転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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番外編186話 実技試験の検証

「実技試験の総合成績、出ました」

 

 雄英の教師達……それは即ちプロヒーローと同義なのだが、その教師達が集まっているモニター室の中で、1人の教師が言う。

 多数存在するモニターの中では既に生徒達の姿はない。

 だが、ここにいる教師達が、実技試験に参加していた生徒達の点数をそれぞれ計算していたのだ。

 当然ながら膨大な数の受験生の点数をしっかりと把握するのは難しいのだが、教師として、そしてヒーローとしてしっかりと自分達の仕事をこなしていた。

 また、仮想ヴィランを倒したポイントを数える以外にもやる事がある。

 それこそが、受験生達には知らされていなかった……救助ポイント。

 ヒーローとしてヴィランを倒すのは勿論重要だったが、それと同じくらいに怪我をしてる人、動けない人を助けるといった能力が重要だった。

 それを受験生に教えれば、当然ながら受験生はそこでポイントを稼ごうとするだろう。

 だからこそ、それを知らせず……それでも救助をするという資質を持つ者を見つけるのが、救助ポイントの目的だ。

 

「今年は……かなりレベルが高えな」

「ええ、そうね。軒並みポイントが高いわ。それに……まさか、救助ポイント0で2位になるような子が出るなんて思わなかったわ」

「それとは対照的に、ヴィランポイント0で8位ってのも凄いよな」

「大型ロボに立ち向かう生徒達は以前にもいたけど……今年は2機も破壊されるとは思わなかったわね。こう……何ていうか、スカッとしたわ」

 

 身体に密着し、そのプロポーションを見せつけるかのようなタイツ型のヒーローコスチュームを着た女の言葉に、他の教師達もそれに同意するように頷く。

 

「しかし、この8位の受験生は大型ロボを破壊したのはいいが、その影響で腕を複雑骨折。……これではまるで、個性に発現したばかりの子供……いえ、幼児のように思える」

 

 1人の教師のその言葉に、他の教師達もそれに同意するように頷く。

 ……いや、この中にいた1人、その秘密を知っている者だけが嬉しそうな、残念そうな、悔しそうな……そんな複雑な表情を浮かべていたが。

 

(シット。緑谷少年の身体は以前よりも間違いなく出来上がっている。だが……それでも、やはり時間が足りなかったか)

 

 そんな教師……No.1ヒーローのオールマイトの様子に、何人かが不思議そうな表情を浮かべていたものの、そんな疑問も次の瞬間には消える。

 

「そして……皆も気が付いているだろうけど、1位の子。この子、とんでもないわ。正直なところ、こんな子がいたのなら情報くらいはあってもいいようなものだけど、私は初めて聞いた。それに、名前からして外国人でしょう?」

「それについては、僕から説明するのさ」

 

 そう口にしたのは、人……ではなく、ネズミのような存在。

 ただ、その大きさも一般的なネズミよりも大きく、何より普通に人の言葉を喋っている。

 

「根津校長、このアクセル・アルマーって子を知ってるんですか?」

「そうだよ、ミッドナイト先生。彼は個性事故によって色々とあるらしいんだ。公安から連絡が来て、特別に受験を受けさせたんだけど……凄いとしか言いようがないね」

「公安が?」

 

 根津の言葉を聞いた教師の1人が、嫌そうな様子でそう言う。

 公安がヒーローを纏める立場の組織だというのは分かっているし、重要な存在だというのも知っている。

 だが、公安には悪い噂がある。

 それも噂と片付けるようなものだけではなく、しっかりと調べれば確信こそないものの、限りなく黒に近い灰色であると思える状況証拠はあるのだ。

 

「そう、公安からだね」

 

 根津も公安に対して嫌悪感を滲ませている教師の様子を理解しながらも、気にしない様子でそう返す。

 

「けど、校長。個性事故に遭った人を生徒として雄英で受け入れるというのは……どうなんです?」

「イレイザー先生の言いたい事も分かるけど、これについては公安からの要請ってこともあって、断れなかったんだよ」

「……校長、もしかしてこのアクセルという生徒は公安のスパイとは考えられませんか?」

「いやいや、イレイザー。それはないって。このリスナーがスパイだったら、そもそもここまで目立つような事はしないだろう?」

「まぁ、それはそうだが」

 

 普通に考えた場合、スパイというのは目立たずに地味に活動することが普通だ。

 スパイ映画のように派手なカーチェイスをやったり、ドンパチをやったりといった事は、普通はありえない。

 そういう意味では、問題になっているアクセル・アルマーという受験生の行動はとてもではないがスパイのようには思えなかった。

 なら何かを言われると、分からなかったが。

 

「ガルルルル、ガルルル、ガルルルルルルルルルルルル」

 

 教師の1人、ハウンドドッグはそんな唸り声を上げる。

 このような唸り声を上げるのは、ハウンドドッグが興奮している時だけなのだが、他の教師達は何故ハウンドドッグが興奮しているのか分からない。

 とはいえ、その興奮には苛立ちや怒りといったものがないので、悪い意味での興奮ではないのだろうとは思えたが。

 

「それで……校長、この生徒はどうするんです?」

「勿論合格さ。それも主席だね」

 

 ブラドキングの問いに、根津がそう返す。

 しかし、そんな根津の言葉を聞いた者の何人かは微妙な表情を浮かべる。

 

「校長、それだと問題になりませんか?」

 

 ヒーロー科3年の教師であるスナイプの言葉に、何人かの教師が同意するように頷く。

 だが、根津はそんな教師達を見て、言い聞かせるように口を開く。

 

「いいかい、彼は……アクセル君は、今のところ何も問題がない。公安と繋がりがあるのは間違いないようだけど、リューキュウとマウントレディが後見人となっている。あの2人……いや、リューキュウはトップヒーローの1人で、誠実な人柄だ。そんな人物が後見人になっている以上、私はアクセル君を信じたいと思う」

 

 立派な事を口にする根津だったが、話を聞いていた教師のうち何人かは、誠実な人柄ということでマウントレディの名前を省いたのに気が付く。

 もっとも、マウントレディがまだ新人であったり、ヒーロー活動の際に保険が利かない規模の被害を出したりといった事はそれなりに知られている為、そこに突っ込む者はいなかったが。

 そして逆に、リューキュウが後見人になっているというのは、強い説得力を持っていた。

 何しろリューキュウは人気も高く、ヒーローとしての実力と実績もあり、その美貌もあって、次のヒーロービルボードチャートにおいてはトップ10に入るのではないかと、そう噂されているだけの人物だ。

 そんなリューキュウが後ろ盾になっているのなら、アクセル・アルマーという生徒も大丈夫ではないかと。

 

「いや、けどこの受験生は公安との繋がりもあるんですよね? スパイではないにしろ、少しこう……不安があります」

 

 教師の1人がそう言う。

 公安に対して色々と思うところがあるのだろう教師の言葉だけに、他の教師達もすぐにはその言葉を否定出来ない。

 だが……そんな教師に対し、根津が口を開く。

 

「確かに公安との関係はあるかもしれない。けど、雄英に入学を希望したという事は、ヒーローになりたい筈だ。……それに、実技試験で見た彼の実力を考えると、ここで無理矢理に落とすような事をして、彼がヴィランになったら……それは避けたいのさ」

 

 根津の言葉に、アクセルの合格を阻止したいと思っていた教師は、それ以上何も言えなくなる。

 実際、アクセルが実技試験で見せた実力はとてもではないが受験生が持っているようなものではない。

 ……まさか、アクセルが異世界の存在で、今まで幾つもの世界で起きた戦いに参戦し、戦い抜いてきたとは、さすがに想像出来ない。

 公安もアクセルが異世界から来た存在だとは知っているが、その詳細までは知らない。

 もっとも、リューキュウ、マウントレディ、ネジレちゃんの3人を同時に相手にして勝てるだけの実力を持っているという時点で、普通ではないと認識しているが。

 その3人と戦った模擬戦についても、アクセルに了解を貰った上で録画したのだが、それを見ても何がどうなってそうなるのかが全く分からないと、公安の者達も頭を抱えているというのは、この場にいる誰にも想像すら出来ない事だった。

 もし公安がこの会議の事を知っていたら、寧ろ喜んで手を組む……といった事もあったかもしれない。

 それをこの場にいる者達が喜べるかどうかは別として。

 

「それで……このアクセルの事ですが、個性に書かれているこの混沌精霊って何ですか? 個性の説明には混沌精霊っぽい事が出来ると書いてありますが……そもそも、混沌精霊って何です?」

 

 ガリガリと頭を掻きながら、イレイザーヘッドが言う。

 その点については他の教師達も同様だったらしく、混沌精霊? 聞いた事がない。っぽい事が出来るって事は、リューキュウの個性とかと同じ系統? といったようにそれぞれで短く話を交わす。

 それを見ていた根津が、リモコンを操作して映像モニタに実技試験でのアクセルの様子を映し出す。

 そこに映し出されていたのは、1Pから3Pまでのヴィラン役のロボを手当たり次第に破壊していくアクセルの姿だった。

 一撃の威力が強い。次の敵を見つけるまでの察知能力が高い。次の敵に向かうまでも速度が速い。

 どれもが既に一級品であり……だからこそ、イレイザーヘッドは……いや、それを見た相澤は教師として疑問を抱く。

 

(何故だ? さっきミッドナイト先生も言ったが、もしこれだけの実力者がいるのなら、噂くらいは聞こえてくる筈だ。それこそ静岡だけではなく、日本中のどこにいても)

 

 日本でもトップクラスのヒーロー科という雄英の看板は決して偽りではない。

 これだけの実力者がいるのなら、断片的にでも何らかの情報が入っていてもおかしくはなかった。

 

(公安と繋がりがあるという事は、つまり公安の秘蔵の子供という事か?)

 

 そう思うも、それはそれで疑問を抱く。

 それなら、このアクセルという受験生と、リューキュウやマウントレディとの繋がりはどこで出来たのかと。

 そんな風に考えている間にも、会議室の中で話は進む。

 

「つまり、混沌精霊ってのは増強系な訳か?」

 

 モニタに表示されている映像を見ると、教師の1人が言う。

 実際、アクセルの行動を見るとそのようにしか思えないのも事実。

 ……なお、そんな中でオールマイトだけは厳しい表情を浮かべていた。

 

(公安と繋がりがあるというのなら、奴とは関係ない筈。だが……以前には公安と奴が繋がっていた事もある。そうなると、奴の残党が? いや、だが……それならそれで、やはりこうして目立つのは疑問だ。それに何より、あの力は……今はそこまで全力を出していない。つまり、まだ本気ではないが……もし本気を出せば、OFAにも匹敵するのでは? 緑谷少年……)

 

 オールマイトは自分の弟子……そして後継者の顔を思い出す。

 それでも不幸中の幸いだったのは、アクセル・アルマーという人物に嫌な感じを覚えなかった事だろう。

 もし自分の宿敵だった男の関係者だった場合、そこには強力な嫌悪感や怒りを抱いてもおかしくはなかったのだから。

 

「うーん、それならそれで腕力強化とか、脚力強化とか、もっと総合的に身体能力強化とか、そういう風に個性の説明に書かれてるんじゃないか?」

「つまり……増強系以外にも能力はあるが、まだそれを使いこなせていないという事か」

「ブラドキングの意見はどうだろうな。俺が見たところ、あそこまで増強系を使いこなしてる。なら、他の能力も使えないって事はないと思うぜ?」

 

 プレゼント・マイクのその言葉に、何人かが唸る。

 それはつまり、実力を十分に発揮しないながらも実技試験をトップで……それも2位以下に圧倒的な点数差を付けての、1位であるという事を示していたからだ。

 

「コレハ……ドウ判断スベキカ」

「エクトプラズムが言うように、判断が難しい。舐めプをしたのか、それともこれで十分だと判断したのか、それとも他の力はまだ十分に使いこなせないのか」

「まぁ、その辺について授業が始まってから判断すればいいのさ。……それで、相澤先生。彼はA組にお願いしたいんだけど、構わないかな? 勿論、彼は色々な意味で特別だから、21人目という事にして欲しいのさ」

「……本気ですか、校長?」

 

 相澤と呼ばれた男……イレイザーヘッドは、面倒そうに眉を顰める。

 だが、根津はそんな相澤の様子を気にした様子もなく頷く。

 

「勿論さ。彼を入学させないという選択肢はない。公安云々だけじゃなくて、彼の能力を考えれば、それしかないというのが事実だしね」

 

 そう言われると、相澤も反論出来ない。

 ……何故もう1人の1年の担任であるブラドキングではなく自分なのかと疑問にも思ったが……自分の個性を考えれば、いざという時にアクセルを止められるからだろうと納得出来た。

 実際にはアクセルの能力は個性でも何でもなく、異世界由来の力なので相澤の持つ、見ている相手の個性を使えなくする抹消の個性も意味はないのだが……まさかそのような事情があるとは、相澤も今の時点では想像すらしていなかった。

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