転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4317話

 試験も順調に進み、昼休み。

 個人的には雄英に来たんだから、ねじれから聞いている美味くて安い食堂で昼食を……といきたいところだったんだが、今日は残念ながら食堂はやっていない。

 まぁ、当然か。

 今日雄英に試験を受けに来ているのは、かなりの数らしいし。

 何しろ倍率300倍となると……千人どころか、1万人以上という計算になるのか?

 実際にはそこまでの人数ではないのかもしれないが、それでもかなりの数がいるのは間違いない。

 全員が全員食堂を利用する訳ではないだろうが、それでも半分……いや、2割くらいが食堂を利用するとしても、とてもではないが食堂に入り切らず、パンクするだろう。

 そうなると、最悪空腹で午後の試験と……何より、それが終わった後の実技試験を受けなければならない以上、学食を開く訳にはいかなかったらしい。

 

「うわ……アクセルのお弁当凄いね」

 

 隣の席の三奈が、俺の弁当を見てそう言ってくる。

 まぁ、無理もないか。

 見た感じかなり豪華な……重箱入りの弁当なのだから。

 これは龍子が持たせてくれた弁当だ。

 もっとも、別に龍子の手作りという訳ではなく、弁当業者に頼んで用意して貰った奴だが。

 その値段、なんと4980円。

 え? 弁当でその値段? と思わないでもなかったが。

 あるいは重箱の値段も込みなのかと思ったが、どうやらこの重箱は返却するらしい。

 つまり4980円というのは純粋にこの料理の値段な訳だ。

 当然ながらそんな値段だけに、弁当の中身もかなり豪華だった。

 ……豪華だったが、豪華だからこそこの教室の中でどうしても目立ってしまっていたが。

 受験の為か、昼食は他の場所で食べるのではなく、テストを受けている教室の、自分の机で食べるようにと指示されている。

 その為、俺の弁当は嫌でも目立つ。

 ……不幸中の幸いなのは、俺の席が前の方なのであまり人には見られないといったところか。

 ただし、三奈は隣の席なので俺の弁当をしっかりと見る事が出来ていたが。

 昼休みで昼食を食べている現在、俺が三奈と話ながら食事をしているように、近くにいる者達と話をしながら食べている者もいるし、午後の学科試験のテストの成績を1点でも上げようと、参考書を見ながら食べている者もいる。

 中には、スマホで動画配信サイトを見ながら食べている者もいたりするが。

 

「俺の後見人が用意してくれた弁当だよ」

「後見人……ふーん、そうなんだ。羨ましい」

 

 親ではなく後見人と言ったところで何かを察したのだろう。

 三奈はその辺には突っ込まず、そう言ってくる。

 ちなみにそう言う三奈の弁当は、女としてはかなり大きめの弁当箱だ。

 とはいえ、龍子や優、ねじれの食事量を知っている身としては、その辺について特に何とも思わない。

 一般的な女の場合は、本当にそれで足りるのか? と思うような量の弁当しか食べなかったりする。

 それこそ男にしてみれば、ちょっとしたおやつ程度の量しかない弁当。

 だが、この世界の女は……というか、ヒーローとして身体を動かしている女は、それこそかなり食べる。

 実際、ヒーローとして身体を動かしている以上、それだけ食べないと痩せていく一方なのだろう。

 ……ある意味、ヒーロー活動はダイエットに最適なのかもしれないな。

 もっとも、動く以上に食えば太るのは当然だが。

 実際、龍子の事務所で事務員をしている女は、俺が想像しているような、本当にそれで足りるか? といった程度の量しか食べていないし。

 そして三奈もまた、本気で雄英の合格を狙っている以上、ヒーローを目指す者として、しっかりと身体を鍛えてきたのだろう。

 その証拠が三奈の弁当だった

 

「少し食べるか?」

「え? いいの?」

 

 じっと弁当を見る三奈の視線に負けたようにそう言うと、三奈は申し訳なさそうにしながらも、嬉しそうな様子を隠そうとしない。

 三奈にしてみれば、それだけ俺の弁当が気になっていたのだろう。

 

「そんな視線で見られるとな。……ほら」

 

 そう言い、重箱を……おかずの入っている方の重箱を三奈に渡す。

 すると、それを受け取った三奈は迷い……最終的に選んだのは、だし巻き卵だった。

 箸で摘まむと、そっと口に運ぶ。

 すると次の瞬間、その表情が嬉しそうな笑みを浮かべる。

 

「んんんんんんー! 美味しい……」

 

 どうやら口に合ったらしい。

 卵焼きというのは、目玉焼きに何を掛けるかの論争程ではないが、甘いかしょっぱいかで派閥がある。

 ちなみにこのだし巻き卵は甘い卵焼きだ。

 俺はどっちかと言えばしょっぱい方が好きだが、甘い卵焼きも嫌いじゃない。

 ある意味、甘い派としょっぱい派の論争における勝利者と言ってもいいだろう。

 もっともどちらも美味く食べられるという俺は、甘い派、しょっぱい派の双方にしてみれば双方から敵だと認識されてもおかしくはなかったが。

 ちなみに龍子が用意してくれたこの重箱は、だし巻き卵が入っている事からも分かるように基本的には和食だが、エビフライやハンバーグ……それに受験ということでカツも入っている和洋折衷だ。

 

「アクセルのそのお弁当を食べた後だとちょっと気後れするけど……その、私のお弁当も食べる?」

「まぁ、くれると言うなら欲しいけど。……いいのか?」

「いいの、いいの。アクセルのお弁当だけ貰ってばかりだと、不公平でしょ? それに……その、こう言っちゃなんだけど、雄英に受験に来てこうして気軽に話せる人がいるとは思えなかったし」

「そうか?」

 

 さっきも教室の中を確認した時に見たけど、多くの者が弁当を食べているが、それなりに近くにいる者同士で話している。

 もっとも、俺と三奈は『あ』行なので他の席と比べると近くにいる受験生は少ないし、その少ない受験生達も参考書を見ながら食事をしてるので……そう考えれば、三奈の言葉は理解出来る。

 

「俺は1人で来たけど、同じ学校の生徒はいないのか?」

「いないね。どうやら同じ中学の受験生はそれぞれ別の教室にされてるみたい。……まぁ、分からないではないんだけどね。平等って事を考えれば、そういう風にするのは理解出来るし」

 

 なるほど。

 俺は公安からの依頼で受験をしてるし、異世界から転移してきたので、当然ながら同じ中学の仲間はいない。

 ただ、他の大多数は当然ながら多くの中学から来ている訳で……そう考えれば、三奈の言いたい事も分からないではない。

 ……ちなみに、試験監督をしている者達にも俺が公安の関係者だというのは伝わっているらしく、この教室で試験監督をしている者達は俺を何とも言えない微妙そうな様子で見ていた。

 あれが雄英の教師なのか、あるいは臨時で雇われたバイトなのか、もしくは他の高校から派遣された教師なのか……そういうのは分からないが、俺を見る目は普通の受験生を見る目ではなかった訳だ。

 

「だから、俺が隣にいてラッキーだった訳だ」

 

 そんな俺の言葉を聞いた三奈は、ふと何かを思いついた様子で口を開く。

 

「うん。でも、それを言うのならアクセルも私が隣にいてラッキーだったでしょ? こんな可愛い子と知り合いになれたんだから」

「そうだな。三奈が隣にいたのは俺にとっても嬉しかった」

「え……ちょっ、ちょっと、幾ら何でもそんな……もう!」

 

 何故か三奈は俺の言葉に照れた様子で、弁当を口に運ぶ。

 なるほど。恐らく本人にしてみれば、今の言葉を聞いた俺が照れるとでも思ったのだろう。

 普通の中学生なら、そうかもしれない。

 雄英に来た時に見た、デクと呼ばれていた中学生なんかは、三奈にそんな風に言われれば顔を真っ赤にして何も言えなくなっていただろうし。

 そんなのを期待した三奈だったが、俺があっさりと同意して返したので寧ろ三奈の方が照れてしまったのだろう。

 けど、そうだな。俺をからかおうとした以上、こっちも相応にからかってもおかしくはない筈だ。

 

「三奈のピンクの肌はエキゾチックで魅力的だし、話していると楽しいから元気も貰える。それに三奈の顔立ちは整っていて、美少女と呼んでもおかしくはないから、そういう三奈とお近づきになれたのは嬉しい。目も普通と違って黒目と白目が逆になってるけど、それが見ている方にしてみれば目を惹かれる。それに……」

「待った待った待った! ちょっとストーップ! ごめん! 私が悪かった! アクセルをからかおうとした私が悪かったから、もう止めて!」

 

 俺の言葉を遮るように、三奈は弁当を食べる手を止め、大きく手を振る。

 ……そんな三奈にしてやったりと思ってそれ以上の美辞麗句を口にするのを止めると、何故か教室にいた多くの者が俺に視線を向けていた。

 中には勇者だとか言ってる奴もいるが、俺はどちらかといえば大魔王側だぞ?

 実際、UC世界では月の大魔王の異名があったり、Fate世界ではアークエネミーのクラスだったし。

 

「そうか? まぁ、三奈がそう言うのなら止めておくけど。……見た感じだと、注目を浴びているみたいだし」

「え? ……ううううううう!」

 

 俺の言葉に教室の中を見回す三奈。

 すると俺達のやり取りを見ていた者達はそっと視線を逸らしたり、あるいは興味津々といった様子で視線を向けて来たりする。

 それに気が付いた三奈は、呻きながら俯く。

 うーん、ちょっとからかうつもりだったんだが。

 三奈が最初に俺に向かってからかってこようとしたので、その仕返しのつもりだったんだけど、ちょっとやりすぎてしまったらしい。

 とはいえ、俺にしてみれば別にどうしてもからかいたかったとかそういう事ではなく……うん。まぁ、ちょっとやりすぎてしまったらしい。

 とはいえ、話してみて分かったが、三奈はかなり話しやすい相手だ。

 また、元気一杯の美少女といった感じで、中学校でも男女共に人気があったのは間違いないだろう。

 そうなると、当然ながら男から告白される事もそれなりにあったと思うんだが。

 

「何だ、こういうのに慣れてないのか?」

「……恋バナは好き」

 

 いや、この場合それはちょっと違うんじゃないか?

 そう思ったが、三奈にしてみれば恐らく同じような事だったのかもしれないな。

 ともあれ、何をするにしても今の状況のままというのは、三奈にとっては悪いな。

 

「そういうのは、雄英に入学してから女同士でやってくれ」

 

 恋バナが好きという三奈だったが、まさかここで俺の恋バナをする訳にはいかないだろう。

 何しろ俺の恋バナと言えば、それこそレモンを含めた多くの恋人達との事になってしまう。

 ホワイトスターにいる時は毎晩のように行われている夜の行為を話そうものなら、それはもう恋バナではなくエロい話だろう。

 ……いやまぁ、三奈の年齢を思えばそういう話にも興味があっておかしくはないと思わないでもないが。

 とはいえ、今この場で話せるような内容ではないし……何より、10代半ばの今の俺の姿でそういう事を話しても、実際の話ではなく俺の妄想だと思われかねない。

 

「うー……分かってるわよ」

 

 そう言いながら、ようやく三奈は顔を上げる。

 尚、そんな三奈の姿にまだこっちを見ていた者達の多くはそっと視線を逸らす。

 中には俺に嫉妬の視線を向けている男も何人かいたが。

 個性が普通に存在するこの世界において、異形系であろうと三奈は美少女といった表現が相応しい顔立ちをしている。

 また、元気で話しやすいというのもポイントが高いだろう。

 それに、2月の冬服だが、その制服の上から見ても三奈はそれなりに……取りあえずこの年代の平均以上に女らしい身体付きをしているのは間違いない。

 そういう意味で、三奈は男達にとっても人気があるのは間違いない。

 勿論、この教室にいるのはあくまでも雄英の受験の為にやって来た面々だ。

 それを思えば、三奈に言い寄ろうと思うような者は……まぁ、傍から見れば、その三奈と仲良くしていて、さっきのように三奈の魅力的な部分を口にする俺は、そういうタイプに見られているのかもしれないが。

 

「なら、後は昼食を終わらせてから、残りの学科試験をやって……そして実技試験で合格するだけだな」

 

 そう言うと、三奈は気合いを入れ直すように頷く。

 

「そうだね。どういう実技試験なのかは分からないけど、そっちでカバー出来る分、ラッキーって思っておかないと。……私の個性が使える内容だといいんだけど」

 

 言葉の途中で少しだけ不安そうな様子を見せる三奈。

 実際、その気持ちは分からないでもない。

 実技試験をやるというのは聞いているものの、それがどういう内容なのかは分かっていないのだから。

 ねじれにも聞いてはみたが、この実技試験は毎年のように内容が違うらしい。

 つまり、一昨年にやったねじれ達の入学試験と今年の俺達の入学試験では、当然のようにその内容が違うのだ。

 ……いやまぁ、もしかしたら何らかの理由でねじれ達の時と同じ試験内容だったりしてもおかしくはないのだが。

 その内容について、実際に試験をやる時まで分からないので、前もって何らかの準備をしておくとか、そういうのが出来ないのは残念だった。

 

「雄英の受験で行われる実技試験なんだ。そう考えれば個性をしっかりと見る試験になると思うけどな」

 

 そう、俺は三奈を励ますのだった。

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