転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4354話

「じゃっ、じゃあ、今日これからでも相澤先生に言って……」

 

 俺の言葉に、最初に反応したのは予想外な事に麗日だった。

 あるいはそこまでして必死にプロヒーローになりたいと、そう思っている事の証かもしれないが。

 

「待った。さすがに今日これからってのは多分無理だと思う。まだ新学期が始まったばかりだし、何より放課後になってからもうそれなりに時間が経ってるしな」

 

 そう言い、教室にある時計を見ると時間は既に午後4時半程だ。

 何だかんだと、放課後になってから1時間半くらいはこうしてここで喋っていた事になる。

 放課後になってすぐに申請……いや、使うのは放課後だけど、申請するのは別に休み時間とかでもいいのか?

 ともあれ、さすがにこの時間から申請しても受け付けて貰えないだろうと思うし、受け付けて貰っても訓練する時間は少ない。

 

「そうだぞ、麗日君。相澤先生に負担を掛ける訳にもいかないだろう」

 

 飯田のその言葉に、麗日が失敗したといった様子で照れたように笑う。

 

「そんな訳で、もし訓練をするとすれば明日の放課後からだな。……もっとも、別に強制をするつもりはない。出られる奴が出ればいいし、用事があったら別に俺に断らなくても普通に休んでも構わないといったような、緩い感じでやるつもりだ」

「それ、本当にいいんですの?」

 

 ヤオモモが不思議そうに聞いてくる。

 どうやらヤオモモにしてみれば、しっかりと鍛えるという意味でももっと厳しくやった方がいいと言いたいらしい。

 その気持ちは分からないでもない。

 分からないでもないが……そうなると、厳しすぎて訓練に付き合うのが嫌になるといった者も出てくる。

 ヒーロー科に入った以上、そういうのがそんなにいるとは思えないが……それも絶対という訳ではない。

 

「ああ。強制性があるのなら、それこそ授業と同じようなものだろうし。まぁ、あくまでも自主練とかクラブ活動に近い感じだと思って貰えればいい」

 

 これは俺の正直な気持ちだ。

 雄英では部活動とかそういうのはないので、それっぽい雰囲気を感じつつ、楽しめればいいといったような気持ちもそこにはあった。

 もっとも、実際にそういう風に言えば杓子定規な飯田辺りに注意されそうだったので、やめておくが。

 

「後は……まぁ、これについては何度も言ってるが、瞬動と虚空瞬動については技術である以上、習得は出来ると思う。ただ、当然ながらそう簡単に習得出来る技術じゃないのも事実だ。それでも習得したいと思う奴は明日から、あるいは明後日くらいになるかもしれないが、とにかくそんな感じで瞬動や虚空瞬動については本当に覚悟がある奴だけが練習をしてくれ」

 

 魔力や気の習得が必須である以上、それこそ場合によっては習得まで年単位の時間が掛かってもおかしくはない。

 ……実際にはシャドウミラーに所属する者なら、実働班だけではなく技術班に所属する者達も全員が習得してるんだけどな。

 ただ、技術班は魔法球を普通に使っているので、それによって時間を大量に使えるし、何より魔法球の中は魔力が豊富にあって魔力を感じやすく、魔法も発動しやすくなっている。

 その魔法球が使えないというのは、ヒロアカ世界で大々的に魔力や気を感じ、瞬動や虚空瞬動を使えるようになるのかはかなり難しい状況だ。

 とはいえ、それでも生徒達の実力を高めるという事を考えると、やはり多少の無理は必要となる。

 ……それが具体的にどういう風になるのかは、実際にやってみないと分からないとは思うが。

 

「なぁ、アクセル。その覚悟ってどういう意味なんだ?」

「そうだな。拳藤に分かりやすく言えば……いや、拳藤じゃなくても、とにかく分かりやすく説明するとすれば、その瞬動や虚空瞬動といった技術の習得に必死になってもなかなか習得出来ず、場合によっては年単位の時間が必要となったり……本当に最悪の場合は、そこまでやっても結局習得出来ないという可能性もある事だな」

 

 俺の言葉に、話を聞いていた者達がざわりとする。

 当然だろう。もし本当に俺の言ったような事になったら、その時間は丸々無駄になるのだから。

 実際には瞬動や虚空瞬動が使えなくても、訓練や修行によって得た経験は決して無駄になる訳ではないし、その修行の結果が自分の個性とかに有益だったりする可能性は十分にある。

 ただし、それはあくまでもそうなる可能性があるというだけで、実際にどうなるのかはそれこそやってみないと分からない。

 最善なのは、やはり瞬動や虚空瞬動を使えるようになる事なのだから。

 その辺について、予想も出来ないのがちょっとな。

 これが例えば普通の世界の話であれば、ネギま世界の住人……それも魔法について知らなかったのに、魔法を知ってそれを使えるようになるといった者達を基準にすればいい。

 だが、このヒロアカ世界の場合は魔法ではなく個性という特殊能力が普通にある。

 個性因子とやらがあるので、それによって魔力や気がどういう風に判別されるのか、それが微妙だ。

 ん? けどそうなると……無個性の奴なら魔力や気を習得出来るのはネギま世界の住人と同じくらいになるのか?

 もっとも、その辺りにはあくまでも個人差があるので、絶対にそれで習得出来るとか、そういう風には断言出来ないのだが。

 

「それは……厳しいね」

「ああ。でも、その代わり瞬動を習得すれば圧倒的な速さを手に入れられるし、虚空瞬動を習得すれば空中を蹴って移動出来るから、擬似的にだが空を飛ぶ事も出来る。それがプロヒーローとして活躍する上で、どれだけ大きな意味を持つのかはヒーロー科の生徒なら言うまでもないだろう?」

 

 瞬動での瞬時の移動というのは、ヴィランを倒すだけではなく、救助とかそういうのにも大きな力となるだろう。

 虚空瞬動にいたっては、空を飛べるヒーローというのは、かなり少ない。

 つまり擬似的にとはいえ、空を自由に跳び回れることが出来れば、それだけで非常に大きな力となるのは間違いなかった。

 先程の最悪数年を無駄にするかもしれないという言葉でショックを受けていた面々だったが、ある程度はその言葉でやる気になったらしい。

 その目にはやる気が満ちている。

 

「今の俺の話は、あくまでも一例でしかない。自分に合わないと思えば、別の技術を教えるといった事も……いや、うーん……どうだろうな」

「ちょっと、アクセル。そこで引っ掛かるなよな」

 

 呆れたように拳藤が言ってくるが……

 

「そう言われても、瞬動や虚空瞬動は技術としてあるから何とでもなるけど、それ以外に俺が教えられる技術となると……何がある?」

「それを私に聞くのか?」

 

 そう言う拳藤だったが、実際瞬動や虚空瞬動のような技術となると……気配の察知とか?

 気配で相手を察知出来るというのは、実際に出来るようになれば非常に大きな意味を持つ。

 持つのだが、同時にそれを習得するのもまた難しいのも事実。

 

「後は俺が出来るのは、それこそ殺気を感じる能力を身に付けるとか、気配を察知する能力とか、そういうのだぞ?」

「いや、それはそれで普通に凄いからな?」

 

 拳藤の言葉に皆が頷く。

 ……ああ、そう言えばそうだったな。

 シャドウミラーの面々は普通に気配を察知したり殺気を感じたりといった事が出来るから、寧ろ使えて当然といった技術という認識だった。

 もっとも、それを言うのなら瞬動や虚空瞬動もシャドミラーでは一般的な技術なのだが。

 

「とはいえ、瞬動やその上位技術の虚空瞬動と、気配や殺気を感知する能力はどちらも同時に習得するというのは……ちょっと難しいかもしれないぞ」

「だよなぁ。アクセルの話を聞いてる限りだと、どっちからだけでもそう簡単に覚えることは出来ないっぽいし。なのに、そこで2つなると……」

「なぁなぁ、アクセル。その2つ……いや、どっちかだけでもいいから、何とかしてすぐに覚えられる裏技とか、そういうのはないのか?」

 

 切島の言葉を聞いた峰田がそう聞いてくるが……

 

「無茶を言うな、無茶を。そう簡単に覚えられるのなら……」

 

 そこまで言い、途中でふと考える。

 瞬動や虚空瞬動は……俺はいつから使えるようになった?

 エヴァとの訓練だったか?

 ともあれ、何もせずに使えるようになった訳ではなく、相応に訓練をして使えるようになったのは間違いない。

 だが、気配や殺気を感じたりするのは……どうだったか。

 特に何か特訓をしたというよりも、気が付いたら使えるようになっていたというのが正しい。

 考えられる可能性としては、生死を懸けた戦いを何度も経験したからだったり、あるいはこの身体に……アクセル・アルマーに生まれ変わったからか。

 実際、この身体には転生特典とかそういうのがあったりするので、その関係で気配とかを感じられるようになってもおかしくはない。

 

「おい、アクセル。もしかして本当に何か裏技みたいなのがあったりするのか!?」

 

 言葉の途中で黙り込んだからだろう。

 峰田が……そして上鳴も期待を込めた視線を俺に向けている。

 

「あー、いや。ちょっと違う」

「おいおいおい、誤魔化すのはどうかと思うぜ。オイラが強くなれるのなら、それはアクセルも望んでいる事なんだろう? なら、隠したりはなしにしようぜ」

 

 峰田が興味津々といった様子でそう言ってくる。

 本人にしてみれば、楽に強くなれるかもしれないのだから当然だろう。

 ましてや、峰田のモギモギは峰田が使うと反射というか、跳ね返るとか、そんな感じだ。

 瞬動とかとの相性も……多分、そう悪くないと思う。

 けど……うーん……あ、いや、もしかしたら?

 あくまでも経験というか、そういう意味では試してみる価値はあるか?

 峰田との会話を思い出し、考える。

 

「あー……いや、ちょっと思いついただけだが、ぶっちゃけこれは何の確証もない事だ。それこそ今も言ったが本当に思いつきで、成功するかどうか分からない。ただ、成功したら、俺の予想通りにいけばだが、もしかしたら訓練とかなしに殺気や気配を感じられるようになる……かもしれない」

「たらとか、かもしれないとか、その言葉を聞いたオイラとしては微妙に不安なんだけど」

 

 俺の言葉に何か不安なものを感じたのだろう。

 峰田が嫌そうな表情で上鳴の後ろに隠れ……

 

「って、おい! 俺を盾にするなよな!」

「いやいや、だってほら。上鳴もオイラと一緒に手軽に技術を覚えたいとか、そういう風に言ってただろ? なら、上鳴から試して貰うのかもありかと思って。なぁ、アクセルもそう思わないか? やっぱりオイラのような小さいのよりも、上鳴のような普通の奴に試してもらった方が……」

「おいこら、俺を犠牲にしようとするな!」

 

 そんな醜い言い争いを行っている2人だったが……

 

「なら、2人同時でどうだ? もしこれが上手くいけば、殺気を感じられるようになるだろうし。プロヒーローとしてやっていく上でそれがどれだけ有用か分かるだろ?」

「その……本当に危険はないんだよな?」

「実際にやってみないと分からないから、何とも言えない」

「ほら、これ絶対怖い奴だって!」

 

 上鳴が悲鳴を上げ……

 

「ケロ、アクセルちゃん。具体的にどういう事をやるのかしら? それを話して納得出来れば、この2人もそこまで怖がらないと思うわ」

 

 梅雨ちゃんがそう聞いてくる。

 他の面々も、俺が一体何を思いついたのかといった具合でこちらに視線を向けている。

 そうだな。別にこれは隠すような事じゃないし、話しても構わないか。

 

「別にそう難しい話じゃない。殺気を感じるというのは、つまり殺気がどういうものなのかを具体的に知っていれば問題ない訳だ。つまり、俺が殺気を放って相手に当てるだけだ。そうすれば、直接殺気を感じた事によってその気配を覚えて、殺気を感じられるようになる……かもしれない可能性が微妙にあったりなかったりしたらいいなと思っている」

「ほらああああああああああああああっ! それ、駄目な奴じゃん! 絶対に駄目な奴じゃん! っていうか、アクセルは殺気を出すとか出来るのかよ!? それってつまり、アクセルが俺を殺そうとしてるって事だろ!?」

 

 がああああっ! と上鳴が叫ぶ。

 いや、そこまで叫ばなくても……目尻には微妙に涙まで浮かんでいるし。

 

「安心しろ。殺気を向けるけど、別に本気で殺そうとは思ってないから」

「殺そうとしてないのに殺気なんて出せるん?」

 

 麗日の疑問に、他の何人もが同意するように頷いていた。

 まぁ、それもそうか。

 普通ならそういう風に思ってもおかしくはない。

 

「それが出来るからこそ、俺が首席なんだよな」

「いや、それは首席関係ないでしょ」

 

 耳郎の突っ込みはスルーしておく。

 

「で、どうする? 試した事はないけど、もしかしたらそれで本当に殺気を感じられるようになったり、もしかしたら気配とかも感じられるようになるかもしれないけど」

 

 そう尋ねるが、上鳴と峰田は頑として俺の言葉に頷かず、ただひたすらに首を横に振るのだった。

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