転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4357話

「えっと、これは……どうすればいいんだ?」

 

 気絶した優を見て、そう呟く。

 これがただ気絶しただけなら、それこそ先程まで優が寝転がっていたソファにでも寝かせておけば、やがて気が付くだろう。

 だが……この場合、問題なのは床に広がっている水溜まりだ。

 当然ながら水やジュースを零したとかそういうのではなく……うん。つまりはまぁ、優のお漏らしだ。

 これをどうにかしなければならないのだが、優の事を考えると俺が後始末をするのは、それはそれで不味い。

 特殊な趣味を持つ者……それこそA組の峰田辺りなら、喜んで後始末をしたりするだろうが、幸か不幸か俺にそういう趣味はない。

 なら、優が気が付くまでこのままにしておいて、優が気が付いてから自分で後始末をさせるか?

 そうも思ったが、それはそれで優のプライドを傷つける事になるだろうし……

 

「となると……龍子か」

 

 そう思ってスマホで連絡を入れるが、出る様子はない。

 なら、ねじれ……と思ったが、こっちも出ない。

 これは多分、あれだな。龍子と一緒にヒーロー活動をしてるのだろう。

 ヴィランを追っているのか、それとも見回りをしてるのか。

 ともあれ、連絡が付かない以上は……

 

「えっと、これ……どうしろと?」

 

 俺が後片付けをするのか?

 床を拭くとかそういうのは……まぁ、色々と思うところはあるが、やってやれない事はない。

 だが、それでも優の……それも下着とかそういうのをどうしろと?

 これがあるいは、俺の恋人であるのなら俺でも何とか出来るだろう。

 だが、優は別に俺の恋人でも何でもない。

 そうなると、今のこの状況で頼れるのは……まさか、公安に頼む訳にはいかないしな。

 公安は俺との関係をそれなりに重視しているから、頼めばやってくれるだろうし、当然ながら目良のような男の職員ではなく女の職員を寄越すような事はしてくれるだろう。

 だがそうなれば、当然ながら公安における優の評価に影響する可能性も否定出来ない。

 そう、ヒーロー関係の全てを取り仕切っている公安の、だ。

 ある意味でお仕置きを含めて俺の実験に付き合って貰ったとはいえ、さすがにそれは色々と不味いだろう。

 そうなると、他に頼れる相手は……

 

「拳藤、か」

 

 女であり、何よりこのマンションから一番近くに住んでいる。

 女であるというだけなら、三奈や葉隠、あるいはヤオモモとかにも連絡が出来たりするが、ここまで来るのに時間が掛かりすぎると、それこそ優が気が付く可能性がる。

 さすがに三奈や葉隠が来るまでの間、気が付いたら再度気絶させるなんて事をやるのは優に悪いしな。

 そうなると、やっぱりこの状況で頼れるのは拳藤しかいない。

 だが、当然ながらこの状況で拳藤を俺の部屋に入れると、気絶している優と一体どんな関係なのかといったように疑問を抱かれるだろう。

 とはいえ、それを考えた上でも拳藤に頼るのが最善、か。

 一度決めれば、優が気が付くよりも前に全てを終える必要があるので、すぐにスマホで拳藤に電話をする。

 すると、すぐに拳藤が出る。

 

『もしもしアクセル? どうしたの? 私に電話で連絡するなんて珍しいじゃん。さっき別れたばかりなのに』

 

 拳藤の声と同時に、どこかの店……スーパーか何かか? のBGMが聞こえてくる。

 どうやら、まだ家には戻っていなかったらしい。

 これはラッキー……なのか?

 

「悪い。実はちょっと手を貸して欲しくて」

『手って……おい、アクセル。何か妙なことをしたんじゃないよな?』

「あー……妙な事、妙な事か」

 

 そこで言葉を一度止め、水溜まりの中で気絶している優に視線を向ける。

 妙な事……か?

 

「妙な事かどうかと言われると、多分妙な事だ。とはいえ、別に犯罪とかそういうのじゃないから、その辺については安心してくれ」

『まぁ、アクセルならそういう事をするとは思わないけどね』

 

 いや、それはそれで見る目がないぞ。

 今回は確かに何も犯罪は犯していない。

 けど、俺が今まで生きてきた中で犯罪行為と言われるようなのは、それこそ数え切れない程にやっている。

 ギャングやテロリストを襲撃して金目の物を手に入れたり、敵対している組織の研究所とか格納庫に侵入して新型機を奪ったり。

 それ以外にも、それこそ数え切れないくらいに。

 とはいえ、ここでそんな事を言える筈もなかったが。

 

「拳藤が俺を信頼してくれていて助かるよ」

『それで? 何をすればいいんだい?』

「まず言っておくが、さっきも言ったが犯罪じゃない。それを承知した上で……女用の下着と服を適当に見繕って俺の部屋まで持ってきてくれ」

『アクセル……警察に行くのは一緒がいいか?』

 

 そう聞いてくる拳藤に俺は慌てて口を開く。

 

「だから、そういうのじゃないって。……実は、今日の放課後に峰田や上鳴が殺気とか気配を察知する技術をもっと簡単に覚えられないかって言ってただろ? それで思いついたのを試してみたら……その、相手が気絶した」

『アクセル……一体何をやってるんだよ。ん? 気絶しただけなら、別に下着とかは……おい、ちょっと待て』

「ちなみに、今のこの世界だと格闘技は衰退してるけど、その格闘技の中でも柔道で絞め技の練習をする時とかって、やる前にトイレに行っていたらしいな」

『お前……しかも、女物の下着や服という事は、つまり相手は女だろう? 一体何をやってるんだよ』

 

 呆れた様子で言われるが、俺としても反論のしようがない。

 

「まさかこんな状況になるとは思わなかったんだよ」

 

 殺気を感じた事によって怯えるといったことはあるかもしれないと思ったが、それでも気絶し……更に漏らすとは思えなかった。

 

『はぁ……分かったよ。アクセルの頼みだし、何とかする。それで、住所を教えてくれ』

 

 どうやら拳藤に助けて貰えるらしい。

 それを知り、安堵しながらこのマンションの住所を教える。

 

「マンションの前で待ってるから、すぐに分かると思う」

『それは……助かるけど、いいのか? マンションの外で私を待っているって事は、気絶した女の人をそのまま部屋に残しておくって事だろ?』

「そうなるけど、そうした方が問題はないんだよ」

 

 このマンションは高級マンションだけに、セキュリティも厳しい。

 まぁ、マンションの前にある呼び鈴を使えばこの部屋に連絡は出来るんだけど、今はそういう時間も惜しいしな。

 

『分かった。アクセルがそう言うのなら、そうしよう。じゃあ、すぐに行くから』

 

 そう言い、電話が切れる。

 

「さて。……出来れば、俺が拳藤と戻ってきた時には既に気が付いていて、床の掃除もして、風呂に入っていてくれるといいんだけど。……どうだろうな」

 

 俺にとっては、その展開が一番楽で問題ない。

 しかし同時に、自分にとって都合が良すぎるだろうとも思ってしまう。

 

「書き置きでも残しておくか」

 

 空間倉庫から取り出したメモ帳に、着替えを用意してくると書いて、ソファの側に置いておき、部屋から出るのだった。

 

 

 

 

 

「アクセル!」

 

 マンションの前で待つ事、十数分。

 予想していたよりも大分早い到着に驚きながらも、声を掛けながら近付いて来た拳藤に手を振る。

 

「悪いな、拳藤」

「全くだ。まさかアクセルに女を気絶させる趣味があるとは思わなかった」

「いや、ないから」

 

 このままだと妙な性癖の持ち主にされそうだったので、即座に否定しておく。

 実際、俺はそういう趣味を持っていないのだから。

 

「ふーん。まぁ、いいけど。じゃあ、行くか。部屋に置いてきたんだろ?」

「分かった、こっちだ」

 

 そうして俺は拳藤を連れてマンションの中に入る。

 1階にあるスーパーに入るのとは別の扉から。

 この扉を使って中に入ると、高級マンションだけあって管理人のいる部屋の前を通る必要がある。

 当然ながら、マンションの住人ではない相手が無断で通ろうとすれば、誰なのかと聞いてくるし、それで答えられなかったり怪しかったりした場合は止めるだろう。

 何でも防御系のいい個性を持ってるらしいし。

 ただ、今回はマンションの住人である俺が拳藤と一緒にいるので、特に何か声を掛けられたりもせず、素通りする。

 

「凄い綺麗なマンションだな」

 

 ホールとなっている場所を見ながら、拳藤が呟く。

 その言葉は分からないでもない。

 塵一つない……とまでは言わないが、それでも目立つようなゴミの類はないのだから。

 このホールはマンションに入ってすぐの場所にあるので、言ってみればマンションの顔のような場所だ。

 だからこそ管理人もしっかりと綺麗にしているのだろう。

 

「管理費も込みで家賃は結構な値段だしな」

 

 1ヶ月20万だったか。

 東京とかでも1人暮らしならかなりの部屋に住める家賃だ。

 雄英の近くにあると考えれば、ある意味でこの家賃も納得出来るのだが。

 とはいえ、幾ら家賃が高額であっても俺にとっては関係ない。

 何しろ衣食住の全ての金額は公安が支払っているのだから。

 なので、具体的な家賃の詳細とかも知らないし、興味もない。

 公安が用意した口座から、毎月自動的に引き落とされるのだから。

 

「私の住んでる所とは比べものにならないな」

「ほら、こっちだ」

 

 興味深く周囲の様子を見ている拳藤だったが、俺の言葉に気が付くと足早に追ってくる。

 そしてエレベーターのある場所まで移動すると……

 

「え? 何でこんなにエレベーターがあるんだ?」

「基本的に、その階の直通のエレベータしかないからな。……ほら、こっちだ」

 

 そう言い、俺は拳藤と20階に直通のエレベータの前まで行く。

 幸い、俺が乗ってから他の20階に住んでる人達は利用しなかったらしく、1階にあったエレベータはすぐに扉が開く。

 俺がその扉に乗ると、拳藤も遅れて乗り込む。

 

「このエレベータは20階用だから、途中の階層で止まったりはしない」

 

 これは相応の金が掛かるものの、使う方にしてみればかなり便利なシステムだ。

 途中の階層で止まるというのを繰り返すと、どうしてもストレスになるしな。

 また、このエレベータも普通のと違ってかなり速度が出るようになっており、それでいて安全性についてもしっかりと確認されていた。

 この辺についても、高級マンションらしいんだろうな。

 その速度のお陰で、すぐに20階に到達し……

 

「ほら、こっちだ」

「随分と早いな」

「そういう機種なんだろ。それより、気絶してる優が気が付くと面倒だから、少し急ぐぞ」

「優という名前なのか、アクセルが気絶させた相手は」

「そうだ」

 

 そう答えてから、あれ? もしかしてこれは話さない方がよかったのでは? と思ってしまう。

 いや、けどまさかマウントレディと説明出来る筈もないしな。

 ……ただ、マウントレディのヒーローコスチュームは特に顔を隠しているって訳でもないので、優を見ればマウントレディだと気が付くかもしれないな。

 そうなったらそうなったで……うん。まぁ、雄英の学生がプロヒーローと繋がりがあるというのは、そこまでおかしな事でもないという感じで誤魔化そう。

 そう思いながら、俺は自分の部屋の前まで移動すると扉のロックを外し……

 

「入ってくれ」

「……お邪魔します」

 

 俺の言葉に、何故か若干緊張した様子で拳藤は部屋の中に入る。

 

「拳藤? どうした?」

「うるさい、馬鹿。こう見えて男の……それも同年代の男の部屋に入るのは初めてなんだから、緊張するなって方が無理だろ」

「意外だな」

 

 本当に意外だった。

 拳藤の性格からして、そういうのはあまり気にしないタイプだとばかり思っていたんだが。

 普段の姐御ぶりが嘘のような感じだな。

 もっとも、その辺について突っ込むような事はしない。

 ここで下手にその辺に突っ込んだ結果、拳藤が不機嫌になって……最悪、このまま帰るとか言い出したら洒落にならないし。

 なので、その辺については黙っておいた方がいいだろう。

 

「上がってくれ。……こっちだ」

 

 一応、龍子とかが来るのでスリッパとかも用意はされている。

 俺はそういうのは気にせず、普通に歩くのだが。

 

「うわ……広いな。ああ、こっちか」

 

 俺と一緒にリビングに入った拳藤は、その中を見て感心しつつ、ソファに寝ている優を見る。

 ちなみに当然だが優の濡れた服でソファが濡れないように、優とソファの間にはタオルが敷かれている。

 

「あれ?」

 

 そんな中、ふと俺は異変に気が付く。

 具体的には、先程優が漏らした部分。

 結局そのままにしてあったのだが、そこが綺麗さっぱり掃除されていたのだ。

 勿論、俺は掃除していない。

 なら、優か?

 そうも思ったが、見た感じだとまだ気絶したままだ。

 まさか、気絶したまま自分が漏らした場所を綺麗に掃除したとか……うん、さすがにそういうのはないと思いたい。

 そうなると、一体誰が?

 疑問に思ったのだが、そんな俺の疑問に反応するように、ロボット掃除機がフローリングの上を移動しているのを見つける。

 ……もしかして、このロボット掃除機か?

 てっきりゴミ掃除……埃とか食べかすとかそういうのを掃除するだけだとばかり思っていたが、もしかしたら水とかを零した奴も掃除出来るのかもしれないなと、そう思うのだった。

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