど、ねじれの美貌を考えれば、頻繁に来るのだろうこの店においてはアイドル的な存在になってもおかしくはない。

 そんなアイドルが、見ず知らずの男――実際にはこの店に来た事があるんだが、1回だし、店長も顔を覚えてはいないだろう――と一緒にやって来たのだから、一体誰と一緒なのかと疑問に思ってもおかしくはない。

 だが、ねじれは店長の様子を気にせず、あっさりと口を開く。

 

「アクセルだよ。リューキュウの事務所で一緒なの」

 

 いや、それだと俺もインターンをしている雄英の生徒だと誤解されるような。

 

「へぇ、なるほど。ねじれちゃんの同級生か。なら、いいか」

 

 ほら、やっぱり誤解している。

 ちなみに店長以外の客にも何人か会話に耳を傾けている者達がいたのだが、そのような者達もどこか安堵した様子でラーメンを食べていた。

 これを見ると、本当にねじれはこの店のアイドルなんだなと納得出来てしまう。

 ……誤解については、取りあえず気にしないようにしておこう。

 ここで下手に誤解を解いたりすれば、一体何故雄英の生徒でもない俺が龍子の事務所にいるんだ? といったように思われるだろうし。

 

「え? アクセルは……」

「ほら、ねじれ。まずは券売機で券を買わないと。何を食べる? 今日はねじれがライバルに勝ったお祝いなんだから奢るよ」

「本当? じゃあ……」

 

 こういう時、ねじれって扱いやすいよな。

 いやまぁ、もしヒーローとしての活動中であったりした場合は、こうしてあっさりと誤魔化されたりはされないんだろうが。

 後は、ねじれも俺を信頼してるから、俺の件について適当に誤魔化そうとしているとは思っていないのだろう。

 

「じゃあ、醤油ラーメンの大盛り、燻卵と白髪葱、キクラゲをトッピングで! 後は餃子とご飯!」

 

 結構がっつりといくが、それにはそこまで驚かない。

 龍子や優、ねじれと一緒に食事をする機会も多いので、普段からどれくらい食べるのかは知っている。

 これくらい食べても、別に太ったりはしないんだよな。

 ……それはよくある、幾ら食べても太らない体質とかそういうのではなく、ヒーローとして活動している以上、かなり身体を動かす事になるからだ。

 身体を動かした分は食べないと、すぐに痩せてしまう。

 女として考えればダイエットをする必要がないのでいいのかもしれないが、ヒーローとして活動する上で、痩せる……特に筋肉から痩せていくというのは大きな問題だ。

 それだけに、動いた分だけ食べる必要があった。

 

「なら、俺は特製比内地鶏ラーメンの大盛りにチャーシュー……いや、比内地鶏のチャーシューと、比内地鶏の燻卵を追加。後は特製餃子2人前と白飯大だな」

 

 普通、ラーメン屋なら炒飯とかのサイドメニューがあったりする事が多いのだが、この店に炒飯はない。

 餃子とか白飯とかはあるんだから、炒飯くらいはあってもいいと思うんだが。

 例えばチャーシューの切れ端とかメンマとかネギとか、ちょっと変わったところではキクラゲとか。

 ラーメンの具がそのまま炒飯の具にも使えるんだし。

 まぁ、それがこの店のポリシーで、あくまでもラーメンだけで勝負――餃子とか白飯はあるが――しようというのなら、俺がどうこう言えるような事ではないのだが。

 ともあれ、そうして券売機で食券を買うと、テーブル席に向かう。

 単純にカウンターには他の客がいたからというのもあるが、店長の視線がまだ微妙に俺に向けられているんだよな。

 多分、俺の事をねじれに言い寄る男とか、そういう風に考えているのかもしれない。

 もっとも、店長の目はある意味で間違ってはいない。

 何しろ、俺はホワイトスターに……UC世界やペルソナ世界もそうだが、とにかく恋人が20人以上いるのだから。

 そんな俺の事情を知らなくても、何らかの本能で俺の事を女好きだと認識してもおかしくはない。

 ともあれ、そんな訳で俺はねじれと共にテーブル席に座る。

 

「それでね、それでね」

 

 座るなり、ねじれが雄英での件について話し始める。

 

「ああ、それは大変だったな。いや、それとも面白かったのか?」

「面白かったのよ。サポート科の方でも……」

 

 ねじれの話は、話しているとあっちに行ったりこっちに戻ってきたりする。

 なので、真剣に聞けば混乱してしまう。

 適当に聞き流す感じなのが一番いい。

 実際、今も何故か話題がサポート科にいるライバルについての話になってるし。

 ちなみにこのライバルというのは、ヒーローとしてのライバルではなく、どうやらミスコンでのライバルらしい。

 ミスコンか。

 学園祭でやるらしいが……ねじれのライバルとなると、その相手もかなり美人なんだろうな。

 

「はい、お待ち」

 

 ねじれの話題を遮るように、店員が注文した料理を持ってくる。

 てっきり店長が持ってくるのかと思ったが、どうやら違ったらしい。

 

「わぁ、美味しそう。ねえ、アクセル」

「そうだな」

 

 実際、運ばれてきたラーメンは美味そうだし、餃子は焼きたてだし、白飯もほかほかだ。

 店にプライドを持っていそうな店長だけに、俺の事が気に食わないからといって料理に手抜きをするとは思っていなかったが、どうやら俺のそんな予想は当たっていたらしい。

 

「じゃあ、いただきいます」

「いただきます」

 

 ねじれと共に、ラーメンを食べる。

 まずはスープを一口……なるほど。

 ラーメン単体として、この店で一番高額なのがこの特製比内地鶏ラーメンだ。

 特製というだけあって、比内地鶏の出汁がもの凄く出ている。

 ……いやまぁ、そう表現はしたが、普通の鶏と比内地鶏の味の違いは、スープで飲んだだけじゃ分からないが。

 ただ、鶏の濃厚な旨みが醤油ベースのスープと一緒になって口の中に広がる。

 まぁ、比内地鶏と醤油というのは決して相性は悪くない。

 秋田名物として有名な切りたんぽ鍋や、だまこ鍋も基本的には鶏ベースの醤油味なのだから。

 ゴボウ、椎茸、マイタケといったように出汁の出る食材を一緒に煮込む。

 それと比べれば、これは素直に比内地鶏だけで勝負してる訳で……店長がそれだけ自分の料理に自信があるのだろう。

 そして麺は……稲庭うどんの技法を使って作られた乾麺だが、かなり美味い。

 同じ秋田の食材というだけあって、これ以上ない程に相性がいいのだろう。

 また、いわゆるラーメンライスとして食べても合う。

 ……本当はラーメンライスというのは栄養的には色々と問題があったりするのだが。

 ただ、俺の場合は人間ではなく混沌精霊だ。

 食べたものは体内で即座に分解されて魔力となるので、栄養的という意味では何の問題もなかったりする。

 つまり、お好み焼きと白飯を一緒に食べても問題はない。

 ……もっとも、俺の認識ではお好み焼きはおかずではなく主食なので、いまいちピンとこないが。

 とはいえ、お好み焼きで白飯を食べるのは、一部地域では普通らしいが。

 この辺についてはその地域の食文化だと言われれば、そうなのかと納得するしかなかったが。

 

「アクセル、どうしたの?」

「いや、この店のラーメンはやっぱり美味いと思ってな」

「でしょう」

 

 俺の言葉に自慢げにねじれが笑う。

 ねじれにしてみれば、自分の故郷の食材がこうして褒められたのだから、嬉しく思うなという方が無理なのだろう。

 

「特に俺が頼んだこの特製比内地鶏ラーメンの場合はスープが美味いし……こっちのチャーシューも美味いな」

 

 普通、チャーシューというのは豚肉を使って作るものだと思っていたのだが、この比内地鶏を使ったチャーシューは一味違って面白い。

 柔らかさという意味では豚肉を使ったチャーシューの方が美味いのは間違いないのだが、しっかりとした噛み応えと、肉を食ってるといった感じがいい。

 とはいえ、この辺は大きく好みが分かれるところだろう。

 俺にとっては美味いと思えるが、柔らかなチャーシューを好む者にとっては、ちょっと肉が固いと思ってもおかしくはない。

 そういうのを好む者にしてみれば、普通のチャーシューの方を好むだろう。

 

「わ、わ、美味しそう」

 

 俺が箸で持った比内地鶏のチャーシューを見て、羨ましそうにするねじれ。

 きらきらと光る視線を向けられると、俺としてもこのまま自分だけで食べるのはどうかと思ったので、俺が持った比内地鶏のチャーシューをねじれの方に向ける。

 

「食べるか?」

「食べる食べる」

 

 即座に返事をしするねじれ。

 そんなねじれに若干呆れつつも、俺は手にしたチャーシューをねじれのラーメンの丼に置く。

 

「ありがと」

 

 嬉しそうな笑みを浮かべ、早速食べるねじれ。

 俺はそんなねじれを見ながら……そして店長の視線を感じつつ、ラーメンを食べるのだった。

 

 

 

 

 

「ありがとう、アクセル」

 

 ラーメンを食べ終わって店を出ると、ねじれが俺に向かってそう言ってくる。

 別にラーメンを奢るくらいはそう大した事でもないんだけどな。

 まぁ、ねじれにしてみればそれだけ嬉しかったのだろう。

 こうして喜んで貰えたのなら、それはそれで嬉しい。

 とはいえ、雄英の学食はかなり料理が美味いらしいので、それこそラーメンを頼んだら、この店のラーメンよりも美味いラーメンとかが普通に……それも安く出て来そうな気はするが。

 その辺りについては、雄英に入学してからの楽しみとしておこう。

 

「喜んで貰えて何よりだよ。それで……」

「きゃああああっ! ひったくりぃっ!」

 

 

 俺の言葉を遮るように、そんな声が周囲に響く。

 それを聞いた瞬間、ねじれは駆け出す。

 ……そう言えば今更、本当に今更の話なんだが、今日のねじれはヒーローコスチュームを着ていない、普通の状態だ。

 龍子から聞いたんだが、ヒーローコスチュームというのはヒーローをする上で個性を強化したり、防御力を上げたり、サポート的な機能を詰め込んだりと、かなり様々な効果があるらしい。

 ただし……だからこそ、ヒーローコスチュームというのはヒーロー以外が着る事は許されておらず、そのヒーローもヒーローとして行動する時にしか着てはいけない。

 そういう意味では、ねじれもまた今はヒーローとして行動してるので、ヒーローコスチュームを着てもいいんだが……今回の場合、パトロールよりもラーメンを食べるのがメインだった事もあってか、ヒーローコスチュームを着ていなかったんだよな。

 だが、それでもねじれはインターンとはいえ、ヒーローとして即座に動いた。

 空を飛び、悲鳴の聞こえた方に向かう。

 俺はどうするべきかと一瞬考えたのだが、取りあえず様子を見る為、ねじれを追うことにする。

 ねじれは、雄英で……この世界の日本においてトップクラスのヒーロー科の2年の中でも、次期ビッグ3確定と言われている。

 龍子や優から少し聞いてみたところ、今のねじれの実力はその辺のプロヒーローと比べても遜色ない……どころか、勝っているらしい。

 ましてや、ここ最近のねじれは俺との模擬戦によって生身での戦闘能力は以前と比べても明らかに上がっている。

 であれば、ひったくり程度の相手はどうとでもなるだろう。

 そう判断した俺の認識は間違っておらず、ねじれを追って到着した時、そこにはひったくり犯なのだろう男を柔道の技術を使って押さえつけているねじれの姿があった。

 その男は側頭部から伸びている2本の角を使い、自分を押さえつけているねじれに必死に攻撃しようとしていたが、ねじれはそれを上手い具合に回避している。

 ……これが、この世界で格闘技が廃れていった理由なんだろうな。

 格闘技というのは、あくまでも人間を……普通の人間を相手にする為に生み出された技術だ。

 格闘技というか武術、それも古武術と呼ばれるような類は、武器を手にした存在……侍だったり、そういうのを相手にする為に生み出されたものだから、格闘技とは微妙に違うが。

 分かりやすい例だと、エヴァが使っている柔術だな。

 柔道と柔術。名前は似ているが、その性質は明らかに違う。

 というか、柔術の類は柔道とは違って打撃とかも普通にあるらしいし。

 そんな柔術のルールをマイルドにして生み出されたのが、柔道だ。

 とはいえ、柔道にしろ柔術にしろ、あくまでも人を相手にするものである以上、今のように角を持った相手との戦いなどは想定していない。

 まぁ、兜の飾りとかと考えれば、あるいは……と思わないでもないが。

 そんな訳で、特に相手に密着する柔道のような格闘技の場合、個性を持った相手に対処するには、そのままでは難しい。

 だが、ねじれは完璧ではないにしろ、その辺についてしっかりと対応出来ているのだった。

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