転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4321話

 吹き飛んでいった、0P。

 その方向は0Pが来た方向なので、恐らく大丈夫だろうとは思うが……それでもちょっとやらかしてしまったか? と思う。

 もっとも、実技試験でこういうのを行っている以上、何かあったら即座に対応出来るようになっているだろうと考えても間違いではないのだが。

 とにかく俺にとって現在の状況を考えれば、葉隠の無事を確保したという事だけだ。

 安堵しながら振り向くと……そこには完全に固まった瀬呂と、上半身を瓦礫の中から出して固まっている拳藤の姿があった。

 ……無理もないか。

 瀬呂や拳藤にしてみれば、俺が何をしたのかは全く理解出来ていないだろう。

 だが、俺にしてみればそれはそれで構わないと思う。

 今は俺が吹き飛ばした0Pの件で騒ぐよりも、葉隠の件だ。

 

「おい、いつまでも固まっているな。葉隠はどうしたんだ?」

『……』

 

 そう聞くも、やはり2人は固まったまま。

 今の俺の行動が、そこまで理解出来なかったらしい。

 とはいえ、俺にとってはそこまで特別な事ではないのだが。

 実際、見掛け程の重量とかもなかったし。

 ただし、それはあくまでも俺が混沌精霊だからこそだ。

 実際、1P、2P、3Pの敵と比べても間違いなく装甲は厚かった。

 ドラゴンとなった龍子や、巨大化した優辺りならどうにか出来たかもしれない。

 ねじれは……どうなんだろうな。

 ねじれの個性は空を飛んだり遠距離攻撃をしたりと万能性は高いものの、純粋な攻撃の威力となればどうしても龍子や優に劣ってしまう。

 とはいえ、ビッグ3は確実と言われているねじれだ。

 別に真っ正面からどうにか出来ないからといって、0Pに対処出来ない訳ではない。

 それこそ正面から対処出来ないのなら、それ以外の手段でどうにかすればいいのだから。

 そんな風に思いつつ、俺は瀬呂達のいる場所に戻る。

 

「ちょっとー。私、いつまでここにいればいいのー? もう出たいんだけどー!」

 

 動きが止まっていた瀬呂や拳藤を動かしたのは、拳藤の下半身がまだ入っている瓦礫の中の葉隠の声だった。

 

「っ!? あ、ああ、ごめん。ちょっとその……信じられないのを見たから、動きが止まってしまったんだ」

「あー……うん。そうだな。取りあえず……」

 

 瀬呂がそう何かを口にしようとした、その時……

 

『終了だぁああっ! 実技試験、これにて終わったぜ! 怪我をしてる者達は、その場で待っているように。すぐリカバリーガールが向かうからよぉっ!』

 

 プレゼント・マイクの声が聞こえてくる。

 どうやら実技試験はこれで終わりらしい。

 点数はそれなりに……いや、結構稼いだと思うが、最後の0Pとの戦いがどういう風に評価されるかだな。

 0Pを相手に逃げなかった事がマイナスとなるか、それとも0Pを倒した事がプラスとなるか。

 普通に考えれば、0Pとはいえ、あれだけ巨大な敵を倒したのだ。

 成績にプラスされてもおかしくはないんだが……けど、0Pだしな。

 じつは0Pじゃなくて、100Pくらいの敵だったけど敢えてそれを知らせてないなかった……そんな可能性もあるのか。

 

「どうやら終わったみたいだな」

「……そうだけど。そうだけど、アクセル……お前、一体何なんだよ!」

 

 俺の言葉に、瀬呂がそう叫ぶ。

 

「まぁ、俺の件はともかく……まずは葉隠を出さないとな。ほら、拳藤」

「……あ、ありがと」

 

 差し出した俺の手を握る拳藤の身体を瓦礫の隙間から出す。

 別にどこかに詰まっていたとかそういうのではなく、そこから出ようとしたところで俺が0Pを破壊した光景を見て動きが止まっていたので、特に苦労する事もなく拳藤を出す事が出来た。

 

「気にするな。それよりも、葉隠だが……」

 

 葉隠の言葉を信じるのなら、全裸の筈だ。

 個性の関係で全裸になってるって話だったが、具体的に何がどうなってそうなったのかは分からない。

 分からないが、それでも本人がこうして全裸だと言っているのだから、こちらとしては拳藤と同じように手を出して瓦礫の中から引っ張り出すといった事は出来ない。

 ……とはいえ、瀬呂のテープで固めていても、いつ崩れるか分からない以上、出来るだけ早く引っ張り出す必要があるんだよな。

 

「あ、私は出してもいいよ。全裸だけど見えないから!」

 

 俺の言葉に、瓦礫の中からそう声が聞こえてくる。

 

「……見えない?」

「うん、そう。私の個性は透明だから」

「あー……なるほど」

 

 葉隠の言葉にそう返しながらも、拳藤に視線を向ける。

 葉隠の言葉が事実なら、俺も特に問題がないとは思う。

 思うのだが、相手が全裸ともなれば本人の言葉を素直に信じる訳にいかないのも事実。

 もし……本当にもしの話だが、実は葉隠の個性は透明でも何でもなく、単純に葉隠がそういう趣味の持ち主、いわゆる露出狂の類だという可能性も否定は出来ない。

 だが、拳藤は俺に視線を向けられると真剣な表情で頷く。

 

「大丈夫、私が確認したから」

 

 俺と……さっき俺に向かって叫んだ瀬呂も、そんな拳藤の言葉に安堵する。

 どうやら俺達が助けたのは露出狂ではなく、透明の個性を持つ葉隠だったらしい。

 

「ちょっと、何か妙な事を考えてない?」

 

 俺と拳藤の会話に何かを感じたのか、瓦礫の中からそんな声が聞こえてくる。

 

「いや、何でもない。それより……ほら、俺の手が見えるか?」

「え? あ、うん。見えるよ」

「じゃあ、それを掴んでくれ。ゆっくりと引き出すから」

 

 もし葉隠が全裸だったら、まさか地面を引きずって引き出すといった訳にもいかないだろう。

 生身であれば、擦り傷とかそういうので結構痛い目に遭ってしまうし。

 ……というか、そう考えると葉隠は結構ギリギリだったんだよな。

 何しろ裸で……多少なりとも身体を守ってくれる服を着ないで瓦礫の中に埋まっていたのだから。

 下手をしたら、それこそ瓦礫の破片とかで怪我をしていた可能性がある訳だ。

 そう思えば、葉隠はかなり幸運に恵まれた人物なのは間違いない。

 本人がどう思っているのかは分からないが。

 

「うん、行くよ」

 

 その言葉と共に、手が何かに握られる。

 いや、何かと言われても葉隠の手なのは間違いないのだが。

 そして俺の手を握る葉隠の手は確かに透明だった。

 拳藤の言葉が事実だったという訳だ。

 いや、あるいは拳藤の言葉が本当だとしても、俺には見えていたかもしれないという思いがあった。

 何しろ俺は人間ではなく混沌精霊なのだから。

 そんな混沌精霊の目なら、もしかしたら……本当にもしかしたらだが、葉隠の姿が見えていた可能性もあるのだ。

 その辺については、どうなるか俺にも分からなかったんだが。

 だからこそ、こうして最初に手を見た訳で。

 俺の手を握る葉隠の手は全く見えない。

 そんな葉隠の手を引っ張り、慎重に……出来る限り葉隠に傷を付けないようにしながら、引っ張り出す。

 そうして、無事に引っ張り出すと……

 

「ありがとー!」

 

 葉隠が元気そうな様子で叫ぶ。

 だが……なるほど。こうして改めて見てみても、手以外の場所も全てが透明だ。

 喜んでいる声が少し上下しており、地面の土埃が微かに舞っているのを見れば、どうやらジャンプして喜びを露わにしてるらしい。

 

「えっと……ねぇ、葉隠。喜ぶのはいいけど、取りあえず何か着たら? さすがに男の前で全裸ってのは……」

 

 何を考えたのか……ナニを考えたのか、拳藤の顔が薄らと赤い。

 ふと瀬呂に視線を向けると、瀬呂もまた頬が薄らと赤くなっていた。

 拳藤の言葉で、改めて葉隠が現在裸だというのを思い出したんだろうな。

 

「え? あ、ああ。ごめんね。でも……あ、あった!」

 

 そう言うや否や、葉隠の声が離れていく。

 どうやら何かを……多分服を見つけたのだろう。

 そして数分がすると服を着た葉隠が戻ってくる。

 服とはいえ、ジャージだが。

 動きやすい格好と前もって指定があったので、おかしな事ではない。

 ただ、透明という個性の為に葉隠の着ているジャージから出ている手足や、何よりも顔の部分が見えない。

 透明……か。

 結構苦労してそうな個性だよな。

 ただ、葉隠の言動にはそういうのがなく、明るい性格をしてるのは間違いない。

 異形系というのは都会ならともかく、田舎の方ではかなり酷い差別に遭っていたりするらしいが、そういう意味では葉隠はマシなのだろう。

 いやまぁ、葉隠の出身がどこなのかは、生憎と俺にも分からないが。

 もしかしたら田舎の出身で、差別に遭ったのを隠して元気なふりをしているだけなのかもしれないし。

 

「ふぅ、これで安心だね。えっと、その……3人とも、私を助けてくれてありがと。ただ、その……私を助けたせいで、ポイントが足りなかったりしない?」

 

 恐る恐るといった様子で葉隠が聞いてくる。

 そんな葉隠の言葉に、俺は拳藤と瀬呂に視線を向ける。

 その2人も、俺に視線を向けてきた。

 3人の中で何故か俺に代表されるような感じで口を開く。

 

「取りあえず俺の方は問題ないな。ポイントは十分に入手している」

 

 そう言うが、俺は0Pについてもやはり何らかのポイントになっているだろうとも思っていた。

 何しろ雄英は日本で最高のヒーロー科を有する高校だ。

 そうである以上、0Pを出してきたのには何らかの意味があると思うのは、俺の考えすぎではないと思う。

 もっとも、それが実際にどのように影響してくるのかというのは、それこそ雄英の教師達でないと分からないだろう。

 

「俺の方も、ポイントはそれなりに入手してるから問題ないぜ。ロボを撃破するんじゃなくて、行動不能にすればいいだけだったから、それなりに相性が良かった」

 

 そう言い、自慢げに笑みを浮かべる瀬呂。

 なるほど、瀬呂の肘から放たれるテープは、葉隠が閉じ込められていた瓦礫を固定してるのを見れば分かるように、相手を拘束するという意味ではかなり便利だ。

 問題なのは、拘束しか出来ず、本人が言ってるように撃破するのは難しい事だろう。

 もっとも、実技試験では行動不能にすればいいだけなので、瀬呂が言うように今回の実技試験では十分ポイントを稼げたのだろう。

 

「私もそれなりにポイントは稼いでいるから、問題はないかな」

 

 拳藤が自分の手を見て、そう言う。

 拳藤の個性は手を大きくするというものだ。

 破壊力という点では、相応のものがあるのだろう。

 ……もっとも、あくまでも手が大きくなるだけなら、ロボを破壊する度に手を……拳を痛める事になる。

 だが、こうして見る限り怪我はしていないので、手が大きくなると同時に頑丈になるのか、それとも手を痛めないようにしながらロボを倒したのか。

 その辺りは、俺にも分からなかった。

 

「じゃあ、3人ともポイントの方は問題ないんだね」

 

 安堵したといった様子で手を動かし、言う葉隠。

 表情が見えないから、手足を大袈裟に動かす事でその辺を調整していたりするんだろうな。

 

「どうやら俺達の方はいいけど……葉隠はどうなんだ?」

 

 俺、拳藤、瀬呂の3人は問題ない。

 だが、葉隠の場合はどうなのか。

 何しろ葉隠は透明という個性だ。

 相手から見えないというのは大きなメリットだろうが、その代わりという訳ではないが、攻撃力という点では劣る。

 瀬呂のように相手を拘束するような個性もないしな。

 

「うーん……正直なところ、それなりに点数は取ってます! あのロボ、1Pと2Pはサーモグラフィーとかついてなかったから、私を見つけられなかったんだよね。……3Pはサーモグラフィーがついていたから逃げるしかなかったけど」

「なるほど。1Pも2Pも、あくまでも受験生に点数を取らせる為のロボだったんだろうな。3Pはちょっと厳しくなっていたみたいだが」

 

 全裸になった葉隠は、完全に透明だ。

 サーモグラフィーがなければ……あるいは何か特殊な探査装置がなければ、葉隠を見つける事は出来ないだろう。

 もっとも、それでも葉隠の身体能力は普通な訳で、一体どうやって1Pと2Pを拘束するなり、撃破したのかは分からないが。

 考えられるとすれば、それは見つからないから懐に入り込んでケーブルを引き抜くとか、そういうのをしたとか?

 実際にそれが正しいのかどうかは、生憎と俺には分からない。

 分からないが、それでも葉隠が自信を持ってポイントを稼いだというのなら、俺からは特に何も言う事はなかった。

 

「そうか。なら、受かってるといいな。……まぁ、実技試験以外にも学科試験の方の結果も影響してくるだろうから、そっちも頑張る必要があるだろうけど」

 

 そう俺が言うと、瀬呂が嫌そうな表情を浮かべる。

 葉隠も、両手を上下に動かして、不安を露わにしていた。

 ただ、拳藤の方は……特に衝撃を受けた様子もなく、寧ろ俺の言葉に納得の表情を浮かべていた。

 こうして見ると、多分拳藤は勉強の方も得意なんだろうな。

 さすが姐御系だ。

 

「……アクセル、今何か妙な事を考えなかったか?」

「いや、別に変な事は考えてないぞ」

 

 拳藤が姐御系だと思うのは、決して妙な事じゃないしな。

 そんな風に思っていると……白衣を着た婆さんがこっちにやって来るのが見えた。

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