転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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この話で出てくるソースネタは、ハーメルンの中でもトップクラスに面白いヒロアカの小説、峰田ァ!お前の前のオレオ取ってオレオ!!から、作者のそとみちさんの許可を貰って使わせて貰いました。
初めて読んだ時、腹が痛くなる程に笑ったくらいに面白かったネタなので、ヒロアカ編をやる時は是非とも使いたいと思ってそとみちさんに連絡をして許可を貰いました。

そとみちさん、ありがとうございます。


4356話

 部屋の鍵が開いているとはいえ、特に焦ったりはしない。

 一般的に考えて、鍵が開いているのだから誰かが部屋の中にいるという事を意味している。

 そういう時に考えられる可能性としては、やはり空き巣だろう。

 このマンションは高級マンションで、当然ながらセキュリティもしっかりとしている。

 だが、ヒロアカ世界には個性という特殊能力が存在する以上、個性次第ではセキュリティを潜り抜けて空き巣に入るといったことも出来るかもしれない。

 壁とかをすり抜けるような、そんな個性とか。

 もしくはもっと単純に転移系の個性とかでも、その可能性は十分にある。

 とはいえ、それならそれで別に構わない。

 寧ろ殺気とかを相手に感知させられるかどうかといった実験体を探していたので、向こうから実験体が来てくれたのが歓迎すらする。

 とはいえ、多分この可能性はそう大きくないだろう。

 そうだったらラッキー程度に思っておこう。

 なら、次の可能性として考えられるのは、公安か。

 現在は友好的な関係を結んでいるとはいえ、雄英に生徒として入学して欲しいという依頼をしてきた事からも分かるように、公安も完全に俺を信用し、信頼している訳ではない。

 いや、幾つも証拠を見せたんだし、俺が異世界から来たというのはさすがに信じているとは思うが、それで俺をどのように扱っていいのか分からないというのもあるだろう。

 それを知る為に、監視カメラや盗聴器を仕掛け、あるいは家捜しをしても……それを俺が許せるかどうかは別として、分からないでもない。

 とはいえ、公安もそんな事で今まで多少なりとも築いてきた信頼関係を壊したいと思わないだろう。

 委員長や目良ならそう考える筈だ。

 ……まぁ、それ以外の公安の面子の中には暴走する奴がいないとも限らないが。

 ともあれ、こちらも可能性はゼロではないが、かなり低い。

 そうなると、残っているのは……

 扉を開き、部屋の中に入る。

 するとリビングからTVの音が聞こえてきた。

 ヴィランや公安が俺の部屋に忍び込んだとして、まさかリビングでTVを見ているというのはまずないだろう。

 そうなると、考えられる可能性は……

 

「やっぱりお前か」

 

 リビングに行くと、そこではソファで横になってTVを見ている優の姿があった。

 

「あ、おかえりー」

「いや、おかえりじゃなくてな。一体俺の部屋で何をしてるんだよ?」

 

 俺が帰ってきたのに気が付いたのだろう優が、手を振ってそう声を掛けてくる。

 一体いつから俺の部屋にいたのか、ソファの周りには菓子だったり、惣菜だったり、パンだったり、ケーキだったり……色々なのが置かれている。

 せめてもの救いは、ロボット掃除機があるおかげで床に散らばった食べかすを綺麗に掃除してくれる事か。

 ……俺の気のせいか、部屋に入ってきてからロボット掃除機がずっと優の寝転がっているソファの周囲を動き回っているような気がするんだが。

 もしかして、ロボット掃除機のAI機能で優がゴミを散らかす要注意人物だと認識されてるのかもしれないな。

 その本人は、ロボット掃除機の様子に気が付いていないみたいだったが。

 

「何って、ちょっとリューキュウ先輩からアクセルの様子を見て来てって言われたから」

「……優にか?」

「ちょっと、何よその言い方。それだと、私がまるで仕事が出来ない人みたいじゃない」

「今の自分の姿を見て、そういう事を言えると思うのか?」

 

 寝転がってTVを見て、ソファの周囲には大量の食べ物。

 今の優を見て、マウントレディだと言われても……それを信じる者がいるかどうかは微妙だろう。

 ヒーローコスチュームを着ていれば話は別だったかもしれないが、今日は私服だしな。

 マウントレディの私服姿と言えば聞こえはいいんだが……この光景を見るとなぁ。

 極度の女好きの峰田や上鳴でも、『えー……』となりそうな気がする。

 

「これは……少しくらいゆっくりしてもいいでしょ。ちょっと忙しかったんだから」

「忙しい? 優が? ……はっ」

「ちょっ、あんた今鼻で笑ったでしょ!? そうよね、笑ったわよね!?」

 

 寝転がっていた優が、ガバリと起き上がって俺に向かって叫ぶ。

 余程鼻で笑われたのが不満だったらしい。

 

「いや、だって……優がだぞ? あの優が。忙しい? 俺の知ってる優ってのは、そしてマウントレディってのは、怠け者の代名詞なんだが?」

「ちょっと、何よそれ! ソースどこよソース!」

 

 ばんばんと床を叩きながら叫ぶ優。

 その衝撃によって狙った場所を掃除出来なかったらしいロボット掃除機が、苛立たしげに身体を左右に振ってるのは……うん。俺の気のせいだな、多分。

 

「ソースか? ほら」

 

 幸い、空間倉庫の中には幾つかソースがある。

 とんかつソース、中濃ソース、ウスターソース、焼きそば用ソース、お好み焼き用ソース、たこ焼きソース。

 ……前者3つはともかく、後者3つは同じじゃないのか? と思わないでもないが。

 多分、メーカーがそれように微妙に配合を変えていたりするんだろうな。

 ちなみに他にも、カレー用ソースとかもある。

 何でも、カレーにソースを掛けるらしい。

 ソースには様々な香辛料が使われているから、カレーの隠し味として使う事はあると以前誰かから聞いた覚えがあったが、これは隠し味用のソースという訳ではなく、普通に……カレーライスとして出した皿に掛けるソースなんだとか。

 

「ほら、ソース」

「誰がソースを出せって言ったのよ!」

「いや、優だろ?」

「そういう意味じゃなくて! それくらいは分かってるでしょうに……っていうか、なんでこんなにソースがあるのよ」

「一応異世界産のソースだと言えば、貴重な品だとは思わないか?」

 

 ガキッと。

 俺の言葉に、ソースの入った瓶を弄っていた優の動きが止まる。

 ちなみにこれらのソースのうち幾つかは普通にプラスチックの入れ物、よくあるソースの容器に入っている物だが、幾つかはちょっとお高めのソースでガラスの瓶に入っていたりする。

 正直なところ、普通のソースとそういうちょっと高めのソースの味の違いというのはそこまで分からないんだが……まぁ、それでもどうせならという事で、こっちを買っている。

 四葉からいいソースだと言われたのもあったしな。

 

「って、ちょっと! いきなりそんな貴重な物を出さないでよね!」

「そうか? 俺にしてみれば、優……というか、マウントレディと言えばソースのCMってイメージあるんだけど」

「何よそれ、それこそソース出しなさいよ、ソース! ……ああ、勿論こういうソースじゃなくてね」

 

 俺の言葉が理解出来ないといった様子の優。

 うーん……言われてみれば、優とソースって別にそこまでしっくりくる組み合わせじゃないよな。

 とはいえ、それは客観的に見た場合で……俺にしてみれば、何故か優とソースというのはこれ以上ない程にしっくりくる組み合わせだった。

 そう説明すると、優は訝しげな視線を俺に向けてくる。

 

「ふーん。……まぁ、アクセルが私にどういう印象を持っているのかはちょっと分からないけど。でも、そうね。アクセルがそう言うのなら、もし今度ソースのCM案件が来たら引き受けてみようかしら」

 

 俺の言葉に何を思ったのか、優はそう言ってくる。

 

「さて、ソースの件はそれでいいとして……こうして今日ここで優と会ったのもちょうどいい」

「え? 何よ? アクセルのその口調、何だか嫌な予感がするんだけど」

「力が欲しくないか?」

「え? ちょ……だから、いきなり何よ」

「だから、力が欲しいよな?」

「何で微妙に言葉を変えてるのよ。別にそこまでして力は……」

「そうか。そこまで力が欲しいと言うのなら、力を与えよう」

「ちょっと! 人の話を少しは聞いてよ!」

「まぁ……とはいえ、別に即物的な力を与えるとかそういう訳じゃないんだが。いわゆる殺気を感じられる方法を教えようと思ってな」

 

 そう言うと、今まで必死に叫んでいた優がキョトンとした様子を見せる。

 

「あら……アクセルがそういう風に言うんだから、何かもっと人に言えないような事をするんだと思ったんだけど」

「殺気とか……上手くいけば気配を感じられるようになる技術だな。個性じゃないから、訓練次第で誰でも……とは言えないけど、習得出来るようになる」

「え? それマジ?」

「マジだ。もっとも、普通ならそう簡単に習得出来る技術じゃないけどな」

「何だ、じゃあ意味がないじゃない。今から訓練をしてそういう技術を覚えろって言いたいの? 簡単に覚える事が出来ないのなら、やる意味はないんじゃない?」

 

 優は個性は強力だったが、こういうところがちょっとな。

 龍子だって強力な個性を持ってはいるが、努力を怠る事はない。

 それこそ俺が龍子の事務所で寝泊まりしていた時は、ねじれと一緒に訓練を受けたりもしていたくらいだ。

 ……優はその時もサボっていたけどな。

 いや、別に義務や強制って訳ではないので、それはそれで別にいいんだが。

 

「だから言っただろう? 普通ならって。つまり、普通じゃない……裏技でなら、どうにかなる! ……かもしれない」

「え? 本当!? ……って、最後にちょっと何か付け足さなかった?」

「気のせいだろ? ともあれ、これが上手くいけばだが、殺気や気配を感じられるようになるかもしれない。あるいはそれだけで完全に殺気や気配を感じるのは無理かもしれないけど、切っ掛けにはなるかもしれない。で、どうする?」

「ぐ……ぐぬぅ……」

 

 悩む優。

 優にしてみれば、お手軽に殺気や気配を感じられるようになるのかもしれないのだが、気が向いているのは間違いないだろう。

 

「どうする? 優にとって殺気や気配を察知出来る技術というのはあって損はないと思うけど。特に優の場合は、巨大化の個性を使わない限りは普通の女なんだから」

 

 いざという時に巨大化出来るというのは、優に余裕をもたらすだろう。

 だが殺気や気配を察知出来るのなら、そもそもそのようなピンチにはならない。

 そう考えると、やはり優もそういう技術を習得した方がいいと思う。

 そんな俺の思いは、優も同様なのだろう。

 少し考え……優が頷く。

 

「分かったわ。それが本当に出来るのなら、やってみたいと思う。けど、本当に問題ないんでしょうね?」

「どうだろうな。正直なところ分からない。これはあくまでも今日雄英で話をしている中で思いついて、もしかしたら……という風な感じの奴だし」

「……そんな感じで思いついたのを私に試そうと?」

「そうなるな。けど、まさかヴィランを相手に試す訳にもいかないだろ? もし成功したら、ヴィランが殺気や気配を察知出来るようになって、ヴィランとして厄介な存在になるし」

「それは……否定出来ないわね」

 

 この世界に気配を察知するといった技術はない。

 いや、実際にはあるのかもしれないが、一般的じゃないのは事実だ。

 なのにヴィランがそういう技術を習得したら、それこそプロヒーローにしてみれば厄介極まりないだろう。

 プロヒーローが近付いてきたのを気配で察知し、即座に逃げ出すとかされると対処が難しくなるし。

 

「だろう? かといって、生徒達には……生徒達だからこそ、止めた方がいいと思う。それで生徒に悪影響が出たら危ないし」

「ちょっと、悪影響が出るかもしれないんじゃない」

「あくまでもその可能性があるってだけだ。そして、実際にはそこまで問題ないとは思っている」

「……本当でしょうね?」

「いや、そこはやっぱり『ソースどこよ、ソース』と言って欲しいんだが」

「あのね……真面目にやってくれる?」

 

 優にジト目を向けられる。

 

「悪いな。じゃあ……まずはやるか」

「頼むわよ。で、どうすればいいの? 何か用意する物とかある?」

「いや、そういうのは特にない。ただ、ソファに寝転がっているままだと格好が付かないし、少しそれらしい雰囲気を作る為にも、床に座ってくれ」

「……まぁ、いいけど」

 

 そう言い、優はソファから立ち上がると少し離れた場所まで移動する。

 ソファの近くだと、自分が用意して散らかしたスナック菓子とかその他諸々があるからだろう。

 それについては後で優に片付けて貰うとして……

 

「じゃあ、やるぞ」

「いいけど、私はどうすればいいの?」

「優は別に特に何かをやる必要はない。ただそこに座っていればいい」

「え? それは本当に殺気とか気配を感じられるようになるの?」

「俺の予想が正しければだけどな。あくまでもそういう可能性があるってだけで、もしかしたら何も習得出来ないかもしれない。ただ、本当に習得出来る可能性もある」

「……分かったわ。やってちょうだい」

 

 ここでようやく優も覚悟を決めたのか、そう言ってくる。

 そんな優に向かって頷くと……俺は優に向け、殺気を放つ。

 殺す、という俺の思いを叩き付ける……

 

「あ」

 

 瞬間、優が一言呟いたかと思うとそのまま床に倒れ……同時に、優の座っていた場所に水溜まりが出来るのだった。

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