転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4329話

「じゃあ、行きましょうか」

 

 雄英の入学式、2日前。

 俺は龍子の言葉に頷く。

 数ヶ月住んだ龍子の事務所から、事務員やサイドキック達に見送られて出ると、そのまま龍子の車に乗り込んだのだが……

 

「おい?」

「何よ、後ろに座ってるんだからいいでしょ」

「狭いけど、ワクワクするね!」

 

 何故か龍子の車の後ろには、優とねじれの姿があった。

 どこにも姿が見えないと思ったら、どうやらここにいたらしい。

 

「龍子?」

「まぁ、一応最後というか、区切りの日だし、いいんじゃない?」

 

 そう言う龍子。

 どうやらこの様子を見る限りだと、最初から知っていたらしい。

 

「……まぁ、いいけど」

 

 龍子が知っていたのなら、別に俺がわざわざ突っ込む必要もないだろう。

 そう判断し、俺は龍子の車の助手席に乗り込む。

 

「さて、じゃあ最後のドライブといきましょうか」

 

 龍子がそう言い、車を出発させるのだった。

 

 

 

 

 

「うわ、凄いね」

 

 ねじれが俺の部屋を見て、そう言う。

 

「凄いっていうか……どれも高級品ばかりのように思えるんだけど?」

 

 そして龍子は、俺……ではなく、優に視線を向ける。

 部屋にある家具とか電化製品の類はどれも高級品だし、この世界では有名なメーカーが出している掃除ロボットが床を動き回ってる。

 この掃除ロボ、ヒーローのサポートアイテムを作っている会社が作っているとかで、かなり高性能だったりする。

 普通の掃き掃除以外に、拭き掃除や乾拭きまでやってくれる優れ物だ。

 しかも、優のお勧めによって最高位機種なので……うん。取りあえず俺が自分で掃除する必要はあまり考えなくてもいいらしい。

 とはいえ、俺はマンションの管理会社を通して清掃会社と契約をしてるので、掃除はそっちに任せられるんだが。

 ……そう考えると、この掃除ロボットを買う必要はなかったな。

 まぁ、この円盤形の外見は見ていると癒やされるものがあるし、バッテリーがなくなれば自分で充電スタンドまで戻るのも、家に帰るみたいで何となく愛らしい。

 そう考えると、ペット的な目的でこの掃除ロボットを買ったと思えば悪くないか。

 

「い、いいじゃないですか。だって公安がお金を出すんですよ? なら、それを有意義に使うのは悪くないじゃないですか」

「わぁ、可愛い、可愛い。アクセル、これは何?」

 

 優が龍子に言い訳をしてるのを眺めていると、ねじれが掃除ロボを見てはしゃいでいた。

 どうやらねじれにとっても、この掃除ロボはクリティカルヒットだったらしい。

 

「掃除ロボだよ。……まぁ、今は床が汚れてる訳でもないいから、あまり意味がないけど。……ああ、でも埃とかそういうのを掃除してくれるのは嬉しいな」

 

 いつの間にか埃が溜まってるというのは珍しくはない。

 特にここはフローリングの部屋だけに、どうしてもそういうのが目立つ。

 

「凄いね」

「そうだな。最高位機種だけはある」

「……優?」

「ちょっ、アクセル!? 何でここでそういう事を言うのよ!?」

 

 龍子に叱られていた優が、俺に向かって叫ぶ。

 優にしてみれば、ただでさえ現在進行形で怒られているのに、何故更に怒られる要素を追加するのかと、そのように不満に思ったらしい。

 とはいえ、龍子はこの部屋……そして他の部屋にあるだろう家具や家電も、全てが高品質で、そして当然のように値段が高いというのも分かっている様子だった。

 それを思えば、ここで言わなくても結局分かっていただろうと思うのは、俺の気のせい……ではないと思う。

 結局その後、折角の俺の新生活だからという事もあってか10分程で優に対する説教は終わる。

 

「さて……じゃあ、折角だし一階にあるスーパーに行って、色々と買ってきましょうか。お酒は飲めないけど」

「分かってますよ、先輩。私だって別にこの状況でお酒を飲もうとは思ってませんから!」

 

 これ以上怒られては堪らないといった様子で優が叫ぶ。

 実際、何らかの事件があって連絡が来れば、龍子達は即座に現場に向かう必要がある。

 そう考えると、ここで酔っ払っていた場合、当然ながらヒーロー活動に支障が出る。

 まさか、酔っ払ったままで現場に向かう訳にもいかないだろうし。

 ……それはそれで面白いが。

 とはいえ、このヒロアカ世界においては一般の住民は何らかの騒動があっても、ヒーローがいるからという事で危機感が足りない一面がある。

 もしくは、スマホとかを使って映像を撮っている影響で指向性バイアスが掛かってるような感じか。

 そんな訳で、もし酔っ払ったまま現場に行けば、間違いなくそれを映像に撮られて、ネットに流されるだろう。

 そのような映像がネットに流れれば、ヒーロー活動にも支障が出るだろうし、ヒーロービルボードチャートにも間違いなく悪影響が出る。

 だからこそ、ヒーローにとって酒を飲む機会というのは意外に少ないらしい。

 俺にとっては悪くない環境だよな。

 そんな風に思いながら、俺達は一階にあるスーパーに向かうのだった。

 

 

 

 

 

「え? あれ……もしかして、私服だけどリューキュウ?」

「一緒にいる女の片方も、私服だけどマウントレディじゃないか?」

「あの女子高生、今年の体育祭で見た覚えがある」

 

 スーパーで買い物をしていると、そんな会話が聞こえてくる。

 特に変装らしい変装もしていないので、見れば分かるんだな。

 ただ、それでもこのスーパーに……安売りメインではなく、それなりに高級なスーパーにいる客だからか、サインが欲しいとか、あるいは話したいとかいった様子で接触してくるような事はない。

 これは俺にとっても悪くない出来事だったな。

 そう思っていたのだが……

 

「で、じゃあ、あの3人と一緒にいる男は誰だ? まさか、誰かの恋人?」

「いやいや、年齢が離れすぎてるだろ。普通に考えれば、あの3人の弟とか、親戚とか従兄弟とか、そんな感じじゃないか?」

「そもそも、何でリューキュウとマウントレディが一緒にいるの? あの2人に繋がりってなかったわよね?」

「女のヒーロー同士だし、そういう意味で繋がりがあったんじゃないの?」

「じゃあ、ミルコは?」

 

 案の定、俺が誰なのかといった事も話題になっている。

 もっとも、中には何故かミルコがここにいないのを疑問に思っている者もいたが。

 ミルコというのは、女のヒーローのNo.1だ。

 兎という個性を持っており、兎っぽい事は大体出来るらしい。

 そういう意味では、混沌精霊が個性――となっている――の俺と同じような感じだな。

 ネットで調べればすぐに分かるが、このミルコってかなり人気が高い。

 いわゆる典型的な脳筋なんだが、顔立ちが整っていることもあり、そして動きやすさを重視している為か、露出の多いヒーローコスチュームで、それでいながらファンサービスも普通に行うという……色々な方面から高い人気を誇っているヒーローだ。

 勿論、全員に満遍なく好かれるといった事はなく、中にはいわゆるアンチと呼ばれる者達もいる。

 とはいえ、それでも全体的に見ればミルコは圧倒的に支持されており、女のヒーローNo.1というのはそれが如実に表れた形だろう。

 

「うーん、料理をするか……いえ、このスーパーのお惣菜はどれも美味しいそうだし、これを買っていった方がいいかもしれないわね。アクセルはどう思う?」

「どっちでもいいけど……あ、そうだな。半々くらいにするのはどうだ?」

「え? ちょっ、別に全部出来合の惣菜でいいじゃない。こんなに美味しそうなのに、わざわざ自分で作るなんて……」

 

 俺と龍子の話を聞いていた優は、慌てたようにそう言ってくる。

 ははーん、これは多分……

 

「料理、私はキリタンポ鍋を作りたいな。マウントレディはどういう料理を作るの?」

 

 俺が何かを言うよりも前に、ねじれが急所を突いてしまう。

 にしても、キリタンポ鍋か。

 秋田が出身のねじれにしてみれば、食べ慣れた料理なんだろうな。

 ……とはいえ、キリタンポ鍋を作る食材がこのスーパーにあるのかどうかは疑問だが。

 いや、鶏肉とかキノコ、糸こんにゃく、椎茸、長ネギといった一般的な食材はともかく、セリ根とか……何より、キリタンポをどうするのかだな。

 以前ちらっと四葉から聞いた事があるから、俺もキリタンポの作り方は知っている。

 炊きたての飯をすりこぎや麺棒で潰し、それを木の串……もしくは割り箸に巻いて、フライパンや魚焼きグリル、もしくはホットプレートとかで軽く焦げ目が出来るまで焼けば、それで完成だ。

 もっとも、これはあくまでも大雑把な作り方だが。

 実際にはもっと色々と細かいコツのようなものもあるのだろう。

 ねじれの様子を見ると、その辺りについては十分に分かっているように思えた。

 

「わ、私はその……うーん……」

「ねえねえ、もしかしてマウントレディって料理出来ない人?」

「ぐっ、この小娘……で、出来ない訳じゃないわよ。そうね。パスタなんかどう?」

 

 そう言う優の視線が向けられているのは、少し離れた場所にあるレトルトのパスタソース。

 パスタを茹でれば、ソースと和えるだけという非常に手軽にパスタを食べられるのがレトルトのソースだ。

 もっとも、この店にあるという事は高額なソースなんだろうが。

 当然ながら、それだけ美味いんだろう。

 また、これは美砂から聞いたんだが、こういうレトルトのソースはちょっとした食材をプラスするだけで、レトルトのソースだけよりもワンランク上の味になるらしい。

 例えば、カルボナーラのレトルトソースなら、フライパンでベーコンを焼いて加えるとか。

 ペペロンチーノのソースなら、キノコを炒めて追加するとか。

 ……とはいえ、優にはそういうのは出来そうにないよな。

 

「じゃあ、優の担当はパスタね。アクセルは……今日の主賓だし、料理はしなくてもいいわね」

 

 龍子にそう言われるが、俺が料理を作るにしても、それこそ優のようにレトルトを使って、せいぜいがそれにプラスする程度だしな。

 後は……そうだな。アワビとかを買って、それをグリルで焼くとか、そういうのなら俺でも出来そうだ。

 龍子が今日は俺は何もしなくてもいいと言ってるのだから、その言葉に甘えるつもりではあったが。

 

「分かった。じゃあ俺は……そうだな。取りあえず1人暮らしをする際に必要そうな物を適当に買って来るよ」

 

 現在の俺の部屋には、食料の類は何もない。

 いやまぁ、空間倉庫の中に大量に食料は入っているので、別に無理にここで買う必要もないのだが……公安の費用で買えるんだから、色々と買って置いてもいいだろう。

 それこそ優が必死になって選んでいるレトルトのパスタソースとか、レトルトカレーとか。

 後はパスタやうどん、蕎麦、乾麺……と見て回っていたところで、足を止める。

 そこにあったのは、中華麺の乾麺。

 インスタントラーメンとはまた違う乾麺なのだが、それだけなら別に俺も足を止めたりはしなかっただろう。

 だが、稲庭うどんの技術を使って作られた乾麺とあれば、話は別だ。

 龍子に連れて行って貰い、その後にも何度か行ってるラーメン屋。

 そのラーメン屋で使われている麺が、この麺だった。

 いや、実際に同じ麺なのかどうかは分からない。

 稲庭うどんの技法を使って作った乾麺というのも、別に1種類だけって訳ではないだろうし。

 その商品に人気が出たのなら、同じく稲庭うどんを作っているメーカーが……あるいは稲庭うどんを作ってすらいないメーカーが、2匹目のドジョウを狙って似たような商品を出してもおかしくはない。

 ただ、あの店で食べたラーメンは美味かったしな。

 ……もっとも、当然ながらこうしてスーパーで売ってる奴を購入して料理しても、本職のラーメン屋と同じような味にはならないのは間違いない。

 あの店は本職のラーメン屋だけに、色々と分からないところで少しずつ手を加えたりしていたんだろうし。

 それが分からない以上、同じようなラーメンであっても、実際には数段味が落ちるだろう。

 とはいえ、俺が食うくらいのラーメンならそれでも問題ない。

 いや、美味ければ美味い程にいいとは思うが、手軽に作れてそれなりに美味ければ問題はないだろう。

 そんな訳で、この乾麺もごっそりと買い物かごに入れる。

 後は……ああ、飲み物だな。ウーロン茶を始めとしたお茶とか、それ以外にはスポーツドリンクとか。

 あ、黒烏龍茶ってのもあるのか。

 しかも静岡産。

 これは買わないと。

 そんなこんなで、気が付けば買い物かごを入れたカート2つ、1つのカートに2つかごを設置出来るようになってるので、合計4つの買い物かごが山盛りになってレジに向かう。

 ……何か、ペルソナ世界でジュネスに行った時の事を思い出すな。

 あの時もかごに入りきらないくらいに買って、ジュネスで一時期話題になっていたらしいし。

 そんな風に思いながらレジの表示を見ると……そこには、8万ちょっとという値段が表示されている。

 このスーパーで買ったにしては、それなりの値段なのだろうと思いながら、俺はブラックカードを出すのだった。

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