転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4340話

「ねぇ、アクセル。帰りにマックでも寄っていかない?」

 

 そう声を掛けてきたのは、三奈だった。

 既に個性把握テストも終わり、教室にあったカリキュラムのプリントとかも読み終わり、今日はもう帰るだけとなったところで、そう三奈が言ってきたのだ。

 

「マックって……相澤に正面から喧嘩を売ってるな」

 

 相澤が個性把握テストをやる前に、ヒーロー科に入学した以上は友人と一緒にマックに行ったりは出来ないとか、そんな風に言っていた。

 なのに、その日のうちにこうしてマックに行こうと言ってくるのだから、もし相澤がこれを知ったら何と言うのやら。

 

「えー、だってやっぱり高校生の放課後っていったらマックでしょ」

 

 微妙に色々な方面に喧嘩を売るような事を口にする三奈だったが、その言葉は実際間違ってはいない。

 勿論、マック以外の場所を溜まり場として使っているような者もいるだろう。

 それこそもっとお高めのハンバーガーチェーン店とか、喫茶店とか、ファミレスとか。

 もしくはペルソナ世界の稲羽市でそうだったようにジュネスの屋上にあるようなフードコートとか。

 ただ……それでもこの世界の高校生の平均とかそういうのを調べれば、恐らくマックが1番……もしくは1番ではなくても、トップクラスなのは間違いないと思う。

 

「いやまぁ、いいけど……他の面子は?」

「LINで聞いたら一佳は問題ないって。透も。瀬呂は……」

 

 三奈が瀬呂の方を見ながらそう言うと、荷物を鞄にしまっていた瀬呂は問題ないと大きく手を振る。

 

「いつものメンバーか」

 

 いわゆるいつメンって奴だな。

 もっともそう言われる程にいつもといった訳ではないのだが。

 受験が終わった後でLINでやり取りをしていたものの、実際に会ったりとかはしていなかった……いや、俺が会ってなかっただけで、他の面々がどのように思っているのかは分からなかったが。

 

「あ、それとヤオモモも一緒に来るって。話してみたら、ヤオモモってマックに行ったことがないって話だったから」

「あー……うん、なるほど」

 

 ヤオモモはその言動からして、育ちが良い。

 つまり、お嬢様だ。

 それもちょっとした小金持ちのお嬢様といった訳ではなく、かなりの金持ちのお嬢様。

 俺の恋人達の中で考えると……そうだな、那波重工のお嬢様である千鶴よりも金持ちっぽい感じか。

 そうなると、雪広財閥級だったりするのか?

 他にも、美鶴の実家の桐条グループとか?

 後は……火星の女王と言うべきクーデリアとか。

 ナの国の女王だったシーラもいるが、既にシーラは女王の座を返上してるしな。

 ともあれ、ヤオモモの家が金持ちである以上、マック……いや、マックに限らず、ファーストフード店に行った事がないのは分からないでもなかったが。

 

「じゃ、行こう。一佳も校門前で待ってるって」

 

 そう促され、俺達は教室を出る。

 ……峰田が血涙を流して俺と瀬呂を睨んでいたのは、取りあえずスルーして。

 

「それにしても、私がお邪魔しても構いませんの? その……話を聞く限り、皆さんは入学前からお知り合いだったようですし。そこに私が入るのは……」

 

 廊下を歩きながら、ヤオモモが心配そうに言ってくる。

 ヤオモモにしてみれば、前からの知り合いだった者達の中に、自分だけがそこに入るのだから、心配になるのも当然だろう。

 

「別にそこまで気にする必要はないと思うけどな。俺は気にしないし……拳藤も多分気にしない。ん?」

 

 そうして話しながら歩いて校舎を出たところで、緑谷と飯田と麗日の姿を見つける。

 何だかコペルニクス的云々といったのが聞こえてきたが、なんだ?

 

「あれ、麗日さん、緑谷さん、飯田さんですわね。……どうかしたのでしょうか?」

 

 俺の視線を追ったヤオモモが、不思議そうに呟く。

 

「さあな。ただ、見た感じ何らかのトラブルって訳でもないっぽいし」

 

 寧ろ緑谷が嬉しそうにしているように俺には見える。

 そこに飯田が何かを突っ込んでるのを思えば……あの3人の事だけに、何かあったのだろう。

 俺達が入学前の知り合いという事なら、あの3人もまた入学前の知り合いだったりする。

 もっとも、俺達の場合が友好的な知り合いだったのに対し、緑谷と飯田は実技試験の時に揉めたという関係だが。

 麗日は、受験当日に転びそうな緑谷を助けて知り合っていたとか、そんな感じだったか?

 そういう意味では、麗日はともかく緑谷と飯田は決して良好な関係でなかったのは間違いない。

 もっとも、緑谷はその辺をあまり気にしないのか、飯田が謝ったのが関係してるのか、とにかく現在は友好的な関係のようだったが。

 ともあれ、あの3人はあの3人でどこかに行くなりなんなりするんだろうし、別に無理に声を掛けなくてもいいだろう。

 そんな風に思いつつ、校門の方に向かうと……

 

「遅かったな」

 

 少し不機嫌そうな様子の拳藤の姿がそこにはあった。

 

「悪いな。これでも一応、ある程度は急いで来たんだが」

「まぁ、いいけど。それより、今日入学式に参加しないで個性把握テストをやっていたって本当なのか? ……入学式では、A組だけいなかったから皆不思議そうにしていたぞ」

「あー、うん。やっぱりそうか。というか、新入生代表の挨拶ってどうなったんだ?」

 

 本来なら受験の首席という事もあって、俺が新入生代表の挨拶をする予定だった。

 実際に雄英から連絡があって、挨拶の準備もしておいたのだが……入学式に出ないで、個性把握テストだったからな。

 挨拶をする筈の俺がA組である以上、挨拶が出来る筈もない。

 

「あー……うん。その辺は先生達も困っていたけど、結局挨拶はなしで進んだな。前もってその辺について知っていれば、アクセルの代わりに誰かに任せるって事も出来たんだろうけど。そういう準備は全く出来ていなかったみたいだしな」

「うわぁ……」

 

 拳藤の言葉に、葉隠が呆れたように言う。

 

「それでその……入学式の方は無事に終わりましたの?」

「ああ、その辺は何とかな。雄英の先生達だけあって、そういうのには慣れていたみたいだったよ。……あんたが八百万か?」

「はい、八百万百といいます。どうぞ、ヤオモモと呼んで下さい」

「……ヤオモモ?」

 

 一体何故そんな風に呼んで欲しいのかといった疑問を表情に浮かべる拳藤。

 まぁ、いきなり愛称で呼んで欲しいと言われたんだから、それについて思うところがあるのは当然だよな。

 

「はい。芦戸さんが付けてくれた愛称です」

「……なるほど。三奈らしいセンスだな」

「あ、ちょっと一佳。それって褒めてるの? ちょっと褒められてるようには思えないんだけど」

「そっ、そんな訳ないだろ。勿論褒めてるよ」

 

 そうして女同士でキャイキャイと話しながら進むのを、俺と瀬呂が追う。

 

「なぁ、アクセル。俺達がここにいる理由ってあるのか?」

「どうだろうな。ただ、峰田は血の涙を流しながら俺達を見ていたぞ」

「あー……うん。出来ればあれについてはあまり思い出したくないんだけど」

 

 そう言う瀬呂の困った様子に俺は笑みを浮かべる。

 俺はああいう視線を向けられるのは珍しくない。

 何しろ、恋人達は全員が全員美女と呼ぶに相応しい、整った顔立ちなのだから。

 そんな恋人達と一緒に行動していれば、峰田が向けてくるような視線を……さすがに血涙までは流さないものの、それでも場合によっては殺気に近い視線を向けられるのも珍しくはなかった。

 だからこそ、俺は峰田の視線に思うところはあったものの、言ってみればその程度ではあった。

 だが、それはあくまでも俺ならの話で、瀬呂は違う。

 雄英のヒーロー科に来るくらい、それも実際に合格するくらいなのだから、もしかしたら瀬呂も中学時代には色々と修羅場を潜っている可能性もあるが……いや、見た感じだと、そういうのはなさそうだな。

 

「慣れるしかないな。それとも、三奈達と一緒に行動するのを止めるか?」

 

 峰田が俺達にそういう視線を向けてくるのは、結局のところ嫉妬だ。

 なら、その嫉妬の理由である三奈や葉隠と行動を共にしていなければ、峰田に恨まれる事はない。

 

「いや、それはちょっと……惜しいし」

「だろうな」

 

 瀬呂も高校生の男である以上、当然ながら女には興味がある。

 そして三奈や葉隠、ヤオモモ、拳藤といった女達と一緒に行動するのは喜ばしい事なのだろう。

 

「え? なーに? 今、私の名前を呼ばなかった?」

 

 瀬呂との会話で自分の名前が出て来たのに気が付いたのだろう。

 三奈が不思議そうに聞いてくる。

 別に隠す必要がある訳でもないので、そんな三奈に対して素直に口を開く。

 

「今日三奈達と一緒にマックに行くって話をしたら、峰田が羨ましそうな様子で見てきてな」

「あー……あのエロブドウか」

 

 三奈の口から出たその言葉に、酷いなと思う。

 だが、同時に仕方がないだろうと思わないでもなかった。

 峰田の視線はあまりに露骨すぎるというのは、男の俺でも普通に理解出来たのだから。

 そうなると、当然ながらそんな視線を向けられている女達がそれに気が付かない筈もなく、そういう視線を向けられるのが不愉快で、エロブドウ呼ばわりされてもおかしくはない。

 

「何、そっちにも問題児がいるのか?」

 

 三奈のエロブドウという言葉に、ヤオモモと話していた拳藤がそう話に割り込んで来る。

 その言葉に頷こうとしたところで、ふと今の拳藤の言葉に違和感があった。

 そっちに問題児がいるのかではなく、そっちに『も』問題児がいるのかと言ったのだ。

 それはつまり、B組にも問題児がいるという事を意味していた。

 ……もっとも、A組の場合は峰田だけが問題児ではない。

 ヒーローというよりはヴィランに向いている爆豪だったり、個性が使えるようになったばかりで、個性を使う度に怪我をする緑谷だったり、真っ直ぐな性格をしているから空回りしてる飯田だったりと、問題児はかなり多かったりする。

 もっとも、俺も自分が問題児ではないとは言わないが。

 ただ、それでも今日は特に何か問題児らしい事をしたりはしていないので、そういう意味では問題児じゃない……か?

 

「ああ、色々といるよ。なぁ、瀬呂?」

「おい、ここで俺に振るなよな!? ……まぁ、うん。そうだな。その件については否定出来ないけど」

 

 どうやら瀬呂から見ても峰田は問題児という扱いらしい。

 そうして話しているうちに、マックに到着する。

 それぞれに注文していくのだが……

 

「ちょっ、アクセル君!? 本当にそれ全部食べるの!?」

 

 注文した料理の数々を持って席に向かうと、それを見たのだろう葉隠が驚きの声を上げてくる。

 無理もないか。

 トリプルチーズバーガーにフライドポテトの3L、他にもアップルパイやチキンナゲット、飲み物を注文してきたしな。

 正確にはセットメニューに幾らか追加した形だ。

 

「ああ、このくらいは問題ない。寧ろ夕食が楽しみなくらいだ」

「うわぁ……さすが男の子……」

 

 感心したように言う。

 他の面々も、俺の持ってきた料理を見て驚いていた。

 

「いや、ちょっと待ってくれ。男の子って言ったけど、俺はアクセルみたいに食べるのは無理だからな!?」

 

 葉隠の言葉で、自分も俺と同じだけ食べられるといったように誤解されるのは避けたかったのか、瀬呂が慌てた様子で言う。

 実際、瀬呂の持っているトレーに載っているのは、普通のテリヤキバーガーとフライドポテトのL、後は炭酸飲料だけだ。

 もっとも、それでも他の面々……女達に比べると多い方だったりするのだが。

 何しろ、女達はハンバーガーだけだったり、あるいはポテトやパイだけだったりするし。

 それに飲み物といったメニューだ。

 ……ただ、ヤオモモだけが何故か羨ましそうに俺を見ている。

 お嬢様育ちでこういうファーストフード店にも初めて来るヤオモモにしてみれば、やはり物珍しいのだろう。

 それこそ初めて来たのだから、俺が注文したように色々と好き勝手に注文したいとか、そういう風に思ってもおかしくはない。

 

「そうなの? 私の中学でも結構食べる人はいたけど。ほら、クラスにいる切島とか」

 

 瀬呂の言葉に三奈がそう言い、そう言えばこの2人は同じ中学だったのかと思い直す。

 緑谷と爆豪もそうだが、競争率300倍の雄英に同じ中学が2人も合格者が出て、その2人が同じクラスって……うん、やっぱりこの雄英が、そしてA組がこの世界の原作のメインの舞台であるのは間違いないと思う。

 ん? ちょっと待った。そうなると、もしかして……

 

「三奈、一応……本当に一応聞くんだけど、もしかして三奈と切島って何か関係がないか?」

「何か? 何かって何? 同じ中学だってのは今言ったでしょ?」

「あー……そうだな。例えば幼馴染みだったり、親戚だったり、もしくは恋人同士だったり」

「……はぁ?」

 

 うおっ!

 俺の言葉に三奈が言ってきた『はぁ?』というのは、それこそヴィランではないかと思えるくらいに迫力のある声だった。

 

「ちょっ、ちょっと三奈。何て声を出してるんだよ」

 

 拳藤が慌てたように周囲の様子を見ながら、そう言うのだった。

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