転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4355話

「いやー、それにしてもアクセルに瞬動と虚空瞬動だっけ? そういう技術があるとは思わなかったな」

 

 電車の中で、拳藤がそう言ってくる。

 

「峰田が断った、殺気の件もあるでしょ」

 

 拳藤の言葉に耳郎がそう言う。

 昨日は帰る時も拳藤と俺の2人だけだったのだが、あれだけ人数がいれば俺や拳藤と同じ路線の奴もいる訳で、耳郎と常闇、砂藤がそうだった。

 

「殺気……これは俺も覚悟した上でアクセルから教えて貰うべきか」

「やめておけって」

 

 常闇の言葉に砂藤が突っ込む。

 

「だが……アクセルはどう思う?」

「俺か? 俺も砂藤と同じ意見だな。あの場ではああいう風に言ったが、実際に試してみないとどうなるか分からないしな」

 

 なら、それを峰田達に勧めるなという意見もあるかもしれないが、手っ取り早く習得したいといった要望を出してきたのは、峰田や上鳴だ。

 ただし、思いつきであってもそれなりに成功率は高いと思う。

 俺もいきなり濃厚な殺気を放つようなつもりはない。

 じわじわと殺気の濃度を上げていくといった感じで考えていた。

 うーん……けど、やっぱりいきなりクラスメイトに使うのは……そう考えたところで思い浮かんだのは、優だった。

 何故か龍子やねじれではなく、優が思い浮かんだのは……あの3人の中では優が一番だらけているからだろう。

 一応、俺がまだ龍子の事務所にいた時は何度か戦闘訓練を行ったものの、優の生来の怠け癖を考えると、それこそ俺が雄英に通うようになってからはそういう模擬戦とかもやらないようになっていた可能性が高い。

 龍子は性格的に真面目なところがあるし、戦闘訓練を怠るような事はないだろう。

 次のヒーロービルボードチャートの発表も近いしな。

 龍子は恐らくトップ10に入るだろうと言われている。

 それだけに、ここで油断をするようなことはしないと考えてもいい。

 ねじれはねじれで、3年になってビッグ3の一員となり、他の2人に負けないように頑張っている筈だった。

 そんな2人なら、俺が何を言わなくてもしっかりと訓練はしてるだろうが、優は……うん。

 間違いなくだらけているだろうから、殺気を感じるようにする訓練をするなら、優だな。

 

「アクセル、どうした?」

 

 早速今日龍子の事務所に行こうかと思っていると、そんな俺の様子を不思議に思ったのか、砂藤が尋ねてくる。

 

「いや、殺気を感じる件については常闇……というか、クラスメイトにいきなり使うのが不味いのは間違いない。となると、誰が別の相手で試す必要があるけど、まさかその辺のヴィランを相手に使う訳にもいかないだろうと思ってな」

 

 龍子や優が俺の後見人になってる件については、絶対に隠す必要がある訳ではないが、峰田や上鳴の耳に入ったら間違いなく面倒な事になるので、その辺りについては黙っておく。

 とはいえ、ヴィラン……ヴィランか。

 なるほど、今のは砂藤に対する誤魔化しのために口にした内容だったけど、一考の余地はあるか? ……ないな。

 即座にそう判断する。

 ヴィランがどうなっても俺としては構わない。

 だが、俺の思いつきがもし成功した場合、そのヴィランは殺気を感じられるようになったり、気配を感じられるようになったりしてしまう。

 殺気はともかく、気配を感じられるというのは不味い。

 ヴィランにしてみれば、気配を感じられるというのは悪事をやるうえでプラスにはなっても、マイナスにはならないのだから。

 つまり、俺の思いつきが失敗するだけならいい。

 殺気を受けたヴィランが、その殺気に耐えられずに気絶して終わりといったような事なら何も問題はないのだが、もし耐えて……あるいは耐えられなくても、気絶して目が覚めたら殺気や気配を感じられるようになったりしたら、洒落にならないだろう。

 もし本当に目覚めたら、それこそ殺すか、捕らえてどこかに閉じ込めておくかといった風にするしかない。

 

「止めておけよ。本当に止めておけよ? 冗談でも何でもないからな?」

 

 俺と同じ事を考えた訳でもないのだろうが、砂藤が真剣な表情でそう言ってくる。

 

「本気でそんな事をやるつもりはないから、安心してくれ」

 

 取りあえずそう言っておく。

 ただ、砂藤と常闇は……いや、話を聞いていた拳藤や耳郎も俺の言葉を完全には信じていないのか、真剣な表情で俺を見ていた。

 

「何だよ、俺がそういう事をするように見えるか?」

 

 そう聞くと、俺にとっては完全に予想外だったが、全員が頷いてくる。

 あれ? 何で俺こんなに信用ないんだ?

 いや、勿論俺の本心というか、本性というか、これまでやって来た諸々について知っていれば、そういう態度を取ってもおかしくはないと思う。

 だがそれは、あくまでもこのヒロアカ世界に来る前までの俺を知っていればの話だ。

 このヒロアカ世界に来てからは、品行方正……というのは少し無理があるかもしれないが、それでも力を振るうようなところを見せていない。

 何も知らない面々にしてみれば、それこそ俺は受験で首席になって、個性把握テストでもトップになった優等生という扱いだと思うんだが。

 

「これでも俺、自分では優等生だと思ってたんだけどな」

「まぁ、優等生であるのは間違いないと思うよ。ただ、やっぱり今日のヒーロー基礎学での戦闘訓練がやりすぎだったんだろうね」

「耳郎の言うように、クラスでも最強格の2人を1人で圧倒したしなぁ」

「ああ、あれは凄かった」

 

 耳郎の言葉に砂藤が相槌を打ち、常闇が同意する。

 まぁ、この3人にしてみればそういう風に思えても仕方ないとは思う。

 だが同時に、だからといって俺が本当にヴィランを相手に実験するように思われたというのは……うん、正直どうよ? と思わないでもない。

 

「うわぁ……アクセル、いきなりやらかしてるなぁ……」

 

 そんな耳郎達の様子に、拳藤が呆れと共にそう言ってくる。

 うーん……こういう反応を見ると、やっぱりちょっとやりすぎたのか? と思わないでもない。

 ただ、俺にしてみれば特に本気らしい本気も出さずに戦った結果が今日のヒーロー基礎学だ。

 もっとも少し前まで中学生だった事を思えば、思い切り手加減をしたとはいえ、それでも曲がりなりにも俺と戦えた爆豪と轟がおかしいのだろうが。

 ヒーロー基礎学の時に峰田が言っていたように、才能マンって奴だな。

 ……もっとも、轟はともかく爆豪は口の利き方が問題だ。

 もしヒーローになっても今のような口の利き方をしていたら、それこそ問題になってもおかしくはない。

 そしてネットにアップされて騒動になるのが容易に想像出来る。

 口の利き方なら俺も色々と問題はあると自覚しているものの、俺が雄英に入学したのは、プロヒーローになる為ではなく、生徒達の前に壁として……それもちょっとやそっとでは乗り越えられないような壁として立ち塞がるよう、公安に依頼されたからだしな。

 だからこそ、俺は自分の口の利き方とかそういうのは気にしていないものの、爆豪の口の利き方はどうにかした方がいいと思う。

 

「俺が首席だという実力を見せただけなんだけどな」

 

 そうして会話をしていると、俺と拳藤の使っている駅に到着する。

 耳郎達とは同じ電車に乗っているが、さすがに駅までは同じではないらしい。

 

「じゃあ、また明日な」

 

 そう声を掛け、拳藤もまた別れの挨拶をしてから電車から下りる。

 

「それにしても、A組は濃い面子が揃ってるな」

「B組は違うのか?」

 

 歩きながらそう聞くと、拳藤は歩く速度を少し緩め……

 

「うちもA組の事は言えないな」

 

 そう言う。

 B組にどんな人物がいるのかは、俺も知らない。

 俺がB組の生徒で知っているのは、拳藤以外には今日学食で一緒になった取蔭だけなのだから。

 もっとも拳藤の話からすると、B組にもかなりの問題視がいるという話だったが。

 

「だろう? そもそも雄英に来る連中の大半は、そういう奴が多いんだよ。全員がそうだと言う訳ではないが」

 

 ヤオモモとかは、真面目な性格をしている。

 いわゆる、常識枠か?

 ……もっとも、ヒーローコスチュームは露出が大きく、お嬢様育ちなので常識が微妙に違うといったものもあるが。

 

「それは……まぁ、B組も同じかもしれないな」

 

 そうして会話を続けながら歩いていると、やがて分かれ道に来る。

 

「じゃあ、俺はこっちだから」

「ああ、今日はA組に呼んでくれて嬉しかったよ」

「そう言って貰えるのなら、呼んでよかった。明日の放課後からやる予定の訓練はどうする?」

「あー……私は参加したいと思ってるけど、B組から私だけってのもちょっとな」

 

 なるほど、B組の姐御としては自分だけがA組の自主訓練に参加するのは問題か。

 もしそうなれば、場合によっては拳藤がB組の中で浮く可能性もある。

 

「なら、無理にとは言わない」

「いや、出来れば私も本気で訓練には参加したいんだぞ? アクセルが使うっていう、瞬動や虚空瞬動? それが使えるようになれば、私にとっても心強いし」

「だろうな」

 

 拳藤のその気持ちは理解出来る。

 拳藤の個性は、手を大きくするという、分かりやすいものだ。

 単純であるが、その巨大な手から放たれる一撃は強力無比だろう。

 ……だが同時に、手が大きくなるとはいえ、別にそれで遠距離攻撃が出来る訳ではない。

 ロケットパンチとか、あるいは指を飛ばすといったような。

 手が巨大になる分だけ間合いは広がるが、それは些細なもの……というのは少し大げかもしれないが、中距離や遠距離攻撃が出来る者達と比べるとどうしても劣るだろう。

 そんな拳藤だったが、瞬動を使えば一瞬にして相手との間合いを縮め、巨大化した手による一撃を放てる。

 虚空瞬動を使えるようになれば、空中を蹴って走ることによって、相手の意表を突くような一撃を放つ事も出来るようになるだろう。

 そう考えれば、拳藤が瞬動や虚空瞬動を習いたい、習得したいと思うのはおかしな話ではない。

 

「だから……そう、だからB組の方で入学のゴタゴタが落ち着いたら、そっちに顔を出すようにするよ。出発が遅れる分、三奈や透、ヤオモモに出遅れるのは悔しいけど」

 

 そう言いつつも、拳藤の表情にそこまで悔しそうな色はない。

 こういうさっぱりしたところは、拳藤の魅力だよな。

 

「分かった。じゃあ、拳藤が合流するのを楽しみにしてるよ」

「そうしてくれ。……ああ、ちなみに、本当にちなみにだけど、もしアクセルの自主訓練に参加するのなら、何人か連れていってもいいか?」

「問題を起こさないような奴なら構わないけどな」

 

 A組で問題を起こしそうなのは……やっぱりそのトップクラスとなると爆豪だろう。

 ただ、爆豪の性格を考えると俺の主導する訓練に参加するかどうかは微妙なところだが。

 今日の様子を見た感じだと、爆豪は恐らくこの世界の原作主人公である緑谷のライバル枠って感じなので、出来るだけ強くなって欲しいとは思ってるんだが。

 それに緑谷の性格を考えると、恐らくこの話を聞けば訓練に参加する筈だ。

 何しろ緑谷は、個性が発現したばかり。

 だからこそ少しでも個性を使いこなせるようになる必要があった。

 ……今日の爆豪の様子を見ると、緑谷が個性を使えるようになったというのは爆豪も知らなかったらしいし。

 だからこそ、爆豪は緑谷に対して色々と思うところがあるのだろう。

 教室に戻ってきた緑谷は、すぐに爆豪を追った。

 出来れば追いついて関係を改善出来ていればいいんだが。

 爆豪の性格を考えれば、それはそれで難しいだろうとは思うけど。

 

「問題か。……うん、分かった。そういう奴は連れていかないようにするよ。あるいは連れていくにしても、問題を起こさないように言い聞かせてから連れていく」

「頼む。……じゃあな」

「ああ、また明日」

 

 そうして言葉を交わし、拳藤と別れる。

 これが恋人同士なら、別れ際にキスをしたり……あるいはそれこそ俺の部屋に連れていったりするんだろうが、俺と拳藤はそういう関係じゃなくて、あくまでも友人同士だしな。

 なので、こういう感じでいい訳だ。

 そこからは1人でマンションに戻り、1階のスーパーで色々と食事を購入していく。

 あ、でもそう言えば昨日スーパーで買った寿司とかもまだ空間倉庫の中に入ってたんだよな。

 そうなると……いや、空間倉庫にいれておけば、いつでも好きな時に新鮮な寿司を食べられるんだし、今日は今日で何かを買っていってもいいか。

 そもそも俺は満腹にならないんだから、今日買った分と昨日買った分、両方を食べてもいいんだから。

 

「ありがとうございました」

 

 支払いをすると、店員から丁寧に頭を下げられ、挨拶される。

 ここは高級スーパーだけあって、店員の教育もしっかりしてるんだよな。

 そういう意味では、このスーパーでは気持ちよく買い物出来る。

 買い物を終えると、エレベーターを使って自分の部屋に行き……

 

「ん?」

 

 扉に手を掛けた瞬間、指紋認証で鍵が開かない。

 つまり、もう鍵が開いている事に気が付くのだった。

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