転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4312話

「明日、クリスマスパーティをしましょう」

 

 23日の夕食の時、不意に龍子がそんな風に言う。

 現在事務所にいるのは、俺、龍子、優、ねじれの4人。

 他の事務員やサイドキックは、既に帰っている。

 つまり、俺の事情を知っている者だけが現在事務所に残って食事をしていたのだが……

 

「リューキュウ先輩、いきなり何を?」

 

 パスタを食べる手を止め、優が不思議そうに龍子に言う。

 ちなみに今日の夕食は何種類かの大盛りパスタを作り、それをそれぞれが自分の取り皿に取って食べるといった形式だ。

 他にもサラダやスープ、簡単な一品料理とかがあるが、やっぱり主役はパスタとなる。

 ちなみにパスタの種類はたらこパスタ、醤油ときのこのパスタ、ボロネーゼ、ペペロンチーノの4つだ。

 ……ちなみにこの中のボロネーゼというのは龍子が作ったんだが、ぶっちゃけ俺にはミートソースとの違いが分からない。

 ペペロンチーノとペペロンチーニという名称があるように、ミートソースとボロネーゼという2つの名称があるのが理由だったりしないよな?

 うん、まぁ……多分そういう事はないと思っておきたい。

 とはいえ、違いがあるのかどうかと言われれば……俺の舌では分からない。

 というか、それこそ多くの者はこれをミートソースだと言われて出されれば、そうだと思うだろう。

 食通とかそういう者達なら、あるいはミートソースとボロネーゼの味の違いも分かるかもしれないが。

 ミートソースとボロネーゼの違いに悩んでいる間にも、話は続く。

 

「まぁ、今年はアクセルが来たしね。それに……マウントレディも最近はうちの事務所に来るようになったでしょ? そう考えれば、たまにはそういうのもいいかと思って」

「でも、リューキュウ。多分クリスマスは忙しくなると思うよ?」

「う……それは……」

 

 ねじれの言葉に、龍子は反論出来ない。

 実際、クリスマスという事で気分が高揚し、それによって何らかの事件が起きるというのは珍しくない。

 また、クリスマスと言えば恋人が多くなる。

 それを不満に思う者が暴れないとも限らない。

 

「去年も確か、恋人がいないヴィランが、恋人達に向かって臭いガスを吹き付けたりしてたわよね」

 

 優の言葉に、龍子がパスタを食べる手を止める。

 それだけ嫌な事件だったのだろう。

 

「臭いガスって、致死性があるとかそういうのじゃなくて?」

「ええ、ただ臭いだけ。……ただ、恋人達にとっては致命的だったみたいよ? 何しろそのヴィランの個性で作ったガスは、数日は悪臭が取れなかったらしいから」

「それは……哀れだな」

 

 クリスマスともなれば、それこそ恋人達との夜を楽しむ日だ。

 場合によっては聖夜ではなく性夜と呼ばれたりして、実際にこの夜に子どもを授かる事も多いんだとか。

 そんなロマンチックな、恋人同士の甘い一夜を期待しているところに、悪臭が……それも優の話が本当なら数日は取れない悪臭があるのだ。

 とても聖夜は勿論、性夜どころではないだろう。

 もっとも、これは宗教ごった煮の日本だけの事情なのだが。

 キリスト教の影響力が強い場所では、寧ろクリスマスというのは恋人ではなく家族と一緒にいることが多いらしいし。

 ともあれ、独り者にとって……ましてやヴィランにとって、クリスマスというのは暴れる日な訳だ。

 ちなみに聞いた話によると、クリスマスだけではなく2月14日……バレンタインも同じように独り者のヴィランが現れたりするらしい。

 ……更にちなみに、3月14日にも同じようにヴィランが暴れたりするらしいな。

 うん、こうして考えると、優が言うようにここにいる面子でクリスマスパーティをやるというのは難しいかもしれないな。

 とはいえ、ヒーローというのは基本的に担当地区というのがあるので、それはつまり担当地区でヴィランが暴れなければ問題ないという事を意味してもいた。

 もっとも、中には担当地区など関係ねえと言わんばかりに日本全国を飛び回っているミルコというヒーローとかもいるらしいが。

 また、そこまでではないが、遠征して別の場所に行ったりといった事はそこまで珍しくもないらしい。

 

「なら……そうね、やれるとは断言出来ないけど、出来たらという事で」

 

 龍子も結局は確実にクリスマスパーティをやるというのは諦めて、そう言う。

 にしても、クリスマスパーティか。

 そうなると、3人分のプレゼントを買った方がいいのか?

 それともよくあるように、全員が1個ずつプレゼントを持ってきて、それを使ってプレゼント交換とかをするのか。

 その辺りは俺にはちょっと分からないが……けど、そうだな。

 何だかなどと龍子や優、ねじれには世話になってるし、何かプレゼントを購入するくらいはしてもいいだろう。

 問題なのは一体どういうプレゼントを用意するのがいいのかといった事なんだが。

 あ、でもこの前TVでオルゴールが人気とか、そういう風にやっていたな。

 そう考えると、オルゴールを3つ纏めて購入しておけばいいかもしれない。

 とはいえ、この辺にそういう店ってあったか?

 まぁ、龍子の事務所があるのは結構都会だし、探せばオルゴールもあるだろ。

 もしなければ、その時はその時でまた別のプレゼントを買えばいいだろうし。

 

「出来たら、ですか。それなら私も楽しみにしていますね」

「私も楽しみー!」

 

 優とねじれがそれぞれ頷き……そして龍子の視線が俺に向けられる。

 俺もまたそんな龍子に対し、出来るのならやると頷くのだった。

 

 

 

 

 

「うーん、やっぱりクリスマスだけあって人が多いな」

 

 翌日、俺はプレゼントを求めて街中に繰り出していた。

 ちなみに龍子、優、ねじれの3人は昨日予想したように、クリスマスだけあって結構な数のヴィランが暴れており、それに出動している。

 本来なら優は龍子の事務所の所属という訳ではないのだが、今は俺の保護者的な意味もあって、公安からの協力金の件もあるので、事務所同士の協力関係……チームアップとかいうらしいが、それを行っているらしい。

 それによって、優もこの辺りでヒーローとして仕事をしている。

 そんな訳で、ヒーロー達が忙しい今、俺はプレゼント探しをしている訳だ。

 ……というか、龍子と優は俺の後見役という名の見張り役なんだが、俺を放っておいてヒーローとしての仕事に集中しているのはどうなんだ?

 そう思わないでもなかったが、何だかんだで2ヶ月くらいはもう一緒にいるので、それなりに信用はあるのだろう。

 もっとも、以前寝たふりをして事務所を抜け出し、オセオンに行って狛治を召喚するとか、そういうのをしたが。

 もしかしたら、あの件は何らかの個性によって把握されていて公安が知っているのかと思ったが、どうやらそうではないらしい。

 いやまぁ、もしかしたらそれを知った上で後で何らかの交渉に使えるかもしれないからという事で、今は黙っているといった可能性も否定は出来なかったが。

 そんな風に思いながら歩いていると、ふと甘い匂いが漂ってきた。

 クリスマスだし、ケーキでも売ってるのか?

 そう言えば、龍子はケーキをどうするんだろうな。

 パーティをやるのならケーキは欲しいが、今日の忙しさを考えるとケーキを買っているとは思えない。

 なら、取りあえず俺が買っておくか。

 もし龍子がケーキを買っていたのなら、空間倉庫に入れておけばいつでも食べられるし。

 そんな訳でケーキを買いに甘い匂いのする方に向かったのだが……

 

「っ!?」

 

 そこにあったのがクレープ屋の屋台だと知り、一瞬息を呑む。

 息を呑むが……改めて屋台を見れば、そこにあるのはあくまでも普通の屋台だ。

 シャドウミラー名物――とは認めたくないし、実際にはネギま世界発なのだが――のゴーヤクレープのようなキワモノは売っていない。

 

「ふぅ」

「いらっしゃい」

 

 俺の様子を見て客だと判断したのか、ゴーヤ……いや、クレープ屋の店主が俺に向かってそう声を掛けてくる。

 20代から30代くらいの若い男で、個性に関係しているのだろう。手が4本ある。

 いわゆる、異形系って奴か。

 いや、顔は普通の人間だし、それを思えば異形系じゃないのか?

 ともあれ、声を掛けられた以上は無視をするのもどうかと思うので、屋台に近付く。

 するとどうやら、イチゴを始めとしたベリー系のクレープが売りらしい。

 看板にはクレープの写真と値段、どのようなクレープなのか、簡単な説明が書かれている。

 

「うーん……じゃあ、このキングベリーを1つ貰おうか」

「あいよ。生クリームとチョコクリームを選べるけど、どっちにする?」

「じゃあ生クリームで」

 

 そう俺が言うと、店主は早速クレープを作り始めるのだが……なるほど、4本ある腕を器用に使っているな。

 クレープというのは一見すると難しそうに見えて、実際にはそこまで難しい料理ではない。

 だが、それでもやはり生地を綺麗に、薄く、それでいて均一に焼き、そして焼きムラが出来ないようにするには、それなりの腕が必要となる。

 これは素人がそこそこ食べられるようなものを作れるが、プロが作ると本当に美味く、同じ料理だとは思えないようなものだ。

 たこ焼きなんかは、その典型だろうな。

 素人でもそこそこ美味いのを作れるが、プロが作ると一体何でこんなに違うのかと思えるくらいに違う。

 このクレープも、またそんな感じの料理……料理? まぁ、スィーツだけど料理でもあるか。

 そんな風に思っていると、次に店主は何種類ものベリーを生地に入れていく。

 キングベリーという名称、そしてこの屋台で売っているクレープの中でも一番高額なだけあって、豪華なクレープが次々と出来ていった。

 そうして具だくさん、しかも生クリームもたっぷりと入っている生地を、器用に畳んでいく。

 この時も4本の腕を器用に使い、どこか1ヶ所に力が入りすぎないようにし、生地が破れないようにしていた。

 なるほど、この4本の腕があるからこそ、この店主はクレープ屋をやってるのかもしれないな。

 そんな風に思っているとクレープが完成し、料金を支払って渡される。

 クレープというのはふんわりとした重さが一般的だと思うのだが、さすがキングベリーという商品名だけあって、ずっしりとした重みがある。

 クレープを買うのは男より女の方が多いと思うんだが、この重量だと女では食べきれないんじゃないかと思えてしまう。

 まぁ、俺の場合は寧ろこの程度では足りないが。

 パクリと一口食べ……まず生地の香ばしさと暖かさ、そして仄かな甘みが口の中に広がり、次に濃厚な生クリームの甘みが口いっぱいに広がり、最後にその甘さを洗い流すかのように多種多様なベリーを感じる。

 

「美味いな……」

「はっはー、だろ? うちのクレープは美味いんだよ」

 

 俺の素直な感想に、店主は自慢げに笑う。

 実際、このクレープはかなり美味いのは間違いない。

 間違いないんだが……

 

「その割には、何で客がいないんだ?」

「ぐっ……」

 

 素直に感想を口にすると、店主が言葉に詰まる。

 どうやら店主の致命的なところを突いてしまったらしい。

 とはいえ、これは俺の素直な疑問だった。

 値段は少し高いが、それは俺がこの屋台で一番高額なキングベリーを頼んだからだ。

 普通のクレープは……こういう屋台はあまり利用しないし、この世界での物価とかそういうのも分からないから何とも言えないが、それでもそこまで高いようには思えない。

 この値段でこの味なら、もっと行列を作っていてもおかしくはないんだが。

 

「今日はクリスマスだからな。ケーキの方に人が流れてるんだよ」

 

 不満そうに店主が言うが……ケーキはケーキだろう?

 特に今日はクリスマス……正確にはクリスマスイブで、恋人達の多くがデートをしている。

 であれば、そのデートの途中でクレープ屋の屋台によるというのは、そうおかしな事ではないと思うんだが。

 とはいえ、別に俺がそこまでこの屋台について聞く必要はないか。

 話題を変えると同時に、ちょうど聞きたいことがあったので店主に尋ねる。

 

「実は世話になってる相手にクリスマスプレゼントを買いたいんだけど、どこかお勧めの店はないか? この辺りについてはそこまで詳しくなくてな」

 

 本屋とかにはよく行くが、プレゼントを買うといった目的で出歩いた事はない。

 なので、店主に聞いてみたのだが……

 

「プレゼント……ねぇ。どういうのが欲しいんだ?」

「決まっていない。オルゴールなんかがいいかと思ってるけど、他に何かいいのがあったらそっちを買うかもしれないし」

「ふーむ。なら、そうだな。この通りを少し行ったところに信号があるから、そこを左に行って、500mくらい進んだ場所に小物屋がある。そこならプレゼントに丁度いいのが売ってたりするんじゃないか?」

 

 小物屋か。

 店主が言うようにプレゼントを買うのには丁度いいかもしれないな。

 

「ありがとな。なら……」

「あら、アクセル?」

 

 店主に礼を言い、その小物屋に行ってみる……そう言おうとしたところで、不意に名前を呼ばれる。

 声のした方に視線を向けると、そこには龍子の姿があった。

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