転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4334話

 ブドウ頭は結局俺達に何も言わないまま……血の涙を流しながら、自分の席についた。

 何人かはそんなブドウ頭を心配そうに見ていたが。

 まぁ、ブドウ頭の事をよく知らない者にしてみれば、同級生がいきなり血の涙……血涙を流しているのだ。

 それこそ何らかの病気じゃないのかと心配してもおかしくはない。

 あるいは、個性による何らかの副作用かもしれないと思ってもおかしくはなかったが。

 

「取りあえずスルーで」

「あ、ああ。……けど、あいつと上手くやっていけるかな?」

 

 俺の言葉に瀬呂は困った様子でそう言う。

 とはいえ、俺もそんな瀬呂の言葉に大丈夫だとは言えなかったが。

 いっそ誰か女を紹介すれば、こっちに友好的になりそうな気もするけど……どうだろうな。

 そもそも、紹介出来る人材がいないし。

 ゲートが設置出来ていれば、それこそ幾らでも紹介出来る女はいるんだが。

 ……もっとも、紹介は出来るものの、そこから上手くいくかどうかまでは何とも言えないが。

 もしあのブドウ頭ががっついたりして紹介した女に引かれるような事があれば、俺としても何も出来ない。

 あくまでも俺が出来るのは、紹介するだけなのだから。

 ……フミタン辺りを紹介してみても面白いかもしれないな。

 何気に包容力のあるフミタンなので、あのブドウ頭も素直に受け入れる可能性がある。

 もっとも、フミタンにとって最優先すべきはクーデリアなので……うん。まぁ、あのブドウ頭がそれを受け入れられるかどうかによって、上手くいくかどうかは変わってくると思うけど。

 それにどのみち今はゲートが設置されていないので、女は紹介出来ない。

 今の状況で俺が女を紹介するとなると……それこそ、龍子、優、ねじれ。

 後は龍子の事務所にいる事務員に女が何人かいたから、そっちを紹介出来るか?

 もっとも、こっちもあくまで紹介出来るってだけで、紹介した後でどうなるのかは俺からは何も言えなかったりするが。

 そうして話していると、また1人学生が教室に入ってくる。

 

「ああ?」

 

 その学生……男は、教室の中を見ると不機嫌そうにそう言うと、自分の席に向かう。

 いかにもヤンキーといった感じの男だが、俺はその男の姿に見覚えがあった。

 雄英の受験の時、ちょうど校門の前で緑谷と一緒にいた……かっちゃんだ。

 なるほど。どうやら緑谷だけじゃなくて、あのかっちゃんまで雄英に合格していたらしい。

 そしてかっちゃんが合格したとなると、緑谷が主人公である可能性はより高くなった。

 

「あ、おいアクセル。あいつヘドロ事件の奴じゃないか?」

 

 そう俺に声を掛けてきたのは……誰だったか。ああ、そうそう。上鳴電気とかいう奴だ。他の連中もそうだが、名前から個性が想像出来る事を考えると、多分電気系統の個性なんだろうな。

 

「ヘドロ事件?」

「は? 知らないのか? ほら、去年オールマイトが解決した」

 

 そう言われ、以前優がそんな事を言っていたのを聞いた事があるような、ないような。

 

「その事件に関係していたのか?」

 

 すぐに内容が思い出せなかったので、上鳴に聞く。

 すると上鳴は……そして近くにいた尻尾の個性持ち……尾白も、何故か呆れたような視線を俺に向けてくる。

 うん、どうやらその辺りについては知っていないとそもそもおかしいような内容だったらしい。

 

「どうやらそうらしいな」

「TVとかでニュースにもなっただろ? 見てなかったのかよ?」

 

 上鳴のその言葉に頷く。

 そもそも、そのヘドロ事件とやらが起きたのは、俺がこの世界に来る前だった……と思う。

 優の話を思い出す限りだと、それは間違っていない筈。

 そうなると、俺がそれを知らなくても仕方がないだろう。

 ……もっとも、俺が異世界から来た存在というのを話す訳にいかないので、仕方がない事ではあるが。

 

「見たような、見てないような……まぁ、雄英の受験勉強で忙しかったしな」

 

 取りあえずそう誤魔化しておく。

 だが、そんな俺達の会話を聞いたのか、三奈が口を出してきた。

 

「何言ってるのよ。アクセルは首席なんだから、そこまで受験勉強に必死になる必要はなかったでしょ」

「いや、そこで勉強を頑張ったから首席に……」

「ああ!? 首席だぁっ!?」

 

 三奈に対する俺の言葉を遮るように、かっちゃんがこっちを……より正確には俺を睨み付けてくる。

 その三白眼は、強い威圧感を……敵意というか、対抗心? そんなのを感じる。

 

「えっと、その……アクセル、ごめん」

 

 かっちゃんの様子を見た三奈が、そう謝ってくる。

 とはいえ、別にこういう状況になるとは誰も想像は出来ていなかった訳で……

 

「別に気にするな。三奈のせいじゃないから」

「……え? アクセル、お前……」

 

 何故か今度は切島が驚く。

 そして三奈もまた切島を見て……何故か笑いだそうとするのを我慢していた。

 何だ? この二人、もしかして知り合いだったりするのか?

 そうも思ったが、今はまずかっちゃんの方が先だと思ってかっちゃんの方に視線を向けると……既にそこでは先程までは俺を睨み付けていた筈のかっちゃんは俺から視線を逸らし、机の上に足を上げて黙り込んでいる。

 うーん、このかっちゃん……多分だが、首席を狙っていたのだろう。

 だが、その首席が俺になってしまったので、それが許せなかったといったところか。

 緑谷の知り合いで、首席を目指す……上昇志向の高い男、か。

 これでますます緑谷が主人公の疑いが深まったな。

 とはいえ、この主人公という件については別に自分が主人公だなどと思っている訳でもないので、そういう意味ではお前が主人公だろうと言っても、はいそうですと答える訳がない。

 そもそも、このヒロアカ世界の者達はこの世界が原作のある世界だというのは知らない訳だし。

 ……俺以外に転生者とかそういうのがいれば、話は別だが。

 そうなればそうなったで、この世界の原作について聞く事も出来るので、俺にとってはラッキーなんだよな。

 俺の中にあった生前の原作知識は、ペルソナ世界でニュクスによって失われてしまったし。

 そんな風に、有り得ないだろう事を考えていると……飯田が、かっちゃんの方に向かって近付いていった。

 

「君、机に足を掛けるな! 雄英の先輩方や机の制作者の方々に申し訳ないと思わないのか!」

 

 かっちゃんに対し、飯田がそう注意する。

 実技試験の説明の時もそうだったが、飯田は品行方正というか、生真面目というか……まぁ、悪いことじゃないとは思うんだが、同時にそれによって面倒が起きる可能性も十分にある訳だ。

 そして、今がまさにその面倒が起きた時だった。

 飯田に対し、かっちゃんはジロリ、もしくはギロリといった表現が似合うような様子で睨み付け……

 

 

「思わねーよ。てめぇ、どこ中だよモブが」

「うわ、かっちゃん、マジかっちゃん」

 

 そんなかっちゃんの言葉に、思わずそう呟く。

 だが、その声が聞こえたのだろう。

 かっちゃんは机に脚を掛けたまま、俺を睨み付けてくる。

 見知らぬ相手にいきなり名前ではなく愛称……愛称? まぁ、多分愛称で呼ばれたのだから、訝しく思うのはそうおかしな話ではない。

 

「ああ? かっちゃんだぁ? てめえ、馴れ馴れしいんだよ。つか、誰だてめえは?」

 

 最初は不機嫌そうに、そして不満そうな様子で言うかっちゃん。

 さっきの首席云々というのもあってか、改めて俺を睨み付ける目には強い力が込められていた。

 

「受験の日に、お前がかっちゃんって呼ばれていたのを聞いて、それを覚えていただけだよ」

「ちっ、あのクソナードがっ!」

 

 吐き捨てる様子のかっちゃん。

 俺が言ってるのが緑谷の事だと理解したのだろう。

 とはいえ、緑谷は0Pを破壊した実力の持ち主なんだし、リカバリーガールからはあの0Pを破壊したのは俺と緑谷だけだと聞いている。

 つまり、かっちゃんはその点で緑谷に負けてる訳なのだが……本人はその辺について分かっているのか?

 いや、かっちゃんの性格を思えば、もしその件について知っていればもっとこう……何かある筈だ。

 それがないという事は、つまり緑谷が0Pを破壊したのは知らないのだろう。

 

「そんな訳で、よろしくなかっちゃん。俺はアクセル・アルマーだ」

 

 今度は若干煽る意味も込めてかっちゃんに自己紹介する。

 そんな俺の挑発は効果覿面で……

 

「ああ? 誰がかっちゃんだ、このホスト野郎が!」

「……何がどうなってそんな呼び名になった?」

 

 いやまぁ、俺の外見はアクセル・アルマー……しかもその10代半ばのものであるし、20人程も恋人がいる。

 それだけを思えば、ホスト野郎という言葉は合っている訳でもあるのは間違いないのだが……だからといって、何も俺の情報がない中で、何でホストなんて単語が出たのかは素直に疑問だった。

 

「知るかボケぇっ! てめえ、首席だからっていい気になってんじゃねえか?」

「そんなつもりはないんだがな。それよりかっちゃんの自己紹介はして貰えないのか? そうなると、名前が分からない以上はこれからもかっちゃんと呼ぶ必要が出てくるんだが」

「……爆豪勝己だ。これからはかっちゃんなんて、あのクソナードと同じように呼ぶなよ」

 

 よほどかっちゃんと呼ばれるのが嫌だったらしい。

 不承不承、渋々、嫌々……そんな表現が似合うような様子でかっちゃん……いや、爆豪が言ってくる。

 爆豪勝己……名前からすると、爆発関係の個性か?

 いわゆる、強個性と呼ばれる類の個性なのだろう。

 実際、この世界の原作の主人公である緑谷を格下……それも圧倒的な格下といった扱いをしていたのも、その辺が理由なんだろう。

 

「そうか。よろしくな爆豪」

「けっ」

 

 俺の存在が心の底から不愉快だといった様子の爆豪。

 これ以上は話をするつもりないと態度で示されると、俺もいつまでも爆豪の側にいたりは出来ない。

 そうして元の場所に戻ってくると、先程はいなかった何人か……一緒のクラスになった面々の姿がそこにあった。

 別に俺の机の側に集まらなくてもいいと思うんだが、元々そこに集まって話をしていたので、他の面々もそこにやって来たといった感じか。

 そんな新しい面々と自己紹介をして話をしていると、再び教室の扉が開き、新しい人物が入ってくる。

 正確には人物達、か。

 そしてそのうちの片方は俺にとっても見覚えがあった。

 ……あ、いや。違うな。

 片方の緑谷はともかく、もう片方の女は、受験の時に校門の側で緑谷と話していた女か?

 

「うわ……ここが雄英……」

「わー、結構女の子おるやん」

 

 そう言い、女の方が俺の方に近付いてくる。

 正確には俺じゃなくて、俺の机の側にいる三奈を始めとした女達に。

 そして緑谷は、周囲を見回し……そして、俺と目が合う。

 

「えっと……その、どうかしました?」

「お前が緑谷だよな?」

「っ!?」

 

 ビクッと、動かなくなる緑谷。

 うーん……見るからに気が小さそうな奴だな。

 本当にこの緑谷が実技試験で0Pを倒したのか?

 

「ややっ、君は!」

 

 そして動かなくなった緑谷に対し、飯田が近付いて何やら話し掛けていた。

 実技試験の説明の時の件について謝ったり、あるいは実技試験の内容……0Pとかその辺について見抜いていたのを称賛したり。

 うん、やっぱり飯田は杓子定規ではあるが、そこまで悪い奴ではないんだよな。

 真っ直ぐというか、真っ直ぐすぎるというか。

 緑谷の方はそんな飯田の様子に何とか復活したのか、あたふたしながらも答えている。

 するとそんな2人に、緑谷と一緒に入ってきた女も声を掛け……ん? 何だ、あの怪しい物体は。

 こっそりと……人目につかないような動きで、寝袋が教室の中に入ってくるのが見えた。

 寝袋が動くのは転がったり、あるいは尺取り虫のように動くかしないのだが、そうしながらも見つからないようにしているのは……うん、何て言えばいいんだろうな。

 その寝袋の方も俺が自分の存在に気が付いたのに気が付いたのか、驚いた様子で視線をこちらに向けてくる。

 多分、自分の行動が見つからないという思いがあったのだろう。

 だからといって、それでどうこうといったことではないと思うが。

 

「えっと、それで……アクセル君? でいいんだよね。何で僕の名前を知ってたの? 会うのは初めてだよね?」

 

 飯田や女……麗日だったか? そっちとの会話が終わってある程度落ち着いたのか、そう緑谷が俺に声を掛けてくる。

 

「受験が終わった後で、リカバリーガールに名前を聞いてな」

「あー……」

「そうだな。あの時の緑谷君は、凄い怪我をしていた。無重力少女がいなければ、死んでいたかもしれん!」

 

 そんな飯田の言葉に、なるほどと納得する。

 リカバリーガールが俺に声を掛けてきた時その前に緑谷の回復をしてきたと言っていたが、飯田の話を聞くと予想していたよりも緑谷の怪我はかなり酷いものだったらしい。

 怪我をしたというのは聞いていたが……

 もしかして、緑谷が俺と同じように次々とロボを破壊してきたと思っていたのだが、それは間違いだったのか?

 

「お友達ごっこがしたいのなら他の高校に行け。ここはヒーロー科だぞ」

 

 不意にそんな声が教室に響き渡るのだった。

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