転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4324話

 ファミレスでの打ち上げを終えると、俺は当然のように龍子の事務所に帰ってきた。

 とはいえ、雄英に合格して通うようになる4月からは雄英からそう離れていない場所に部屋を借りる必要があるな。

 幸いなことに、雄英に通うのに掛かる費用については公安持ちだ。

 安いアパートとかそういうのを探さなくても、それこそマンション……いや、億ションと呼ばれるようなビルとか、そういう場所に部屋を借りるといったことをしても、俺の懐は痛まない。

 それどころか、それとは別に月に100万円の報酬があるというのだから、取りあえず余程の事がない限り金に困る事はないだろう。

 今日の打ち上げについても、俺が支払ったし。

 宝石を売った金でかなり余裕があるからこそ出来る事でもある。

 ……まぁ、相手が拳藤、葉隠、三奈、瀬呂といった連中だからこそというのもあるが。

 これでもっと性格の悪い奴がいて、俺を金蔓にするとかそういう風にしようとしていたら、俺も奢ったりはしなかった。

 そういう意味では、やはりあの面子だからこその打ち上げだったんだろうな。

 そんな風に考えながら、龍子の事務所に入っていく。

 

「あら、お帰りー」

 

 するとそんな俺を出迎えた……いや、ソファに座って雑誌を見ながらクッキーを食べているので、出迎えるという表現は正しくないか。

 とにかく軽く手を振ったのは、優だった。

 そして優以外は事務員が数人いるだけだ。

 

「あれ? 龍子とねじれは?」

 

 ねじれは今日もインターンに来ている。

 そもそも今日受験に向かった時、俺を見送ってくれたしな。

 ……まぁ、そういう意味では優も見送ってくれたのだが。

 ただ、帰ってきた時にこうしてだらしない姿を見せられると、ちょっとこう……うん。微妙な気持ちになるのは仕方ないと思う。

 

「あの2人ならちょっと大きな騒動があったとかで、出掛けているわ。私はこの事務所を守る為にここで待機してるけど」

「……ものは言いようだな」

 

 これは、あれか?

 X世界のジャミルじゃないニートが自宅にいるのを、自宅警備員とか、そういう風に言ってる感じじゃないよな?

 

「あら、でも提携関係を結んでいる以上、そのくらいの事はしてもおかしくはないと思わない?」

 

 この提携関係というのは、当然ながら公安経由で結ばれたものだ。

 その理由については言うまでもなく、俺が異世界から来たというのを知っているから。

 ……実際、俺の後見人的な役割もしており、それによって毎月それなりの金額か公安から振り込まれているらしい。

 今はもう公安からの臨時報酬……追加報酬? とにかくそれを貰うのも慣れた様子だったが、俺がこの世界に来た最初の1、2ヶ月程は毎月の臨時収入に上機嫌になっていたのを見た覚えがある。

 

「今の優の状況を見て、それで事務所を守っているとか、そういう言葉に素直に頷けると思うのか?」

「う……それは……」

 

 優も俺の言葉に思うところはあったのだろう。

 反論はしたかった様子だったが、今の状況でそれをするのは難しい判断したらしく、言葉に詰まってしまう。

 まぁ、優の場合は活躍出来る場所が街中では少ないというのも、分かってはいるんだけどな。

 優の個性巨大化は、狭い場所で巨大化すると、それだけで周囲に被害を出してしまう。

 そうならないようにするには、広い場所……具体的には二車線くらいある場所が必要なる。

 そうして変身しても、少し下手に動くと周囲の建物に被害を出してしまい、そうなるとその弁償だったり、始末書を始めとした各種書類だったりを書かないといけない。

 また、弁償についても保険の範囲外となると自己負担となる。

 

「……うん、何で優は都会にいるんだ?」

「ちょっと、何よいきなり!?」

 

 俺の言葉にはさすがに不満を抱いたのだろう。

 我慢出来ないといった様子で食べていたクッキーをその場に置くと、睨み付けてくる。

 

「いや、別に嫌味とかそういうのじゃなくて……優の巨大化という個性は、この辺のような都会だと使いにくい個性だろ? 巨大化しても周囲の被害を気にしないで行動出来る、それこそ田舎の方が向いてると思うんだが」

 

 そう言うと、実際に俺が言ったように嫌味でそう口にした訳ではないというのが分かったのだろう。

 まだ完全に納得した様子はなかったが、それでもある程度落ち着いた様子を見せる。

 

「私は都会が似合う女でしょ?」

「……まぁ、それは否定しない」

 

 個性云々は抜きにした場合、優は間違いなく美人だ。

 それも田舎にいるような清純系ではなく、派手目な美人。

 また、自堕落な生活をしている割には、そのボディラインはかなり女らしい。

 本人もその辺りを理解してるのか、ヒーローコスチュームは身体のラインを露骨に出す奴だし。

 以前ちょっと聞いた話だと、雄英にいるミッドナイトとかいう教師にライバル心を燃やしているらしい。

 ……ミッドナイト。

 18禁ヒーローミッドナイト。

 若い頃にはもの凄いコスチュームを着た事で国会とかでも問題になり、法律まで変えたとか何とか。

 もっとも、俺がその辺りを調べた時は、本人の趣味というのもあるが、それ以上に個性を使う上でそうした方が合理的だと考えてのコスチュームだったらしいが。

 そんなヒーローが教師をやっててもいいのか?

 そう思わないでもないが、実際教師としても非常に優秀らしい。

 また、当然ながら生徒達にも人気がある。

 いや、18禁ヒーローであり、大人の女の身体を見せつけるようなヒーローコスチュームである以上、男子生徒から人気なのは俺も理解出来る。

 だが……ミッドナイトが人気なのは、女子生徒からもらしい。

 その格好から嫌っている者もいるらしいのだが、女子生徒の相談……特に恋愛相談にも乗ってるんだとか。

 しかも、そのアドバイスが的確で、実際にネットで調べた限りではミッドナイトのお陰で彼氏が、彼女が出来ました。あるいは結婚しましたといったような書き込みもあった。

 ネットの書き込みだけに、それが真実かどうかは分からないのだが。

 ともあれ、そんなミッドナイトに対抗心を抱いている優としては、田舎よりも都会にいたいという思いが強いのだろう。

 

「でしょう? それに……何かあった時、私がいると役に立つのは間違いないんだから。建物が崩壊した時の後片付けとか。……救助作業の方はちょっと苦手だけど」

「だろうな」

 

 巨大化して瓦礫の処理なら優も得意だろうが、その瓦礫に埋まっている者を助けるとなると、まずその要救助者がどこにいるのかを確認する必要がある。

 巨大化したからといって、五感が鋭くなる訳でもない以上、瓦礫に埋まっている者を助けるつもりで瓦礫を動かした結果、助けるべき相手に瓦礫が雪崩れ落ちる……なんて可能性も決して否定出来ないのだ。

 具体的には、今日の実技試験の時の葉隠とかが分かりやすい例だろう。

 もしあの時に優がいたら、どうなっていたか。

 ……そもそも透明な葉隠の姿を見つける事が出来ず、そのままあの瓦礫を踏み潰していた可能性も否定は出来なかった。

 

「それはともかく、アクセルの入試はどうだったの?」

 

 このまま話を続けると不味いと判断したのか、そう優が話題を変えてくる。

 

「問題ないな。学科試験の方は平均90点以上は確実だし、幾つかは100点も狙える」

「自信満々ね」

 

 若干呆れた様子の優。

 とはいえ、これは強がりでも大袈裟でも何でもない。

 実際に学科試験を受けた身として、そのような実感があったのは間違いない。

 もし問題があるとすれば……

 

「ケアレスミスの類がなければ、学科試験の1位は間違いないと思う」

 

 そう、俺が一番怖いのが、このケアレスミスだ。

 自分では正解を書いたつもりなのに、思い込みでちょっとした間違いとなっていたり、計算が合っている筈なのに答えを書く場所に書かれた数字が微妙に違っていたり、英語でスペルミスがあったり。

 そんな感じで、俺にとってケアレスミスは一番厄介な敵だった。

 ……もっとも、ケアレスミスは答えを見直せば大抵はどうにかなるのだが。

 

「ふーん、アクセルがそう言うのならそうなんでしょうね。そうなると、実技試験はどうだったの?」

「こっちも問題ない。……他の受験生がどのくらいの点数を取ったのかは分からないが、俺がトップなのは間違いないと思う」

 

 唯一の不安要素は、デクだろう。

 俺と同じく、0Pを倒したとリカバリーガールから聞いている。

 結局のところ0Pである以上、当然ながら倒したからといって点数は入らない。

 だが、それでもあれだけの存在である以上、そこに何かがあるのは間違いないだろう。

 そうなると、その何かが分からない為に、場合によってはデクが実技試験で俺の点数を上回るといった可能性も否定は出来なかった。

 0Pを破壊出来る程の攻撃力を持っているとなると、1Pから3Pまでのヴィラン役のロボを破壊するのは容易いだろうし。

 だとすれば、俺のライバルとなるのはデクか。

 ……顔は決してパッとしたものではない。

 だが、だからこそこの世界の原作の主人公だと言われれば、微妙に納得出来るところがあるのも事実。

 

「その割には微妙に自信がなさそうね?」

「俺のライバルになりそうな奴がいたしな」

「……アクセルの、ライバル? え? 嘘でしょ? 冗談よね?」

 

 優が大きく目を見開き、俺にそう聞いてくる。

 基本的に自堕落な優だが、龍子の事務所と提携を結んでから時折俺との模擬戦をやったりもしていた。

 優の個性である巨大化は強力な個性なのは間違いないものの、その個性は純粋に巨大化するのみ、直接的な攻撃力はない。

 例えば、エンデヴァーのように炎を操る個性のような攻撃力はないのだ。

 その為に巨大化した優が強くなるには、優そのものが強くなる必要がある。

 具体的には、俺との模擬戦をやるとか。

 ……もっとも、巨大化した優が格闘技を使って戦うような相手がそういるとは思えないが。

 巨大化した優にしてみれば、格闘技を使うとなると、自分と同じくらいの大きさの、しかも人型の相手である必要があるのだから。

 同じくらいの大きさとなると、龍子が個性で変身したドラゴンもそうだが、ドラゴンを相手に人間の格闘技は無意味……とまでは言わないが、それでもどうしても人を相手にするよりは弱い。

 実際、優もそう思っているから俺がこの世界に転移してきた時、ドラゴンに変身した龍子と模擬戦をやっていた訳で。

 ……あの時、もう少し何か間違っていれば、龍子は死んでいたかもしれないんだよな。

 うん、しみじみとあの時、迂闊に攻撃するような事をしなくてよかったと思う。

 

「話を聞いた限りだと、俺しか倒していないと思った巨大な仮想ヴィランを、俺以外にも倒した奴がいたらしいからな。そう考えれば、俺とそいつだけが倒したんだから、そいつは俺のライバルと言っても間違いではないだろう?」

「……嘘でしょ、雄英ってどれだけの人材が集まるのよ」

 

 俺の言葉が嘘でも大袈裟でも、そして冗談でもないと判断したのだろう。

 唖然とした様子で優が呟く。

 

「雄英は日本でもトップのヒーロー科を持つ高校だしな。全国から自分の個性や学力に自信のある者が集まってくるんだ。中には今からでもプロヒーローとしてやっていけるだけの実力の持ち主が混ざっていてもおかしくはないだろ」

「私も、雄英に行けばよかったかしら」

 

 優は雄英出身ではない。

 その為、もしかしたら記念受験くらいはしたのかもしれないが、雄英に入学することはなかった。

 

「そうだな。入学出来るのならしておいた方がよかったと思うぞ」

 

 雄英のヒーロー科を卒業したというだけで、一種のブランドとなる。

 優がもし雄英を卒業していれば、恐らく今よりももっと人気が出ていただろう。

 

「む、何よその言い方。それだと、まるで私が雄英に入学するのは不可能だったと、そう言いたいみたいじゃない」

「龍子とねじれ、そろそろ帰ってきてもいい頃だと思うんだけどな」

「ちょっと、話の変え方が強引すぎるわよ!」

 

 俺の言葉に納得出来ないといった様子で叫ぶ優。

 実際、俺も自分でそう思わないでもなかったので、その突っ込みは素直に受け入れるしかなかったが。

 だが……神の悪戯とでも言うべきか、ちょうどそのタイミングで事務所に誰かが入ってくる。

 

「あら、やっぱり。もう帰ってたのね」

「アクセル、受験どうだったの? やっぱり1位?」

 

 龍子とねじれが一緒に入ってきて、事務所の中に俺がいるのをみるとそう声を掛けてきた。

 そんな2人の様子に、安堵して息を吐く。

 別にこの2人が心配だったとかそういう意味ではなく、優の追求から逃げられたという意味で。

 

「さっき優とも話してたんだが、取りあえず学科試験は問題ない。実技試験は……ライバルっぽいのがいるから、どうなるか分からないというのが正直なところだな」

 

 そう言う俺の言葉に、龍子とねじれは優と同じように唖然とした表情を浮かべるのだった。

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