転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4360話

 翌日、俺はいつものように部屋を出て、スーパーで朝食やおやつ代わりにパンやおにぎり、弁当を購入して駅に向かう。

 昨日、優は結局俺や拳藤との話し合いを終えると、帰っていった。

 一応来客用の部屋とかもあるので、泊まっていってもよかったのだが……若い男の部屋に泊まるのは、優にとって外聞が悪いのだろう。

 優はルックスとか人気で売っているヒーローだ。

 勿論、実力がない訳ではないが、それでも人気の方が大きな意味を持っている。

 そして当然の話だが、そういうルックス……いわば、一種のアイドル的な人気を持つ優にしてみれば、若い男と1つ屋根の下で眠るというのは、場合によっては人気に致命的なマイナスとなる。

 そうならないようにするには、どうすればいいか。

 簡単な事だ。俺の部屋に泊まらなければいい。

 それにまだ夜遅いって訳でもなかったので、自分の家に、もしくは一度龍子の事務所に寄るのかもしれないが、とにかく優は帰った訳だ。

 そしてこちらもまた当然ながら、拳藤も優と一緒に帰った。

 ……ちなみに、拳藤が買ってきてくれた優の服や下着の代金については、当然ながら優が支払っている。

 優にとっても、この状況で俺に自分の分の下着や服の代金を支払えとは言えなかったのだろう。

 これで俺が優の恋人とかそういう立場だったら、また話は微妙に違うけど。

 

「おーい、アクセル」

「悪い、待たせたか?」

「別にそんなに待ってないよ」

 

 駅の前で俺を待っていた拳藤とそんな会話を交わす。

 一緒に学校に行くといった約束をしている訳ではないが、それでもこうして一緒に学校に行くのが習慣になってしまったな。

 いや、この場合は習慣という表現は正しいのか?

 もっとも新学期が始まってからまだ数日。

 それを思えば、まだ習慣とまでは言えないのかもしれないが。

 

「いやいや、そこは『今来たところだよ』じゃないのか?」

「あのな……アクセル、私は別にお前とデートをするつもりはないんだけどな」

「そうなのか? ちょっと残念だな」

「残念って……ああ、ほら。そろそろ行かないと電車に乗り遅れるぞ」

 

 そう言うと、拳藤は俺の手を引っ張って駅に入っていく。

 この時、俺を置いていくんじゃなくて、こうして引っ張って行くのが拳藤らしいよな。

 姐御と呼ばれるだけの事はある。

 そもそも電車は東京ほどではないが、それでも10分に1本くらいはある。

 まだ時間的にそれなりに早いし、1本や2本遅れたところで特に問題はない。

 とはいえ、ここでそれを言うのはそれはそれで危険だと思うので、止めておくが。

 そうして電車に乗って、雄英のある駅に向かう間に話をする。

 

「今日からアクセルは……っていうか、A組は放課後に残って訓練をするんだよな?」

「ああ、そのつもりだ。拳藤も参加して欲しいと思うけど、無理なんだよな?」

 

 昨日放課後に教室でした話を思い出し、そう言う。

 すると拳藤は少し困った様子で笑みを浮かべて頷く。

 

「私としては参加したいんだけどな。B組の事を考えると、ちょっと難しいと思う」

「まぁ、だろうな。……というか、何だって拳藤だけがB組に行ったのやら」

 

 受験の日に知り合った面々の中で、拳藤だけがB組に行ってしまった。

 瀬呂、三奈、葉隠はA組なのに。

 とはいえ普通に考えれば、寧ろ拳藤以外全員がA組になれたのがせめてもの救いなのかもしれないが。

 

「それをここで言っても仕方がないなだろ。それに……これをアクセルに言うのはどうかと思うけど、B組も悪いクラスじゃないんだ。取蔭を知ってるだろ?」

 

 拳藤の口から、昨日学食であった女の名前が出される。

 取蔭は、実際に人当たりもよく、話していて楽しい奴だった。

 勿論、取蔭と同じような者達がB組に集まってるって訳ではないだろうし。

 拳藤から聞いた話によると、かなりの問題児が1人いるらしいし。

 

「そうだな。今もうこうしてクラスが決まってしまったんだから、ここでどうこう言っても仕方がないか」

 

 そうして話をしていると、やがて電車が雄英の駅に到着する。

 周囲には俺や拳藤と同じ雄英の生徒が大量にいた。

 この駅は別に雄英の生徒だけが使っている訳ではないが、この時間はやっぱり雄英の生徒が多いんだよな。

 そんな訳で、他の生徒達と共に雄英に向かっていたのだが……

 

「何だ、あれ?」

 

 雄英までもう少しといったところまで来たところで、生徒達の足が止まっているのを見て疑問に思ったのだが……

 

「マスゴミか」

 

 雄英の正門前にいる者達……カメラやマイクを持っている面々を見て、そう呟く。

 聞こえてくる感じだと、どうやらオールマイトが雄英で教師をやっているというのを知って、取材に来たらしい。

 それを見て、思わずそんな風に言ってしまうのは……うん。

 俺の感想というか、俺がマスコミをどう思っているのかを素直に口に出してしまった形だ。

 勿論俺も、マスコミが全てマスゴミと言われるような存在ではないというのは理解している。

 マスコミの中にもまともな者はいるのだろう。

 だが……それはつまり、マスコミの大半はマスゴミと呼ぶに相応しい存在だという事でもある。

 実際、俺がすぐに思いつくところであっても、ペルソナ世界で桐条グループの件で色々と嗅ぎ回っていたり、稲羽市にある雪子の家の旅館の件で不躾な質問をしてきたりというのがある。

 世界が違えば、あるいはマスコミの民度が違うかもしれないと思ったが……どうやら、このヒロアカ世界でもマスゴミはマスゴミであるという事なのだろう。

 

「うわぁ……これ、どうするんだ?」

 

 俺の隣にいる拳藤も、正門前の状況を見て思わずといった様子で呟く。

 

「どうするも何も、このままだと遅刻に……いや、どうだろうな」

 

 これが、例えば寝坊して遅刻をしたとか、そういうのなら学校側でも注意するだろう。

 相澤辺りなら、除籍とか言ってくる可能性もある。

 だが、目の前にいるマスゴミの連中を思えば、それで遅刻したからといって……いって……

 

「やばいかも」

「アクセル?」

「B組の担任はどうか知らないが、俺達の担任は個性把握テストで最下位の生徒を除籍させるとか、そういう風に言う奴だ。マスゴミがいたからといって、遅刻を見逃すとは思えない」

 

 さすがにさっき考えたように遅刻で除籍といったような事は言わないと思うが、それでも遅刻は遅刻だと言って成績にマイナスとなる可能性は十分にある。

 俺が普通の学生なら、それはそれでいいのだろう。

 だが、俺は他の生徒達の壁として……立ち塞がる為の存在でもある。

 そんな俺が、遅刻をして成績――というか生活態度か――にマイナスがつけられるというのは、絶対に避けたい。

 となると、あのマスゴミの群れを突破する必要がある訳だが。

 さて、どうしたものか。

 そう思ったところで、ふと気が付く。

 この連中……ある意味、殺気とかを加減する練習相手としては、丁度いいのでは? と。

 ヒーロー科の生徒として、このようなマスゴミに個性を使う使わないに限らず、直接手を下すのは明らかに駄目だろう。

 だが……殺気を叩き付けるのはどうだ?

 ……場合によっては、俺が殺気を叩き付けた事によってマスゴミが殺気や気配を感じられるようになるかもしれないが。

 ただまぁ……うん。マスゴミがそういう能力を手に入れても、そこまで有効活用は出来ない……出来ない……出来ないよな?

 あるいはヴィランが跳梁跋扈するような場所に行き、取材をするのなら殺気を感じるといった能力も十分役に立つだろう。

 ただ、マスゴミがそういう事をするとは思えないしな。

 マスゴミじゃなくてマスコミなら、そういう命懸けの報道とかもするかもしれないが、生憎とこの場にいるのはマスゴミだけだ。

 なら……もし万が一、億が一にでも殺気や気配を察知する技術を覚えても、そこまで問題にはならないだろう。

 せいぜいが、サボる時に気配を探ったりとか、そういうのをするだけなのだろうと思っておく。

 そんな訳で、見覚えのない男の生徒……制服が着慣れていないところを見ると、恐らく1年の生徒だろう存在に絡んでいる女のレポーターに向け……殺意を飛ばす。

 お前を殺す、と。

 そんな殺気を込めて。

 ……マスゴミに対する苛立ちもあり、優に対して放った殺気よりも若干、本当に若干――具体的には2割増しくらい――強くなったのは、マスゴミ達の自業自得と思っておこう。

 

「ですから……」

 

 男の生徒に何かを言おうとした女のリポーターは、不意にその場に崩れ落ちる。

 そして……地面が濡れていく。

 それが一体何なのかは、昨日の優の件を思えば考えるまでもないだろう。

 生放送をしていないといいな。

 

「え? おい、ちょ……そ、空子ちゃん? どうしたの?」

 

 いきなりリポーターの女が倒れたのを見たカメラマンが、焦ったように言う。

 当然だろう。つい数秒前までは元気にインタビューをしていたのに、いきなり地面に倒れ込んだのだから。

 カメラマンの男が騒ぎ、空子とかいうリポーターに駆け寄る。

 そうなると、当然ながら他のマスゴミ達も一体何があったのかと、そちらに視線を向け……

 

「ちょっ、呉さん!?」

 

 また別のリポーターの女……こちらは中年の女が、地面に倒れる。

 幸いなことに、こちらは倒れても地面が濡れることはなかった。

 そうして1人、また1人と倒れていくマスゴミ達。

 最初はリポーターだけにしていたのだが、それはそれで変だと思ってカメラマンも気絶させていく。

 ……持っていたカメラが地面に叩き付けられて壊れたりしていたが、それは仕方がないよな。

 ああいうTV局で使っているようなカメラって、数十万、場合によっては数百万とかするらしいが。

 まぁ、俺は別に個性を使ったりした訳ではないし、何よりマスゴミなんだから構わないよな。

 

「……アクセル?」

 

 俺の隣でどうやってマスゴミの群れを抜けて雄英の敷地内に入ろうかと考えていたらしい拳藤が、呆れの視線をこちらに向けてくる。

 優との一件を知っている拳藤だけに、いきなりマスゴミが倒れたのを見て俺が何をやったのか理解したのだろう。

 

「ヴィラン!? これ、ヴィランの仕業じゃないのか!?」

 

 まだ無事だった男のリポーターがそう叫ぶ。

 うん、まぁ……何も知らないとそんな風に思ってもおかしくはないよな。

 一体どんな個性を使えばこうなるのかは分からないが。

 

「取りあえず、マスゴミ達は混乱している。幸い雄英の生徒達には影響がないみたいだし、とっとと中に入るぞ」

「どの口が……」

 

 周囲の生徒に聞こえるようにそう言うと、拳藤が隣で小さく呟くのが聞こえてきた。

 まぁ、うん。その気持ちは分からないでもなかったが、その言葉についてはスルーしておく。

 ともあれ、さすが雄英の生徒。

 俺の言葉を聞くと、すぐに正門から距離を取っていた者達が移動を開始する。

 

「っと、ほら拳藤。このままだと置いていかれて面倒な事になるから、俺達もさっさと行くぞ」

 

 そう声を掛け、拳藤の手を握って流れに乗る。

 拳藤はいきなりの行動に若干遅れたものの、それでも俺の手を握ってはぐれないようにしながら正門に向かう。

 そうして正門に到着する直前、正門から相澤や他にも何人かの教師……つまり、プロヒーロー達が出てくるのと入れ違いになる。

 相澤が俺の姿に気が付いて一瞬こちらに視線を向けてきたが、特に何を言うでもなく、そのままマスゴミ達のいる場所に向かう。

 どうやら相澤は俺が殺気を発してマスゴミを気絶させたとは思わなかったらしい。

 いやまぁ、寧ろそれが分かったらそれはそれで疑問ではあるのだが。

 ともあれ、大量の生徒達と共に正門を越えると、後はもう安全だ。

 

「何とか無事だったな」

「ああ、どうなるかと思ったけど。……で、アクセル。そろそろ手を放してくれないか?」

「ん? ああ、悪い」

 

 拳藤に言われ、そう言えばさっきはぐれないようにと拳藤の手を握っていたなと思い出し、手を放す。

 

「それにしても、少しやりすぎじゃないか?」

 

 周囲にいる者達に聞こえないようにしながら、拳藤が俺に言ってくる。

 生真面目な性格をしている拳藤にしてみれば、どうやら先程の俺の行動はやりすぎのように思えたらしい。

 

「そうか? ……まぁ、次々と倒れていったのは、一種のホラーに見えなくもなかったけど」

 

 拳藤にとってはやりすぎだと思えたのかもしれないが、俺にしてみれば特にそういう風には思っていない。

 ……相手がマスゴミだからというのがあるのは間違いなかったりするが。

 

「ホラーって……あんたねぇ。まぁ、でも……助かったのは事実か」

「だろう? なら、気にしなくてもいいだろ。雄英の生徒達の邪魔をしていた者達を排除したと思えば、特に何も問題はないし」

「それは……どうなんだ?」

 

 呆れつつ、それでも俺のお陰で実際に助かったのは間違いないせいか、それ以上不満を口にすることはなかった。

 実際、俺達よりも後から来る面々は、マスゴミに強引にインタビューをされなくてもいいんだしな。

 そう思いつつ、俺は拳藤と別れてA組に向かうのだった。

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