転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4316話

「これが雄英か。……でかいな」

 

 雄英の前にある門を見て、思わず呟く。

 もっとも、雄英は日本でもトップクラス……いや、トップのヒーロー科を持つ高校だ。

 No.1ヒーローのオールマイト、No.2ヒーローのエンデヴァーも共にこの雄英の卒業生であるという事を考えれば、その意見に否はないだろう。

 東の雄英、西の士傑と呼ばれてはいるものの、その士傑を卒業したヒーローってのは一体どこにいるのやら。

 いやまぁ、俺が知らないだけで普通にヒーロービルボードチャートではトップ10に入っていたりするんだろうが。

 ただ、それでもやっぱりオールマイトとエンデヴァーがいるという時点で雄英は士傑よりも上だろう。

 もっとも、それはオールマイトとエンデヴァーが凄いだけであって、今の雄英の生徒が士傑に勝っているのかと言われると……うん、正直その辺は分からないが。

 ただ、ねじれの実力を考えると、その時点で士傑よりも上な気がする。

 

「どけデク! 俺の前に立つな、殺すぞ!」

「かっちゃん!」

 

 そんな声が聞こえてきた。

 というか、俺が言うのも何だがヒーローを希望する者が殺すとか普通に言うのはどうなんだ?

 どうやら顔見知りらしい2人を見ていると、殺すぞと口にした男が俺の視線に気が付いたのか、睨み付けてくる。

 ……こいつ、どう見てもヒーローじゃなくてヴィランだよな?

 俺ですら、今回雄英の生徒になるのは公安に依頼された仕事という事で、猫を被るつもりなのに。

 

「ああ? 何だてめえ。私服で来てんのかよ?」

 

 男……緑のボサボサ頭にかっちゃんと呼ばれた男が、俺を睨み付け、そう言ってくる。

 とはいえ、なるほど。

 何だか妙に視線を集めてると思ったら、それが理由か。

 改めて周囲の受験生達を見てみれば、学生服やブレザーを着ている者達が大半だ。

 そんな中で私服というのは……俺だけって訳でもないようだが、それでもかなり珍しい。

 

「色々と事情があるんだよ。雄英の方からもOKを貰ってるから、問題はない」

 

 これは事実だ。

 俺が雄英を受験するには、公安の方から雄英に手を回して貰っている。

 勿論それは、いわゆる裏口入学とかそういうのではない。

 あくまでも受験を受ける資格があるというだけで、成績の方に下駄を履かせるといった事はない。

 いや、寧ろ公安の目良からは、公安が手を回したという事で他の受験生よりも厳しい目で見られるかもしれないとすら言われている。

 公安はヒーローを纏める立場らしいが、雄英からは決して好かれてはいないのだろう。

 あるいは纏める立場だからこそ、そのヒーロー達にしてみれば面白くないのかもしれない。

 強権的な教師と実力のある反抗的な生徒……と思えば、そう間違っていないのかもしれないな。

 

「けっ!」

 

 別にかっちゃんとやらは、そこまで俺に興味がある訳ではなかったのだろう。

 面白くなさそうにそう言うと、そのまま雄英に入って行く。

 ちなみにデクと呼ばれていた緑のもじゃもじゃは……何故か空中に浮いていた。

 どうやら転びそうになったのを、近くにいた女が自分の個性で助けたらしい。

 ……デクの方は、完全に狼狽して何も言えなくなっていたが。

 あの様子を見る限りだと、多分女慣れしていないのだろう。

 なんというか、いかにもモブって感じの奴だな。

 そんな風に思いつつ、俺は受付をすませ、指示された教室に向かう。

 競争率300倍という事もあってか、当然ながら1つのクラスで全員が試験を受けるといった訳にはいかない。

 幾つもの教室に分けられて試験を受ける訳だが……

 

「壮観だな」

 

 俺が指示された教室には、30人程の机があって現在その7割程が埋まっている。

 そうした机に座っている者達は、見るからに異形系だろうという個性の持ち主もいれば、普通の人間といった外見の者もいる。

 ただ、そういう生徒達の中にも2種類の生徒がいるのに気が付く。

 異形系がそうではないかといったものじゃなくてだが。

 それは、知り合いなのか会ったばかりなのかは分からないが、近くに座っている相手と楽しそうに話している者達と、最後の最後まで必死になって勉強をしている者達。

 つまり、記念受験に来た者達と本気で受験に来た者達の違い。

 ……いや、そうでもないか?

 本気で受験をしに来ても、既に勉強はやるだけやったので、後はリラックスして試験を受けようとしている者達がいてもおかしくはないし、記念受験だからといって手を抜こうと思わず、あわよくば合格を狙っている者がいてもおかしくはない。

 楽しそうに話してるからって、本気で試験を受けにきていないとは限らないか。

 そんな風に考えながら、俺は受付で貰った番号札が置かれている机に向かったのだが……

 となりの席にいた人物……女を見て、動きを止める。

 その女は、顔立ちそのものは整っていると言ってもいいだろう。

 印象としては、スポーツ少女的な?

 個性の関係なのか、額から触覚が生えている。

 だが……そんなのとは違って俺を驚かせたのは、その皮膚の色だ。

 桃色……いや、ピンク? 紫? 色的には……やっぱりピンクか? とにかくそんな肌の色だった。

 触覚は、どこぞの麻帆良で同級生だった触覚の印象が思い出深いが、この触覚もラブを感じて蠢いたりするんだろうが。

 そんな事を考えていると、参考書を見ていたその女は俺の視線に気が付いたのかこちらに視線を向けてくる。

 

「お隣さん?」

「ああ、アクセル・アルマーだ。よろしく」

「私は芦戸三奈。それにしてもアクセル・アルマーって……外国生まれ?」

 

 そう言ってくる芦戸は、皮膚がピンクなだけではなく、目も白目が反対になっていた。

 こういうのも異形系って言うんだろうな。

 そう思いながら、俺は頷く。

 

「外国生まれなのは間違いないけど、今の国籍は日本だ」

 

 これは決して嘘ではない。

 名前が名前なので、これで日本生まれというのは無理がある。

 いや、帰化した外国人の両親から生まれたとかにすれば問題ないかもしれないが、そうなると色々と設定を考えるのが面倒なので、公安に戸籍を作って貰った時に外国生まれで日本に帰化したという事になっている。

 それに……こう言うのも何だが、アクセル・アルマーとして俺が生まれたのは、実際に日本じゃなくて外国だしな。

 にしても、芦戸とアルマー。両方とも『あ』だから、五十音順で隣同士になったのかもしれないな。

 もしくはアルマーじゃなくてアクセルで認識されても同じか。

 

「ふーん。じゃあ、今日はよろしくね。私は勉強に戻るから。まだちょっと心配だし」

 

 そうして軽く挨拶を交わすと、芦戸は言葉通り再び勉強に戻る。

 この様子を見ると、芦戸も雄英の受験は記念受験ではなく本気で受かろうとする……何だ? いわゆる、ガチ勢って奴なのだろう。

 俺も別に芦戸の邪魔をしたい訳ではないので、芦戸の言葉に頷く。

 

「分かった。じゃあ、頑張れよ」

「ぷっ、何よそれ。アルマーは一体どの目線からの言葉なのよ」

 

 アルマー……いやまぁ、アクセル・アルマーが俺の名前である以上、芦戸が俺を名字で呼ぶのならアルマーと呼ぶのはそうおかしな話ではない。

 おかしな話ではないのだが、何かこう……少し違和感があるな。

 実際、龍子や優、ねじれ達にもアクセルと呼ばれているし、公安で俺達の担当となっている目良も君付けとはいえ、アクセルと呼んできている。

 勿論、今まで一度もアルマーと呼ばれた事がないのかと言われればそんな訳でもないのだが。

 ただ、それでもアクセルと呼ばれる方が圧倒的に多いのも事実。

 

「アクセルって呼んでくれ。芦戸にはそういう風に呼んで欲しい」

「……え? っ!? ちょっ、もう……」

 

 何故か一瞬呆気に取られたような表情を浮かべる芦戸だったが、すぐにその顔が赤く染まっていく。

 皮膚がピンク色なのに赤くなるのが分かるってのは、ちょっと自然だな。

 

「もっ、もう……アクセル……これでいい?」

「ああ、それでいい」

「……もう、アクセルってばもしかしてナンパをする為に今日来たんじゃないんでしょうね?」

「は? いや、そんなつもりは全くないが」

「ふーん。……まぁ、いいわ。じゃあ、私の事も名字じゃなくて三奈って名前で呼んでよ。私だけがアクセルを名前で呼ぶのはどうかと思うし」

「分かった。よろしくな、三奈」

「も……もう、もう、もう! 私は勉強に戻るからね!」

 

 芦戸……いや三奈は顔を隠したまま勉強に戻る。

 一体何があった?

 そう疑問に思ったが、三奈の邪魔をしたい訳じゃないので、三奈との話を切り上げて俺も試験の準備をする。

 とはいえ、既にやる事はないんだよな。

 自分で言うのもなんだが、学科試験の方では満点を取れる自信があるし。

 もしくはケアレスミスで間違う可能性もあるが、不安要素と言えばそれだけだ。

 唯一の心配点だった社会の歴史……特に個性が見つかってからの歴史についても、受験勉強ではそちらを集中的にやったので心配はない。

 他の科目については、基本的に復習でどうにかなかったからこそのものだったが。

 ともあれ、このまま試験が始まるまでボケっとしてるのもなんなので、筆記用具や受験票を机の上に置くと、参考書を取り出す。

 基本的に勉強についてはねじれから借りた中学校の教科書でどうにかなったのだが、個性が発見されてからの歴史については完全に1から勉強するという事もあり、これだけは参考書を買ったんだよな。

 幸い……というか、ある意味当然な事に、本屋には雄英を受験する人用の参考書が何種類も売っていたので。

 とはいえ、そういう風に何種類も参考書があるという事は、当然ながらその中には外れもある訳で。

 ネットで評判を調べても、中にはサクラで評価を上げているのとかあるから完全には信頼出来ないし。

 そんな訳で、直感……もしくは念動力を使い、選んだのがこの参考書だった。

 

「あ……」

 

 参考書を取り出すと、不意に三奈からそんな声が聞こえてくる。

 そちらに視線を向けると、三奈が俺の持っている参考書に視線を向けていた。

 

「どうした?」

「あ、ううん。ただ、私と同じ参考書を使ってるなって思って。何で社会の参考書を見てるのか分からないけど」

 

 そう言われて三奈の机を見ると、なるほどその言葉通り俺が使っているのを同じ参考書があるな。

 もっとも、俺は社会……歴史のものだが、三奈の机にあるのは国語の参考書だった。

 1時限目のテストは国語だったか。

 

「国語については自信があるしな」

「うわぁ……自信満々だね」

「元々勉強は苦手な方じゃないしな」

「……羨ましい」

 

 この言葉からすると、どうやら三奈は勉強は苦手らしい。

 とはいえ、国語はそんなに難しくはないと思うんだが。

 特に文章を読んで、その意味を答えろとか、そういうのは文章を読んでれば何となく分かるし。

 もっとも、これは俺が漫画以外にも小説を読んだりするのを好むからというのもあるのだろうが。

 普段から本を読まないのなら、その手の問題が苦手であってもおかしくはない。

 もっとも、古典とかは別に勉強をする必要があったが。

 これについては俺が士官学校では習わなかったので、その辺については仕方がないとも思う。

 とはいえ、ネギま世界やペルソナ世界でそれなりに勉強したので、そこまで苦労はしなかったが。

 やっぱり俺にとって一番の難易度は、個性が出て来てからの歴史なのは間違いない。

 

「俺からは頑張れとしか言えないけどな。それに見た感じ三奈も記念受験って訳じゃなくて、本気で合格しようとする側だろう? なら、相応の勉強はしてきた筈だから、何とかなるんじゃないか? それに……こういう言い方はどうかと思うが、学科試験のミスは実技試験で挽回出来るし」

 

 これは事実だ。

 いや、正確には学科試験の点数が悪すぎれば問題だが、多少点数が足りない程度であれば、実技試験の点数をカバーすることは十分に可能らしい。

 雄英に通っているねじれから聞いた話なので、これは決して間違いではない筈。

 もっとも、三奈の様子を見た感じ勉強は本当に苦手そうなので、実技試験でカバー出来る範囲内になるかどうかは、正直微妙なところなような気はするが。

 ……こうして勉強は苦手ってのを見せておきながら、実は勉強は得意でしたとか、そういう事はないよな?

 まぁ、あっても、それはそれで別に俺としては困らないけど。

 あくまでもそういうものだと納得するだけだし。

 ただ、三奈の様子を見る限りだと、とてもではないがそういう風には思えない。

 本当に勉強が苦手なように見えるというのが正直なところだ。

 

「それは知ってるけど、やっぱり実技試験以外に学科試験の方もしっかりとしておきたいし」

「だろうな。点数が上で悪いことはないだろうし」

「……あ、話していて邪魔しちゃった? 私も勉強に戻るね。もうあまり時間はないけど」

 

 そう言い、三奈は参考書に集中する。

 それを邪魔するのもなんなので、俺もまた参考書に目を通す。

 すると、それが10分ちょっとが経った頃、教師が入ってきて……こうして受験が始まるのだった。

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