転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4318話

「うわ……凄い人」

 

 三奈の声に、俺もだろうなと頷く。

 この講堂には、現在受験生が全て集まっていた。

 三奈の言う事も分かるが、寧ろ俺にしてみればこれだけの人数が入る事が出来る講堂を持つという事の方が驚く。

 何しろ、見渡す限り人、人、人。

 この全てが雄英の受験を受けにきた者達なのだから。

 とはいえ……俺が当初予想していたよりも少ないか?

 競争率300倍とかということで、数万人くらいは受験生がいるのかと思ったのだが。

 こうして見る限り、数千……いや、何とか1万人に届くくらいのように思える。

 実際に数えた訳ではないので、もしかしたら実は数万人いるのかもしれないが。

 

「これ全部が競争相手だと考えれば……」

「ワクワクするね!」

 

 俺の言葉に三奈はそう繋げる。

 あ、そうなんだ。

 学科試験の時の様子からすると、これだけ競争相手がいると考えれば怖がったりしてもおかしくはないと思ったんだが……

 それとも、あれは学科試験の時だけの気持ちだったのか?

 まぁ、三奈は見るからに勉強よりも身体を動かす方が得意といったタイプだし、そう考えればそこまで不思議ではなかったりする……のか?

 

「そうだな。頑張れ。学科試験の方で悪かった点数はこっちの実技試験でカバーするしかないんだし」

「……分かってる。やる気満々だよ」

 

 これ、三奈の様子を見る限りだと本当に学科試験の結果は悪かったっぽいな。

 俺が知る限り、三奈は雄英に本気で合格するつもりでやってきている。

 であれば、まさか実技試験だけで受験に受かろうとは思っていない筈だ。

 雄英が日本でもトップクラス……いや、今まではトップクラスと言ってきたが、もうトップでいいか。

 体育祭の事を考えれば、雄英は士傑よりも上だというのが俺の認識なんだし。

 ともかくそういう訳で、ヒーロー科という意味では日本のトップの高校であるだけに、雄英は学科試験もそうだが、より実技試験を重視していると思うべきだろう。

 勿論30点とかだと論外だが、そこまでではない限り、学科試験のフォローは実技試験で出来るというのは、間違いないらしい。

 

「なら、安心だな。……お、どうやら始まるみたいだな」

 

 三奈と話していると、教壇の上に誰かが上がってくる。

 いや、誰かではない。

 それなりにヒーローについて調べているので、それが誰なのかは知っていた。

 プレゼント・マイク。

 若手の中でも実力派のヒーローとして知られている人物だ。

 ……いや、プレゼント・マイクは確か今年で30歳? 正確には覚えてないが、年齢的にはそのくらいだった筈だ。

 それを若手と言うのはどうなんだろうな。

 もっとも、No.1ヒーローのオールマイトが50代くらいだとすると、30歳はまだ若手といった表現で間違いないのかもしれないが。

 そうなると龍子はプレゼント・マイクよりも更に若いし、優はそんな龍子よりも更に若い。……いや、止めておこう。女にとって年齢というのは地雷中の地雷だ。

 それこそ体重と同じくらいに。

 だからこそ、そんな事を考えていると知られれば、龍子や優に一体どのような目に遭わせられるのか、分かったものではない。

 わざわざ口にしなくても、女は女の勘とかいう理不尽な能力を使って、こっちの考えを読んでくるしな。

 そんな風に考えていると、プレゼント・マイクは教壇の前に立ち……

 

『今日は俺のライヴにようこそ、エヴィバディセイヘイ!!』

 

 個性なのか、あるいはサポート用の道具を使ってなのかは分からなかったが、とにかく大量の生徒のいる講堂の隅から隅までプレゼント・マイクの声が響き渡る。

 なるほど、これがプロヒーローの個性。

 雄英は日本最高のヒーロー科という事もあってか、教師は基本的に全員がプロヒーローだって話だしな。

 とはいえ……いきなりそんな風に声を掛けられても、反応出来る者はいない。

 あるいはどういう風に反応すればいいのか分かっていても、このような大勢の中で反応するのは恥ずかしいという思いの者もいるのだろうが。

 プレゼント・マイクは耳に手を当て、誰かが返事をしてくれると待っていたようだったが……結局誰も返事をしない。

 それでもテンションが下がることなく、シヴィとか言ってる辺り、プロだな。

 

『実技試験用の概要をサクッと説明するぜ! アーユーレディ!?……YEAHH!!!!』

 

 と、再度盛り上げようとしても、相変わらず反応する者はいなかった。

 というか……まぁ、今更の話ではあるのだが、そもそも受験生達にそんな風に言っても反応する者はそう多くはいないだろう。

 もっとも、これだけの人数が集まっているのなら1人や2人くらいはそういう奴がいてもいいとは思うけど。

 特に記念受験に来た者達にしてみれば、プレゼント・マイクと接する機会なんてこれが人生で最後だったりするかもしれない訳で。

 プリントが配られると、プレゼント・マイクの説明が始まる。

 実技試験は、街中――当然本当の街中ではなく、雄英の敷地内に用意された場所らしい――で10分の模擬市街地演習。

 街中には仮想ヴィランが3種類いて、それぞれに1P、2P、3Pと点数があり、仮想ヴィランを行動不能にする事でポイントを稼ぐ、と。

 ルール的にはそんなに難しくないな。

 ……ただ、プリントには4種類の敵のイラストが描かれている。

 眼鏡を掛けた受験生が質問をしたが、どうやらそれはお邪魔虫で倒す……行動不能にしても0Pらしい。

 なるほどと頷いていると、質問をした眼鏡の生徒が他の生徒に絡んでいた。

 というか……他の生徒というか、あれは朝に見た奴だな。

 デクだったか?

 朝にもかっちゃんとやらに厳しく当たられていたのを思えば、妙に絡まれやすい性格をしてるな。

 というか、デクの隣にはそのかっちゃんもいるし。

 ふと、こうして絡まれているのを見て疑問を抱く。

 いや、かっちゃんとやらに絡まれているのは、見た感じ今も隣にいるので、そういう意味ではいつもの事なのだろうが。

 だが、眼鏡を掛けた生徒に絡まれるというのは……何だか、主人公っぽくないか?

 内気な主人公というのは……うーん、俺の経験からすると、SEED世界のキラとか?

 もしくはナデシコ世界のアキトは……寧ろ熱血系か。

 UC世界のアムロは内気というか、内向的な感じだったな。

 もっとも、それは俺との接触によってトラウマを抱えたからなのかもしれないが。

 もし俺が介入していない、元々の原作では一体どうだったんだろうな。

 そう思ったが、アムロと学校が一緒だったフラウとかカイとかハヤトとかから話を聞いた限りだと、元々ああいう性格だったらしいし。

 ともあれ、あのデクというのが主人公という可能性も……まぁ、考えておいた方がいいのだろうと思っておく。

 そんな事を考えている間にプレゼント・マイクの説明やら何やらは終わる。

 

『俺からは以上だ! 最後にリスナーに我が校の校訓をプレゼントしよう。かの英雄ナポレオンは言った。真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者だと。Plus Ultra……更に向こうへ。それでは皆、良い受難を』

 

 その言葉を最後に、俺達はそれぞれ番号で指示された会場にそれぞれバスで向かう事になる。

 にしても、Plus Ultraか。

 ねじれから聞いてはいたが、どうやら雄英にとっては大きな意味を持つ校訓らしいな。

 

「あー……アクセルとは別の会場だね」

 

 三奈が残念そうに言う。

 何だかんだと、一緒に試験を受けて弁当を食べて、こうして一緒にプレゼント・マイクの説明を聞いたりと、あの教室にいた受験生の中で俺が一番仲良くなったのは三奈だったしな。

 それは三奈にとっても同様だったのだろう。

 

「まぁ、実力を見たいからこそ、同じ教室にいた者達とか、あるいは同じ学校の生徒達は別々の会場にしたのかもしれないな」

 

 教師達にしてみれば、これはあくまでも試験だ。

 そうである以上、生徒の実力を見たい。

 最初から知り合いの者達同士で協力して実技試験を受けるのは止めて欲しいと思ったのだろう。

 最初から知り合い同士が固まっていなければ、協力するにしても皆が初顔合わせといったところだし、そういう意味では公平なのかもしれないな。

 

「じゃあ、また後でね。……アクセルも頑張って」

「ああ。次に会う時は入学式の日って事になるといいな」

「それはそれでちょっと寂しいから……あ、そうだ。これやってる?」

 

 不意に三奈が見せてきたのは、スマホの画面。

 俺もインストールしてある……というか、優に進められてインストールしたアプリだった。

 

「ああ、やってる」

 

 そう言うと、素早く操作をしてメッセージアプリ、LINのアドレスを交換する。

 この手のアプリって……いや、まぁ、いいか。この世界はこの世界で色々と特徴があるんだろうし。

 そんな訳で、三奈とメッセージアプリのLINでやり取りが出来るようになる。

 

「じゃあ、私はそろそろ行くから」

「ああ。次に会う時は入学式の日って事になるといいな」

「……あのね、アクセル。さっきと全く同じ言葉を言うのはどうかと思うんだけど?」

「分かってるよ、わざとだ、わざと。……何か三奈ってからかいたくなるんだよな」

「もうっ! 私をからかってたせいで雄英に落ちたとか言ったら承知しないからね!」

 

 そう言うと、三奈は自分のバスに向かう。

 それを見送り、俺もまた自分のバスに向かうのだった。

 

 

 

 

 

 バスの移動中は、多くの者が黙っている。

 何人かは話をしている者もいるが、周囲に聞こえないように小声で話をしているらしい。

 もっとも、混沌精霊の俺の耳にはしっかりと聞こえてるんだが。

 話を聞く限り、どうやら協力して実技試験に挑もうとしているらしい。

 とはいえ、あまり上手くいっていないようだったが。

 ……当然か。

 記念受験ではなく、本気で受かりに来た者達にしてみれば、この状況で他人と協力するというのは、自分にとってもマイナスになる可能性がある。

 具体的には、自分で倒せる敵を他人に譲るといったような事になれば、それは自分のポイントを失うという事を意味していた。

 あるいは協力を持ち掛けている男が最初から自分がサポートに回るといったような事を言っていれば、それを受けるような者もいたかもしれないが。

 だがそうなると、当然ながら協力を持ち掛けた奴のポイントが減る。

 それによって雄英に合格出来なければ、意味はない。

 ん? あ、でもそうだな。雄英のヒーロー科というのは、ヒーローを育てる学科だ。

 そしてヒーローというのは、ヴィランを倒すといった行動が一番目立つものの、それ以外にも災害救助とかそういうのもある。

 って事は、この試験で見られるのは戦闘力だけじゃないとか?

 いや、考えすぎか。

 ヒーローの仕事にヴィラン退治以外のものがあるのは事実だが、それでもヴィラン退治が一番多いのも事実。

 そうである以上、ヴィランと戦う時の戦闘力……いや、これは受験なんだからその素質があるのかどうかを見る為の今回の試験と考えた方がいい。

 まぁ、それでも俺のやるべき事は変わらない。

 ……いや、やっぱり変わるか?

 俺の入学目標が生徒達の壁として立ち塞がることである以上、当然ながら入学はトップ……主席になるのがいいだろう。

 学科試験も、全教科満点とはいかないだろうが、満点は幾つかあるし、それ以外でも90点以上は確実にゲットしている。

 1位とは断言出来ないが、それでも10位以内……いや、5位以内に入っている自信はあった。

 だが、雄英の受験において重要なのは、当然ながらこの実技試験だろう。

 であれば、俺としてはこの実技試験でもトップを取る必要がある。

 もっとも、雄英の試験を受けに来る者、そんな中でも本気で合格するつもりの受験生の中には、この実技試験でトップになろうと考えている者も多いだろうが。

 1P、2P、3Pか。……どのくらいの点数を取れば合格ラインで、どれくらいの点数を取ればトップなんだろうな。

 何しろ受験生が多いだけに、その辺の判断が非常にしにくい。

 50P? 100P? 150P? 取りあえず200Pくらいとっておけば問題はないか。

 そうなると能力の使い道にも悩むな。

 正直な話、俺が混沌精霊としての能力を使えばトップになるのは容易だろう。

 また、龍子達に、そして公安に見せた程度のものでも楽勝なのは間違いない。

 それどころか、魔法とか炎獣とかそういうのを使わず、身体能力だけでも対処は可能だろう。

 さて、どうするか。

 迷うところだが……まぁ、成り行きを見ながらいくしかないだろうな。

 そもそもこのバスに乗ってる他の受験生達……言ってみれば俺のライバルと呼ぶべき者達がどんな個性を持っているのかも分からないのだから。

 であれば、まずは他の面々の個性を見て、それで問題ない範囲で俺の力を発揮すればいい。

 雄英の教師に公安から俺の情報がどこまで伝わっているのかは分からないが、実力を全て見せない……隠した上で、それでも1位になるというのが理想的ではあるんだけどな。

 そう考えていると、やがて目的地に到着したのか、バスが停まるのだった。

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